たぶんこれが一旦最後になるとおもいます。
龍琥が転生しているからあいつも……?
益州を発って数日。私達は数十名の兵士を連れて赤壁の地へと到着しました。徐庶様は幕を張る指示を出し、兵士達は幕を張っていく。今日はここで野宿をする予定なのです。今の時間帯は丁度お昼。今から明日の朝にかけて調査を行なう算段です。私は泣き虫と共に辺りを馬に乗って散策し始めました。
「空がドス黒くなるか……。龍琥、原因は何だと思う?」
「知らね。それを調べるんだろうが」
「それはそうだが……」
「それより、気になるのは聞こえてくる呻き声と巨大な何かが通った跡だ。お前も見ただろ、あの跡を」
「ああ。まるで大蛇が通った跡のようだ」
「……チビって泣くなよ?」
「泣くか!」
「どーだか」
ここの辿り着いて眼に入ったもの。それはまさに大蛇が通った跡のような道だった。それももの凄く巨大な。普通の蛇じゃない。馬を二頭ほど横に並べるほどの大きさだ。もし本当に大蛇だとして、それに遭遇したら丸呑みされてしまうだろう。
それと呻き声。聞けば、何かに苦しむ声で男性の声だったらしい。その呻き声はこの大蛇の跡が出る前に聞こえなくなったらしいが。何か関係しているのだろうか?
「……ん? 龍琥、あれは何だ?」
「あん?」
泣き虫が指した方向には何かの茶色い塊だった。馬を走らせ、その塊の近くへ向かう。
「……なっ!? 何だこれは!?
「……惨い」
惨い。この塊……血を全て抜き取られた人間の山だった。まるで何かに血を吸われたような死体。それに、身体の一部が無い者もいる。そこは食い千切られたかのような痕がある。
「っ……」
「泣き虫、無理して見るな。お前は徐庶様を連れて来い」
「お、お前は……?」
「もう少し調べる」
「……よく平気でいられるな」
「……さぁ? 何でだろう?」
泣き虫は徐庶様を呼びに馬を走らせた。
何故だ。確かに私は今、冷静でいられている。惨い死体の山を見ても取り乱さなかった。何事にも動じないように鍛錬はしてはいるが、ここまで冷静にいられるか、普通? 俺はどこか異常なのかもしれない。転生を二度しているからか? 何にせよ、今はここを調べよう。
「……女子供関係無しか。いったい何の目的で……いや、それより、この時代にこんなに綺麗に血を抜く技術があるのか?」
五斗米道ならありえるかもしれないが、あいつらは謂わば善良な医者の団体。こんな事をする筈がない。なら一体誰が?
「龍琥っ……これは、酷いな」
「徐庶様……はい、女子供関係ないようです。全員血を抜かれ、中には身体の一部を喰われている痕跡があります」
「そうか……兵達をここに呼んで彼らを運ぼう。せめて埋葬ぐらいはしてやらないと」
「はい―――――」
『うわああああああああああああああああっ!!!!』
「っ!? 何だ!?」
「………玲綺? 玲綺!!!!」
「龍琥!? 待つんだ!!」
今の声は陣にいる兵士の声だ。玲綺は徐庶様と来なかった。なら玲綺も陣にいるはず。くそ、一体何なんだよ!?
「玲綺!! 何が――――」
「龍琥!! 避けろ!!」
「なっ!?」
【シャァァァァァァァ!!】
巨大な大蛇が口を開けて襲い掛かってきた。馬を蹴り飛ばし、自分もその勢いに乗って避ける。大蛇は後にあった大木を意図も簡単に噛み砕き、喰らった。
「何だ、こいつは!?」
「突然現れたのだ!! 気をつけろ!! こいつに噛まれたら血を吸われて食い殺されるぞ!」
見ると、兵達の何人かがあの死体の山と同じ事になっていた。なら、こいつが彼らを殺したのか!
【シャァァァァァ!!】
「ええい! このクソ蛇が!!」
素早い動きで襲い掛かってきたので、私は―――俺は二振りの槍で大蛇の頭を受け止める。
「ぐっ!?」
なんつー力だよおい!? 俺が押される!?
「龍琥! そいつには剣が効かない! 矢もだ! 硬すぎるのだ!!」
【シャァァァ――――――ッフッフッフッフ―――】
「なっ―――!?」
大蛇の額に……人の頭が浮かび上がってきやがった。その顔……忘れるはずもねぇ……!
【クハハハッ! 久しいですねぇ……龍琥】
「于吉ぅぅぅ!!!」
俺と共に崖から落ち、殺したはずの男なんだからなぁ!!!
「テメェ!? 何でこんな所にいやがる!?」
【それは貴方と同じですよ。ま、もっとも? 私が転生したのはつい最近で、肉体は殆ど駄目になっていましたがね】
「まさかここで起こっていた奇怪な現象はテメェのことか!?」
【はて、何の事でしょうか? 私はただあの苦しみから解放される為に妖術で身体の組織を変え、足りない部分をそこいらの人間から貰っていただけですが?】
「この―――外道がァ!!」
【おやそうですか? ありがとう、最高の褒め言葉だ!】
「龍琥!」
【チッ……】
玲綺が投げた十字撃を于吉は皮膚で弾き、玲綺に襲い掛かる。俺は地を蹴り、于吉へと迫る。そして尾を槍で突き刺し、地面に打ち付ける。
【ぐあっ!? この!? 何故!? 私の皮膚は刃を通さないはず!?】
「玲綺! 下がっていろ! こいつは俺が仕留める!」
「馬鹿な事を言うな! 人間が相手なら兎も角、相手は妖だぞ!」
「いいから!」
【私を余所に痴話喧嘩ですか!】
「黙ってろクソ野朗! 今からズタズタに引き裂いてやる!!」
【クハハハハハ! その口の悪さは変わらないようで!】
「龍琥! さっきから誰に言っているんだ!?」
「は!? 誰にって―――」
【ああ、私は貴方にしか視えてもいないですし、聞こえてもいませんよ。私は貴方にしか興味がありませんからねぇ!】
「チッ、相変わらずキモイ奴だ!」
俺は于吉の牙を槍で弾いていき、刺した槍を抜き取って陣から離れていく。于吉は本当に俺にしか興味が無いようで、俺に続いて陣から離れていく。これで何とか兵達の被害は抑えられたか。
しかし、何故于吉も転生している? いや、俺と同じ条件ではなかったか。だが一緒の世界にいる。まさか、俺達が落ちた場所がここに繋がっていたとかか?
【何を考えているんですか? 余計な事を考えていると、足を掬われますよ? ほら、こんな風に!】
「なにっ!?」
于吉の尾が俺の下半身に巻き付き、俺の動きを封じた。油断した。余計な事を考えている場合じゃなかったか!
【さて、実は私はまだ完全ではないんですよ。まだ血と肉が足りていない。完全に復活する為に、貴方は私と一つになってもらいますよぉ】
「はっ! テメェと一つになんざなってやるかよ!」
全身から金色の気を溢れ出さす。それにより力が溢れ出てくる。尾を強引に振りほどき、金色の気を纏った刃で斬り付けていく。
「まだまだまだまだァ!!」
【クッ!? これはっ!?】
「うぉぉらぁぁぁぁっ!!」
槍を突き、衝撃破を飛ばす。嘗てのようにここで体力を消耗しきって倒れたりはしない。ただ、やはりまだ覚醒しきれていない。まだ全力を出せていない。けど、ここで決めてやる。
「続けて行くぞ!」
一瞬で于吉の懐に入り、身体を捻って黒い雷を刃に纏わせる。
「消し飛べ!!」
【ぐおおおっ!?】
黒い雷の竜巻が于吉を呑み込み、焼き斬っていく。俺は上に飛び再び雷を纏わせる。
「失せろ!!」
槍を投擲し、黒い雷の爆発を二発、于吉に与える。前世ではできなかった技だ。前のようにはいかねぇぞ!
【ぐぎゃああああああっ!?】
于吉は黒炭になり、焼き焦げてピクリと動かなくなった。俺は流石に体力が切れ掛かり、肩膝をついてしまった。周りを見てみるとここは崖付近で、于吉のすぐ後は崖だった。下は河が流れている。落ちたら恐らく死ぬだろう。
落とせば良かったかな……いや、蛇だから泳いでそうだ。
「はぁ、はぁ……!」
「龍琥!」
「龍琥、無事かい!?」
玲綺と徐庶様がこちらに向かってくる。俺は無事なことを教えるために左手を掲げて振っ――――。
【いただきますよ、貴方の肉】
ガチンッ――――。
「―――――な――――」
俺の左腕から牙と牙がぶつかる音がした。見ると、大蛇の口が俺の左腕を肩から噛み千切って――――。
「ああああああああああああああッ!!!?」
「龍琥!?」
【クハハハハハハッ!! さあ、お次は彼女らでも頂きましょうか!!】
腕が……腕が喰われた……!? 血が勢い良く溢れ出てくる。すぐに止血しなければ失血多量で死んでしまう。俺は気が飛んでいってしまうような激痛を堪え、走ってくる玲綺と徐庶様を見る。
何だよその顔は……泣いてんのか怒ってんのか良く分かんねぇ顔だな。徐庶様も、そんなに怒っている顔、初めて見たよ。ってか、このままだと拙いな……俺じゃなくて二人が。どうする。俺は正直もう戦えない。だが、このままでは玲綺と徐庶様が喰われてしまう。何故か分からないが、于吉には俺の槍しか効かない。いくら二人が強くても、攻撃が通らないのでは意味が無い。
【クハハハハッ! さぁ、私の糧になりなさい!】
「この化け物がぁ!!!」
「よくも龍琥を!!!」
クソ、このままじゃ二人が……!
――ねぇ、龍琥! 必ず帰ってきてね! 待ってるから!!
銀屏様……! 俺は……!
――帰ってきたら、一緒に行こう!
「………申し訳、ありません、銀屏様。約束………果たせそうにありません」
俺は右手の槍をまだ近くにあった于吉の尾に突き刺す。
「ぉぉぁぁぁぁぁぁあああああああああああっ!!!!!」
【ぐおっ!? この、まだ生きて……!?】
「おい于吉……俺達の最期……覚えてっか!?」
【き、貴様……!? まさか!?】
尾を掴み、後へと下がる。おいおい、そんなに暴れるなよ。お前、俺にしか興味が無かったんだろ? 喜べよ、クソ野朗―――――また心中してやるよ。
「龍琥!? 何をするつもりだ!?」
「龍琥、そのままそいつを抑えてろ! 俺が斬る!」
【くそっ、邪魔なんですよ!】
徐庶様が剣で斬りつけるが、刃が通らない。于吉は徐庶様に喰らいつこうとするが、俺が尾を引っ張って体勢を崩す。
「玲綺……銀屏様に……申し訳ありませんと……伝えてくれ」
「な、何を言っている!?」
「馬鹿な真似は止すんだ! 君はまだ死んではいけない!」
「約束を守れず……申し訳ありませんと……」
「止めろ!! 死ぬな!!!」
「俺は―――――“貴女様を愛していた”と」
【くそくそくそっ! こうなれば、先に貴様から喰ってやるぅ!!】
「このクソ野朗が。テメェのせいで銀屏様を泣かせることになっただろうが! この落とし前、テメェの命で償えや!!!」
もう、俺の足場は無い。俺は噛み付いてくる于吉と共に崖から落ちていく。これで、二人をあの場で死なせずに済んだ。俺だけではなく、玲綺まで死んだら、きっと銀屏様は心に治せない傷を負ってしまう。だから……これで良いんだ。俺が死んで傷を負ったとしても、玲綺が居れば癒してくれる。
「玲綺!!!!!!!!!!! 銀屏様を頼んだぞ!!!!!!!!!!!!」
さようなら、申し訳ありません、ありがとうございました………銀屏様。龍皇覇、貴女様に出会えて幸せでございました。
「龍琥ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!」
なんか、書いたら突拍子も無いことになってる気がする……。ん~、もう少し上手くかけなかったものだろうか。