短編小説集   作:nite

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ランドマーク ハンドパワー ウィンガーディアムレヴィオーサ

「「「うわぁ…!」」」

 

長めの森を抜けた先に広がる大きな街の光景に私たちは思わず声を漏らす。

夢にまで見た光景が目の前にある。その事実に私たちは興奮を抑えることができなくなっていた。このハリーポッターエリアができてからしばらく時間が経っているものの、中々来る機会がなく今になってやっとここに来ることができたのだ。いつメンの三人で来ることができたのも良ポイント。

 

「映画で見たやつだ!」

「どこから行く?」

「魔法試したくない?」

 

三者三様で話が進む。女子三人、ここまでのクオリティのものを前にすると話がまとまらなくなるのも無理はない。とはいえどうしようもないのでなんとか落ち着く。まとめ役ということで私は話を進める。

 

「まず何したい?」

「魔法!魔法!」

「バタービール!」

 

うーん、まとまりがない。

いつも仲良く一緒にお出かけもするような仲ではあるものの、性格というか考え方は全然似てない三人だ。初めての場所に来て意見が同じになる方が不思議だ。

 

「バタービールは…並んでるから先に杖を買いに行こうか」

「やったー!」

「えー…」

 

時間は有限なのだ。並んで時間を消費するなんてことはあまりしたくない。まあこのUSJで並ばずに何かを成し遂げるなんてことは正直無理な話ではあるのだけど。

マップを見ながら杖の店を探す。置物としての杖と遊ぶ用の杖の二種類があって、遊ぶ用の杖はこのハリーポッターエリアの中で魔法を使って遊ぶことができるようになるというオプション付き。尚置物の杖はしっかりと作られているので遊ぶ用よりも重く作られている。

 

「あれじゃない!?」

「こっちも並んでるねぇ」

 

二人が声を上げる。確かにそこには多くの人が並んでいた。でもバタービールは持ったまま長らく移動することはできないわけだし先に杖に並ぶのは正解だと個人的に思っている。未だにバタービールに未練がある方を宥めつつ杖の店に並んだ。

並んでいる間に色々と話すことができるのは三人で来た人の特権だと思う。更にここからはあの有名なホグワーツを見ることもできる。ホグワーツは入口付近でもなければこのエリアのどこからでも見えるので非常に目立つ。何かあったらあれをランドマークとして集まれば迷わなそうだ。

そんなこんなその景色を楽しみつつ待つこと数十分。やっと店の中に入ることができた。

 

「すごーい…」

 

店の中に入るとそこには天井近くまで積み上げられた杖たちが。

更に杖に選ばれる体験ができるというのでじゃんけんに勝った私が試してみると、杖によって箱が崩れたり物が壊れたり。本当に杖に選ばれているという感覚を持つことができた。仕組みがどうなってるのかは分からないけど凄い。

 

「ハリーの杖だって」

「私マルフォイの杖にするー」

「趣味わるーい」

 

その先の店で杖を買う。ここで先ほど言った置物用と遊ぶ用を選ぶことができる。置物の方はすごい存在感があって買いたくなったけど、遊ぶ用のやつとか今後の楽しむためのお金に回すために泣く泣く断念した。

 

「てってれー!」

「おー、それっぽい」

 

エリア内にある別のお店でホグワーツの制服を購入して更に杖を装備すれば見た目はまんま魔法使い。脱マグルって感じ。

特に一人はメガネをかけているので非常にハリーっぽい見た目。まあ制服はスリザリンで杖はマルフォイのものだけど。流石にメガネとマルフォイは相性悪いなぁ…

 

「次はバタービール!」

「はいはい」

 

ご希望通り次はバタービール。バタービールは専用の屋台みたいなのがあってそこで販売されている。大きなタルみたいな形の荷台は非常に目を惹く。美味しかったとかなんだとかツイッターで見たけど飲むのは私も初めてだ。

 

「これが…バタービール…」

「ごくり…」

「見た目はビールそっくりだ…」

 

私たちは大学生だけどまだ十九歳なのでビールを飲んだことはない。実は三人の内一人は二十歳に到達しているが、機会がなくビールの経験はないらしい。

日常的に見るような飲み物ではないという時点で子供心ながらわくわくしてしまう。ハリーポッターの作中の登場人物は半数以上が生徒なのでやはり子供的にわくわくしてしまう飲み物が重視されるのだろうか。

私たちは同時にバタービールに口を付けた。

 

「んっ…うまーい!」

「意外といける」

「美味しくないはずないでしょ」

 

なんだか不思議な味ではあるけど非常に美味しい。少なくとも私の好みの味ではある。もしかしたら人によってはあまり好きじゃないという人もいそうだという感想を抱く。まあ私たちの中でバタービールを嫌いな人はいなかったので誰も残すなんてことはなかったけど。

 

「あ、魔法…」

「おー…」

 

バタービールを飲んでいたら近くで大きな音が鳴った。エリアの入口近くにある汽車が汽笛を上げたのだ。確か調べた情報によるとあれは大成功したときの合図だとかなんだとかだったはず。

汽車のやつは箱を開ける魔法の追加エフェクトだからか、そこには比較的多くの人が並んでいた。しかしそちらに人が流れているのかその近くの門の魔法にはほとんど人がいなかった。そのチャンスを無駄にしないように私たちはすぐに並んだ。

 

「アロホモーラ!」

 

失敗。

 

「アロホモーラ!」

 

失敗。

 

「アロホモーラアアア!」

 

ちょっとだけ開く。

 

「なんでよぉ…」

「適正ないんじゃない?」

 

マルフォイの恰好してるのに。

ここは開錠の魔法を使って門の鍵を開ける場所だ。成功すると中々に大がかりな鍵も開くらしいのだけど、見た目だけマルフォイな彼女は少ししか開けることができなかった。

私も挑戦してみたら…普通。少なくとも偽マルフォイよりは上手くいったと思う。更にもう一人は私よりも上手くいって大成功。するとその後に…

 

「あ、いいこと思いついた」

「変なことじゃないでしょうね」

 

杖を眺めながらニヤニヤしてたので不気味だ。選んだ制服はハッフルパフというこういってはなんだがよく分からない寮のものだし、ちょっとだけ私たちとは感性がずれている子なのだ。何をしてくるのか分からない。

 

「あ、あそこにもあるよ!」

 

マジックポイントにはスタッフが立っていることも多く、意外と分かりやすい。

そこは見た感じ道具屋。確かクィディッチの道具を売っているという店だ。クィディッチというのはハリーも参加する魔法世界では人気だというスポーツなんだとか。ここでは皆大好きなあの魔法が使えるらしい。

まずは今のところ魔法適正ゼロの偽マルフォイの挑戦。

 

「ウィンガーディアムレヴィオーサ!」

 

失敗。

 

「ウィンガーディアムレヴィオーサ!」

 

失敗。

 

「ウィンガーディアムレヴィオーサアアアア!」

 

少しだけ浮いた。

 

「なんであんたの魔法は叫ばないと発動しないわけ?」

「知らないわよぉ…」

 

この偽マルフォイ。とことん魔法に対しての適正はないみたいだ。メガネさえなければそれこそスリザリンの優等生感があるというのに、どうしてこうも落第者みたいな成績しか出せないのだろうか。

次は私。うーん、偽マルフォイよりも断然上手くいっているような気がするけど、比較対象があれなので大成功なのかはよくわからない。なんだかパッとしないモブ生徒みたいな成績である。

そして次は…あれ、杖持ってない。

 

「はあああぁぁぁ!」

 

腕を指示された動きをさせつつも呪文を唱えていない。しかし魔法は発動して私と同じくらいの出来だ。

 

「ハンドパワーです」

「裾に杖あるの見えてるよ」

「しまった!」

 

どうやら彼女、裾に杖をいれた状態で魔法を使ったらしい。仕組み的に呪文を言わなくてもあまり問題はないような気はしていたけど、流石になんも言わないのは根本的に間違っていると思う。まあ楽しいならいいんだけどさ。

そしてそんな偽マリックにすら出来で負ける偽マルフォイ。もう救いようがないな…

魔法で楽しんだあとは長く並んでアトラクションを楽しんだり、食事をしたり…他のポイントで試しても偽マルフォイは何度か失敗した後のちょっとの成功しか出せませんでした。

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