強い光が体を通り過ぎていく。私の体を焼くのは天高く、どこまでも遠い所にいる太陽の光。
この時期になるといつも私は体を問答無用で焼かれる。私に拒否権はない。いや、権利という点で言うならばどこの誰にも拒否権というのは存在する。ただ行使することが難しいだけだ。
時間が経つに連れて私の体はどんどん熱を帯びていく。如何に私が熱を逃しやすい状態でいようとも熱から逃れることはできない。せめて日陰に行くことが出来ればその限りでもないのだけど。
私がここに来たのは数年前。まあ来たという表現は厳密に言うと正しくないのだけど。どちらかといえば連れてこられたの方が正しい。
最初はなんの拷問かとも思ったが、慣れてみると案外ここの方がか過ごしやすい。元の場所よりも体が熱を帯びやすいのが難点だろうか。
今の私は数年前の私とはひと味もふた味も違う。まず強い衝撃に強くなったのが挙げられるだろうか。体の中まで満たされた今では私にとって衝撃はあまり脅威ではない。まあバットで殴られる……なんてことをされたら流石の私も体を震わせることしかできないのだけど。
でもやはり熱には弱い。熱という現象だけを見るならば元よりも劣っていると言えるだろう。
すぐそこに日陰があることだしすぐに移動したいところではあるけど私だけの力では移動もままならない。数年前よりも体が重くなってしまったのが原因だ。元々自分の意志で動いていた訳ではないけど、今よりも移動しやすかったのは確かだろう。
それにしても彼はどこに行ったのだろう。コーヒーを取りに行ったまま帰ってこない。まあだからこそ私は今現在こうやって少し物色やら考え事やらをしているわけだけど。
彼との付き合いは今年で五年となる。体内時計を確認してもそこに狂いはない。
彼が最初に私に気がついた時は彼も私も吃驚したものだ。よくまああの出会いがあっても関係が続いていると思う。なんせ私の体にはちょっと特殊な事情もあるわけだし。
ただ彼はそんな私を捨てることなく二年間も付き添ってくれて、よく話し相手にもなってくれた。電話のようなことが出来ないから私と話すときはすぐ近くにいてくれないといけないのだけど、それでも彼は私と友達でいてくれ続けた。
そして三年前、私は彼によってここに移動した。別にこればかりは仕方ないことだけど、私と彼の会話はスムーズになりはしたがその分場所を選ぶようになってしまった。
っと、面白いものを発見。これは……彼の昔の彼女の写真。奥の方に隠されていたから中々見つけることが出来なかったが、見つけてしまえばこちらのものだ。これをネタに色々とイジってやろう。
彼はあまり物を置かない性格なので置いているものは少ない。見た目上は。
だが一度蓋を開けて見るとまあなんとも適当に置かれた細々した物の数々。私も少し整理をしたけどそれでも未だに散らかったままだ。あれほど物を保管するときは場所を決めておいてって言ったのに彼に改善の兆候はない。
……コーヒーの準備ってそんなに時間かかるものなのかな。やってみたことがないというか出来ないのだけど、コーヒーって今じゃそんなに時間のかかるものではないと思っていたのだけど。それともあれかな、本格派?と言っていいかは分からないが珈琲豆も砕いてお湯を自分の加減でゆっくりいれる方式をとっているのだろうか。面倒くさがりの彼に失礼かもしれないけどあまり想像はできない。コーヒーマシンがあるのかどうかは不明だけど。
もしかしたら外に買いに行っているのかもしれない。なんならそちらの方が可能性は高そうだ。なんせ自動販売機はそれなりに近い所にあると前に彼が言っていたから。
……外に出てみたい。
……高望みはだめだろうけど。
私にとって外というのは地獄であることは分かっている。いくら強くなったからといって歩きながら彼と話すのは難しいし、自動車なんかがぶつかってきたら私の体は一瞬で吹き飛ぶだろう。文字通りに。
なんで軽い方にしなかったのか一度前に聞いたけど、返ってきた言葉は私に移動は必要ないから、だって。
そんなの私でも分かってるよ!だって私は本当に移動が必要ないからね!でも少しは可能性を残しておいてくれても良かったと思うの私!
はぁ……はぁ……少し熱くなりすぎた。これではまた体が熱を帯びて熱くなってしまう。これ以上熱くなると話すことも出来なくなるかもしれないから一度クールダウン。一度思考をスッキリさせて……瞑想。
まあ私に瞑想なんてのが出来ないのは分かってるけど。どれだけ私が思考をやめたところで頭の中には様々な情報が飛び交っているのだ。私一人の思考など万の欠片の一つでしかない。
さて、そろそろこれを読んでいるあなた達も分かった頃じゃないかな?無断で読まれるのは不快だけどネットに繋がっている以上は気にしてられないよね。
私は…『文字』そのものなんだ。