銀屏での戦闘シーンって案外難しい。
水計は成った。漢中からも援軍が来た。玲綺さんも中にはいる。呉が盟を破って攻めてきたけど、父上がどうにかしてくれている。何か、私がどうとか言ってたけど、いったい何の事なのかな? これで勝てる。そう確信した。確信、してたんだけど……ちょっと旗色が悪くなり始めてるかな。魏軍の抵抗が思ったより激しい。それに、伝令さんから魏の援軍が向かって来てるって教えられた。せめて今の内に呉軍だけでも帰ってもらわないと。
「銀屏! あまり出すぎるな!」
「大丈夫! これくらいなら!」
「お前が怪我でもしたら龍琥にまた苛められる! いや、苛めでは済まないんだ!」
「その時はまた私が怒ってあげる!」
「いや、そういう問題では……ああ、もうっ!」
玲綺さんが私の後に付いて来て一緒に戦ってくれる。最近になって龍琥を慕う人達も私と一緒に戦ってくれてる。私も頑張らなくちゃ!
「全力ぅ~!!」
『ぎゃああああああっ!?』
「……人が……塵のようだ」
「うおおおお! 関銀屏様に続け~!!」
「我ら親衛隊の底力、見せてやれー!」
「何でこいつらはこの光景を見て何も思わないのだ!? というか、何でこいつらは頭に銀と書かれた布を巻いているんだ!?」
取り合えず、ここら辺の相手は全員倒したかな? それにしても、皆ちゃんとご飯食べてたのかな? もの凄く軽くて、私の力で遠くに飛んで行っちゃうんだから。
「で、伝令! 魏の増援が到来! 夏候惇の軍です!」
「え!? もう来たの!?」
「何処だ!?」
「敵本陣から水門へと向かっております!」
「大変! すぐに行かなくちゃ!」
「ここからなら私達の方が近いな……」
「それじゃ、私達で水門を守りましょう!」
『御意!!』
私は皆と一緒に水門へと向かう。馬は無いけど、ここからなら走ってでも行ける。そして私達は水門へと辿り着いた。だけど馬に乗ってたのか、私達より少し早く魏軍が辿り着いていた。
「た、大変! 皆、行くよ!」
「者共、水門を守れ!!」
『おおおおおっ!!!』
「蜀の武将だ! 討ち取れ!」
「ほぉ? 随分と勇ましい娘だ。だが何処かで感じたことのある闘気だな。それに奴は呂布の娘だと……?」
「ここは軍神の子・関銀屏が守ります!」
「何!? 関羽の娘だと!? 退け! 俺がやる!! お前達は門を開け!!」
あ、敵の中から何か怖い人が出てきた。左目に眼帯を着けている人……あっ!? あの人、父上と良く戦っていた人だ! だ、大丈夫! 私だって戦えるんだから!
「行きます!」
「来い!」
私は自分の武器、双頭錘を振り回して攻撃する。怖い人は大きな剣で私の攻撃を簡単に受け止めて弾いてくる。
「強い!?」
「なんて馬鹿力だ!? 流石は関羽の娘だ!」
「銀屏!」
「行かせん!」
「くっ!? 退け!」
玲綺さんは敵の軍師みたいな人と戦ってる。他の皆も私のところへ来ようとしてくれてるけど、相手の数が多すぎて動けないみたい。やっぱり、私が頑張らないと!
「一人で、出来る!」
「くおっ!? まだまだ! 砕いてやる!」
「きゃあっ!?」
怖い人が上から剣を叩き付けてきた。その衝撃で私は後に大きく吹き飛ばされてしまった。だけど私は体勢を整えて着地し、再び攻撃に出る。
「まだっ!」
「来い!」
強いっ……! 父上と同じぐらい強い! だけど負けられない! ここで負けたら一颯に会えないもん! 絶対にここは守る!!
「良い気迫だ。だが、まだまだぁ!」
「うぐっ!?」
「うおおおおっ!!」
「きゃあああああああっ!?」
「銀屏っ!?」
怖い人の剣が炎の剣に変わって、私に叩き付けた。なんとか武器を割り込ませて防げたけれど、そのまま水門の端へと飛ばされた。柵を突き破って河へと放り出される。私は手を伸ばして端に掴まった。だけど武器は河に落ちてしまった。
「うっ……!?」
「銀屏!? 貴様ァ!!」
「このっ!? 小癪な!!」
「退けぇぇ!!!」
「ぐおっ!?」
玲綺さんの声が聞こえた。戦っていた相手を吹き飛ばしたようだ。それから私の下へと来るのが分かった。
「来ちゃ駄目!! 水門を開かせないで!!」
何とかよじ登り、顔だけ出た。魏軍の兵士達が水門を開こうと装置を動かし始めている。このままじゃすぐに開いちゃう。
「駄目だ! お前を見捨てはしない!」
「行って!!! 早く!!!」
「無駄だ。いくら呂布の娘でも、これだけの数を突破出来る筈が無い」
怖い人が私の目の前に立つ。このまま私を蹴落とすのだろうか、ジッと私を睨みつける。その怖さに、私は思わず息を呑んでしまう。だけど、ここで弱気を見せたら軍神の子の名が廃る。私にだって、意地がある。
「貴方は玲綺さんの強さを知らないからそう言えるの!」
「そうだとしても、この俺がいる限り門は開かせてもらう。では……去らばだ」
怖い人が私の私の腕へ剣を振り落とした。私は腕を離してしまい、河へ―――。
「ふざけるなぁぁ!!」
「ぬおっ!?」
「きゃっ!?」
十字戟が怖い人の目の前を飛来し、次に玲綺さんが怖い人を殴り飛ばした。怖い人は私の視線からいなくなり、代わりに玲綺さんが私の視界に映る。玲綺さんは私の手を掴んで、戻って来た十字戟を地に刺して私を支えた。
「私はもう決して見捨てない! 見捨ててなるものか! 今度こそ私は!!」
「玲綺さん……!」
「くっ……!」
玲綺さんが私を引っ張り、私は上によじ登った。
「くそ、やってくれたな……!」
「銀屏! ここは私がやる! お前は門を開かせるな!」
「で、でも武器が……」
「これを使え!」
そう言って十字戟を二つにして一つを渡してきた。それを受け取り、私は構える。
「ごめんなさい。ここは頼みます!」
「任された!」
「行かせると―――」
「通してもらう!!」
「ぐおっ!?」
玲綺さんが怖い人を抑え、私はその隙に水門の装置へと向かう。玲綺さんの武器、扱うのは初めてだけど、長物の扱いは一通り心得てる!
「退いて下さい!! 怪我しますよ!!」
「おおおおおおっ!! 関銀屏様の道を作れぇ!!!」
『おおおおおおおおおおっ!!!』
「皆、ありがとうございます!!」
皆が私の為に道を作ってくれる。皆の為にも門は開かせない! 戟を振り回し、旋風を起こして敵を吹き飛ばす。装置まであと少し。装置は最初にここを守った時に厳重に動かないようにしている。装置が作動すれば、水車が回って門が開くようになっている。だから装置が動くようになってしまったら終わり。その前に、装置の周りにいる人達に退いてもらわなくちゃ!
「おい、急げ!! か、怪力女が来ちまう!」
「待て!! もう少しだ!! この縄を斬れば!!」
荒縄を斬ろうと剣を振り落とす。荒縄は太くて何重にもしているから何回も剣を振り下ろす。だめ、このままじゃ間に合わない。こうなったら戟を投げて当てるしか!
「止めて―――くださぁぁぁぁい!!」
「ええい!! やらせるかァ!!」
「っ!? 銀屏!!!!!」
「え――――」
玲綺さんの声に反応して振り向くと、大きな剣が目の前に迫っていた。あの怖い人が私に目掛けて投げ付けたようだ。もう投げる直前の私に避ける事は出来ない。
――ごめんなさい、一颯……私……守れなかったよ……。
一颯の顔を思い浮かべ、私は眼を閉じた――――。
――銀屏様ァァァァァァァァァァァ!!!!!!
「ッ!?」
ガキンッ!!
どこからか飛んできた黒い槍が剣を弾き飛ばした。そして装置の所にいた兵士達のほうにも黒い槍が飛んできて兵士達を貫いた。それからすぐ傍の河に何かが落ちたのか、大きな水柱が立った。
「え………?」
さっきの声……気のせいじゃ……ないよね……? それに、この槍は……。
「一颯……?」
ザバァァァァァァン!!!!!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!」
再び立った水柱の中から現れたのは、私の大好きな人。左腕が無くなっているけど、ずっと会いたかった人。龍皇覇―――一颯だった。
「一颯!!」
「銀屏様ァァ!!!」
一颯は私の前に降り立ち、槍を抜き取って近くにいた兵士達を吹き飛ばしていった。
「ご無事ですか、銀屏様!?」
「一颯……! 本当に一颯だよね!?」
「はい。この龍皇覇、地獄の淵より舞い戻って参りました!」
「良かった……良かったぁ……!」
「もう俺が着たからにはご安心を! この龍皇覇が、貴女様をお守り致します!!!」
――むぅ!?
――これは……!?
――……来た。
――ええ、帰って来ましたね。
――へぇ~……。
――生きてて、くれたのか……!
――ついに来たか、正義よ!
――こんな事ってあるんだね~!
―――龍が帰ってきたか!!―――