錬成師と支援師   作:月蛇神社

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やっぱり玉が出ないので書きます。
途中の展開に本気で1日以上悩んで出た結論が今回です。

念のためR-17.9のタグを追加しておきます。


変化と捕食

 悲鳴が響いていた洞穴は、今は静寂が支配していた。

 

 火を起こしていた魔法陣は効果時間が切れたことで自然と鎮火されており、一帯の気温は下がっていく。

 

 悲鳴の主たちは今や力尽き、壁にもたれかかり、抱き合って眠っていた。

 

「……うう、ん」

 

 そのとき、冷たい空気が風華の首筋を撫で、彼女の意識を覚醒させた。

 

「うっ……何が、あったの……っ!?」

 

 彼女は今の状況を把握しようと、自分が抱き着いているものから身体を離し、その正体に目を見開く。

 

「……にぃ……何で」

 

 それは、真っ白になったハジメだった。

 

 真っ白に燃え尽きた、という比喩表現ではなく、彼の頭髪は日本人らしい黒色が完全に抜けきった白色に変色していた。

 

 その他にも、食事前よりさらに増した筋肉は、彼の首から下をより細身の筋肉質へと変化を遂げさせており、身体中を走る赤黒いラインが禍々しさを感じさせている。その赤黒いラインは魔物らしいという印象を彼女に与えた。

 

 自分の知る人物が急激に様変わりするというのはかなり大きな衝撃だった。この奈落の底に来てから焼け爛れた自分の姿を見た彼もこんな気持ちだったのだろうか。

 

 現実を受け入れるために風華はハジメの身体をゆっくりと見まわす。

 

 全身の筋肉は細身ながら無駄を削ぎ落した造形をしており、少し男らしくなった彼の顔立ちと相まって逞しい印象を与えている。そのとき、ハジメの身長がだいぶ伸びていることに気づいた。

 

 あの激痛は身体を成長させるためだったのだろうか。そう思った彼女は自分の変化を確かめるために一旦離れて立ち上がる。

 

 彼女は自分の身体を見下ろして、さまざまな違和感をその身に感じた。

 

 まず目に入るのは胸部だ。見下ろしたときに見える地面の面積が自分の記憶より狭く見える。彼女が密かに気にしていた起伏のあまり無かった胸は少し大きく成長していた。続けて、脚や腕などを見て触って確かめてみる。そのどちらも肉付きがよく、以前の彼女よりも女性らしさを感じさせるパーツへと変貌している。そして、これまたハジメと同様に赤黒いラインが全身を這っていた。

 

 全身を被う火傷跡は相変わらずだが、焼けて張り付いていた衣服の繊維などは消えていた。その箇所をよく見てみると何かがあった跡が見られる。

 

 また、彼女の顔にかかる前髪は見慣れた黒ではなく、やはりハジメと同じような白色だ。これには少し彼女は落ち込んだ。ハジメの好みのキャラクターはロングヘアで黒髪のキャラクターが多いので、自分の黒髪は自信を持って誇れる数少ないところだったのである。しかし、色は変色してしまったが、触って長さを確かめると、いつもの長さまではいかないが全身が焼けたあとよりも伸びているようだった。

 

 全身を見回していると、彼女は自分の見下ろしている地面が以前より遠いことに気づく。ハジメほどではないが、やはり彼と同様に身長も伸びているらしい。ハジメに借りた上着の裾で隠れていたところが少しスース―している。

 

 一先ずの確認を終えた風華はかがみこんでハジメを眺める。そのとき、ハジメの身体がどれくらい変化をとげているのかということに風華は興味が湧いた。

 

 二の腕の筋肉を人差し指でつついてみる。弛緩しているために柔らかいかと思ったが、思った以上に指は沈まなく、しっかりとした弾力を彼女の指先へと返してくる。

 

 

 

 

 

 今のハジメは誰にも負けないくらい強い(・・)

 

 その確信を持ったとき、彼女は自分の本能が強く刺激されることを感じた。

 

 

 

 

 

「……っ」

 

 声無き声が語り掛ける。

 

 あれは強い。優れている。故に子を成し次代へつなげ。

 

 それを理解した瞬間、体内のナニカがだんだん荒れ狂っていくのを感じた。

 

 痛くはない、けれど苦しい。どうすればコレを鎮められる?

 

 目の前で無防備に眠るオトコを見やる。

 

 ……ああ、なんだ。簡単なことではないか。

 

「……首、痛めたら、大変だから」

 

 わざわざ言い訳じみたことを口に出して、彼女はハジメの身体をゆっくりと横たえる。

 

 そうだ、これはただ彼を楽な姿勢にしているだけだ。

 

 そう思いつつも彼女はハジメの右腕を広げ、その懐に自分の身体を横たえる。

 

「……ふぁ」

 

 ヤバい。今までで一番いい。

 

 彼女の頭に柔らかくもしっかりとした感触が与えられる。その感触はハジメにしてもらっているときよりも、今まで使っていた枕よりも極上と言うべきものだった。

 

 ハジメの方を向いた彼女にハジメの肉体が目に映る。

 

 彼女は自分の身体の奥がうずきが大きくなっていくことを感じた。

 

「……」

 

 無言でハジメの腕から離れ、その身体を跨ぐ。

 

 胸板に手をついたとき、しっかりとした手ごたえが彼女の手のひらへ伝わった。

 

 その感触に心臓の鼓動が高まるのを感じつつ、ハジメの腹部へと腰を下ろす。

 

 瞬間、彼女の脳天をゾクゾクとした感覚が突き抜けた。

 

 ブルっと彼女は自身の身体を大きく震わせる。それが寒さからではないことは彼女自身もよくわかっていた。

 

 倒れ込みそうな身体をハジメの胸板に手をついて支える。そのとき、彼の胸にある大きな傷跡に手が触れた。

 

 それは、ハイリヒ王国の王城で起こした事故から彼女を守ったときに出来た傷だ。

 

 自分のためについた傷。

 

 その傷を見たとき、彼女は己の熱が一段と熱くなっていくのを感じる。

 

 そっと、自身の身体を押し付け、傷跡を一回舐める。

 

「……しょっぱい。それに土の味。けど……」

 

 もっとほしい、彼の全てがほしい。

 

 そうして彼女はまた傷跡を舐める。

 

 ぴちゃり、ぴちゃりと水音が小さく洞穴に響く。

 

 彼女の頭は胸の傷から、首、頬へと移動していった。

 

 そのときだ。

 

「うぅ……風華……?」

 

 ハジメの口からうめき声が聞こえた。どうやら目が覚めようとしているようだ。

 

 そこで彼女は舐めることを一旦止め、彼の顔を見つめる。

 

 彼の目が開かれる。

 

「……あれ……?」

 

 その目を見たとき、彼女の口から疑問の声が出る。

 

 それは彼の瞳の色だ。その色は普段の黒ではなく、魔物のような赤に染まっていた。

 

「風華……なのか?っそうだ、どこも痛いとこはないか!?気持ち悪くないか!?」

 

 ハジメもこちらを認識する。変わり果てた自分の姿をみて少し混乱しているようだ。

 

「……ん、大丈夫」

「そうか、よかった……」

 

 その問いかけにいつも通りの返答を返す。その答えを聞いて、ハジメはほっと安堵のため息をつく。

 

 そのときの表情は彼女の理性の最後の壁を砕くには十分すぎる威力があった。

 

「ところで、そろそろどいてくれないか?いや、重たいとかじゃなくて、ほら、その、色々と……」

 

 バタバタと片腕を動かしながらしどろもどろになるハジメ。

 

 その原因が自分を意識しているからということは火を見るよりも明らかだった。

 

 何度も見られた身体だが、成長したおかげかこんなにも意識してくれている。

 

 それは自分にとって、ここまで生き残った最高級の報酬だ。

 

「あの、風華?聞こえてる?」

「……にぃ、好き。愛してる」

 

 そういうと、彼女は激しく彼の唇を奪う。

 

 本能のままに彼を襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっちまった」

 

 壁に背もたれ、ハジメは頭を抱えて力なくうなだれる。

 

 彼の投げ出された足には、太腿を枕代わりにして寝ている風華の姿があった。

 

 彼女の寝顔は幸せに満ちあふれており、その顔を見ているとハジメも自分の表情がゆるむのがわかる……のだが、やはり頭を抱えてしまう。

 

「やっちまったなぁおい……」

 

 ハジメは、風華の頭を撫でつつ、自分が目を覚ましたときのことを思い起こす。

 

 彼が目を覚ましたとき、目の前には、白髪に赤い目を輝かせる美少女が自分へ迫っていた。その少女が風華だと気づくのに彼は数秒を要したが、そこまではまあいい。

 

 問題は、彼女が完全に捕食者の眼をしていることだった。それも、数日前のやけっぱちのものではなく、ガチなやつである。

 

 これには彼も待ったをかけようとしたが、片腕がないハンデがあったとはいえ、彼女の力は思った以上に強く、彼にはなす術が無かった。

 

 というか、束縛魔法を利用して自分を襲わせるのは流石にずるいと思う。

 

 結局、ハジメは数時間にわたって彼女に食べられていた。

 

 ぶっちゃけ、後半辺りは自分でも積極的だったと思う。

 

 だが、そのおかげで頭の中がある程度クリアになった(なってしまった)のは事実だ。彼は何故こうなったのかを冷静に考える。

 

 実のところ、風華が自分に向ける感情には気づいていた。というか、少女漫画家の手伝いをしていて気づけないはずがない。

 

 そして、自身もそれと同じような感情を抱いていることにも気づいていた。ただし、彼はその感情は表に出してはいけないと思っていた。

 

 血のつながりは無くても、兄と妹として育った身としては、その一線は踏み越えてはならないところだと思って蓋をしていた。

 

 それが外れていったのはいつからだろう。この奈落で過ごしていたからか。あるいは、この異世界(トータス)に召喚されてからか。

 

 もしくは、自分でも気づかないうちに外れていたか。

 

 そして、この大迷宮で何度も死の淵を体験したことで、それが最後の一押しになったのかもしれない。

 

「……決めた、もう逃げねぇ。ちゃんと伝えよう」

 

 常に死の危険がつきまとうこの極限の世界、自分がいつ足を踏み外すかもわからない。伝えずに死ぬだなんてまっぴらごめんだ。

 

 風華が起きたら伝えよう。今は静かに寝てもらうことにした。

 

 ……最も、その原因の少なくとも半分は自分にあるのだが。

 

「それにしても……」

 

 ハジメは自身の身体を見える範囲で見回す。

 

 情事の際にも思ったが、身体の奥底から力がみなぎってくる。それは、彼自身も信じられないくらいに変化した肉体と合わせて、彼に疑問を抱かせる。

 

「えらく変化してるな……魔物の肉を食った影響か?」

 

 ペタペタと自分の身体を右腕で触って確かめる。ウォルペンの下で働いていたときにも肉体の成長は実感できたが、ここまで急激な変化をした覚えは彼にない。

 

「ここまで来るとステータスの影響すごそうだな……見てみるか」

 

 そういうと、彼は辺りを見渡し、ポーチを探す。それはすぐ近くにあり、取ろうとするが、風華が寝ているおかげで微妙に手が届かないことに気づく。

 

「あー…どうするかな……そうだ、錬成」

 

 少し悩んだ彼は、地面に手をつき地面を錬成、ポーチの下を盛り上げ、それを移動させて己へと近づける。

 

「よし、と。さーてどれくらい変化してるかなーっと」

 

 ハジメは、ポーチからステータスプレートを取り出し、自分のステータスを表示させる。

 

 2倍くらいになってるといいなぁ、と彼は思いながら表示されたステータスを確認する。

 

 

 

 

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:10

 

天職:錬成師

 

筋力:180

 

体力:400

 

耐性:180

 

敏捷:150

 

魔力:350

 

魔耐:300

 

技能:錬成[+地形操作][+精密錬成]・守護[+鉄壁]・魔力操作・胃酸強化・天歩[+空力][+縮地]・言語理解

 

 

 

 

 

 それは、彼の予想を大きく裏切り、5倍近く変化したステータス値と、身に覚えのない技能を彼に示していた。

 

「なん……だこれぇ!?」

 

 誰がどう見ても異常な上がり具合に彼はたまらず声を上げる。

 

「……ん、どうしたの……」

 

 その声に、膝の上の風華が目を覚ます。

 

 風華を起こしてしまったことに、ハジメは、「あ、ごめん」と一先ず謝るのだった。




風華にハジメを襲わせる展開は当初はもう少し後にする予定だったのですが、栄養確保、今まで以上の極限状態、そして子を成せる番がいる、というシチュエーションで考えるとこうなりました。
もう少しなんとか出来たやろと言われるかもしれませんが、キャラと指が動いちまったんや。
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