錬成師と支援師   作:月蛇神社

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お久しぶりです。カムラの里でニンジャソード振ってたらしばらく抜け出せず、久々の投稿になります。
久しぶりに書いたので短いのはご容赦を……。

追記:久しぶりのせいでとんでもねぇミスしてた……修正しました。次からは気をつけます。


トラウマ

 彼らの前には肉がある。それも動物5頭分と中々な量の肉だ。

 

「……どっちから食べる?」

 

 着々と魔法陣の準備をする風華が、錬成して極限まで鋭く作った石のナイフで魔物の肉と毛皮を分けているハジメへと問いかける。それに対する彼の答えは決まっていた。

 

「そりゃあもちろんウサギからだろ。狼より美味そうだし」

 

 それは捌く前から彼が決めていたことだった。狼とウサギ、どちらの肉が美味しそうかと大衆にアンケートを取ったら、恐らく大多数の人間がウサギと答えるであろう。肉食動物より草食動物の方が美味しそうというイメージがしやすいのも、彼にウサギ肉への期待を膨らませていた。

 

 ただ実際のところ、肉は狼の食べかけ、加えて電撃で仕留められたので焦げ臭い上に下処理もしてないので獣臭さも倍プッシュ。しかも狼を仕留める際にウサギも巻き込まれていたのでプレス戦法で色々とぐちゃぐちゃになっているのだが。

 

 それでも、やっぱりウサギ肉が先だ。

 

「……準備出来た?」

 

 そろそろいいかな、と思ったところで作業を見ていた風華から声がかかる。彼は分ける作業を止め、予め用意していた石の棒に先に捌いていたウサギ肉を刺していく。

 

 捌く、と言っても魔物は死体になっても魔物だった肉があっさり柔らかくなるなんてことはなく、死体になってもその身体は多少軟化していたがほとんど硬いままだった。おかげでウサギを捌くだけで結構な重労働だ。

 

「よし、そんじゃ焼くか……でも無理はするなよ」

 

 ん、とうなずく義妹を不安な目でハジメは見る。

 

 最初、ハジメはこの肉を生で食べるつもりだった。肉の生食は色々と怖いものがあるが、ここには例の不思議な水がある。何が起きてもごり押しで行けるだろうと彼は考えていたのだが、それに待ったをかけたのが風華だった。

 

「……生は危険」

「でもそれしかないだろ。他にどうするんだ」

「…………焼く」

「え」

「……焼いて食べよ」

「いや、でも」

「焼くの」

「あっはい」

 

 彼女の主張には異を唱えたかったハジメだが、風華の勢いに圧され、それに対応するしかなかった。

 

 物を焼くのに使うものは火だ。しかし、風華をこの身体にしたのもまた火である。自分の身を焼かれるという体験をした彼女からすれば、炎自体がトラウマになっていてもおかしくはない。見ただけで精神的な悪影響がある可能性も考えられる。ハジメがあえて焼いて食べるという選択を除外したのにはそういった考えもあった。

 

 しかし、風華は自らが焼くと主張した。彼女にも思うところがあるのだろう。

 

「――顕現せよ、火種」

 

 完成した魔法陣に風華が詠唱と共に魔力を流す。起動した魔法陣の中心に炎が現れる。火種を起こす魔法といってもその大きさはちょっとした焚き火ほどはあるだろう。

 

 彼女が火を使うことが決定したあとも、ハジメはせめて火付け役はやらせてくれと食い下がったが、それも彼女に却下された。

 

 簡単な話し、風華の筋力では魔物の肉を捌けないのである。道具はハジメが出来る限り最高の物を錬成して作っているが、それを使うのは人である。ハジメが苦労してやっと捌ける硬さの肉を、風華がどうこうするのは不可能であった。

 

 そのため、役割分担として火付け役が風華、肉分け担当がハジメとなるのは確定と言ってもよかった。

 

「……」

 

 ハジメが肉を置いている傍で、彼女はじっと炎を見ていた。己の身体に癒えない傷を残した元凶をただ見つめていた。

 

(……怖くない。怖く、ない。怖く、な、い。)

 

 心の中で自分に言い聞かせるように、恐怖を抑えるように念じる。

 

 しかし、その想いとは裏腹に、その燃え盛る光が、熱が、恐怖へと変換され彼女の心を侵食して行く。

 

(……どうしたら、いいの)

 

 次第に彼女に焦りが募る。

 

どうしたらこの恐怖を乗り越えられる?

 

「……あ」

 

 そのとき、彼女は天啓を得た。

 

 触れられるなら怖くない(・・・・・・・・・・・)、と。

 

「……怖くない

 

 ゆらり、と手を伸ばす。

 

「……怖くない

 

 ふわり、と一歩、足を進める。感じる熱が強くなった。

 

「……怖くない

 

 もう一歩進めようとしたところで、視界が不意に暗くなる。

 

「……?」

「風華、ここまでだ」

 

 誰かに抱きしめられている。それがハジメによるものだと認識するのに、彼女は数秒の時間を要した。

 

「……ダメ

「もういいんだよ」

「……嫌だ

「風k」

 

「嫌だ!!」

 

 滅多に聞かない彼女の大声は彼を驚かせるには十分だった。

 

 それに驚きつつもハジメは風華を抱きしめる。彼女の小さな身体は震えていた。

 

 この地に落ちて何度目かの抱擁。二人ボッチのこの地で安らぎを得る一番の方法。

 

 彼女の震えが落ち着くまで待ってから、ハジメは問いかける。

 

「……どうしてだ?」

 

 彼は風華の目を優しく見て問う。彼女の顔は、恐怖とそれを必死に消そうとしている歪んだ表情をしていた。

 

「……これ()を怖がってたら、ふぅはにぃの邪魔をする。にぃが先に進めない」

「確かに、この先で炎を使う魔物が出てくるかもしれない」

「……だから、早く恐怖を乗り越えなきゃいけないの……このままじゃ、ふぅはにぃの足手まといになる。だから……」

「だからってこんな無理をすることはないし、ふぅが足手まといになることなんかない」

 

 それに、と彼は言葉を続ける。

 

「ふぅがダメなら僕はもっとダメだ。魔法は使えないし、錬成するくらいしか取り柄がない。その錬成もふぅがいなきゃ役に立たない……前にも言ったろ、僕は弱いんだ。だから二人で強くなろうって」

「……ん」

 

 一先ず、彼は説得に成功したらしい。風華の表情がやわらかくなって行く。

 

「先を急いで転んだら意味がない。ゆっくりと治していこう」

「……ん、ごめん」

「さて、それじゃあ久々の食事にしようか。そろそろ肉もいい感じに……あ」

「……ん?あ」

 

 ひと段落ついたところでハジメが焚き火の方を見やると、そこには明らかに焼きすぎて焦げている肉がそこにあった。

 

 彼が一番楽しみに期待していたウサギ肉である。

 

「あ、ああああぁぁぁぁ!?」

「……にぃ、ごめん」

 

 絶望に打ちひしがれる彼に風華は謝ることしかできなかった。




定期的に投稿できるよう頑張りたい……でもカムラの里が逃げさせてくれない……。
次回も遅れると思いますがお待ちいただけるとありがたいです。
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