関銀屏と行く   作:魔帝

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 無双のモブ武将、調べてみたら凄い人が多いな。それはそうと、徐庶の優しさにニヤニヤしています。




第七話 成都の戦い

 

 益州・成都。ここが今回の戦場。俺は今、愛槍の二振りの黒い槍を握り締め、戦場を駆け回っている。そろそろこの槍に名前を付けてあげたほうがいいかな? いつまでも黒い槍じゃ、どうもな……。っつか、俺の得意とする獲物は槍じゃないんだけどな……。桃香がいる世界に転生したときは、黒龍っていう、いかにもイタイ名前の黒刀を扱ってたんだよな。あの黒刀は所謂、妖刀なんですよ。はいそこ、イタイ奴だなぁって思ってんじゃねぇよ。実際に妖刀だったんだよ。鞘から抜けば抜いた者の心を狂気に染め上げ、周りにいる命を斬っていくんだよ。

 

 それを桃香が“拾って”きてよぉ……。驚いたかい? 拾ってきたんだぜ? 何か落ちてたって可愛らしく物騒なもんを持ってくんだぜ? あの時は焦ったなぁ……。桃香が抜いちまって、いきなり俺に斬りかかってきたんだから。桃香から黒龍を奪って、今度は俺が狂気に呑まれかけたんだけど………うん、気合でどうにかしたよ。何て言ったらいいかな……うん、気合でどうにかした。

 

 と、ともかく、その黒龍は黒い刀身で、刃毀れもしないし、鉄なんか豆腐のように斬れちまう。某死神代行みたいに黒い斬撃を放つことなんて―――――こっちの世界じゃできそうだな。まぁ、二槍ってのは、黒龍を手に入れる前に使ってたんだよ。

 

 

「おい! 龍琥! あんま無茶すんじゃねぇぞ!」

 

「大丈夫です! この程度!」

 

 

 後ろにいる張飛様が敵を投げながら俺に――――私に言ってくる。今は戦闘中でした。

 

 

「黒烈火!」

 

 

 二槍による突きの連撃を敵の集団に叩き込み吹き飛ばす。二槍を振り回し、敵を纏めて吹き飛ばす。地面に槍を叩きつけ、衝撃破を出す。上に敵を打ち上げ、自分も跳んで斬りつけ、刺し殺す。

 

 身体が成長したことで運動神経もあがったのか、できなかった技ができるようにになっている。自惚れているわけではないが、確かにこれでは趙雲様に追いついていると言われても納得する。今までは鍛錬でしか戦っていなかったから、無意識に力を抑えていたようだ。それを皆様は見破っていたのか。

 

 

「消し飛べ!!」

 

 

 槍を振るい、黒い雷の竜巻を飛ばす。二年前と比べて大きくなり、より多くの敵を巻き込んでいく。

 

 

「これなら……銀屏様を守る事ができる。どんな敵からでも、銀屏様を守れる!」

 

 

 例え相手が呂布でも――――うん、呂布は厳しいかな? いや、でも娘があアレだし……いや、アレが特殊なだけか。うん、呂布は絶対に強い。でも銀屏様を守るためならば負けない。

 

 

「やるじゃねぇか龍琥!! こりゃあ、俺のお守りは必要ねぇな!」

 

「ご心配ありがとうございます。張飛様、私は遊撃に回ってもよろしいでしょうか?」

 

「お? おお! いいぜ! こんな奴ら、おめぇの敵じゃねしな!」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 私は張飛様と別れ、一人単身で先行する。普通なら愚かな行動だが、今の私―――俺ならどうってこともない。

 

 

「……ん?」

 

 

 急停止し、細い道があるのを見つける。道をよーく見ると結構な人数が通った形跡があった。

 

 

「……っ!? 敵の伏兵か!?」

 

 

 俺達にここを通る予定は無い。少なくとも、軍議ではそう言っていなかった。つまり、そうなると考えられることはこの道は今まで民達が通っていた道か、敵の兵士が通った跡かだ。俺は伏兵だと考え、槍を握り直してその道を進んでいく。

 

 

「……いた」

 

 

 いた。指揮官らしき人物以外は全員弓を持っている。やはり伏兵だったか。しかもここ、高台になってて見下ろせる場所から見える道は龐統様が通っている道じゃないか!?

 

 

「チッ、やらせるかよ! おいテメェら!!」

 

「なっ!? ここが見つかった!?」

 

「こんな所で何やっている……いや、言わなくていい。テメェらはここで死ぬんだからな!」

 

「な、なんだこの餓鬼ィ!? 射て! 矢を射るのだ!!」

 

 

 弓兵達が一斉に矢を構えて放ってくる。俺はそれを全て槍で叩き落し、敵に近付く。近くにいる敵から斬り殺していき、部隊を壊滅させていく。

 

 

「くそ!? なんでこんな餓鬼一人に!?」

 

「貴様が指揮官か?」

 

「そうだ! 劉璋様に忠誠を誓った張奉宗! 貴様は誰だ!?」

 

「……劉備軍、龍皇覇。軍神の娘・関銀屏が一番槍」

 

「龍皇覇……子供ながらにその武、貴様を我が敵と認めよう! いざ!」

 

「―――来い」

 

 

 張奉宗は槍を構え、俺も槍を構える。

 

 この男……なんて眼だ。劉璋の名を口にした時から眼が変わった。弱者ではなく、強者の眼に。つまり、こいつは俺が銀屏様に忠誠を誓ったように、劉璋に命を懸けている。それもそこらの雑兵程度ではなく、相当な覚悟を持ってだ。

 

 

「―――ハァァァア!!」

 

「劉璋様の為にぃぃぃ!!!」

 

 

 勝負は一瞬。互いに地を蹴り、交差する。その交差する一瞬に攻防を幾度も繰り返した。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 一瞬の静寂の間。そしてその静寂を破ったのは張奉宗だった。

 

 

「もう……しわけ……ありません……劉……璋……さまぁ……」

 

 

 俺の槍は張奉宗の心臓を貫き、張奉宗は死んだ。しかし、ただでは死んでくれなかった。

 

 

「ぐっ……!?」

 

 

 張奉宗の槍は俺の右肩を斬っており、血が勢いよく流れ出ていた。

 

 

「敵将・張奉宗! 龍皇覇が討ち取ったァ!! ッテテテテテテ!?」

 

 

 すぐに衣を破り、縛って止血する。痛いけど、見た目よりは浅いな。

 

 止血が終わった直後、下の道から龐統様が兵を引き連れてやって来た。

 

 

「うん? 龍琥じゃないか。ちょっと、怪我してるじゃないか!?」

 

「は。ここに伏兵がいましたので、討ち取りました」

 

「そぉかい。あっしはお前さんに助けられたみたいだねぇ。礼を言うよ。すぐに本陣に帰って手当てしてもらいなぁ」

 

「いえ、見た目よりは大した怪我ではないので、このまま行きます!」

 

「おい、ちょいと! やれやれ……若いっていいねぇ」

 

 

 

 

 あーあ、怪我しちまったなぁ。これじゃ、帰ったら銀屏様に怒られちまう。泣き虫にも怪我すんなって言われたのによぉ。っつか、今思ったけど、俺今回が怪我をするのが初めてじゃないか? この世界に転生して、今まで怪我なんてして……あ、いや、関羽様にやられたアレはノーカウントだから。

 

 

「っ、張飛様!」

 

「おお! 龍琥! 大変だ! 兄者が敵の罠に引っ掛かっちまった! そこの砦に閉じ込められた!」

 

「えっ!?」

 

 

 目の前の砦は硬く閉ざされており、その前には敵兵の軍団が道を塞いでいた。

 

 

「畜生! すぐに兄者を助けださねぇと!」

 

「……張飛様、私が道を斬り開きます! その隙に張飛様は劉備様をお助け下さい!」

 

「斬り開くって、おめぇ……!」

 

 

 今の俺ならばいける。身体の奥底から力が溢れて来ている。これが……これが“覚醒”か!

 

 

「おおおおおおっ!!! 黒き龍とならん!!!」

 

 

 全身から、刃から金色の気が溢れ出てくる。二振りの槍を何度も何度も振り回し、敵軍を呑み込んで行く。まるで塵のように飛んでいく。まだまだまだまだまだまだまだまだぁ!!!!

 

 

「吹き―――飛べ!!!」

 

 

 二槍で突きを放ち、巨大な衝撃波を放つ。すると敵軍は全員吹き飛び、同時に砦の入り口を吹き飛ばす。

 

 

「張飛様!!!」

 

「おおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

 張飛様も金色の気を吐きだし、囲まれている劉備様を助けに向かわれた。俺はというと、一気に力が抜け、その場にへたり込んでしまっていた。

 

 

「ハァー、ハァー……! なん、だ……この体力の消費は……!?」

 

 

 一気に体力を持ってかれたぞ!? 張飛様は俺と同じ事をしたのにピンピンしてるぞおい!? 俺がまだ子供だからか!? それに、なんかさっきの技、まだ物足りない感じだった。何というか……まだ覚醒しきれていないというか……まだ力不足だった。っつかなんか勢いで黒き龍とか言っちまったけど、もの凄く金色だったし。恥ずかしい。

 

 

「だ、大丈夫かい、龍琥!?」

 

「じょ、徐庶様……!」

 

「やっぱり無理だったんだ! まだ子供なのにこんなになって……!」

 

「申し訳ありません……! まだ、体力が付いていけてないみたいで……!」

 

「怪我もしてるじゃないか! すぐに本陣へ行こう。さ、肩に捕まってくれ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 

 徐庶様に肩を担いでもらい、何とか立ち上がる。そのまま本陣の方へと下がり、医療班に拉致された。怪我の処置をしてもらい、俺は……私は暫し休むことにしました。

 

 

 

 

 ――りゅーく!

 

 ――はい、銀屏様。

 

 ――あのね、わたし、りゅーくにいいたいことがあるの!

 

 ――何でしょう?

 

 ――えっとね、えっとね!

 

 ――はい。

 

 ――すぅ~……。

 

 ――……?

 

 ――燃えよ!! 俺の熱き正義よぉぉぉぉぉ!!!!

 

 

「どぅわあああああああああああああああっ!?!?!?!?」

 

 

 なななななななな何だ今の甲高い声!? 銀屏様じゃない!! あんなの銀屏様じゃない!! って、夢か!? あー驚いた! 何なんだよ、もー!!!

 

 

「くそ……戦はどうなったんだ?」

 

 

 頭を振ってまだ混乱している意識をはっきりさせる。周りには誰も居らず、外は騒がしいというか賑やかだった。私は立てることを確認し、外へと出た。外には、いやに暑苦しい金ピカがいた。

 

 

「おおおおおおお!! 劉備殿こそが俺の正義!!! 燃えろ!!! 俺の熱き魂!!!」

 

 

 ……この声、こいつか。こいつが俺の銀屏様を穢したのかァ……!

 

 

「ん? 龍琥!? まだ寝てなきゃ駄目じゃないか!」

 

「徐庶様……あの暑苦しいのは何ですか?」

 

「え、ああ……劉璋のところにいた将なんだけど、劉備殿の考えに賛同してこっちに来た馬超だよ。横にいるのは馬岱さ」

 

「へーそーなのかー……」

 

「劉備殿こそが正義!!!! 俺の正義!!! 燃える!!! 燃えてきたーーー!!!」

 

 

 イラッ。

 

 

「劉備殿の正義の為!!!!! この俺の槍は!!!! 悪を貫く!!!!!」

 

 

 イライラッ。

 

 

「おおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!! やるぞ!!!!! 俺はやるぞぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 ―――――。

 

 

「せいぎ――――」

 

「じゃァかましいんじゃボケェ!!!」

 

「じゃばッ!?」

 

「龍琥!?」

 

「若ッ!?」

 

「正義正義正義正義喧しいんだよ!!! 傷に触るだろうが!!! 俺の夢に侵入してきてんだよ!! 思わずドロップキックかましちまっただろうが!!!!」

 

「な、何だ貴様はァ!!!!?」

 

「だァァ!! 一々声がデカイんだよ!!」

 

「貴様!! さては悪だな!?」

 

「なァんでそうなんだよ!? だいたいなァ、真の正義っつーのは、銀屏様の事を言うんだよ!? 可愛いは正義って言うだろうが!!」

 

「何ッ!? ならば、その正義、この馬孟起が正邪を見定めん!」

 

「テメェなんぞが銀屏様に近付くんじゃねぇよ!!!!」

 

「ばふっ!? か、兜は止めろ!! これは俺のお気に入りなんだ!!! ああっ!? 装飾を抜くな!! 何をニヤニヤしている!? よせ、止めないか!!! お、おおおおおおおおおおお!? 俺の正義がァァァ!?」

 

 

 

 

 ――龍琥……随分とはしゃいでるねぇ。余程、新しい仲間が嬉しいのかい。

 

 ――がははっ! 戦では凄くても、まだまだ子供か!

 

 ――いや……ただ怒って苛めてないかい……?

 

 ――蜀は手に入れました。これで天下三分の計は成りましたか。

 

 ――こ、孔明、アレは放って置いていいのかい?

 

 ――…………さ、お次も忙しくなりますよ、元直。

 

 ――………俺だけは、しっかりしないと。

 

 ――俺の正義がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!?

 

 ――フハハハハハハハハッ!! 正義は銀屏様にありぃぃ~……。

 

 ――りゅ、龍琥!? やっぱりまだ寝ていなきゃ駄目じゃないか!!!

 

 

 

 

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