短編小説集   作:nite

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冒険手記

密林に潜りはや一年。未だに私は森の中を彷徨い歩いていた。

私の職業は言わずと知れたトレジャーハンター、スマホなどの現代の技術を使うこともあるが多くはその場の物や手持ちの様々なものを使って生活。現代職ではないが個人的にとてもやりがいがあると思っている。

私のような人物がいるおかげで新種の生物やまだ見ぬ場所が発見されるのは事実なのだから私はこの仕事に誇りを持っている。グーグルマップだけでは見る事ができぬ世界があるのだ。

なのだが…私はこの森の奥に誰も知らぬ絶景があると確信し入ったのだが、あるのかもわからないそこを見つける事ができないまま一年が経っていた。

私がこの仕事を志したのは大学生の頃。当時の私は何もしたいことを見つける事ができず路頭に迷いそうになっていた時のことだった。

ニュースで流れたのだ、新しい生物がまだ誰も知らない場所で発見されたという報道が。私はとても衝撃を受けた。

私はその人に憧れた。きっとその場所を見つけるまでには様々な壁があったのだろう。きっと仲間にも止められたこともあっただろう。しかしそれでもその人は見つけたのだ。

その人は自分の事を研究者兼トレジャーハンターだと言った。私はその時、したいことが定まったのだと確信した。

私はその時格安のアパートの一室を借りて一人暮らしをしていたのだが、すぐさまその部屋を解約し親にも何も言わずに旅に出た。勿論大学も中退という形になったが当時の私は一切気にしていなかった。

当然日本で多くの知識と経験を積もうと考えた。何も知らない私が即日トレジャーハンターだなんて二日もせずに死ぬのは目に見えていた。

トレジャーハントやサバイバルの知識を得て、実際に国内で簡易サバイバルなんていうのも体験した。昔はサバイバル生活をしていたという男性にも話を聞くことができた。戦時中はサバイバル出なかった時の方が少なかったと言うから私の知識もまだまだ少ないのだと愕然としたのを覚えている。

その後数か月。準備は万全、私はまだ見ぬ場所を探して国を飛び出した。

所持金は少なかったが、渡航費用さえ残しておけば後はヒッチハイクでもして移動すればいいと考えてその殆どをサバイバル用品へと変えて、私はまだ開発の進んでいない森の中へと潜っていった。

川を見つけたら体を洗い、水を汲む。虫や小動物は捕まえて、食べられる部分を食べて鳥などがいれば幸運だと思いながら肉を食べた。その国で密猟扱いにならないように細心の注意を払いながら生活した。

大変ではあったがやりがいをとても感じていた。いや今でも感じている。人によってはすぐに音を上げてしまうだろうこの生活も私には不思議と言っていいほどあっていた。

実際に何度か絶景にたどり着いたことがある。まだ誰も到達した跡が見られない場所、荘厳で大きな滝、透き通り自然そのままの綺麗な湖…どれも人の手が一切加わっていない原生風景であったのは言うまでもないが、私はそこで手持ちの中で唯一しっかりとした機械であるカメラで写真を撮り地図に印をつけてその場と後にした。

職業とは言った物の私はこれらを公表するつもりはない。いつかは調査団が来て発見をするだろうし、私はこの原風景を壊すのが…人の手が加わるのが嫌だったのである。いや、今思えば私の手で壊したという事実が嫌だっただけなのかもしれない。

そして今、私は相も変わらず未開の地、誰も知らない絶景を求めてジャングルに入ったというのに一年が経った今でも見つける事ができないでいる。今までの旅はどれも十か月以内には目的の場所(探す旅なのではっきりと定まっているわけではないのだが)に到着することができていた。

必ずここにあると信じているものの、なにぶんここも相当広い。人の足で見つけるのは困難になることは予想できていた。ここで折れてしまってはトレジャーハンターになる素質はなかったことだろう。

今日は北に進むことにしよう。

一週間ほど前から東に進んでいたのだが、崖にぶつかってしまったのだ。崖を登る装備もあるので登ることも可能ではあるのだが、ここは一度気分を変える目的で北へ進路を変更する。近場の大き目の木にテープを括りつける。

私は一度訪れた分かりやすい場所には印をつけることにしている。方向感覚が無くなりやすい森の中で迷わないようにするための技だ。テープを巻いて固定しておくだけという簡素なものではあるが、結構分かりやすく尚且つ比較的長持ちなのである。流石に一年も前につけたテープなどは森の中に消えてしまっているだろが。

ひたすら崖沿いを北に進む。その道中で洞窟を見つけたので今日はここで一泊するとしよう。サバイバル生活に慣れたので三日ほどならば全く寝ずとも心身に影響などないのだが、寝る事ができる時に寝るのもサバイバルの上で大切だ。

特にこういったジャングルの中では森の中では野生の動物に襲われることもある。起きることもなく死んでいたなんて冗談でも笑うことができない。寝る時は極力狭く動物に見られにくい場所にしている。火を焚いている間は大丈夫なのだが、消えた後は襲われる恐怖に耐えなければいけないというのも精神的には休めない睡眠である。

洞窟の近くの散策に出かける。そこで川を見つけた。ジャングルの中ではそれなりに入手方法がある水だが、川として出て来てくれるとこちらもありがたい。だがここの川は上流が濁っているのかあまり綺麗ではない。一応浄化は出来るので汲み取る。今日は洞窟で寝るのだし一晩あれば飲み水くらいならば浄水できるだろう。

洞窟に帰る途中でカエルを見つけたので慣れた手つきで捕まえる。ジャングルでの貴重な食料だ。何も見つけることができなかった場合は植物を食べることになるのだが、それだけでは栄養バランスが崩れてしまうのでこうやって捕まえることができたのはありがたい。

洞窟の入口にテープと浄水装置を取り付けて洞窟の中に入る。

洞窟で一晩。

なんとなく寝る前に考え事をしてみる。

私がこんなところで冒険を、トレジャーハントをしているなんて誰が予想しているだろうか。学生時代の旧友や親は何を思っているのだろうか。多分だが行方不明で死んだことにでもなっているのではなかろうか。日本では数年見つけることができなかった場合は死亡扱いになると聞いたことがあるが…私は元々法学の分野は不得意としていたのでその方面の知識は全くないのだけど。

親孝行もできていなかったな。急に何も言わずに消えた息子の事をどう思っているのだろうか。

だがここで諦めるわけにはいかない。これは私の天職なのだ、やめるという選択肢はない。

ただ…いつかは帰ろうとは思う。いつになるかは分からないけど…

段々と眠くなってきて私の意識は闇に沈んだ。

翌朝、今日も北へ。

昨晩日本のことを考えたせいか若干ネガティブになってしまっているのか、本当はここにはないかもしれないと思ってしまう。しかし諦めない、ここで折れてしまっては…

すると正面に開けた場所を見つけた。きっと林の中にある空間だ。森の中などにはたまに風や動物、または地質によって一部植物が生えない、生えにくい場所があるのだ。

そのためこのように開けた場所が生まれる。私は目印を付けるために進み…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこで、絶景を見た

 

 

 

 

 

 

視界いっぱいに広がる

 

そこに現れるは巨大な湖

 

森の中に突如現れた絶景

 

透き通る清流

 

私はそこで

 

畔では動物たちが水を飲む

 

息をすることすら忘れた

 

 

 


 

そしてまた、私のカメラには消えない記憶が増えた。

カメラには今までの記憶が沢山詰まっている。私の軌跡が、地球の原風景が残っている。

帰ろう、たまには。

今までの記憶と、経験を伝えるために帰ろう。

きっと怒られるだろう。

でも、それでも…

 

 

私は記憶を伝えたい

 

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