錬成師と支援師   作:月蛇神社

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最近、皆様のコメントを読んでいて、ちょっと、というかかなり支援師を強くしすぎたかなぁと若干後悔気味。

今回かなり巻きます。雑だけどユルシテ。


想像力と義妹の愛情

 ハジメは、ハイリヒ王国お抱えの鍛冶工房でアシスタントを始めた。

 

 普段は生徒たちが訓練場で訓練している時間だが、ハジメはたった一人集団から外れ、この場にいる。

 

 彼が一人でここにいるのは、ハジメがメルドに頼み込んだあることに関連していた。

 

 それは、自分に鍛冶を教えてくれる人をつけてほしいということだ。

 

 彼は自分に必要なことは、錬成を使いこなすことだと考えていた。メルドも同じことを考えていたのか、ハジメの考察を裏付けるような説明をしてくれた。なんでも、魔法学院に通う生徒が、自分の身に合わない上級魔法を無理やり唱えようとして失敗し、暴走するケースが稀にあるらしい。

 

 とにかく、ハジメの頼み事は、その日の夜に返事が返ってきた。

 

 流石に時間がかかるだろうと考えていたハジメは、その返答の早さに驚いた。さらに、その相手がかなりの大物であった。

 

 それが、今ハジメと共に武器を作っている、ハイリヒ王国直属筆頭錬成師ウォルペン=スタークだ。

 

 ウォルペンがハジメを受け入れた理由は、ハジメが異世界から召喚された錬成師というのが主な理由だ。

 

 異世界人唯一の錬成師、さらに非戦闘系の天職だというくせに戦場に出ようとし、訓練だけであそこまでの騒ぎを起こす。これは興味が湧いてくる。

 

 また、王国お抱えの鍛冶師が年々老化により減少しており、そのため若手の後継者が一人でも欲しい、といった思惑もあった。

 

 

 

 ハジメが工房に到着し早速、彼はトータスでの鍛冶をハジメに教えた。

 

 

 

 トータスでの鍛冶は、ハジメが思っていた以上に地球で行うものと然程変わらなかった。

 

 玉鋼を熱し、鎚を振り下ろす。違うところは、工程の合間に錬成が使われることだ。作業によっては、錬成を使い続けるといった工程もある。

 

 また、錬成する際もただ、打った鋼に錬成をしたらいい、という訳ではなかった。実際やってみると魔力のコントロールに結構な集中力が要求される。雑に扱えば雑なものが出来上がるし、それは今まで打ってきた時間が水の泡になるようなものだ。

 

 鉄を打つときにも当然だが技術を要求される。錬成をかけるときの素体が悪ければ、それなりのものしか作れない。

 

 では、玉鋼といった素材に直接錬成を行い、加工することは可能かと言われると可能だった。しかし、それは日常で不自由無く使用出来るレベルが限界であり、戦場で振るう武器には向かない。また、魔力を多量に消費するのでコスパが悪いといった面もあった。

 

 ここへ来て二、三日経ったある日、それをやれないかと聞いて、やってみろと小さな鉄の塊を渡された。それを、小さな鉄の塊をナイフに直接錬成するのに半日かかり、その結果、粗悪な物が出来上がったのは彼の記憶に新しい。

 

「ぜぇ、はぁ、はぁ、はぁ……」

「ま、こんだけ出来りゃ上出来だ。初心者ならもう一段悪いやつが出来るもんだが、お前さんの場合は想像力の強さがそこを補ったってとこか」

 

 深夜、工房の片隅で肩で息をするハジメに、ウォルペンは言う。

 

「これでわかったろ。錬成技能は結局のところ鍛冶を便利にするもの(・・・・・・・・・・)だってことだ。鍛冶が錬成を手伝うんじゃあない、錬成が鍛冶を手伝うもんだ」

「……はい」

「お前さん、その錬成を戦闘に使うってんだろ?難しい道だってのはわかってんだろうな」

「それでも、僕がやらなきゃいけないんです」

 

 ハジメは、顔を上げ、ウォルペンの目を見て言う。

 

「その嬢ちゃんか」

「……はい」

 

 その日、たまたま来ていた風華を見て言う。彼女の隣には、護衛としてついてきた美穂の姿がある。風華は、夜遅くまで起きていられず、テーブルに伏して寝落ちており、そんな彼女に釣られて美穂も寝ていた。

 

 こうして見ていると姉妹に見えるほほえましい光景。それを守るためにもハジメには力が必要だ。

 

「風華のために必要なんです。改めて、僕に錬成を教えてください」

「……明日も早いぞ、今日は泊まってけ。そこの嬢ちゃんたちも忘れんなよ」

「ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメは鍛冶と錬成に集中するなか、風華も風華で支援師の訓練を行っていた。

 

 といっても、風華の天職である支援師の支援は、ハジメがいなければ意味がない。そのため、風華に求められるのは、魔力の出力の調整だった。

 

 実のところ、訓練場での一件はハジメは自分のせいだと思い込んでいるが、風華の方にも原因があった。それは、支援魔法を使用する際に魔力を入れすぎたことだ。

 

 支援魔法は記録が少なく、さらに風華自身に魔力を使ったという経験はゼロだ。当然、魔力の加減なんて出来る訳がない。しかし、それによって事故が起きたのは事実だ。

 

 だからこそ、魔力の出力制御が必要となる。

 

「……ふぅ」

 

 目の前にある、大きさ15cm四方の鉱石から手を離す。

 

 風華の目の前にある鉱石は、魔色石という。魔力を流している間、表面の色が変色する特殊な鉱石だ。変化する色は鉱石によって違い、魔力を通すまではわからない。

 

 今、鉱石の色は鈍色。魔力が通っていない、素の鉱石だ。この鉱石に魔力を通すと青く光り、通す強さを増やすことで青から赤へ徐々に変化する。魔力出力制御の訓練にはもってこいの鉱石だ。

 

 風華の課題は、この色を一色のまま維持(・・)すること。

 

 多ければ赤く、少なければ青く。鉱石の色はほんの少し加減を間違えればすぐに変化を表す。

 

「……これ、結構大変」

 

 額に浮き出た汗をぬぐう。

 

 風華は、これを毎日繰り返している。これを行うことで、魔力の正確な出力の感覚をつかむのだ。

 

 今の風華は、青色ならば維持することが可能だが、中間の紫色やその先の赤色は、鉱石に込める魔力が多くなり、制御が難しい。今の兄の魔力量なら最大でも紫色くらいの魔力を支援に要求されるだろう。

 

「……そういえば」

 

 兄の事を考えて、ふと思い出す。それは、休憩中のハジメとウォルペンの会話の中で、ウォルペンが言っていた言葉だ。

 

「いいか、錬成をするのに最も大切なのは、想像力だ。自分がどういう形にしたいか、金属にどういう形になってほしいか。それを強く想像しろ、そうすりゃあとは魔力が自然と動いて

くれらぁ」

 

 大切なのは想像力。これは魔法関連の訓練に参加したときにも言われたことだ。

 

 ふむ、と魔色石を見つめて考える。彼女は今まで、流す魔力の強さに集中していたが、実戦で魔力を流す相手はこの石ではない。南雲ハジメという人間だ。

 

 魔色石に手を当て目をつむる。魔力が鉱石へ注がれる。

 

 ならば、想像してみよう。石を兄だと。流すのは魔力ではなく、己の気持ちだと。

 

(……にぃ)

 

 笑う兄、寝てる兄、守ってくれる兄の背中、自身を抱きしめ、頭を撫でてくれるハジメ(・・・)

 

(……ああ)

 

 ああ、その全てが愛おしい。その愛情全てを独占したい。その身体に守られたい。その腕に潰されたい。

 

(……やっぱり、好き)

 

 風華が目を開けた先には、妖しく輝く紫色。

 

 それに満足するように、彼女は薄く微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハジメたちがトータスへ召喚されて約二週間が経った。

 

 メルドに呼び出されたハジメは、風華と共にあの訓練場に立っていた。

 

「それで、どうしたんですかメルド団長。急に、今日は工房まで行かなくていいって」

 

 普段とは違う指示にハジメは首をかしげる。

 

「それなんだがな。実は、明日からの訓練をオルクス大迷宮への遠征で行おうと予定している。今まで戦ってもらった王都外の魔物とは全く比べ物にならない強さの魔物の巣窟だ。だからこそ、お前さんたちの力が必要だが、制御できなくて危機に陥るわけにはいかない」

「つまり、これは迷宮へ行くための試験ですか」

 

 そういうことだとメルドは頷く。試験、という単語に二人の身体は思わず強張る。

 

 ちなみに、光輝たちは王都外の魔物を相手に実戦経験を積んでいる。ハジメは、ウォルペンからの鉱石採取の依頼という形でたまに参加していたため、実際に戦闘したことは片手で数えるほどしかなく、そのときは補助役に徹し、一度も支援魔法も受けていない。

 

 というのも、これまた先日の事件が影響している。あのときは訓練場だからまだよかったが、野外であの事件を再現されると、間違いなく地形が大幅に変わる。それは、生物の生息域が変化したり、物の流通に影響を与える可能性が非常に大きい。そのため、メルドは中々支援魔法の許可を出せないでいた。

 

 しかし、オルクス大迷宮という危険な場所で、出し惜しみはしていられない。なにより、二人の訓練の様子の報告から今なら大丈夫だろうというメルドの考えもあった。

 

 隣の風華と見つめあう。風華はハジメの目を見て頷いた。

 

「その試験、受けます」

「よし、わかった。では早速だが内容を説明する」

 

 メルドはそういうと、訓練場を指さす。その先には地面につけられた跡があり、それは大きな円を一つと、小さな円を三つ描いていた。

 

「あの円の大きさの穴を開け、それを戻し、今度は隆起させて最後に戻す。この四回の工程全てを支援魔法を受けて行ってくれ」

 

 ごくり、と唾をのみ込む。

 

 これはハジメと風華の二人の息が合わなければ達成できない試験だ。どちらかがずれれば、魔力はまた狂い出すだろう。

 

「……ん」

 

 緊張するハジメの手を風華は握る。その手から流れてくる微量の魔力は、彼に大丈夫だと伝えるようだった。

 

「……そうだな、ここでやらなくていつやるって言うんだ」

 

 早速、二人は大きい穴から取り掛かる。

 

 ハジメが地面に手をつき、その背に風華が手を当てる。

 

「……彼の者を支え、助け、英雄へと至らせよ……支援」

 

 風華の詠唱と共に、ハジメの身体へ魔力がめぐる。

 

 以前は、魔力が襲いかかる感覚だったが、今回は違う。身体中を風華の魔力が流れ、純粋に力が溢れてくる。

 

 そして、どんな加減で魔力を流せばいいかを理解する。

 

(今なら、いける!)

 

「錬成!」

 

 地面についた手から魔力を流す、イメージするのは指標通りの大穴。

 

 流れた魔力は地面を輝かせ、徐々に素早く想像通りの形を形成していく。

 

 光が晴れたとき、そこには規定通りの大きさの穴が開いていた。

 

「よしっ!」

「……ん!」

 

 上手くいったことに兄弟はお互いの手を掲げ、打ち合わせる。

 

 パチンッと小気味いい音が訓練場に響く。その様子を見たメルドは、これなら残りも大丈夫だろうと直感した。

 

 彼の予想通り、ハジメと風華は、次々と課題を突破し、やがて隆起させた地面をもとの姿へと戻す。

 

 そこまで!とメルドの声が響いた。

 

 

 

 

 

 その日の夜、生徒たち全員にオルクス大迷宮への遠征が通達された。




改めて言うと、義妹は距離感バグらせてます。
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