支援者→支援師
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なんでステータスの開示だけでこんなにギスれるのこの子たち……?
ミスあったのでちょこっと編集
「さて、そんじゃあ最後に二人のステータスを見せてくれ」
ハジメのステータスについてのあれこれがひと段落つき、メルドは風華と美穂にステータスの提示を求める。
「はいはーい。んじゃあたしからで」
美穂はそう言うと、メルドにステータスプレートを渡す。
美穂のステータスはこうだ。
山上美穂 16歳 女 レベル1
天職:拳士
筋力:80
体力:60
耐性:40
敏捷:80
魔力:5
魔耐:1
技能:格闘術・腕力強化・脚力強化・聴力強化・縮地・見切り・消音・言語理解
天職は龍太郎と同じ拳士だ。しかし、彼と違い魔法に関するステータスはハジメ未満の低さだった。
「何と言うか……清々しいほどに近接特化だな」
「えっへへ~やることがわかりやすくていーでしょー」
「ああ、確かにわかりやすい。わかりやすいんだが……」
「ま、みなまで言いなさんな。魔法なんて覚えるの面倒だしインファイトに邪魔だし、なんかされる前に殴り飛ばせばいいっしょ」
(うんうん)
美穂のその言葉に、メルドだけでなく聞いていたほとんどの人がえぇ……と引く中で雫だけは密かに共感していた。
彼女も、美穂と同じことを考えていた。切断に必要なのは、得物の切れ味と剣士の技量だと彼女は考えている。説明を受けたときに、武器の切断力を上昇させる魔法に適正があるとも教えられたが、そんなものを使わなければ斬れない剣など、雫は求めていない。
まあ、必要とされれば、使えるものは使うが。
胴を斬れば生物は死ぬ。極論、首を刎ねれればそれでいいのだ。
「そ、そうか……戦闘経験がありそうだが一応、訓練には参加してもらうからそのつもりでな」
(果たして意味があるかどうかだがな……)
はーい、と元気よく返事をする美穂。そんな彼女の様子は一見、格闘技能を持っているだけの女子高生といったところだ。
しかし、メルドと一部の騎士団員は戦場で実際に殺し合った経験と勘から彼女の実態を完全ではないが見抜いていた。
この少女はヤバい。
ステータスの差から、今すぐ模擬戦をやっても負けることはないだろう。しかし、ステータスの値が同じだったらどうだ?齢を重ね、完成された肉体と技量を持てばどうだ?
そして、それが模擬戦ではなく実際の戦場で相対したとき、自分は
勝てるか、ではなく生きているかと思ってしまったことに、メルドは心の内で戦慄する。
これは雫にも感じたことだ。雫の方は美穂よりも上手く隠していたが、美穂に至ってはそれ以前に隠す気がないようにも思える。
(この子たちがいたチキュウという世界はこんな子供が多くいるのか……?)
メルドは一瞬、そこまで考えてからいや、それはないか、と頭を振った。こんな子供がゴロゴロいるならここにいる者の半数以上が雫や美穂のような
余談だが、ハジメは美穂の「魔法なぞ当たらければどうということはない」発言に、
(いやそれ
と、思っていた。
「では、最後は君だ」
「……はい、どうぞ」
最後に風華が自分のステータスプレートを渡した。
小鳥遊風華 16歳 女 レベル1
天職:支援師《 》
筋力:5
体力:10
耐性:5
敏捷:10
魔力:120
魔耐:80
技能:支援《 》・支援補助・魔法耐性・言語理解
しかし、メルドは天職を確認した瞬間、ステータスには目もくれず、技能欄を確認し出した。
「支援師……だと……!?」
思わず口からこぼした言葉に待機していた騎士たち、特にベテランの者に動揺が走る。生徒たちや、ついでに訓練する予定でここにいた新人騎士たちは、その明らかな動揺に疑問を感じた。
「あの……支援師?ってそんなにすごいものなんですか?」
代表として、光輝がメルドに質問をする。
「あ、ああ……支援師は、その名のとおり支援、つまり強化魔法を使える天職だが、この天職が扱う魔法は、
「あれ?それって私の付与術師とどう違うんですか?」
別の質問を投げたのは、天職が付与術師であった吉野真央だ。
「そうだな、ちょっとややこしくなるがいいか?まず、付与術師たちが使う支援魔法は対象者のステータスを強化するものだ。それに対して、支援師は、ステータス面ではなく技能面、つまりは技を強化するものだ」
訓練用の的を頼む。メルドが指示を出すと、程なくして、藁と棒で作られた案山子が五体、縦一列に等間隔で配置された。
「彼の者まで刃を届かせよ……飛刃」
案山子から離れた位置で、メルドは訓練用の木剣を構え、詠唱と共に案山子へ向けて剣を振るう。
それを受けた案山子は、先頭の一体だけがぐらぐらと揺れ、そして倒れた。
「今見せたものは、勇者や剣士といった、剣を扱う天職が持つ剣術技能の魔法だ。今撃ったものは先頭の案山子にだけ当たり、倒れるようにかなり威力を低めに調整した。これに付与術師の支援が入ると、同じ魔力消費であの案山子が砕ける。なんなら、余波で後ろの2、3体に影響も出るだろう」
「では、今のを支援師が強化したら?」
光輝の質問に、メルドは「恐らくだが」と前置きし、答えを出した。
「恐らくだが……あの案山子が全て砕け散る。さっきのと同じ魔力消費で、だ」
「……は?」
「もちろん、これは推測でしかない。支援師という天職は数が少なく、それも歴史上に片手で数えられるくらいだ」
「歴史上!?現在ではなくですか!?」
「ああ。そして、その誰もが数々の偉業を支え、名を残している」
その言葉に生徒たちは絶句し、次々と風華の方を見る。
今の言葉が本当なら、風華を
今の風華は、誰もが欲しがる黄金の果実だ。
「っ……!?」
彼女の置かれた立場を理解してしまい、その身を案じる眼。自分が絶対的強者になろうというギラついた欲望の眼。自分よりも優秀な能力に対する嫉妬の眼。
この場にいる全員の、さまざまな思惑を孕んだ視線を風華は受け、身を震わせる。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ちワルイ、キモチワルイ!!
生理的に受け付けられない、欲の数々。その目線に、表情に出さぬよう努めているが、彼女が怯えているのは一目瞭然だ。
しかし、その目線はすぐに遮られた。
「やめろ。風華が嫌がる」
ハジメが、先ほどとは逆に、風華を護るように立ち、正面からの視線を受け止める。
風華が視界から外れたことによって、一部の生徒は正気に戻った。
「南雲ぉ、そこどけや」
しかし、檜山たちといった、まだ諦める気のない者もいる。
「そのステータスで俺らに勝てるってのか?無理に決まってんだろうが!」
「だろうな。でも、僕もただで負けてやるつもりはない……もう一度だけ言うぞ」
「やめろ」
その瞬間、檜山たち、いや、クラスでのハジメを知る者全員に寒気が走る。
何故だかはわからない。しかし、彼らは一瞬、ここにいる者全員が赤い海に沈んでいる姿をイメージしてしまった。
もし、今風華に危害を加えれば、ハジメは躊躇無く殺すだろう。そう断言できるだけの威圧感を彼は放っている。
「落ち着け!支援師についてまだ重要なことがある!」
メルドの静止の言葉に、ハジメは先ほどまでの敵意はどこに行ったのか、普段と同じような様子へと戻った。緊張が緩み、一部の生徒は安堵のため息をついた。
風華は目の前の兄にとっさに抱き着く。
「はぁ……なんでこうもキレやすいんだお前たちは……」
これが最近の若者ってやつか……?と心の中で呟き、遠い目をするメルド。ちなみに、彼も騎士団長という立場ながら、若者の括りに入るような年齢である。
「支援師について一番重要なこと。それは、支援する対象が一つしか選択できないこと。そして、一度決めたら変更できないことだ」
「一つだけなんですか……!?」
「ああ、そうだ。過去の文献にもそう記録されている」
その言葉に、光輝たちは思わず再び風華の方を向きかけるが、全力で自制心をかける。
「誰を支援するかは、支援師本人が選ぶものだ。しっかりと考えt……」
「……ならもう決まってる」
「「!?!?」」
一生ものの選択を即決する風華。美穂は知ってた、という顔で頷いていた。
「は……早すぎる。考え直すんだ!メルド団長も言ってただろう!?風華、君の技能は貴重なものだ。みんなと話し合って何にするかを決めないと!」
「……私は、にぃ以外についてく気はない」
風華のその宣言は、何にするかを言っているようなものだった。
「ま、まさか……南雲を……錬成師を選ぶのか!?非戦闘系にはその力は必要なのか!?」
「光輝、やめなさい」
決断を止めようとした光輝を、雫が静止する。
「これは彼女が決めたこと。あなたにそれを止める権利はないわ」
「雫……けど」
「けどもでもも無し。風華ちゃん、やっちゃいなさい」
風華にウインクする雫。そのしぐさに、風華は自分の選ぶ道を宣言した。
「いや~南雲先輩やるねぇ~男だねぇ~」
「……ん」
全員のステータス開示が終わったあと、生徒たちは一時間の休憩を挟んでいた。
なにせ、先ほどの時間だけで、教師側も生徒側も濃い時間を過ごしたのだ。休憩無くして次の予定へはとても進めない。
「あれは将来が楽しみだなぁ~」
「……ん」
「……ほんとにどしたの風華?さっきから元気ないよ?」
風華の顔は相変わらず無表情。だが、美穂は風華の微妙な表情で気が沈んでいることに気づいていた。
「……大丈夫」
「いやそれダメなやつ……はいはい、今は聞かないであげる」
「……うん」
風華は言えないでいた。
ハジメが風華をかばったとき、彼女は、誰よりも正確な姿をイメージしていた。
優しい兄の姿ではない。冷酷に、淡々と人を殺す殺人鬼。
例えるならば、魔王といったところだろう。
風華は、兄が遠くへ行ってしまうのではないか、と不安を募らせていた。
雫が脳筋入りしました。