A.2月4日。約20日前です。
Q.その間貴様は何をしていた?
A.今後の展開的に時系列がずれると思ってその確認。あとソード・ワールドの動画を見てました。ルルブも2.5のⅠ~Ⅲまですでにそろってます。
Q.何か言い残すことはあるか?
A.バイクに乗って剣を振り回すナイトメアってかっこいいと思いまs(ドパン
奈落生活1日目
と言っても、日の光の届かない暗い奈落の底では日付感覚などないので、目が覚めたら次の日ということにした。奈落に落ちたり魔物に襲われたりと肉体、精神共に疲労の激しい一日だったと感じる。そこにはもちろん(アホな)決死の攻防も含まれている。あの攻防が落ち着いたあとはふっと意識が消えるように眠った。
奈落生活2日目
全身を襲う痛みで目を覚ました。下に何も敷かずに寝るのは徹夜でゲームをしたときに何度か経験しているがやはり慣れるものではない。ポーチを枕の代わりにすればよかったかなと思ったが、ただでさえ破損具合が酷いのがさらに酷くなりそうだ。何かに使えるかもしれないので出来るだけ使えるようにするに越したことはないだろう。自分の右腕を枕代わりにして寝ている風華が目覚めたあとは、今後の方針について話し合った。と言っても自分たちのレベルで出来ることは何もなく、じっとして救助を待つということになった。
いや、それしか出来なかったというべきか。そして、残された食糧も心許なく、二人で節約しても数日しか持たないだろう。とりあえず全体の2/3を風華に渡し(というか押し付け)、残りを自分が受け取った。その日はその食糧の約1/10を食べて寝た。残りの食糧は全て風華の方に回す予定だ。
奈落生活3日目
微かなうめき声に目を覚ました。声の主は風華だった。苦悶の表情で熱い、痛い、と訴えている。全身の火傷は例の不思議な水のおかげで治っていると思うが、幻痛症状だろうか。自分自身を抱きしめてもがいている風華を片方しかない腕でそっと抱きしめた。痛みから逃れようと必死に振るわれる義妹の腕が自分の身体に小さなひっかき傷を残していく。目を覚ましたあとの風華は泣きながら謝っていた。苦しいのは風華なんだ、謝る必要なんてないんだと諭すと、次第に落ち着いていき、泣き疲れたのか再び風華は眠りについた。今の内に予定通り自分の食糧全てを風華に着せた自分の上着のポケットに入れる。その日は不思議な水を飲んで過ごした。やはり水だけでは空腹感はどうにもならないが、人間、水さえあれば一週間は生きられると聞いたことがあるし、夏休みとかで母の手伝いをしていたときは食事がエナドリだけという経験もしたことがあるし何とかなるだろう。ましてやこの水はただの水ではない。もしかしたら一週間以上持つかもしれない。
水を飲みながら、ふと自分の左腕があったところを見やる。途端に自分とずっと一緒にあったものの消失感が痛みと共に襲ってきたので精神衛生上よくないと思い、すぐに目をそらして忘れようと無理やり寝た。
奈落生活4日目
バレた。速攻でバレた。何がバレたって風華に全部食糧を渡したのがバレた。何でも、自分が寝ている間に食事を取ろうとしたとき、妙に量が多いことを不信に思い、自分のポーチを見てみれば中身が空だったことで発覚したらしい。目が覚めたらすぐに説教されながら食糧を全部口に突っ込まれた。まさかこんなことで食糧が全部なくなるとは思わなかった。とりあえず次からは一気に渡すんじゃなくて少しずつ渡そう。口に突っ込まれたものを吐き出すわけにもいかないので観念して咀嚼しながらそう考えていると、それもバレてまた怒られた。何故だ。
奈落生活5日目
いつかはこうなるだろうとは思っていたが、予想以上に早い食糧全ロストである。流石にどうしようもないのでこの日は水を飲んで過ごした。
奈落生活6日目
水。水。水水水
奈落生活7日目
水水水水水水mizu水みzumiずみz
奈落生活8日目
食糧を探しにここから出ることにした。
「食べられそうな木の実とかあればいいんだけどな……」
「……でもここ岩ばっか」
ハジメたちが奈落の探索を始めて1時間ほど経過していた。なぜ、彼らが安全な隠し穴から出て、危険に身を冒しこんなことをしているのかというと、風華の行動に原因がある。
奈落生活8日目。己の口元に違和感を感じたハジメが目を覚ますと、そこには自分の腕をハジメの口に当てている風華の姿があった。虚ろな顔で、己の左手で右手首を掴んで前腕を彼の口に押し付けているその目は全く正気を保っていない。まるで、というか明らかに
このままではいけない。急いで食糧を探さねば。
そのハジメの提案を風華は最初は渋っていたが、考えてみればそもそもで食糧を全部消費した原因は自分が暴走したせいだったのでその案に従った。どのみち、現状維持では発狂して死ぬだけだろう。
という訳で彼らは出来る限りの準備を行い、奈落の底を探索していた。
(ナイフが無くてよかった……)
岩陰に隠れて周囲を警戒しながら目覚めたときの光景を思い出し、ハジメはそう思う。風華のあの様子では冗談抜きに自分の腕を切断してハジメに食べさせていたかもしれない。
二人は奈落の底を歩き続ける。求めるものは食べられそうな植物だ。なにせ、ここに生息している動物といえば確実に魔物。そいつら相手に正面どころか側面からやりあっても勝機がないのは数日前に経験している。ならば木の実などの魔物ではない食糧を探すのが一番だ。
しかし、探しても探しても視界に広がるのは岩肌ばかりで植物なんてありそうな気配もない。ウサギが生息していたことを考えると植物がありそうな気もするが、草食のそいつは地球のウサギである。もしかしたら、ここのやつは肉食なのかもしれない。というか食えそうなものが見つからないので、あのウサギは他の魔物を喰らう肉食だと考えるしかないだろう。
肉、肉だ。
そんなことを考えていたら急に肉が食べたくなってきた。そういえばウサギの肉はおいしいと聞いたことがある。もし、地上に戻れたらウサギ肉を扱っているお店を探すのもいいかもしれない。
空腹で少しぼんやりとする頭が思考を当初の目的から脱線させるなか、ハジメの視界にそいつらは現れた。
それは、奈落の底に来た初日にウサギに蹴り殺されていた二つの尾を持つ狼だった。それらは4頭で群れを形成しており、こちらに背を向けて前へ歩いている。
すぐさま、さっと岩陰に身を隠し、考えを巡らせる。
なるべく会いたくなかった奴の一種だと思う。正直、4頭を相手に無事でいられる自信が無い。出来れば単独行動しているやつがいい、あのときのウサギのように。そう考えて、ウサギはウサギであの狼を複数相手に無傷で立ち回っていたことを思い出す。あれはあれで勝てる気がしない。となると、ハジメたちが見てきた魔物で残っているのはクマくらいだが、あれは完全に論外だ。
兄がうんうんと頭を悩ませるなか、風華はふとアイデアを思いついていた。
「……にぃ」
「ん?どうした風華?」
「……あれ、食べよ?」
「……え?」
風華の言うあれとは間違いなく、さっき見つけた狼のことだろう。しかし、奴は狼だ。たった二人で、ましてや子供の力で勝てるだろうか。
「……いいこと、思いついた」
奈落の狼……二尾狼の狩りは集団、そして待ち伏せで行われる。彼らはこの階層では最弱の存在であり、それは彼らも理解している。そんな彼らが生きるために格上を喰らう術は、単純に数で攻めることだ。数で優位に立てば、どんな相手でも次第に圧せる。
最終的に1匹でも残って勝てばいい。それが彼らの生き方だ。
そして、彼らにはその利点を十分に活かす能力を持っている。それは動物版の念話とでも言うべき能力だ。これを利用することにより彼らは高度な連携を取り、狩りを行う。
ハジメたちが最初に目にした群れは、まだ若く、連携が浅かった群れであった。また、ウサギの方も中の上に位置する個体であったため、あの狼たちは運が悪かったとしか言うほかない。
では、この群れはどうか。彼らはこの奈落の底を過ごして長い群れだった。野生の勘を頼りに、相手を殺せるか無理かを判断し、やれそうならば喰らう。そうして生きてきた群れだ。
そして、彼らは今回も狩りを成功させるため、狩場を見つけて待ち伏せる。その狩場を通った相手を襲うのだ。
ウサギが一羽、狩場を通る……あれはダメだ、身体も大きいし、動きも軽やかで警戒してなさそうに見えるが、それは罠だ。あれは無視すべきだろう。
しばらくしてから二羽目……身体は小さいし、警戒心がまるで感じられない。若い個体だろう。
あれならいける。そう判断した群れのリーダーは他の狼に指示を出す。
程なくして、狼は二尾に雷を纏わせウサギに襲い掛かる。
哀れな獣の悲鳴が狩場を木霊した。
「……生き残っちゃったな」
「……じゃあ、ウサギも、食べよ」
その狩りの様子を壁の中で見ている者がいた。ハジメと風華である。
風華のアイデア。それは、魔物同士の殺し合ったあとの死体を漁夫の利しようというものだ。奈落生活の中で、あの隠し穴にたどり着くまでに起きたことは聞いているので知っている。ならば、あのときのようにウサギとかに狼を殺してもらい、死体の一つくらいこっそりと持ちだそうというものだ。
しかし、それは狼が狩りに失敗していることが前提になっている。今のように狩りを成功させた場合はどうするのか。それに対する風華の答えはこうだ。
「……ぱっくんちょ」
そう言い彼女は両手を合わせる。
まあ、つまり。
「……支援」
「錬成!」
こういうことだ。
狩りを成功させ、獲物を捕食していた狼たちは突如、地面に飲み込まれる。とっさに飛び退こうと脚に力を入れるが、脚は大地を蹴ることなく、むしろもがけばもがく程に飲み込まれていく。
まるで、アリジゴクに囚われた蟻の様だ。
そして、狼の全身が地面に飲み込まれる。直後、全身を強い圧力が何度も何度も彼らを襲った。
ハジメたちによって狼が4頭と、ウサギが飲まれてから十分程の時間が経過した。
「もういいかな?」
例の水の入った石容器の中身を飲み干し、それを投げ捨てつつハジメは背後の義妹に振り返りつつ聞いてみる。それに彼女はこくんと頷いた。
作戦は簡単、地面を錬成し獲物を飲み込ませ、その中で万力のように圧し潰す。これだけだ。高ランクの魔物は単純に硬いので、地面を錬成して槍を作るくらいではロクにダメージが入らないだろう。しかし、大地の圧力ならば流石に通じるのではないか。そう考えて彼らはこの作戦に出た。念のために持ってきた水の入った石容器は今飲み干したのが最後だし、これが通じなかったらお手上げだ。
果たして結果はどうだろうか。
地面を錬成して狼たちを掘り起こす。狼は全て絶命していた。
それを見た二人は喜ぶよりも、すぐにそれらをまとめ、今まで以上に警戒しつつ隠し穴へと戻る。
帰り道は何事もなく、彼らは無事に戻ることが出来た。
安全なところへ戻れたことを確認し、二人はパチンと手を合わせる。
足元には二尾狼4頭とウサギの死体。
彼らは食糧を手に入れた。
奈落の魔物ってSW換算したら経験点すごそうだなーと書いてる間思ったり。