錬成師と支援師   作:月蛇神社

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何度言ったか忘れる程言ってる気がしますがお久しぶりです。
今回はハジメ側の話しになります。
展開を色々と端折っていますがどうか目をつむっていただきたいです……

ちょっと描写不足を感じたため最後の方を加筆しました。


封印部屋

「改めて見ると壮大な扉だな」

「……おっきい」

 

 オルクス大迷宮を下ること約50層。ハジメと風華は巨大な扉の前に立っていた。

 

 扉の全長は約3メートル、豪華な装飾が施されたそれの左右隣には半分ほど壁に埋まっている単眼の巨人(サイクロプス)像が門番のように鎮座している。これまで下ってきたどの階層にもこのような部屋などは二人は見かけておらず、明らかに異質だとわかるエリアだ。

 

 すでに次の階層への階段は見つけてあるので別にスルーしてもよかったのだが、ここまで異質だと「ここには何かありますよ」と明言しているものである。加えて、姿は変わってもオタク気質は変わらないハジメの勘が何かあると告げていた。これは無視する方が無理な話しだ。

 

 しかし、それと同時に迷宮攻略の過程で得たスキル「気配感知」が扉の奥に対して警鐘を鳴らしていた。

 

 これまでの迷宮攻略で様々な魔物と戦い、その肉を喰らいどんどん強化していった二人だが、それ込みでもヤバい何かがこの奥にいる。封印部屋と言ってもいいだろうか。

 

 そのため、二人はこの扉の攻略を一旦先送りにし、階層のクリアリングをしていた。

 

 そして、それを終えた二人は今ここに戻って来ている。

 

「……気配感知はじゅんちょー……何も変わってない」

「じゃあこの奥がヤバそうってのは変わらないか。気のせいであってほしかったんだけど」

 

 二人は慎重に扉に近づき、観察を行う。そうしてわかったことが2つあった。

 

 1つは鍵穴がどこにも見当たらなかったこと。さらに言えばドアノブなども見当たらず、ダメもとで押してみたが扉はピクリとも動かなかった。

 

 もう1つは、装飾だと思っていたそれは一部が魔法陣だということだった。魔法陣の中央にはハジメの拳くらいの大きさの窪みがあったが、周囲にはめ込めそうなものは何処にも見当たらない。

 

 これらから察するに、この魔法陣は扉を封印しているものなのだろう。しかし、その式はハジメはおろか、彼より魔法を勉強していた風華でさえ見たことのないものだった。風華が言うには、式のほんの一部は勉強した魔法陣でも見たことがあり、そのおかげで気づけたと言う。

 

「となるとやっぱこの石像しかないけど……これはあれかな、お約束的な」

「……襲ってくるやつ、ドロップ」

「だよね。それならあのサイクロプスは倒すのが確定、と。この扉も錬成じゃ開かなそうだし」

「……そも、錬成(それ)で開くなら封印の意味、ない」

 

 そんなやり取りをしながらハジメは地面に手を当て、風華は彼の背に手を当てる。

 

「あれが岩石で出来てればこれで終わるんだけどな。風華、お願い」

「ん……支援」

「錬成!」

 

 風華の支援を受けたハジメは錬成魔法を発動させ、2体のサイクロプス像を直接錬成しようとする。この戦法は過去にゴーレムタイプの魔物と戦ったときに有効だったので、この二人にとってゴーレムタイプの魔物はただの錬成素材でしかない。そのため、今回もそれで済めばよしと思っていたが、流石は推定ボスエネミー、そこまで甘くはなかった。

 

 ハジメの手に返ってくる返事は失敗の手ごたえ。直後、二重の雄たけびがフロア中に響き渡る。

 

 雄たけびの主である2体のサイクロプスは侵入者を迎撃するために、自分たちが埋まっている壁を砕きながらその身を表す……ことが出来なかった。

 

「まあダメならダメで次の作戦にするだけだし」

「お前ら……一歩も……動くな」

 

 サイクロプスに効果が無いと分かると、ハジメは即座に周囲の壁を錬成し強固にし、2体のサイクロプスを壁に埋める。さらには、壁から出ている身体も埋めて、首から上だけが出ている状態にした。

 

 首だけの巨人が必死にもがく姿はどこか滑稽に見える。一先ず、その様子から目とか口からビームとかは撃ってこないようだ。

 

「もういっちょ……支援」

「錬成!……と風爪」

 

 そして、二人は再び地面に支援錬成を行い、サイクロプスの目に向けて数本の槍を突き出す。ハジメの思いつきで風爪を纏わせているため、貫通力抜群のそれは魔物の命を一瞬で奪い去った。

 

 ボスクラスであろう魔物に完封勝利出来たことに二人は一息つく。苦労しながら勝利、というのはゲームだけで十分だ。

 

 二人はサイクロプスを壁の中に埋めた状態で死体から拳大の魔石を取り出した。二人が見てきたものとしては最大サイズと言ってもいいそれは、予想通り扉の窪みに丁度はまる形だ。

 

「てか今更だけど、これ壁の方を錬成して扉スルー出来なかったかな……あ、ダメだやっぱ出来ない」

「……これ、相当上手い術者が組んでる」

「そっちが専門外の僕でも気になってきたよ。っとごめん、さっさと先に進もう」

 

 窪みに魔石をはめ込むと、魔石は一度大きく発光すると扉に彫られた魔法陣に魔力を流し出す。やがて、魔法陣全体に魔力が行き渡ると魔法陣は大きく輝いた。その光に二人は目を開けていられなかった。

 

 光が収まるとそこには、ほのかに発光する周囲の壁。扉自体に変化は見られないが、どうやら扉の開錠に成功したらしい。二人はグッと拳を突き合わせると神水を少し飲んで魔力を回復させてから、扉に手をかけ押し開ける。

 

 部屋の中は真っ暗で光源となるのはハジメたちが開けた扉からの光しかない。暗視スキルがあってもまだ暗く感じるが、無いよりかは遥かにマシだろう。

 

 部屋の間取りはかなり大きく、内装は大理石の石造りで出来ており、部屋を支えるように何本もの柱が2列並んでいる。

 

 そして、どことなく神聖さを感じさせるこの部屋に一目で違和感を感じさせる石の立方体。

 

「……あれかな?」

「……あれだと、思う」

 

 ポツンと鎮座するその立方体の異質さに、扉の前からでも感じられた気配感知に警鐘を鳴らした主があの物体だろうと目星をつけた二人は慎重にそれに歩み寄る。

 

 途中、扉からの光では限界が来たためそろそろ明かりをつけるかと風華が光源を作る魔法を唱える。そのときだった。

 

……ダ……レ?

 

 ひどくか細く、弱々しい声が聞こえた。

 

「「っ!」」

 

 二人は咄嗟に後ろに飛んで立方体からの距離を離す。そして、風華は予定していたよりも多めの魔力を使用して大きめの光源でそれを照らす。

 

 光に照らされた立方体は表面を黒く反射し、つるりとした質感を表す。

 

 そして、その中央には鈍い金色に光る何かが埋まっていた。

 

 光を反射しているそれは髪だった。とても長い金髪が垂れ下がり、何者かを覆っている。

 

……ダか、い……ノ?

 

 再びそれ(・・)は声を出す。

 

 間違いない、あの立方体に埋まっているのは

 

「人……なのか?」

 

 人、それも12、3歳くらいの女の子だ。

 

 ハジメの驚愕の声に少女はゆっくりと両目を開けた。その瞳はやや死んでいるが綺麗な紅で、彼女の髪色も相まって吸血鬼を連想させる。吸血()よりも吸血()と呼ぶ方が相応しいだろうか。

 

 また、顔立ちも随分とやつれてはいるがしっかりと美人であることがうかがえる。

 

 そして、彼女を観察していてハジメは一つ気づいたことがある。

 

 彼の視界に入る色は金、紅、そして金髪の隙間から見える肌色の三色だけである。

 

 つまり、

 

(あれ、この子もしかして服とか何も着てないんじゃ……)

 

 そこまで思った時だった。

 

「ふんっ!!」っという気合いの入った声と共に彼の向う脛が思いっきり蹴飛ばされた。

 

 いくら魔物肉で身体が強化されていても痛いものは痛い。思わずうずくまる彼の顔に何かが被せられる。恐らくは彼が元々着ていた服であり、現在は手持ちの布類とどうにか縫い合わせて外套へと変貌を遂げたそれが、彼の視界を奪っている。

 

 そして、そんなことが出来るのは一人しかいない。

 

「……にぃ、エロい目で見てた」

「いや見てない!見てないから!ちょっと見ちゃいけなさそうだなとは思ったけれどぐほっ!」

 

 ハジメの必死な弁明もむなしく、風華は全体重をもって彼を圧し潰す。

 

「ぐおおぉ……ごめんっ風華ごめんて!」

「……にぃ、あとでお・は・な・し」

 

 あ、これはダメなパターンだ。義妹のささやきからそう悟ったハジメの脳内でチーンと鈴の音が響いた。

 

「………………??????」

 

 そして、その光景を少女は困惑しながら見ていることしか出来なかった。




初めて文字フォントの変更に挑戦してみました。
少しでも雰囲気が出ていれば幸いです。
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