もう頭の中では鼻からレインボーですわ。
現在、俺は窮地に立たされている。あの後、銀屏様は俺の腹へ強烈な一撃を与え、俺は悶え苦しんだ。どうやら俺は知らず知らずの内に何か粗相をしてしまったようだ。
銀屏様は玲綺を連れて俺の前から去り、俺は親衛隊共に担がれて銀屏様の後を追いかけた。その際、親衛隊共に俺が何かしたのかと聞いたら、苦笑しやがった。苦笑しただけで何も答えない。
その後も銀屏様の護衛に当たっていたが、戦は無事勝利した。魏の軍団を退け、蜀はこの地を治めた。これで蜀の天下への一歩は確実に進んだ。
勝鬨を上げ、俺は銀屏様と一緒に関羽様たちの下へと向かった。関羽殿からは銀屏様を悲しませた罰を貰うだろうなぁ。そう覚悟して関羽様の前に立った訳なんだが……。
「龍琥よ……最期に言う事は無いか?」
「何故、俺は斬首の刑に処されようとしているのでしょうか!?」
「何となくだ!」
「何となくで殺されてたまるか!!」
「ではこう言おう。拙者は貴公が気に食わない!」
「馬鹿な!?」
「ぬぇぇい!!」
「ギャアアアアッ!?」
紙一重で青龍を避け、関羽様から離れる。首は付いてるよな!? せっかく生きて帰ってきたのにここで死んでたまるか!
「何故避ける!?」
「避けるでしょ!?」
「ふぅ……八つ当たりはここまでだ」
「八つ当たりて……」
「龍琥よ、銀屏をどう想っておる!?」
「―――我が命を捧げるに値する御方だと心得ております」
「……では聞き方を変えよう。龍琥よ、拙者は一人の父として貴殿に聞く」
「……は」
「我が娘、関銀屏を一人の漢としてどう想っておる」
「………」
一人の、漢として……? それは、つまり……。
「………」
俺は銀屏様の顔を見る。銀屏様は俺の顔を不安がりながら見ている。
ちょっと待て。それはつまり、アレか? 異性としてどう見ているか、という事だよな? え? どうしてそんな話に? ん? 更にちょっと待て。銀屏様が俺に言ってきたアレって……!?
「………」
「………」
玲綺に視線を送ると頷いてきた。つまり、アレはそういう事だったのかぁ!? アアアアアアアッ!? 俺はなんていう事をしてしまったんだァァ!! 銀屏様を敬愛するあまり、愛よりも忠誠が無意識に心を支配していた! だから俺は鈍感野朗みたいな言動を取ってしまった! なんたる不覚! なんたる愚行! なんたる侮辱!
「答えよ、龍琥。聞かせてくれ」
「……は」
ここで漢を見せず何を見せる。俺は言ってやろう。俺の気持ちを。
「俺は……俺の全てを銀屏様に捧げ、忠義を誓いました。その我が忠道に、男と女の営みなど不要」
「……そうか」
「………」
「だがっ!」
「え……?」
「それは龍皇覇の忠道。一颯の魂は違うと言っている! ここで掴まずとして何時掴む! 我が魂に従いお答えしましょう! この一颯! 軍神の娘を生涯の共に所望する! 願わくば、父君である軍神殿にお許し願いたい!」
「一颯……!」
「……一颯。それが貴殿の真の名か?」
「左様。これは我が魂の名。この名に誓って、嘘はありません!!」
左腕が無い為、包拳の礼が出来ない。だから右拳を左胸に当てて礼をする。
「………銀屏!」
「は、はい! 父上!」
「――――行きなさい」
「え……」
「お前も、共に居たいのであろう。ならば共に歩むのだ」
「父上……! はい! はい!」
「龍琥よ!」
「はっ!」
「我が娘、貴殿に授けよう。だが、貴殿の真の名に誓うのだ。娘を泣かせぬと」
「―――はっ!!!!! 誓いましょう!!!!」
関羽様はそのまま城の中へと入っていった。俺は関羽様のお姿が見えなくなるまで頭を垂れていた。姿が見えなくなると頭を上げ、一つ咳払い。
「コホン……………去らば」
「待て待て待て!? 何処へ行くのだ龍琥!? せっかく父上が御認めになったのだ。何かこう……言うものがあるだろう!?」
「関平殿、察してください。貴方と違って俺は自分から言ったんです。押し切られている貴方とは違うんです」
「な、何を言っているんだい!? 別に拙者は趙氏の尻に敷かれてはいまいぞ!?」
「離してください! 堪忍してください! あんなプロポーズはした事はないんですよ! 今もの凄く恥ずかしいんですよぉ!!!」
「くろぼうず? 何だか知らないが銀屏に言うことがあるんじゃないのか!?」
「うぅ……」
俺は関平殿に連れて行かれ、銀屏様の前に立たされる。銀屏様はモジモジしながら顔を赤らめて上目使いでチラチラと俺を見てくるわはぁっ!!! もう可愛すぎるぞおい!! っつか俺だってあんなプロポーズの仕方してもの凄く恥ずかしいんだからな! ヤることヤってるって言っても、こういうことは何時だって恥ずかしいんだからな!!?
「そ、その……銀屏様……」
「うん………」
「先程は申し訳ありませんでした。銀屏様のお気持ちを無視するような形になってしまって……
「う、ううん! いいの! だって、その……最後は言ってくれたから……」
ああ、もうこれはアレだ。うん、アレなんだ。世界の中心で愛を叫びたい。あと萌えェェェェって言いたい気分。っと、そんなことを考えている場合じゃなかった。っつか玲綺、テメ何でそんなモジモジしてんだよ。いや可愛いけども。何でテメェがモジモジしてんだよ。それに皆も何でそんなニマニマした顔で見てんですか!? 特にそこの金ピカ! あとでまたテメェの正義を毟ってやる!
「―――銀屏」
「ふぁ……!?」
俺は肩膝をつき、銀屏の手を取る。こういう時に片腕が無いのが残念だ。手を両手で握れない。
「片腕を失ってしまったこんな俺でも、君の傍で生涯を全うしても良いか?」
「え、えっと……! ふ、不束者ですが、よろしくお願いします! ――――だ、旦那、さま……!」
「………もうムリ」
――ちょっ!? おい!? い、医療班!! 龍琥を運び込め! 血が! 鼻から血が一斉に!!
――言っちゃった!? 旦那様って言っちゃった!? えへへっ!
――銀屏!? お前は気にしないのか!?
――うおおおおおおおっ!! これぞ愛の正義だぁぁぁぁ!!
――煩いぞ金ぴか! お前の正義なんてこうしてやる!!
――うへェェェェェ!? 止めてくれェェェェ!!
――やれやれ、これで一件落着かねぇ?
――そうだけど……俺は龍琥の今後が心配だよ……主に彼女以外との女性関係に……。
――まぁ、彼のそれもそうだけどね。それよりも心配なのは……。
――うおおおん! おおぉぉぉおおん!! 銀屏ぇぇぇぇぇ!!
――拙者、父上の下へ行ってくる。
――父上……泣き過ぎだ……。
――でも本当に良かったです。これで家族がまた増えますね。龍琥が義弟になるのかぁ。
――なぁ!? 私が可笑しいのか!? 私が大袈裟なのか!? 早くしないと龍琥が血を流しすぎてあああ!? まて!! 逝くな!! 何? 河? ダメだ!! 何がダメか知らないがその河は渡るな!!!