自然災害とは農業の、ひいては農家にとっての天敵である。
水害、冷害、虫害…害の種類も色々とあるが、結果は揃って収穫量の減少である。農家からすれば収入源を減らされ、逆に出費が増える。ここまで忌々しいものもないだろう。
しかし災害というのは必ずしも収穫に影響するわけではないのである。
「困ったなぁ…」
とある農家の男性がトラックを下りて困った顔で見ているのは四本のそれなりに大きな杉の木。それがトラックの行き先を塞いでいた。
この道は加工場から販売所まで向かうまでの唯一の道であり、ここが塞がれると販売はおろか買い出しすらも行けなくなってしまう。
そのためこの木は解体するなりどかすなりで道の開通をしなければいけないわけだが…男性はあくまで農家である。林業を営んでいるわけではないのでチェンソーなど持っているはずがない。のこぎりで切るには明らかに大きすぎるし、時間かけるのは作物のことを考えるとよろしくない。
「…仕方がない。強引だがあれを使うか」
そう言って男性は電話を取り出した。
そして電話をして数分後。一台の大きなトラックが来た。そこから一人の男性が下りてくる。
「これが目標の大木っすね?」
「ああそうだ。頼めるか」
「了解っす」
彼はこの男性の弟子…というよりお手伝いだ。このトラックはこの農場のものではなく彼自身の物だというから驚きである。
そして彼自身のものであるので色々と改造が施されている。簡単に言うとトラックの前側に不必要だろうと言えるほど固い装甲が付けられているのだ。
その大きなトラックは後ろに下がった。そして…
「ファイヤー!!」
勢いを付けて四本の木に激突した。
その衝撃で四本の木は全て木端微塵になり道が開いた。お手伝いの男性が窓から農家の方を見て声をあげる。
「これでいいっすかー!」
「ああ、助かったよ」
慣れた手つき。実は結構こういうことは何度も繰り返している二人である。
この農場の主要な作物は米である。その米を強い風から守るために森の中に農園を作ったのはいいが、こういう木が倒れてしまっていることは結構あるのである。
そのたびにこの二人はこの大きなトラックでアタックして木を木端微塵にしているのである。この農園では所謂いつもの光景に過ぎないが、他の所の人が見れば驚くに違いない。そういった物差しに関しては人とは違った感性を持っている二人である。
「では行ってくる」
「はい、行ってらっしゃいっす」
そして米を積んだトラックは販売所へと向かった。
手伝いの男性はやりきった顔をして汗をぬぐっている。実は言うと木に負けたら木端微塵になるのはトラックの方なので男性もひやひやなのである。今のところ負けたことは無いのだが。
そして男性が帰ろうとしたら電話が鳴った。
『すまないがもう一本あった』
「…脇に避けていてくださいっす。ここからそのまま激突しますんで」
そして大きなトラックは男性を載せて凄い勢いで道を進んでいった。
…なお法定速度など守っていないのでこのトラックは現在木の破壊用と化している。