追記:サブタイが仮保存のまんまだったから急遽編集ぅ!
(どうしたものかなぁ……)
ハジメは、目の前で座る風華の背を見ながらそう思った。
風華が目覚めたとき、彼女は寝ぼけてボーっとしていたのだが、数分前までのことを思い出したのか、だんだんと顔を真っ赤に染め上げていった。すぐさま上着を頭に被った彼女はハジメに身体ごと背を向け、座り込んでしまった。
ハジメもなんとか話しかけようとしたのだが、彼女からの返答は悶えた声にならない声ばかりで、彼にはどうすることも出来なかった。
結局、ひとまず彼は風華の頭を撫でることで落ち着かせることにするのだった。
その結果、なんとも言えない気まずい空気が二人の間を流れていた。
ハジメとしては、告白するならきちんとしたいところなのだが、今この様子の風華にするのもどうかと考えていた。
とりあえず復活するまで待とうと考えていたのだが、それは小さな声で破られた。
「……ごめん」
「ん……何が?」
「……無理やりやっちゃって」
「あ、あー…うん」
その言葉に彼は片方しかない手で頬をかく。
正直、それに関して彼が怒るとかそういったことは考えていない。どちらかと言えば風華の身体の心配をするくらいだ。強いて言うなら、
というか、時間が経つ程に自分の理性の壁がだんだんと崩れていく感覚がしていたので、こうなってしまうのは時間の問題だったのかもしれない。
「うん……その、なんだろ。僕も結構暴走してた記憶あるし、今回はお互いさまってことにしません、か……?」
風華の様子を伺うようにハジメは言葉をかけるが、彼女は何も返さず、微動だにしなかった。
再び沈黙が訪れるかと思われたが、唐突に風華は頭にかけた上着を取るとスッと立ち上がり、ハジメに向き直る。
そして、風華はハジメにまたがり、身体を押し付けるようにのしかかった。彼女の頭が胸元に押し付けられる。
一度身体を重ねたとはいえ、女の子の柔らかさにはやはり慣れることは難しく、心拍が1段階上がるのをハジメは感じた。
「……じゃあ、今回は、ノーカン……ここ出たら、やり直そ」
「……ああ、そうだな」
かなり無理なことを言っているのは理解している。けれど、こんな衝撃的な記憶を忘れろという方が無理な話しだ。
そうしてまた、彼らはしばらくそのままでいた。その沈黙はハジメに改めて決心を固めさせるのに十分な時間だった。
よし、と彼が呟くと彼女の頭を優しく上げさせる。キョトンとした彼女の顔が彼の目に映る。
「風華」
ハジメは、彼女の目を見つめる。その緊張しつつも真剣な表情は、彼女にも緊張を伝染させる。
「好きだ」
極短い、三文字だけのシンプルな言葉。その言葉は彼女の思考を白く塗りつぶすには十分な威力を持っていた。
「色々と、どう伝えようかあれこれ考えたけどやっぱりこれが一番だね」
そう言って、ハジメは風華を強く抱きしめた。
好きだ、とハジメは同じ言葉を風華の耳元でささやく。
告白の返答は、涙声の抱擁で返された。
やがて、少年と少女は口づけを交わした。
「……で、このステータスの異常さはどういうことだろう?」
「……んー?」
風華が泣いたあと泣き止むのを待ったり、泣いた恥ずかしさでまたふさぎ込んだり、それをなだめたり等々、あれこれあって今現在。
彼らは今後の方針を話し合っていた。
胡坐をかいたハジメは、そこに背を向けて座る風華の頭を撫でながら話す。撫でられている風華の手の中では、ハジメのステータスプレートが弄ばれていた。
ハジメの異常なステータス値は、風華も確認している。彼女のプレートは紛失しているため、ステータスは確認できないがハジメと同じ様に急激な数値の上昇を見せているだろう。
なぜ、彼のステータスが上昇しているのか。なぜ、身に覚えのない技能が発現しているのか。この二つの謎の原因は今までの状況から考えられる限り、一つしかなかった。
例のウサギ肉を食べたから……というより魔物の肉を食べたからだろう。そう考えた二人は、早速狼の肉を食して検証した。
今度は上手く焼くことが出来たが、相変わらず獣臭さや肉の硬さといった不快な要素はあった。しかし、一番覚悟していた全身を襲う激痛だけは来なかった。
それを不思議に思いつつ、二人はステータスプレートを確認する。そこには、予想した通りに上昇したステータスと纏雷という新しい技能が発現していた。試しにハジメが使用してみると、バチバチと微弱な放電が発せられた。
ハジメが今行ったことは魔法と見て間違いないが、彼は詠唱もしていないし、魔法陣も用いていない。魔力を操作できるのは魔物だけだ。このことから、導き出される結論は一つ。
魔物の肉を喰らえば、その能力を手に入れられるということだ。
このことは二人を驚愕させるのに十分だった。なにせ、ここまで楽で身近な強化方法は聞いたこともなかった。むしろ、食べるだけでこんなに強くなれるならばこの世界は超人で溢れ、魔物は駆逐されているはずだろう。
二人が唸って考えること約5分。風華が胃酸強化の文字に気づいたことで疑問は解消された。
「……あ」
「どした風華」
「……魔物の肉、劇毒。食べたら死ぬって……教わった」
「あ」
それは、メルドから座学で教わったことの一つ。
魔物の肉を食べてはいけない、ということだ。なんでも、魔物の持つ魔力は人が摂取すると体内から身体を破壊させるからだとか。
それを彼らはすっかり忘れていた。正直、この極限状態では無理もないことであったが。
とにかく、このステータス上昇方法が伝わっていない理由は単純。食べたあと生きている者が一人もいないからだ。
彼らが生き残っているのは神水で崩壊する身体を無理やり再生させていたからである。最も、それと正気を保っていられるかというのは別の話しだ。もし、二人のどちらかが欠けていたら耐えきれずに植物状態か、精神に異常をきたしていたかもしれない。
そして、先ほど魔物の肉を食べて何もなかったのは、最後に残った胃酸強化によるものだと考えられる。ウサギが持っていたのか、それとも魔物の肉に対抗すべく自身の本能が作り出したかは知らないが、これのおかげで、自分たちは安全に魔物の肉を食べていられるのだろう。今更だが、寄生虫や食中毒といった問題が解消されたことに彼らは安堵した。
「とりあえず食糧問題はどうにかなりそうだけど……また狼とかに勝てるかって言われると自信ないなぁ」
時折、肉をかじりながらハジメは呟く。
そもそも、今自分たちが食べているものは奇襲をかけて手に入れたものだ。一応、魔物を殺せるとはいえ、同じ方法が通用するとは限らない。奇襲だって仕掛けるタイミングが重要なのだ。
なにより、この階層にいるのは狼やウサギだけではない。他の魔物だっているかもしれないし、暫定の主としてハジメの腕を奪った熊が存在している。脱出路を探すにしても、こいつとのエンカウント率が0%とは言い切れない。
「……武器、作る?」
そう風華から提案されるが、それも正直微妙かなと彼は感じている。
彼らの天職は錬成師と支援師。どちらも正面で斬った張ったする天職ではない。二人とも武道の心得なんてないし、せいぜいが美穂の道場で修練中の人達を(両親の仕事の題材用に)観察していたくらいだ。
となると、自然と遠距離武器になるのだが、原始的なスリングショットや弓矢でここの魔物の身体を貫けるかと言われると無理じゃね?と彼は思う。
いや、貫くこと自体はこのステータスであれば可能だと思う。問題はそれらを撃って当てれるかだ。動かない的ならば練習すればやれそうだが、相手は高速で動く魔物である。もし、外したら次の弾や矢を用意している間に死ぬだろう。
そして、遠距離武器と言えば最強格である銃器だがこれも厳しいと彼は思う。まず、銃は基本的に両手で構えて撃つものである。片手で撃つことも可能ではあるが、まず当たらないし、次に狙いを定めるのに時間がかかる。片腕しかないハジメでは撃つことも弾をリロードするのも一苦労だ。風華であればまだましな運用が可能だと考えられるが、ステータスの伸び方がわからない以上、下手なことは出来ない。
なにより、弾の材料である火薬もなければ、銃の構造なんて彼らは知るはずもなかった。
そうなれば、彼らの取れる選択肢は一つ。
「いや、今は武器はいらない」
風華の提案に彼は少し笑ってこう答える。
「だって、
次回更新したらそろそろ地上組の話しもしたいなと思っています。
相変わらず遅い筆ですが、よろしくお願いします。