関銀屏と行く   作:魔帝

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三国無双って、展開早いよね。一年かかった戦が、ゲーム上では一日も経過していないんだよ? 辻褄を合わせるのも結構大変だね。





第八話 龍の休息。

 

 

 成都での戦いから三日。私は銀屏様に泣きつかれています。理由は簡単。私の肩の傷を見たからです。もうね、肩の怪我を見た瞬間にいきなり泣かれまして。それはもうわんわんと泣かれました。今も泣き続けていまして、後ろにいる泣き虫は冷たい眼を向けてきます。

 

 

「銀屏様、どうか泣かないでください」

 

「だってっ、龍琥が怪我したっ!」

 

「少し大きな掠り傷ですよ。こんな治療は大袈裟すぎます」

 

「徐庶さんに聞いた! 龍琥倒れたって!」

 

「うっ……」

 

「何? それは私も初耳だぞ?」

 

「うっせ泣き虫。今は銀屏様と――――」

 

「玲綺さんも心配してたんだから! そんなこと言わないで!」

 

「玲綺、心配してくれてありがとう」

 

「………父上、龍琥が怖いです……!」

 

 

 おい、何故泣き出す? お前もか? お前も泣くのか? 俺が礼を言っただけで泣くのか!? そんなことされたら今の俺は泣くぞ? 銀屏様に心配をかけさせてしまった己の愚行と銀屏様に怒られた二つの要因で俺は涙が出そうなんだぞ?

 

 

「龍琥、暫くお仕事はお休み! しっかりと休養を取って!」

 

「え……えぇ!?」

 

 

 ぎ、銀屏様!? いったい何を言い出すのです!? 私を、私を銀屏様のお傍に置いてくれないのですか!?

 

 

「龍琥、今までずっと私の傍にいてお休みをとったことが無いでしょ!? だから倒れるの! ちゃんと休んでね!?」

 

「いや銀屏様!? 戦場で倒れはしましたが、原因はそうではございませんよ!? 寧ろ銀屏様のお傍に居させてもらえた方が癒されます!!」

 

「駄目ったら駄目! 父上に頼んでくる!」

 

 

 ちょっと銀屏様!? いか、行かないでください! そんな!? 銀屏様!! 銀屏様ァァァァ!!そ、そんな……!? 行ってしまわれた……!? この龍皇覇、銀屏様のお傍から外されてしまったら、いったい何を光りとして生きていかねばならないのですか!?

 

 

「銀屏様……っ」

 

「その、なんだ……気を落とすな。銀屏はお前の事を心配してだな……」

 

「煩い黙れ泣き虫お前には分からないんだ俺がどれだけ銀屏様に忠義を誓い敬愛しているかをお前は分からないんだいいか俺は二年前に関羽様のご紹介で銀屏様に出会いそれから俺は銀屏様を第一に考えお守りし続けてきたんだその二年は生きてきた十年間よりも素晴らしく輝いた時間だったいつのまにか銀屏様のあの笑顔は俺の生き甲斐になっていたお前も知っているだろ銀屏様のあの笑顔をあの笑顔を毎日見なければ俺の生命の活力は無くなるんだ成都への遠征の時は銀屏様が抱きついてきてくださったからだだから俺の体内には生命力が溢れかえっていたんだだけど銀屏様のお傍から外されるということは俺はこれから銀屏様に会えないあの笑顔が見られないつまり俺は死んでしまうお前はいいよな銀屏様のお傍にこれからもいられて俺は、俺はァ!!!」

 

「わわっわわわかった! 分かったからそれ以上来ないでくれ! 怖い!! 怖いぞお前!!」

 

「いいや分かっていない! お前は分かっていないんだ! 俺にとって銀屏様は―――」

 

「あああああっ! もう煩い!!!」

 

 

 ドゴッ!

 

 

「ウラヌスッ!?」

 

 

 呂玲綺。鬼神・呂布の実の娘であり、呂布が生前の頃は共に武の鍛錬をし、受け継がれた武勇を存分に育ててきた。俺が居て忘れがちだが、こいつは相当の力を持つ。それこそ、一つの拳で虎を沈めることができる。何が言いたいのかと言うと、今の俺は確かにダメージを負っている。そんな俺にこいつの拳がまともに入ったら……。

 

 

「……あ、おい? だ、大丈夫か……? おい、余りふざけるなよ……おい龍琥!? 眼を開けろ! っ!? い、息をしていない!? おい! 医療班!! 医療班はどこだぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 後から聞いた話じゃ、俺は心肺が停止したらしい。だけど、関羽様に休養の許可を取ってきた銀屏様が戻って来た瞬間、自分で自分の胸をぶん殴って心臓を動かしたらしい。呼吸も戻って、生き返ったんだってさ。いやー、俺って何なのさ?

 

 

 

 

 はぁ……なんって地獄なんだ。銀屏様に会えないのがこんなに辛いとは……予想通りだ。予想通り、なんて辛いんだ。

 

 

「はい、龍琥。ご飯持って来たわよ」

 

「ああ、うん……母さん」

 

 

 私は今、益州の成都に移った実家で療養しています。とは言っても、ただ寝て体力を回復しているだけですが。

 

 

「母さん、父さんは?」

 

「あの人なら畑仕事に出かけてるわよ。怪我をして退役してからは、ここが俺の戦場だーって毎日畑と向かい合ってるわ」

 

「そっか……」

 

 

 覚えているでしょうか? 私の父、龍霞を。もの凄く初めに一瞬だけ登場したはずです。趙雲様の武勇を語った人ですよ。あの人、戦で怪我をして戦えなくなりましてね。それからずっと畑仕事をしているんですよ。

 

 

「それにしても、龍琥は本当に出世したわよね~。関羽様のご息女の護衛になって、部下もできて、入蜀の戦にまで出陣して! しかも龐統様までお助けになって! もう母さん嬉しいわ~!」

 

「あ、そう……」

 

 

 一応、形式上は泣き虫は私の部下です。

 

 

「これぐらいの怪我、早く治して仕事に戻りなさいな!」

 

「イギッ!?」

 

 

 ちょい!? 掠り傷っつても斬られてですからね!? 叩かないでください! ってか、息子が戦から生きて帰ってきたのに何も無いのですか!? そんな薄情な母だとは思いませんでしたよ!!

 

 

「じゃ、母さんは父さんの仕事手伝ってくるからね」

 

「はいはい、わかりました」

 

 

 スッ……タッタッタッタ………。

 

 

『あ~~~~~~~ん!! あんた~~~!! 龍琥が無事で本当に良かったぁ~~~~!!』

 

『良かったぁ!! 本当に良かったよぉ!!』

 

『『びえぇぇぇぇぇぇぇん!!!』』

 

 

 …………あれ、なんか涙が出てきた。何だよチクショウ! やっぱ良い両親じゃないですかぁ!!!

 

 

「ぐずっ……早く寝て体力を回復しましょう。そして銀屏様の下へといざ帰らん!!」

 

 

 さあさあさあさあさあ!! 寝ますよぉ!!!

 

 

 

 

 ――――く

 

 

 んん……何ですか……。

 

 

 ―――うく

 

 

 まだ……寝足りない……。

 

 

「龍琥! 起きなさい!」

 

「ん~……何ですか、母さんぅへぇ!?」

 

 

 ええっ!? 何ですか母さん!? 何でそんなに眼を輝かせているのですか!? 何でそんなにキラキラと!?

 

 

「キラキラ~!」

 

 

 言っちゃったよこいつ!

 

 

「か、母さん? いったいどうしたんですか?」

 

「あのねあのねあのね! 関銀屏様と呂玲綺さんと星彩様がお見舞いに来てくださったのよ!」

 

「はやく御通ししなさーーーーーい!!!」

 

 

 何をやっているのですか母さん!? 銀屏様と星彩様を玄関先で待たせるなど言語道断!! 私に言う前にお茶を出しなさいよ!! こうしちゃいられません! 私が銀屏様をお出迎えに行かなくては!! 泣き虫は別にいい。

 

 

「はっ、駄目よ!」

 

「ハンブラビッ!?」

 

 

 母に足払いをされました。顔面を強く強打し、床を転がりまわりました。そして母は私を掬い上げ、ポイッと寝台の上に投げましたって何すんじゃ!?

 

 

「龍琥、あなたは寝てなさい! いいわね!?」

 

「し、しかし! 銀屏様をお出迎えに――――」

 

「シャラップ! いい? 男子が寝込み、女子がお見舞いに来るなんてシチュエーション、そうそう無いのよ! こんなイベント絶対に逃しちゃ駄目! あなたは絶対に寝台から出ないこと!」

 

「へ……?」

 

「寝てなさい、いいわね? っつか寝てろ」

 

「い、イエッサー」

 

 

 な、何で母さんがそんな言葉を知ってるんですか!? 明らかにこの時代の人間ではないでしょう!? ってあ、家では転生前の言葉を良く使ってましたからね。用途を覚えてしまったんでしょう。うん、間違いない。そういう事にしておきましょう。

 

 

「龍琥? 入るよ?」

 

「あ、どうぞお入り下さい」

 

 

 銀屏様と星彩様が入ってきました。後ろに泣き虫が居ますが、まぁ良いでしょう。私は上半身だけを起こし、銀屏様に顔を向けました。

 

 

「龍琥、ちゃんと休めてる?」

 

「はい、銀屏様。貴女様のお顔を見れるだけで癒されます」

 

「本当?」

 

「はい、勿論でございます」

 

「えへへ、嬉しいな」

 

 

 オモチカエリオケー? ってここはもう家ですやん! アッハッハッハ!

 

 

「龍琥」

 

「ハッ!?」

 

 

 何でしょうか星彩様!? そんな涼しい眼をなされて!? も、もしや私の思考を読み取って!? し、しませんよ! 何も不埒なことなんかしませんからね!?

 

 

「怪我の具合は大丈夫なの?」

 

「は、はい。ただの掠り傷故、少しすれば何ともありません」

 

「そう、よかった」

 

「ご心配、ありがとうございます」

 

「別に。お友達だから……」

 

 

 な、なんとっ!? この私にお友達にと!? や、やべぇ……! 俺にお友達がいたなんて事実より、今までお友達と思ってくれていた星彩様を放っておいた俺って最低じゃん!? うわー、せっかくの女友達なのに、何て事を……!

 

 

「あ、龍琥これ。大兄上と兄上と小兄上から。いっぱい食べて元気になってだって!」

 

 

 そう言って泣き虫が持っている果物の山を見せてくれました。関平様、関興様、関索様、ありがとうございます。この龍皇覇、ありがたく頂戴いたします。

 

 

「これ。兄上から……でも邪魔ね。怪我人に渡す代物ではないもの」

 

 

 そう言って星彩様は棒の両端に鉄を付けているものを窓の外へと放り投げました。たぶん、アレでしょう。ダンベルでしょうね。何でこの時代に似たようなのがあるのかはもうどうでもいい。それよりも見た目十キロはあったと思うダンベルを軽々と外へ放り投げるなんて……。張苞様、貴方様の妹様も凄まじいお力をお持ちで。あ、ダンベルは後で拾ってありがたく頂戴いたしますので。

 

 

「龍琥」

 

「何だよ、なき―――」

 

「むっ」

 

「玲綺」

 

 

 何時も通り泣き虫と呼ぼうとしたら銀屏様が可愛らしく頬を膨らましました。それだけでも私には絶大なダメージを心に負う為、名前で呼んであげました。どうだ、偉いだろう?

 

 

「劉備殿―――「様」―――劉備殿が言われるには、もうこれから暫く戦は無いということだ。これを機に、お前には充分な休養を命じられた」

 

 

 言い直さなねぇのかよ。直せよ、泣き虫。ってか、はい?

 

 

「休養って、戦で少し疲れただけだ。またすぐに復帰できる」

 

「駄目だよ龍琥、ちゃんと休まないと」

 

「しかしですね、銀屏様……」

 

「一週間は休んでね。じゃないと怒るよ?」

 

「……畏まりました」

 

「良かった! あ、玲綺さん、あれは?」

 

「奥様に許可は頂いている。準備もやって下さっている」

 

 

 あれ? 許可? 準備? いったい何の話だ? あれ? 銀屏様? どちらに行かれるのですか?

 

 

「龍琥、ちゃんと寝ててね。すぐに戻ってくるから」

 

「は、はい……」

 

 

 そう言って銀屏様と星彩様と泣き虫は出て行かれた。私は銀屏様に言われたとおり休むことにし、寝転んで眼を閉じた。

 

 

 

 

 ここからはダイジェストでお送りします。

 

 

「えっと、これをこうするんだよね?」

 

「そうだが、その木の実の殻は素手では―――」

 

「えいっ」

 

「……流石、軍神の娘だ。私も負けてられん! はぁっ! っ~~~~~~!?」

 

「玲綺、それができるのは銀屏だけ。ほら、泣かないで」

 

「うぅ……すまない」

 

「玲綺はこっちをやっていて。私はこれを捌くから」

 

「……その鯉、まだ生きているぞ?」

 

「当然。今、水から取り出したから。生きたままのほうが良い」

 

 

 ストンッ、ブシュッ。

 

 

「いけない、思ったよりも血が出た。服に付いてしまった」

 

「……なぜ、蜀の女子はこんなにも逞しい奴らばかりなんだ?」

 

「玲綺さん、義姉上、薪が無くなっちゃった。ちょっと取ってくるね」

 

「……星彩、気のせいだろうか。銀屏が薪を取りに行くといって、そこの大木を引っこ抜いているように見えるのだが」

 

「もう慣れた。貴女も、早く慣れるべき」

 

「素手で大木を割っていっているんだが」

 

「大丈夫、何時も通り」

 

「……私が知らないところでこの二人は何をしているんだ?」

 

 

「まぁまぁまぁまぁ! あんた! うちの息子の為に三人もの女子が料理してくれてるわよ!」

 

「軍神の娘に燕人の娘に鬼神の娘! くぅ~、産まれてくる孫が楽しみで仕方がねぇ!」

 

「あんた、まだ気が早いわよ! こういうのは手順があってね! まずは恋のホップステップジャンプだよ!」

 

「ほっぷ……? よく分からねぇが、良かったじゃねぇかよ龍琥!」

 

 

 

 

 ………さて、目の前にあるこれらはなんなのでしょうか? 白いご飯に魚の身が入った汁、木の実や茸の惣菜に、魚の刺身。さてさて、ここで面白いことがある。それはだな……食材が全然切られていないのです。魚の身が入った汁……現実逃避して身とか言っちゃったけど、頭が丸々入ってるよ。これは鯉だな。惣菜……丸々形が残ってます。刺身……これは切られてるけど……血が……。

 

 

「さ、食べて龍琥! 私達が作ったの!」

 

「ぎ、銀屏様たちがですか……?」

 

「うん! 母上たちがやってるのを見て覚えたの!」

 

「こ、これは随分と……豪快な……」

 

「どの部分にも栄養がある。残さず取れば、すぐに良くなる。鯉の生き血も優れた薬」

 

 

 ドンッ。

 

 

「あの……これは……?」

 

「生き血」

 

「………」

 

 

 この、赤い液体全部が生き血ですかそうですか。水か茶は無いのですねはい。いや、見た目が豪快なだけで味は大丈夫なはずだ。なんたってできる人のを見て覚えたと……見て? 教えてもらったのではなく、見て? い、いやいや、見ただけで覚えられる訳ないじゃないですか。銀屏様は六歳、星彩様は私と同じ十二歳、泣き虫は……何歳だっけ? たぶん二十代だと思うんだけど。星彩様なら兎も角、銀屏様が見ただけで覚えられるほど、この料理は簡単ではないはずです。もし覚えられているのならば、銀屏様はもうまさに神童! 銀屏様こそが神なり!

 

 

「さ、食べて!」

 

「は、はい……いただきます」

 

 

 現実逃避の時間は終わりか! ええい! 何を迷っている龍皇覇! 銀屏様と星彩様………あと泣き虫が作ってくださった料理なのだぞ! そうだよ、何を迷っているんだ俺は。馬鹿じゃないか。はっはっは! もう迷いなどない! いただきまーーーす!!!!

 

 

「うぐっ!?」

 

 

 後から聞いた話では、また俺は心肺を停止させたらしい。どうやらこれらの材料は買ってきたものではなくて、自身で収穫してきたものらしい。茸の中に毒キノコが混じっていたようで、それが原因らしい。でも俺は心肺を停止させてる中で完食したんだって。生き血も飲み干して、その後眠るようにして寝転がったんだって。銀屏様と星彩様は俺が満足したと思って食器を片付けに出て行ったそうで、俺が心肺を停止させていることに気が付いていた玲綺が俺を蘇生させてくれたみたいだ。まさか、玲綺に感謝する日が来るとは思ってもみなかったよ。

 

 

 

 ――龍琥、寝ちゃったね。

 

 ――満足してくれたみたいで、よかった。

 

 ――食器を片付けないと!

 

 ――そうね。玲綺、龍琥にちゃんと布団をかけておいて。

 

 ――あ、ああ………………りゅ、りゅぅぅぅぅぅくぅぅぅぅぅ!? 起きろ!! 死ぬなぁぁぁぁぁ!!

 

 

 ドゴスッ!!

 

 

 ――はぁっ!? お、俺は……? あ、あれ……肋骨が痛い……折れてる……?

 

 ――えぇっ!?

 

 

 

 





 関興と張苞は既に義兄弟の契りを結んでいる事になっています。ですので、銀屏と星彩も義姉妹という関係……でいいはず。

 これからどうしていこう。
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