短編小説集   作:nite

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暫くはリアルの知人から適当に貰った単語で書きます


三単語お題小説
幼女 憶測 カリフラワー


多くの場合好きな食べ物と嫌いな食べ物というのは区別され、誰であれ好き嫌いという言葉で表される食べ物に対する気持ちがある。

特に子供の場合は苦いだとか酸っぱいだとかで嫌いな食べ物が生まれる人も多い。子供の時に経験したものというのは大人になっても続くことが多いので、子供の時にきちんとした経験と練習をしておかなければ大人になって食べられるものが少ないなどという自体になることも屡々だ。

勿論だからといって嫌いなものを無理やり食べさせるわけにもいかない。ある程度は良いだろうが、それが命令、強制という形になればその食べ物に対する嫌悪感は増す一方なのである。言わずもがな好きな物だけを食べさせるというわけにもいかないのだが。

さて、子供たちはそんな苦手な食べ物をどうやって見分けているのか。特にまだ舌足らずな子供はどれが何なのかすらもあまり理解出来ていないだろうに、好き嫌いはきちんとする。

匂いだろうか、見た目だろうか…匂いであるのならまだ世界の空気に慣れておらず敏感となっている幼い子供たちの鼻に反応しているのだろう。辛いものは匂いだけで辛いと分かる感覚は大人である私達でも分かることだ。

見た目だとすれば、そこにあるのは視覚的情報に対する偏見だけだ。匂いとて偏見ではあるのだが、視覚ではそれが顕著に表れる。歪だとか色が変だとかなんとなく美味しくなさそうだとかそういった一人称による偏見が視覚では大きく左右するのである。

前置きが長くなったが、要は子供にとって視覚情報とそれまでの記憶というのは十分な判断材料となりうるのである。

そして記憶にないもの…未だかつて知らぬもの…未知を恐れるのだ。

 

「これは…なんだろ」

 

幼い少女が台所にて見たことがない食材を見つけた。

色は…本当に野菜なのかと疑わしいくらいの白。匂い…無臭。形は…幼女の記憶によればこれはブロッコリーと呼ばれるものだったはずだ。

しかしここまで白かったっけ?幼いなりの思考力で経験とは違う未知の存在を認知する。

人間は未知であるものには恐怖を抱くというのは先程述べたとおりなのだが、同時に好奇心が生まれることも言わざるを得ない。人間とはそうやって未知を恐れながらも新しいことをしようとすることで今まで発展してきたのである。

その好奇心は大人だけのものではない。むしろ理性というリミッターが薄い子供たちの方がその存在は大きいものとなる。

 

「おいしいのかな」

 

幼女が白いブロッコリーをジッと見つめる。周囲に親はいない。買い物から帰ってくるやトイレに行ったらしい。幼い子供が誤飲しないように高い場所に置いておくようにと親は色んな所で言われるものだが、今回に関して言えば注意力が散漫していたと思うしかないだろう。

幼女の手がゆっくりと伸びて…止まる。

そもそも…と幼女は考える。白い野菜とは如何に。

緑は見たことがある。黄色や赤も見たことがある。でも白はない。しかも真っ白。

幼女からすればその白さで思いつくのは雪しかなかった。経験を思い出すように雪を思い出す。

 

「ゆきは、おいしくなかった!から…これもおいしくない!」

 

そして独断と偏見により全く正しいとは思えない連想ゲームによって憶測が立てられた。

幼女が台所を去った。そしてトイレから出てきた親と入れ違う。親は幼女が触れる位置に色々とものがあったことに焦ったが、何もなくなっていないことを確認してから料理を始めた。この時幼女はまさか美味しくないと決めつけた食べ物が出てくるとは思っていない…

 


 

「おいしく…ない…」

 

まだ口をつけてもいないのに白いブロッコリーを見て呟く幼女。一度決めた憶測を変えることなど難しく、第一印象が全てを決めると面接でよく言われることがここでもまた意味を持つのが分かる。

親が幼女に対して軽く薦める。

 

「美味しいわよ。一口食べてみなさい」

「んーん、おいしくない」

 

白いから雪、雪は美味しくない故に白いものは美味しくないという決定は幼女の中でも揺るぎないものになりつつあるようだ。

また幼女は経験から親が薦めてきた時は食べない方がいいと分かっている。前回にそれを思ったのが夕飯にて緑色のゴツゴツした野菜、ゴーヤが出てきたときだ。美味しいと言われ嬉々として口に運んだが最後、もう猛烈な苦味によりノックアウトされたのは記憶にも新しい。

幼女にとって料理がチャンプルーだろうがチャンピオンだろうが知ったことではない。美味しくないものがそこにあるというだけで食欲とは失せるものなのである。

いつまでも手を出さない幼女に見かねて親が皿に白いブロッコリーを乗せた。幼女はそれを忌々しそうに見ている。そこまで嫌わずとも…と親は思うが、これもまた子供の思考なので正しいことなど分からぬのだ。

 

「うっ…くっ…」

 

なんとか白いブロッコリーを口の前まで運ぶことに成功。しかしあと少しが動かない。口はもう開いている。だが雪の記憶が蘇る。

そして…食べた。

 

「う、うーん…?うーん…」

 

微妙な顔をする幼女。表情がコロコロ変わるのは幼い子供の特徴の一つと言えるだろう。

幼女の思っていた不味さはない。冷たくもない。しかしブロッコリーとは違う。ブロッコリーよりも固くて味もない。

 

「どう?食べられるでしょ?」

「う、うーん…」

「カリフラワーって言うのよ」

 

かりふらわー。知らない野菜の名前だ。なんの特徴もない特徴がある野菜。

終始幼女は微妙な顔をしていたが、カリフラワーを食べられようにはなっていた。

 

結局のところ食わず嫌いなのである。

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