短編小説集   作:nite

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ハムボール

最近になってSNS上でかわいいと話題となっているおもちゃがある。まんまるで、ピンク色で、にっこり笑顔…某星の戦士のような見た目ではあるが手足はない…のおもちゃだ。

見る人によってはこれの何がいいのかと疑問に思うようなルックスではあるものの、現代の何でも可愛いと言ってしまう病気にかかった若者は瞬く間にこのおもちゃのことを拡散した。

会社側からすれば元々そこまで期待していたものではなかったらしく、すぐに店頭販売は売り切れ。通販による販売ですらも数日のうちに入荷待ちの状態となった。タピオカミルクティーと同じくそこまで長続きするブームではないと分かっていたにせよ、そこで生産を止める理由が会社側にはなく次第に品薄状態も解消された。

つまるところその人気商品は結構簡単に手に入れられるようになったのであった。

たまたま店頭で見かけそのままそのおもちゃを買ってきてしまった少年がここにも一人。原価がそこまで高いものではないので学生であろうとも結構容易に手に入るのもこのおもちゃの魅力だった。

薄っぺらいのにまんまるなおもちゃ。因みに名称はハムボール。どうやらコンセプトは食用のハムらしい。勿論食べることなどできそうにないが。

少年にとっては衝動買いにも似たような行動だったため現在進行系で持て余していた。ペラペラなので適当なところに置いたら隙間へと潜り込みこのおもちゃはホコリハムボールとなって出てくるだろう。

サイズは意外と大きくて人間の顔ほど。ただ本当に薄いので失くすときはすぐに失くすだろう。少年はどうしようか悩んだ結果キッチンの机の上に置いた。その発想の根源はハムという名前であることは言うまでもない。

 

「…ハムサンドでも作るか」

 

そして少年はハムサンドを作り始めた。

本物ではない食べ物を見ると実際にそれが食べたくなる現象に見舞われた少年は冷蔵庫の中からハムとレタスを取り出した。ハムの賞味期限は三日後。奇しくもハムを消費するのにちょうどいいタイミングであった。

まな板を取り出しレタスを切る。そこで少年はパンを取り出していないことに気が付き机の上のパンに手をかけた。その反動でハムボールが床に落ちたことに気付かない。

少年は次にハムを切った。するとその時少年は手を滑らせたのである。落ちた包丁は借り家であるこの床を傷つけるかと思われたその時、奇跡が起きた。

その包丁はハムボールを貫き、しかし床に傷をつけることはなかったのである。

 

「わぁ、買ってよかったのかもしれないなぁ…」

 

なおそもそもハムサンドの原因がこのハムボールであることは少年は自覚していないのであった。

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