関銀屏と行く   作:魔帝

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 やっぱオリジナル展開が入っていく。


第二話 長坂の戦い

 

 

 さて、大変な事になりました。銀屏様と約束をしたから数ヶ月。私達劉備軍は荊州を出るために大移動をしています。魏の曹操が南進を繰り返しており、ついに荊州を標的にしたのです。さらに悪い事に劉表殿が病でこの世を去り、跡を継いだ庶子・劉琮殿は曹操に降伏してしまいました。そうすると曹操が狙うのは劉備様のみ。劉備様は諸葛亮様に劉琮殿を討てば荊州を取れると進言されましたが、劉表殿の恩義に反する為に拒否しました。そして決断したのが荊州から南へ逃げ出すこと。更にそれに荊州の民達、また劉琮殿の配下の人達が劉備様に付き従う事になり、荊州がそのまま移動するような感じになってしまった。

 

 

「りゅーく、これからどこへいくの?」

 

「銀屏様、今から私達はお引越しをするのですよ。南の方へ」

 

「おひっこし? みんなも?」

 

「はい。銀屏様のお友達も皆です」

 

 

 銀屏様と奥方様を連れ、隊列の前の方へと連れて行く。関平様と関興様、関索様は関羽様に一緒に戦うと言い出しましたが、関平様は兎も角、関興様と関索様は幼すぎます。なので関羽様が認めず、隊列の護衛をしております。

 移動を開始した私達ですが、大勢の民を連れての移動は時間が掛かり、十里程度しか移動が出来ない。っだから二手に分かれる事となった。関羽様が数百隻の船を率い、江陵で落ち合う事にしました。

 その際、関羽様に呼ばれ、こう言われました。

 

 

「龍琥、我らは船で南下する故、兄者よりも安全と言っていい」

 

「はい」

 

「銀屏もこちらに同行させる。だからそなたは兄上の護衛に回って欲しい」

 

「は、いえ、しかし……」

 

「そなたの武は知っておる。子供にこんなことはさせたくはないが、そなた程の武は……」

 

「……いえ、大丈夫です」

 

 

 自分の実力は知っているつもりだ。私の武力は関羽様や趙雲様よりも一歩劣るほど。つまり、強い。だから、劉備様の護衛をするのは可能なのだ。私は銀屏様の下へ行き、劉備様と行く事を伝える。すると、銀屏様は泣き出してしまい、私に抱き付いてきました。

 

 

「いや! りゅーくはわたしといっしょにいるの!」

 

「しかし、銀屏様……私は劉備様の護衛に行かなければなりません。一緒にはいられません」

 

「りゅーくはわたしとやくそくしたもん! ずっといっしょにいるって!」

 

 

 ぎゅっと力強く抱きついてくる銀屏様。腕を回しているのは太股の部分なので、その部分が潰れそうでもの凄く痛い。しかし、それ以上に心が痛い。銀屏様との約束を、仕方が無いとは言え破ってしまう。

 

 

「銀屏、我儘を言わないの。龍琥殿は劉備様をお守りしなければならないの」

 

「いや! いっしょ! いっしょなの!」

 

「……銀屏様」

 

 

 私は跪き、銀屏様と目線を合わせる。

 

 

「約束しましょう。必ず、銀屏様の下へと帰ると。そしたらまた一緒に遊びましょう」

 

「でもぉ……」

 

「約束です」

 

 

 小指を向ける。銀屏様はジッとその指を見つめ、やがて涙を拭って小指を引っ掛ける。

 

 

『ゆーびきーりげーんまん、うーそつーいたーらはーりせーんぼんのーます、ゆびきった』

 

 

 

 

 銀屏様と別れ、劉備様と移動を開始して数刻。私は頭が真っ白になってしまった。その原因は今目の前にいる少女。私は膝を付き、両手を地面に付いて頭を垂れた。

 

 

「…………」

 

「な、なぜ……!? 何故ここに……!?」

 

「およいだ……」

 

「なんて危険な真似を!?」

 

「ひゃうっ!?」

 

 

 目の前にいる少女、銀屏様は私の大声に怯え、身体を縮めてしまう。そう、銀屏様なのだ。なんと、私と劉備様が移動を開始した直後、まだ岸に近かった船の上から河へ飛び降り、泳いで岸まで辿り着いた。そして隊列の一番後ろに並び、今の今まで付いて来ていたのだ。気が付いたのは今日の移動が終わり、遅れている者がいないかを確認している時だった。銀屏様が私に抱き付いてきたので、私は数秒ほど固まってしまいました。今は劉備様の奥方様、糜夫人・甘夫人の下へ連れて行き、初めて銀屏様を叱り始めました。

 

 

「銀屏様! なんて危ないことをしているのですか!? 浅瀬だから良かったものの、深い場所でしたら溺れていたのですよ!? いいえ、例え溺れなくても後方の船に巻き込まれていたかもしれません! いったい何を考えているのですか!?」

 

「だ、だってぇ……! りゅーくとはなれたくなかったもんっ!」

 

「っ!? 約束したでしょう!? 必ず銀屏様の下へと帰ると! 何故待っていてくれなかったのです!?」

 

「ひっぐっ、ごめっ、ごめんなさいっ……!」

 

「まぁまぁ、確かに銀屏ちゃんは危険なことをしたけれど、こうして反省していることだし、ね?」

 

「そうそう。むしろ褒めるべきね。大好きな人の為に、こんなことするなんて、ただの子供じゃないわ」

 

「糜夫人、甘夫人も。そういう問題ではありません。もういいです。銀屏様、貴女は奥方様たちと一緒にいてください。私は前線で劉備様を護衛しなければなりませんので」

 

「え……い、いや! いっしょに……!」

 

「駄目です。では、銀屏様をお願いします」

 

 

 私はそのまま劉備様の下へと向かい、銀屏様から離れました。後から考えると、あのまま一緒にいたら、あんなことにならなかったと、少し後悔しています。

 

 劉備様の下へと行き、銀屏様の事を伝える。

 

 

「なんと!? 銀屏が!?」

 

「それはまた、危険なことを……」

 

 

 諸葛亮様が呆れた表情を浮べ、羽毛扇で扇ぐ。

 

 

「今は奥方様たちのところに預けております。反省もしているようなので、一先ずは安心かと」

 

「がははっ! 流石兄者の娘だぜ! 度胸がある!」

 

「翼徳、そういう問題ではない。龍琥、私の事はいいから、銀屏の傍にいてあげなさい」

 

「いいえ、劉備様。元はと言えばこれは私が銀屏様を甘やかし過ぎたのが原因。ここは厳しく、この移動中は銀屏様の下には参りません」

 

「龍琥、劉備様は私が守る。張飛殿もいる。傍にいてあげなさい」

 

「趙雲様、これも銀屏様の為なのです。このままずっと甘やかし続ければ、銀屏様はこれからも今回の様なことが起きてしまいます」

 

「……そうか。だが、いざという時は傍にいてあげなさい」

 

「……分かりました。その時は……」

 

 

 

 

 突然だが、私は転生前の記憶をはっきりと覚えていない。転生前も三国時代だというのは覚えている。だれが仲間だったのかも。だが、歴史の流れだけは覚えていない。いつ、あの戦いが起こるのか。いつ、あの人が死ぬのか。何も覚えていないのだ。だから、今回の事も分からなかった。

 

 

「報告! 奥方様たちが取り残されております! 現在、北の集落で匿われているのこと!」

 

「なに!?」

 

「なんと!? では私がお助けしましょう! 張飛殿、諸葛亮殿、ここはお願いします!」

 

「おう! 敵は俺らで食い止めてやるぜ! 趙雲、早くこの長坂橋に戻ってこいよ!」

 

「はい! 行くぞ、龍琥!」

 

「は、はい!!」

 

 

 私は馬に跨り、趙雲様と共に集落へと向かう。私は己の武器である二振りの黒い槍を握り締め、邪魔する敵を斬り殺していく。殺人は転生前に散々やって来ている。今更どうってことない。

 

 

「退け! 邪魔をする者は、この趙子龍の槍の餌食となるぞ!」

 

「………」

 

 

 銀屏様、どうか無事でいてください! 私が、私が今助けに行きますから!

 

 

「趙雲だ! 趙雲がいるぞ!!」

 

「もう一人いるようだが、いまが好機! 討ち取れ!!」

 

「くっ、相手をしている暇はないというのに!」

 

「――――まだ」

 

 

 退けよ……銀屏様の下へ行かなければならないのだ……!

 

 

「じゃま―――邪魔、邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔!! 邪魔だぁぁぁぁぁあ!!」

 

「龍琥!?」

 

 

 馬の上から飛び、上空から敵の塊に狙いを付ける。

 

 

「失せろ!!」

 

 

 二本の槍に黒い雷が纏わり付き、右手の槍を投げ付ける。槍は敵の塊の中心に突き刺さり、そこから黒い雷の爆発が起きる。そしてつづけて左手の槍を投げ付ける。先程よりも大きな爆発が起こり、敵部隊は壊滅した。

 

 

「龍琥! 無理をするな!」

 

「無理をしなければ銀屏様をお救いできない!! 趙雲様、急ぎますよ!!」

 

「……それもそうだ! 急ごう!!」

 

 

 私は再び馬に乗り、趙雲様と一緒に戦場を駆け抜ける。そして集落へと到着し、銀屏様を探す。奥方様たちと一緒に居るはずなので、どこかに隠れているはずです。

 

 

「っ、あれは!?」

 

 

 趙雲様が何かを見つける。それは糜夫人を支えている女官と、阿斗を抱いている甘夫人、そして木の棒を握り締めている銀屏様だった。それを確認した私は叫ばずにはいられなかった。

 

 

「銀屏様ァ!!」

 

「っ!? りゅーくー!!!」

 

「あん? おい! ありゃあ、蜀の奴らじゃねぇか!」

 

 

 しまった!! 敵に見つかってしまった!!

 

 

「おらァ! 死ねぇ!!」

 

 

 間に合わない。敵が剣を振り上げ、銀屏様めがけて振り下ろす。が、その刃は銀屏様に当たる事は無かった。何故ならば、銀屏様の前に糜夫人が飛び出し、盾となったのだから。

 

 

「あうっ……!?」

 

「糜っ!?」

 

「っ!? ああああああああっ!!」

 

 

 私は糜夫人を斬った敵がもう一度剣を振り下ろす前に蹴り飛ばし、槍を突き刺す。そして前からやってくる敵の塊に突撃し、右手の槍を逆手に持ち、身体を右に捻る。

 

 

「消し飛べ!!」

 

 

 黒い雷が全身から発生し、槍を勢い良く振るう。すると黒い雷の竜巻が発生し、敵を呑み込んで行く。竜巻が治まるころには敵は全員焼き斬れていた。

 

 

「りゅーく!!」

 

「っ、銀屏様!」

 

 

 走ってくる銀屏様を抱き締め、銀屏様を守れた子とを実感する。

 

 

「ご無事で何よりです……!」

 

「りゅーく! りゅーくぅぅう!」

 

「もう大丈夫です。私が銀屏様をお守りします」

 

 

 左手の槍を背中にかけ、銀屏様を抱きかかえる。そして糜夫人と甘夫人の下へと向かう。

 

 

「趙雲様、糜夫人は!?」

 

「重傷だ! すぐに治療しなければ! さ、私に掴まって下さい!」

 

 

 趙雲様が糜夫人を抱きかかえようとするが、糜夫人はそれを拒み、趙雲様を突き飛ばした。

 

 

「何を!?」

 

「わ……たしはもう、だめです……! わたしがいればっ……あしでまといに……!」

 

「何を言うのです!? 早く行きましょう!」

 

「……銀屏ちゃんを……まもれてよかったっ……」

 

「糜、馬鹿な事は止めて早く行きましょう!」

 

「………劉備様に……申し訳ありませんと……」

 

「糜夫人!?」

 

 

 糜夫人は集落の中にあった井戸へと飛び込んだ。自害。動けない自分がいては逃げられないと考え、足手まといになるぐらいならと、自ら死を選んだ。なんて……愚かな事を……!

 

 

「糜……そんな……っ」

 

「甘夫人!?」

 

 

 甘夫人が腹を押さえ、蹲る。まさか、甘夫人も!?

 

 

「どうされました!?」

 

「逃げている最中……流れ矢に当たってしまって………っ」

 

「いけない……! 龍琥! すぐに戻るぞ!」

 

「はい!」

 

 

 私は馬に跨り、前に銀屏様を乗せる。覆い被さるようにして銀屏様を守る。趙雲様は阿斗様を布に包んで身体に縛り、甘夫人も布で身体に縛って馬に乗る。

 

 

「行くぞ!!」

 

「はい!!」

 

 

 来た道を走り抜けていく。動き辛くなっている趙雲様の代わりに前に出て敵を蹴散らしていく。途中、待ち伏せに遭い道を塞がれたが、銀屏様を馬に乗せたまま降り、黒い雷の竜巻を連発して蹴散らした。

 

 

「ハァ、ハァ……!」

 

「りゅーく……!」

 

「大丈夫です! 趙雲様! 長坂橋が見えました!」

 

「よし! このまま行くぞ!」

 

 

 長坂橋では張飛様が一人で橋を守っていた。張飛様は私達の姿を見つけると、怒号を上げながら蛇茅を振り回し、旋風を起こした。すると敵軍はそれに巻き込まれ吹き飛んでいった。

 

 

「張飛様!」

 

「おう! 龍琥に趙雲! 遅かったじゃねぇか!」

 

「張飛殿、すぐに劉備様の下へ参りましょう!」

 

「俺はもう少しこいつらを蹴散らしてから向かうぜ!」

 

「分かりました! 龍琥! 行くぞ!」

 

「張飛様、ご武運を!」

 

「おうよ!!」

 

 

 私は張飛様を通り過ぎ、劉備様の下へと急いだ。どうやら長坂橋からではなく、反対側からも敵が現れていたようで、敵部隊が民達を襲っていた。それを、劉備様と諸葛亮様が雷と気砲で守っていた。

 

 

「劉備様! 甘夫人と阿斗様をお連れしました!」

 

「趙雲! よくぞ、よくぞ戻ってきてくれた!」

 

「劉備様、糜夫人は……自害なされました」

 

「っ………そうか。今は甘と阿斗を―――」

 

「ハァッ!!」

 

 

 空から青い武人が降ってきた。その武人は両手に斧を握り、赤い気を全身に纏っている。

 

 

「張文遠、劉備殿の首をいただきに参った! いざ、覚悟めされよ!」

 

 

 張文遠。泣く子も黙る魏の武将。その実力は天下に轟くほど。

 

 

「くっ、こんなところで!?」

 

「りゅーく……!」

 

「っ……!」

 

 

 駄目だ。今の私では彼に勝てない。まだ子供の私が勝てる相手ではない。今まで戦ってこれたのも、上手くいってただけ。ここは趙雲様たちに任せるしかない。

 

 

「張遼! 俺が相手だ!」

 

「張飛殿!」

 

 

 張飛様が着てくれた。張飛様と張遼はぶつかり合い、火花を散らしていく。私は銀屏様を抱き締め、他の敵からの攻撃を警戒する。やがて張遼は張飛様の一撃を受け、撤退していく。そして私達は長坂を脱出し、関羽様と合流を果たした。そのまま長江に沿って南下していった。

 

 

 

 

 その後、銀屏様は関羽様のきついお叱りを受け大泣きをした。そして私はこの世界での初めての戦闘により疲労で倒れてしまった。それによって銀屏様が更に泣いてしまわれた。眼を覚ますと、隣で銀屏様が私の手を握って眠られていた。

 

 

「龍琥よ」

 

「っ、関羽様」

 

「寝たままでよい」

 

「……はい」

 

「龍琥。此度は我が娘が迷惑をかけた。そして礼を言う。娘を守って貰った事この恩、決して忘れはせぬ」

 

「いえ、私は関銀屏様の護衛。当然の事をしたまでです。礼など、必要ありません」

 

「しかし―――」

 

「ならば今回の事、銀屏様にこれ以上のお咎めは無しでお願いします」

 

「―――あい解った。そなたがそれを望むのならそうしよう」

 

「ありがとうございます」

 

「んむぅ……りゅーく……だいすきぃ」

 

『………』

 

 

 銀屏様の可愛らしい寝言に私と関羽様は固まり、私は汗をタラタラと流し、関羽様は何か赤い気みたいなのをユラユラと出し始めました。

 

 

 

 

 龍琥よ、そなた……まさか我が娘を……。

 

 ………私は悪くない。

 

 

 

 

 

 

 

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