最近、忙しくて中々作業が進まない状況でして。
さて、腕が鈍ってないか心配です。
樊城の戦いの後、俺達は成都へ帰還した。関羽様も樊城に残らず帰還なされた。魏軍も手痛い被害を与えられたから、現状では此方に手を出せない。まぁ、すぐに呉に盟約を破った理由を聞きに行かなければならないがな。
とにかく、成都に帰還した理由がどうやら俺に関しているらしい。らしいと言うのも、頑なに俺を連れて行こうとしているのだ。別に俺は逃げもしないし、隠れもしない。成都に帰るのだって嫌ではないし、寧ろ帰りたい。両親にも会いたいし。
だが皆は、俺が逃げ出さないように見張っていたりしている。そこまでされたら何だか嫌な予感もしてくるが、俺は銀屏様から離れたくもないのでされるがままにしている。
で、俺はとうとう成都に帰ってきた。片腕を失い、過去に因縁にケリを着け、銀屏様と共に生きると誓った俺にとって、何だか言葉に表せないモノが来る。
「龍琥!!」
「劉びふぇっ!?」
劉備様が駆けつけてくると俺に向かってキツイ抱擁をしてきた。っつかギブギブ!!
「よくぞ!! よくぞ生きてくれた!! よくぞ戻ってくれた!! 私は嬉しいぞ!!」
「劉備様っ、くるっ、くるしっ……!?」
「劉備殿、龍琥が苦しがっております。落ち着いてください」
「おお、すまぬ。大切な甥になる者が生きていてくれて嬉しいものでな」
諸葛亮様が止めてくださらなければ、俺は男の胸の中で息絶えるという、何とも言えない死を迎えるところだった。死ぬんだったら銀屏様の胸の中が良い……いや、決して下の意味ではなくて。
「ん? 甥、ですか……?」
「兄者には早馬で事の仔細を伝えている」
「……関羽様、その眼から流れ出たような血痕は何ですか?」
「既に街中に広まっているだろう」
「ねぇ、何で青龍を持つ手がふるふると震えているんですか?」
「婚儀の準備も進めてもらっている」
「どうして刃を首下に当てるんですか!?」
この人怖いよ!! 愛紗だってこんなことしなかったよ!! なぁ、知ってるか? この怖い人が俺の義父になるんだぜ? これじゃ、何時死んでもおかしくないか?
「龍琥」
「趙雲様……」
「……良くぞ帰ってきた」
「はっ……。しかし、銀屏様に差し上げた身体、五体満足とはいきませんでした」
「何を言う。お前は生きて銀屏の下へ戻り、忠義を果たしたではないか。これからも、その忠義は貫いていくのだろう?」
「然り。俺はもう、どこへも行きません」
そう言って俺は隣に立っている銀屏様の顔を見る。少し頬を赤くして俺を見上げている銀屏様。もうタマリマセン。
「そうか。それは良いことだ…………これからが大変なのだぞ、龍琥」
「え? 良く聞こえませんが……」
「何でもない、独り言だ」
「では龍琥よ、積もる話もあるだろうが、今は両親に顔を出してやりなさい。後で使いの者を出す。少し、休まれよ」
「……はっ、ありがとうございます」
「それじゃ……旦那様? 一颯? 龍琥? う~、何て呼べばいいのかな?」
「銀屏様がしっくりくるモノで構いませんよ」
「じゃ………また後でね、アナタ」
「ぶるはァッ!?」
な、何で赤くなりながらウィンクをして首をかしげながらそんな可愛い呼び方するんですかーヤッター。思わず鼻から俺の熱いパトスが飛び出てしまったよおい。そして銀屏様はそれに気付かず関羽様達と一緒に行かれた。
「ってか、何で銀屏様はそんな知識を持っているんだ?」
「……お前の母上が銀屏に色々と聞かせていた筈だが」
「母さん、グッジョブ…………待て、何で玲綺はここに残ってんだ? 皆もう行ったぞ?」
「そ、それはだな……」
「あ、置いて行かれたんだな。まったく、お前はそんなんだからボッチなんだ。もっと友達を作らないとダメだろ」
「と、友達ならいる! 銀屏に星彩に……それに……えっと……その……え~っと……」
「もう良い、もう良いだ。泣いても良いんだ」
「ち、違うぞ!? 別に二人だけじゃないからな!? 本当だからな!?」
「っつか、そこに俺が入っていないことに少し悲しいんだが?」
「だ、だってお前は友達ではないからだ!!!」
「ゴハァッ!?」
痛い、心が痛い。実際に直接言われるとこんなにも心にグサッとくるもんなんだな。今まで弄んできた代償か。これでも玲綺のことは認めていたんだがな……はぁ……。
「だって、だってお前は……私にとってお前はっ……!」
「………何だよ?」
「私は……お前を……お前が……!」
「………?」
「お前が………お前が……おま――――」
「………?」
「ああああああああああっ!!! やはり無理だあああああああああああああ!!!!!」
その瞬間、俺は顔面に衝撃を感じ、空を舞って実家の玄関の前に落ちたのだった。何を言っているのか俺も良く分からない。だがそうなんだ。玲綺が顔どころか全身を真っ赤にしてたのは辛うじて見えたんだが、気付いたら空を舞っていたんだ。
「あら、お帰り龍琥」
「た、ただ、いま……」
そして何事も無かったかのように戸を開け、俺を家に入れる母。だが俺は知っている。母の袖がびしょびしょに濡れていることは。目も少し赤く腫れ上がっている。つまり、そういうことなんだろ。
「おお、お帰り龍琥。今日は長いこと家を出てたな」
「父さん、顔顔。鼻水と涙で台無しだよ」
「ば、バッカヤロ! これは汗だ!! さっきまで母さんとお前の弟か妹を作ってったんだよ!」
「そんな生々しい話は止めて……あれ? 母さん、何で顔を赤くしてモジモジしてんの? もしかして袖が濡れてるのって、それが理由じゃないよな?」
「龍琥、貴方もいずれ銀屏ちゃんとそういうことするのよ。それはもうご近所様が毎晩眠れないぐらいに」
「ちょっと俺外で泣いてくる」
バタン……。タッタッタ………。
『アンタァァァァ!!! 息子が帰ってきたんだよぉぉぉぉ!!!』
『ヌアアアアアアアッ!!! ヨガッダ!!! ヨガッダァァァァア!!!』
『ガミザバァァァァァ!!! アリガドウゴザイマズゥゥゥゥ!!!』
「ヂグジョォォォオオォォォオオオォォォ!!!! ウレジイジャネエガヨォォオオォォオオォォ!!!」
やっぱり、俺の両親は最高の両親だ。
★
「龍皇覇、そなたは己が誓った忠義を貫き、結果、樊城を守り、我が義弟とその家族、そして多くの民達を救ってくれた。その功績を称え、私はそなたに
「はっ」
「そなたが魅せる武、まさしく黒き龍なり。よって、そなたには『
「はっ。龍皇覇、驪竜の名、ありがたく頂戴いたします」
将達が集まり、それなりの立場のある人達が集まる広場。その場所で、俺の功績を称える式が始まっている。
因みに、今の俺の格好はいつもの服装に……あれ? 俺の服装って言ったことあったっけ? 無い気がするから言おう。黒緑の上下の服に黒緑の手甲。そんでもって今は肩から無い左腕を隠すために黒緑の布をマントみたいに身に着けている。
いや、まぁ……黒って思うだろうけど気にするな。銀屏様からも似合うって言ってもらったんだ。だから良いんだ。
「そして、そなたの働きを賞し、牙門将軍に任命する」
「え……?」
しょ、将軍って……あれ? 俺の地位って別にそこまで高くなかったよな? 銀屏様の親衛隊隊長ってぐらいで……ええ!? 一気に昇格!? ま、マジで!? 俺大出世!? ヤッバ! 父さんと母さんが聞いたら泣いて喜ぶぞ!
「これからも、蜀の為に、何よりそなたが想う人の為に奮闘してくれ」
「は、はっ! 我が全てを懸けて、全身全霊で挑みましょう!」
★
「龍琥、ちょっと良いかしら?」
「星彩様?」
式が終わり、銀屏様と共に俺の家に挨拶も兼ねて帰ろうとした矢先、星彩様に呼び止められた。
あ、挨拶というのはつまり……まぁ、そういう事だ……言わせんなよ恥ずかしい。
「ごめんなさい、少し時間をもらえる?」
「は、しかし……」
「良いよ。私、門で待ってるから!」
「分かりました」
「ありがとう、銀屏」
「ううん、それじゃあね!」
銀屏様は手を振って行ってしまわれた。俺は星彩様が着いて来てと言うので、着いていく。
場所は人目が少ない庭の木の下で、星彩様はそこで立ち止まり此方を向く。
――龍琥…………。
――星彩様? 少しお顔が赤くなってますが……大丈夫ですか?
――お酒、飲んだから。それより………。
――はぁ、何でしょう?
――私、出会ったその日から、貴方の事が―――――。
――………………………………………………………………ヱ?
――兄者、これで良かったのか?
――良いのだ。龍琥が銀屏以外にどの様な言葉を返すのか、義父として知らなければならぬ。
――しかしな、雲長。龍琥もそれなりの地位に着いた。子を成す為には―――。
――それは兄者が決める事ではなく銀屏が決める事ですぞ!
――……あれ? そこは龍琥じゃねぇのか?