関銀屏と行く   作:魔帝

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 読者よ!! 私は帰ってきた!! 私は嬉しい……更新しない間にもお気に入りが増えていくことに! 私はこれからもこの世界を創り続ける!!


第十四話 目覚める黒龍

 

 

 

「もう……帰らなくても……良いんだよ……」

 

 

 ズキンッ!

 

 

「――――っ」

 

 

 痛い!? 痛い痛い痛い痛い!!! あ、頭が痛い!!!! 何だこれはっ!?

 

 

「どうしたの!?」

 

「あ、頭が痛い……っ!! 弾けそうだっ……!!」

 

「ど、どうしよう!? と、とりあえず寝てて!!」

 

「駄目だっ!! 寝ていられない!!」

 

 

 華陀……! 華陀を呼ばないと……!! これは只事じゃな―――っ!?

 

 

「駄目! 寝てて!」

 

「華陀を呼ばないとっ……確か蜀に来て――――」

 

「寝て!!!!!」

 

「ぐおっ!?」

 

 

 桃香!? 何をするんだ!? 何で首を絞め……!?

 

 

「寝てて!!! 寝てて寝てて!!! 寝て!! 寝て寝て寝て寝て寝て寝て!!!! 寝ろ!!!!!」

 

「がぁ――――っ!?」

 

 

 だ、誰だコイツは―――!? 桃香じゃない―――!? くそっ、息が―――!

 

 

「お前はここで寝てろ!! 私と一緒にいろ!! 夢の中にいるんだ!!」

 

 

 ズキンッ!! ズキンッ!!! ズキンッ!!!!

 

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い―――――!!

 

 

「ここから“出る”な! お前は永遠にこの夢の中に――――」

 

「桃香の姿で汚ねぇ声出してんじゃねぇぞボケがァ!!!」

 

「うぐっ!?」

 

 

 テメェは誰なんだよ……!? それ以上癇に障ることぬかすとこの首圧し折るぞ!?

 

 

「誰だテメェ……!? 桃香じゃねぇだろ……!?」

 

「ぐおっ……!?」

 

「俺の上から退きやがれぇ!!!」

 

 

 桃香の偽者を殴り飛ばし、上から退かす。何だよおい、頭痛が消えた……? ハッ、どうやらこの頭痛はコイツが原因だったようだな!

 

 

「桃香を何所にやりやがった!? 言え!!」

 

「くっ……くっく……クハハハハ!! 桃香? 誰ですかぁー?」

 

「テメェ……死にたいようだな……!」

 

「どうやら何かが貴方の心を保たせているようですねぇ。しかしもうどうする事もできませんよ。既に貴方はこの世界に囚われている。抜け出すことは出来ない」

 

「いったい何の話だ!?」

 

「知らなくても良い話ですよ。では……」

 

「なっ、待て!!」

 

 

 桃香の偽者はスッと霧のように消えてしまった。何なんだよおい……いったい何が起こってやがる? そうだ、他の皆が心配だ。それに本物の桃香を探さねぇと!

 

 

 ―――りゅーく!! こっちこっち!!

 

 

「っ……!? 女の子の……声?」

 

 

 ―――りゅーうーくー!! こっちで遊ぼう!

 

 

「………」

 

 

 俺は、その声がする方へと歩いていった。何故か、そっちに行かないといけない気がしたから……。

 

 

 

 

 南陽郡……魏の曹操が居る許昌の喉下と言える魏の領地。その地にある樊城を制した父上は私達を呼び寄せ、防備を固めた。だけど、私達が樊城に入った直後、魏軍が樊城を包囲し始めた。後一歩遅かったら、父上が危なかった。今は小兄上が城外の様子を見に行って……あ、戻ってきた。

 

 

「敵の斥候の間隔が短い……。じきに本隊の攻囲が始まりますね」

 

「城を取らせてから包囲するとは……拙者たちは踊らされてしまったのか?」

 

 

 そうかも。それに、この雨……。

 

 

「それにこの長雨……。敵はきっとこれを使ってくると思うぁ……?」

 

 

 あれ? 座ってる井戸の石が取れちゃった。脆くなってたのかな? あ、もう! 何でいつも皆笑うの? そんなに可笑しいのかな?

 

 

「大丈夫……勝てる……勝たなきゃならない。龍琥の為にも……」

 

「兄上……?」

 

「ここで負けたら、龍琥に顔向けが出来ない。銀屏を守ると、約束してきたから」

 

「………」

 

 

 龍琥……一颯に貰った簪を触る。これを貰った時は嬉しかった反面、怖かった。だって、これが最後の贈り物かと思ったから。でも一颯が戻ってきてくれた。怪我をしてたけど、元気な姿をもう一度見せてくれた。それからも、一颯は私が誕生日を迎える度に贈り物をくれた。鏡や髪留めに綺麗な織物。一番新しい贈り物はこの耳飾。翡翠の玉の耳飾……あれ? 私貰ってばかりで一颯に何もあげてない? う、ううん! そんなことない! えっと、えっと……あ! 筋肉を付けるための鍛錬道具をあげた! そういえば、あげた時の一颯、何か変だったような気がする。受け取った腕がぷるぷるーって震えてたような……。それに、何か変な汗も……気のせいかな?

 

 

「……会いたいよ、一颯……」

 

「ああ、良かった。間に合ったようですね」

 

「うむ? 徐庶か。何をしに参った?」

 

「勿論、策のためです。この窮地を打ち破るために」」

 

 

 徐庶さん……あの戦いから帰ってきたとき、もの凄く怒って泣いていた。自分が何も出来なかったからって……。私が益州を出る時は部屋に篭りっぱなしだったけど……今は何か、決めたような顔をしてる。

 

 

「徐庶さん……」

 

「すまない、銀屏。なんて謝ったらいいか。俺が付いていながら……」

 

「……良いんです。徐庶さんのせいなんかじゃ無いですから。それに、龍琥は生きてます。必ず私の下へ帰ってきてくれます」

 

「……ありがとう。それじゃ、俺は龍琥が帰ってくる場所を守らないとな。君の言う通り、敵は雨を利用するつもりだ。けど、そうはさせない。戦況に応じて俺から指示を出します。皆さんは俺に従ってください」

 

「うむ。相分かった。では……行くぞ、お前達!」

 

『応っ!!』

 

 

 一颯、私絶対にずっと待ってるから! 帰ってきたら、一颯に言いたいこともあるから! だから、だから絶対に帰ってきてね!

 

 

 

 

 この声……いったい何所からするんだ? つかここは何所だ? 何か竹薮の中に入ってんだけど。ってか、近くにこんな場所ってあったっけ?

 

 

 ――龍琥! 聞いて! 私、父上に褒められちゃった!

 

 ――見て見て! 綺麗な石を見つけたよ!

 

 

「なんか、段々と声が心なしか成長している気が……」

 

 

 しかし、何所で聞いたことのあるような声だ。でも何所でだ? 只でさえ、ここは女子が多い世界なんだし、一々覚えていられないし……。

 

 

 ――ねぇ、龍琥……約束覚えてる?

 

 

「やく、そく……?」

 

 

 ――ずっと、一緒にいてくれるんだよね……?

 

 

「ずっと……一緒……ぅぐっ!?」

 

 

 痛い……!? また頭痛が……!?

 

 

 ――絶対に帰ってきてね、一颯。

 

 

「―――――ぁ?」

 

 

 何だ、あれ? 誰かが居る? 幻影……? あれ? 何時の間に夜になっていたんだ? それにあの二人……一人は幼い女の子に……もう一人は……俺!?

 

 

 ――りゅーく、わたしりゅーくといっしょにいたい! ずっとずっと、いっしょにいたい!

 

 ――関銀屏様。

 

 

 関銀屏、それがあの女の子の名前か……?

 

 

 ――我が名は龍琥、字は皇覇、真名は一颯。我が槍、我が身、我が命、この日、この時を持って貴女様に捧げます」

 

 

 これは……何だ……覚えがある……。確か、この後……。

 

 

 ――まな?

 

 ――一颯、それが俺の本当の名前です。

 

 ――いぶき……。

 

 ――関銀屏様、俺はこれからもずっと……。

 

 

「貴女様のお傍にいさせていただいてもよろしいですか――――銀屏様……」

 

 

 そうだ……俺は……私は……何で銀屏様の事を忘れていたんですか……!? 私はこんな所で何をやっているんですか!? 早く、早く銀屏様の下へと帰らなくてはいけない!!

 

 

 ドクンッ……!

 

 

「ッ――――!?」

 

 

 胸が……黒紫に光って……っ!? そうか、この感覚は……お前なのか。

 

 

「“黒龍”……お前、そんな所に居たのか……」

 

 

 私は光っている胸を押さえる。感じる。私の胸の中に黒龍が居る。黒龍が私に眼を覚ませと伝えてくる。そうですか、先程の幻影は黒龍が私に見せてくれたものなのですね。

 

 

「ありがとう、黒龍。お前のおかげで眼が覚めたよ。それじゃ、ここから出ましょうか」

 

 

 ――クソッ!? 何だ!? 私の術が解け始めていく!?

 

 

 于吉の声が聞こえてくる。どうやらここは于吉の術の中のようだ。まったく、私は何をやっているのでしょう。そういえば、于吉に左腕を肩から喰い千切られたんでしたっけ。ああ、そう思い出したら左腕が無くなりましたよ。でも血は出ていませんね。どうやらありがたいことに傷は塞がっているようですね。なら、向こうに帰ったら外套か何かで隠せばいいか。

 

 

 ――龍琥ゥ!! 貴様はどこまでもォ!!

 

 

「于吉、私はここから出る。そして銀屏様の下へと帰る」

 

 

 ――くっ……クハハハハハッ!! い、良いのですか!? 此処から出れば貴方が望んでいた劉備との時間は永遠に無くなるのですよ!?

 

 

「あんな奴ら、桃香でも何でもねぇ。偽者だって分かってんですよ」

 

 

 ――な、なら特別に! 貴女を本来の外史へと戻してあげましょう! ほら、そこを通れば戻れますよ!

 

 

 前を見れば空間が歪み、大きな穴が開いた。その向こうには――――。

 

 

「……桃香」

 

 

 桃香が居る。一刀も愛紗も鈴々も……皆も……。皆、平和に暮らしているようだ。桃香の腕には産まれたばかりなのだろう……阿斗がいる。俺と桃香の子供……。

 

 

「……皆、ちゃんと生きてるんだな」

 

 

 ――どうです!? 帰りたいのでしょう!? 帰っていいのですよ!?

 

 

「于吉………お前、俺が怖いのか?」

 

 

 ――な、何を!?

 

 

「怖いんだろ? だから外史の世界への道を開いて俺を帰そうとする。俺と戦うのが恐ろしいから。俺がお前の術を破り、お前は本能的に俺には勝てないと屈した」

 

 

 ――ば、馬鹿な!? 私が貴様などを恐れるはずが―――!?

 

 

「だったらお前……ガクガクと震えている自分の姿を見てみろよ!!」

 

 

 胸の光を右手で掴み取り、後ろの空間へ振りぬく。すると空間が斬れ、そこから胸を斬られた于吉が現れる。

 

 

「ぐあああッ!? な、何故ぇ!? 何故私の居場所がぁ!?」

 

「へぇー、随分と人型に近くなったじゃん。俺の腕を喰らったからか?」

 

 

 干吉は表面は蛇の皮だが、随分と人の形になっていた。于吉は人の血肉を喰らうことで身体を完全体へと造ろうとしていたのか。于吉が何で大蛇の姿をとっていたのかは今は分からない。だが、どうでも良いさ。

 

 

「さぁ、見てみろよ。自分の足を。ガクガクと震えてるぞ? 涙も出ている。ガチガチと歯が震えてるぞ? ん?」

 

「ひっ、ヒィィッ!? 来るなァ、来るなァァ!!!!」

 

 

 俺は右手に握っている黒紫の光を于吉に向ける。そして光は少しだけ長めの刀の形に変わっていき、最後には黒い刀身の黒龍へと姿を変える。

 

 

「どうしたよ? テメェの力はそんなもんなのか? 俺は感謝してるんだぜ? 嘘でも俺に桃香との時間をくれた。だから……礼に次で葬ってやる」

 

「あああ……!? クソガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?」

 

 

 于吉は叫びながら俺に襲い掛かってくる。俺は黒龍を逆手に持ち、于吉の眉間に突き刺した。

 

 

「がっ――――」

 

「黒き龍に喰われろ、于吉」

 

【グラァァァァァァァァ!!!!】

 

 

 黒龍が姿を現し、于吉を喰らい尽くした。これが、黒龍の力。万物を喰らい尽くす妖刀。どれほどの存在であろうと、黒龍は喰らい尽くす。だから、その黒龍が俺の内にいたから、その力を俺が無意識の内に発して、傷付けられないはずの于吉に傷を与える事ができた。お前がいたから、俺は勝てた。ありがとう。

 

 

「………」

 

 

 終わった。これで于吉との因縁は消えた。この術も、于吉が死んだ事によって解けるだろう。

 

 

「……桃香」

 

 

 この穴を潜れば……桃香の場所へと帰れる。幸せだったあの時に……。

 

 

「……ふっ、幸せ……か」

 

 

 何を言っているんだ私は。銀屏様と暮らした日々が幸せではなかったと? 馬鹿馬鹿しい。桃香と一緒に居た時と同じぐらい幸せだった。俺は桃香を愛し、私は銀屏様を愛した。どちらを選ぶ? そんなもの……決まっているじゃないですか。

 

 

「桃香……私は、いや……俺は銀屏様の下へと帰るよ。お前の下へは……帰れない」

 

 

 決して心変わりをしたわけではない。俺はお前を愛している。だけど……銀屏様も知らずの内に愛してしまった。お前がいる世界ではもう争いはない。あったとしても他の皆と協力して無くせる。だが銀屏様はそうもいかない。あの世界で俺はやるべき役目がある。やりたい役目がある。だから……。

 

 

「さようなら、桃香。帰ってあげられなくてごめん、桃香。俺を愛してくれて……ありがとう」

 

 

 世界の崩壊が始まった。ガラスが砕けるように、世界が無くなっていく。俺は最後の最後まで、穴の向こう側にいる桃香をこの眼に、魂に焼き付ける。

 

 

「―――――愛しているよ、桃香」

 

 

 穴は世界と共に消えた。

 

 

 

 

 

 

「――――私も愛してるよ、一颯君……」

 

「どうしました、義姉上?」

 

「ん? 私、何か言った?」

 

「先程、一颯様に……いえ、気のせいです。お気に為さらずに」

 

「そう?」

 

「ええ。さ、仕事を早く終わらせましょう。早くしなければご主人様が阿斗様に変な事を吹き込みそうです」

 

「それは大変だね! よーっし! やるぞー!」

 

 

 

 

 

 

 眼を開くと、そこは赤壁だった。左腕を見ると、やはり腕は無くなっていた。仕方が無い。だが、左腕の変わりに最強の相棒を取り戻した。そして今の相棒、二槍も目の前の地面に突き刺さっている。

 

 

「……行くぞ、“無龍”。お前も俺に力を貸してくれ」

 

 

 二槍を抜き取り、背中に背負う。“無龍”。名も無き牙から生まれた俺の新しい龍。

 

 

「黒龍!! 行くぞ!!」

 

【ヒヒィィィィィン!!!】

 

 

 走ってきたのは赤兎と同じ大きさの黒い馬……黒龍がこの世界に具現した姿。黒龍に飛び乗り、神速の如く駆け抜ける。

 

 

「龍皇覇ッ!! いざ、我が主・関銀屏の下へッ!!!!」

 

 

 

 ――これで何とか水計は……。

 

 ――伝令!! 呉軍がこの地に現れました! こちらへ進軍してきます!!

 

 ――何と!? 孫呉め、我らとの盟を破るか!?

 

 ――父上! 私が行って帰ってもらいます!!

 

 ――ならぬ! お前が行けば呉の思惑に乗せられてしまう!

 

 ――えっ? どういうことですか?

 

 ――孫呉め!! 虎の子を狗にはやれぬと、そう申しただろうに!!

 

 ――えっと……?

 

 ――拙者が参る!! 己ぇ!! 我が娘はやらぬと申したであろう!!!

 

 ――関羽! 天下二分のため―――な、何!? 何の話だ!?

 

 ――呂蒙!! それほどまでに我が娘が欲しいか!? だが娘は龍の下へと行くのだ!! 帰ってもらおう!!

 

 ――な、何だこの迫力は!? 龍の下へと言う所で血涙を流しおったぞ!? り、陸遜! 何だアレは!?

 

 ――わ、分かりません! 魯粛殿!?

 

 ――……し~らない。

 

 ――吼えよ青龍ゥ!!!!!!

 

 

 

 

 

 





 というわけで、つい数十分ほどネット回線が繋がりました。完結目指して行きますので、これからもよろしくお願いします!
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