関銀屏と行く   作:魔帝

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 引越しする前の最後の一話!!!




第十三話 眠る龍

 

 

 

「お帰りなさい、一颯!」

 

「………桃香?」

 

「うん? どうしたの?」

 

「何で……」

 

『おぎゃあ! おぎゃあ!』

 

「あ、阿斗が泣いてる!」

 

「阿斗……!?」

 

 

 阿斗って、劉備様の息子……!? あいや、桃香も劉備だから合ってるのか……って違う! 何で俺はこの世界に戻ってきているんだ!? 俺は于吉と一緒に崖に落ちて玲綺と徐庶様を逃がしたはずだ! それに桃香に子供がいるって事は、俺が死んでから時が進んでいるんだよな!?

 

 

「いったいどうなってるんだよ……!?」

 

 

 取り合えず俺は桃香の後を追うことにした。桃香は幼い赤子を抱いてあやしていた。その赤子が阿斗……俺と桃香の子供……?

 

 

「どうしたんですか~?」

 

「おぎゃあ! おぎゃあ!」

 

「お腹でも空いてるのかな? でもおっぱいはさっき飲んだし……」

 

「ぶっ!?」

 

「きゃっ!? ど、どうしたの?」

 

「い、いや……何でもない」

 

 

 お、おっぱいて……。そうだ、桃香は天然で平気でそういう事を口にするんだった。邪な気持ちを持たないから平然と……。どれだけ俺と一刀がドキドキしていたか。

 

 

「ほらほら~! お父さんですよ~!」

 

「え、あ、ああ! お父さんですよ~!」

 

 

 俺は桃香から阿斗を受け取り高く上げる。いや、何やっているんだ俺は。何でこんなにも極自然に馴染んでるんだよ。いや、俺はこの子の父親だから当然か……あれ? 何を言っているんだ俺は?

 

 

「きゃっきゃ!」

 

「な、泣き止んだか……。何で泣いたんだろう?」

 

「お父さんに会えなかったからじゃないの? ほら、一颯ってずっとお仕事で魏と呉を行ったり来たりしてたじゃない。だから帰ってくるのって本当に久しぶりなんだよ」

 

「そ、そうか……ん?」

 

 

 “一颯”……? 桃香、俺のこといつから呼び捨てで……? あ、結婚したから君付けは可笑しいからか。そうだよな、結婚したのに君付けって………え、結婚? 俺、いつしたんだ? 俺はまだ桃香と結婚なんて……あれ?

 

 

「ねぇ、今日はずっと一緒に居れるの?」

 

 

 ズキッ……。

 

 

 ――りゅーく! ずっといっしょだよ!

 

 

「っ……なんだ……?」

 

「一颯? どうしたの? 気分でも悪いの?」

 

「……いや、何でもない。ああ、ずっと一緒に居られるよ。夜も、な」

 

「もうっ、一颯のえっち!」

 

 

 

 

「お? 一颯! 帰ってきたのか!」

 

「おう一刀! 相変わらず女でも口説いてんのか?」

 

「もうっ、またなの?」

 

「ちょっ!? 愛紗の前でそんなこと言うなよ!?」

 

「ご主人様? 今のはいったいどういう意味でしょうか?」

 

「いや!? 違うぞ!? 俺は女の人を口説いてなんかいないからな!?」

 

 

 久しぶりに見た一刀と愛紗は変わらず仲がいいようだ。愛紗……向うの世界では髭が立派な関羽様だったけど、こっちでは長い黒髪が美しい関羽………え? 何言ってんだ俺? 向こうとかこっちとか。働きすぎか?

 

 

 ――銀屏様の黒髪は綺麗ですね。

 

 ――えへへ! 大きくなったら父上の髭ぐらい伸ばすの!

 

 

 ズキッ……。

 

 

「っ……」

 

 

 まただ……。何だ、この声……。誰だっけ、銀屏って……。

 

 

「一颯様、お勤めご苦労様です。何時お帰りに?」

 

「さっきだよ。ったく、華林ったら人使いの荒いのなんの。ありゃ一人の人間がする量じゃねぇだろ」

 

「ふふっ、一颯様はそれほど有能なお方なのです。……どこかの主と義姉上と違って」

 

「うぅ……一颯が異常なんだよぉ……」

 

「そうだよ……俺だって頑張ってるんだよぉ……」

 

「はははっ。それより愛紗、何時になったら俺のことを義兄上って呼んでくれるんだよ?」

 

「うっ……その……まだ慣れなくて……」

 

「一刀も……いや、やっぱ気色悪ぃから止めて」

 

「な、何だよそれっ!?」

 

 

 ああ、これだ……ここが俺の家だ……。俺は帰ってきたんだ……愛する人が居るこの家に……。

 

 

 

 

 一颯……どうして私を置いていったの……? 何時も一緒に居るって言ったのに……。

 

 

「銀屏、大丈夫か?」

 

「父上……うん、大丈夫」

 

「……龍琥は真素晴らしき子であった。蜀が誇るその武勇、忠義、仁、どれをとっても敵う者は居ないほどだった」

 

「はい……」

 

「……龍琥のこと、好いておったか?」

 

「……分からないんです」

 

「む?」

 

「龍琥は確かに大好きです。だけど、父上や大兄上達も大好きです。でも……龍琥の好きと父上達の好きとは何か違うんです。もしかして、私は龍琥が好きじゃなくて、何か別の感情を抱いていたのでしょうか?」

 

「………」

 

 

 父上でも分からないのですね。やっぱり、私は一颯の事が好きじゃなくて、何か違うことを……。一颯は私の事、好きでいてくれたのに、私は……。

 

 

「銀屏」

 

「……はい」

 

「想うがままに受け止めよ」

 

「え……?」

 

「お前が龍琥に何を想い、何を見るのかはお前の自由だ。案ずるな銀屏!! 龍琥は必ずやお前の下に舞い戻ろうぞ!! あの男は死んではおらぬ!!」

 

「父上……?」

 

「だから銀屏、我が娘よ。前を見よ。泣いてばかりでは帰ってくる龍琥を困らせてしまうぞ?」

 

「父上……」

 

 

 父上……私を元気付けて……………うん、そうだよ。まだ一颯は死んだって決まったわけじゃない! だって遺体は見つからなかったんだから。血の痕も槍も無かったんだもの! きっと一颯は生きてる! 生きてまた私の下に帰ってきてくれる!

 

 

「父上、私決めました!」

 

「む?」

 

「私、龍琥が帰ってくる家になります!」

 

「家、とな?」

 

「龍琥がどこへ行っても必ず帰ってこられるように、私はずっと笑っています! 龍琥は私の笑顔が好きだって言ってくれました! だから、ずっと笑っていれば龍琥は帰ってきてくれます!」

 

「……そうか。そうか銀屏よ! ならばこの戦、お前と龍琥の為に、そして兄者の為に必ずや勝利しようぞ!」

 

「はい! 非力ですが、頑張ります!!」

 

 

 一颯、私ずっと待ってるから。それから、一颯が帰ってくるまでに、この気持ちが何なのか答えてみせるから! 一颯、絶対に帰ってきてね!

 

 

 

 

「………?」

 

「どうしたの?」

 

「え、いや……何か呼ばれた気がして……」

 

「もぉ~、今は私と二人っきりなんだから私以外に誰も呼ばないよ!」

 

「……そうだな」

 

 

 気のせいか。にしても阿斗が産まれてからもこうして二人だけの時間が取れるだなんてな。子供が産まれる前は、桃香が子供に付きっきりになるのかも、何てちょっと嫉妬してたし。いやーお恥ずかしい。

 

 

「こうやってお散歩に出かけるの、久しぶりだね」

 

「ああ。まぁ、戦乱の時代でも結構出歩いてたけど。桃香が仕事をサボって」

 

「うっ……だって、一颯と一緒に出かけたかったんだもん」

 

 

 ああっもう! 可愛い!! 可愛すぎるぞおい! もうオモチカエリオケー? オケーだよな!? いやいや! ここはグッと堪えて夜に持っていけばいいんだ! 今はこうしたのんびりとした時間を大切にしなければな! うん! 思えば、銀屏様とも―――――銀屏? 誰だっけ……?

 

 

「………」

 

「……どうしたの? やっぱり気分が悪いんじゃ!?」

 

「い、いや、大丈夫だって」

 

「駄目! 今日の一颯は少しおかしいよ! あ、あそこの木下で横になろ!」

 

「え、だいじょ―――」

 

「私が膝枕してあげるから!」

 

「よし行こう」

 

 

 桃香の膝枕かぁ……本当に久しぶりだなぁ……! この気持ち良さと言ったら……これを感じるために生きてきたなぁーって思えちゃうほどだよ。

 

 

「どう? 気持ちい?」

 

「ああ……凄くいい……何だか……ねむく……」

 

「……眠っても良いんだよ」

 

「ああ………すこし……ねむ……る………」

 

「…………もう、起きなくても良いんだよ………もう……帰らなくても……」

 

 

 

 ――クハハハハッ! そのまま眠るが良い。お前の牙は私には危険すぎる。

 

 ――このまま夢の中で生きていくがいい。ここにはお前の望むものがあるのだから。

 

 ――これで邪魔者は消える。私はこの外史でお前から肉体を奪い、復活してやりますよ。

 

 ――そして、復活した暁には、貴方が本来いた外史を潰してあげましょう。

 

 ――クハハハハハハハハッ!!!!

 

 

 

 

 





これで、本当に最後です。皆さん、暫しのお別れです。また会える日を祈っております!

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