しずかちゃんのえんげきぶ。~I'll do a play Dogville~   作:はせがわ

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PROLOGUE ~which introduces us to the town and its residents~

 

 

 

これは、ドッグヴィルの悲しい物語――――

 

 

 ドッグヴィルとは、ここではないどこか遠くの国にある、山脈の町

 この町の銀鉱山はすでに廃坑となっており、そこで道は行き止まりになる

 

 住民たちはとても善良で、素直な人々ばかり

 そしてみんな、この街を心から愛していた

 

 この町の中央に“(にれ)通り”と呼ばれる道があるが、そこに楡の木など一本もない

 だが人々は昔からの呼び名だとして、ずっと楡通りと呼び続けている

 まるで今を守るように。変わる事を恐れるかのように

 

 町にある建物はどれも貧相で、粗末な小屋のようにみすぼらしい物ばかり

 だが比較的、一番マシなのは、のび太の住む家だろう

 

 ここだけは、かつてはそれなりに見栄えがしただろう事を、思わせた――――

 

〈ナレーションボイス、ドラえもん〉

 

 

 

 

 

 

 

「のび太さん。すいませんが、ラジオを消してもらえますか?」

 

 その日の午後。のび太は丸尾くんと共に、ラジオから流れる心地よい音楽に浸っていた。

 だが内容が切り替わり、ラジオからニュースの声が流れてくるようになると、丸尾くんは疲れたような声色で、のび太に指示を出した。

 

「どうしたの丸尾くん、消しても良いの?」

 

「ええ、少し聴き疲れをしてしまった。

 それにもう音楽は終わり。ここらで一休みする事とします」

 

「ニュースは良いの? 別に止めなくても、流しておけばいいのに」

 

「いえ、どうせ代わり映えのしない内容です。

 それに国の情勢など……ズバリこんな辺境の町にとっては、関係ない事でしょう」

 

 丸尾くんは元医者で、現在は隠居している身だ。

 自らが持つ資産や株などで生活していて、今はこの15人ほどが住む町“ドッグヴィル”の代表を務めつつも、こうしてのんびりと暮らしている。

 

 だからでは無いけれど、彼と共に住んでいるのび太は、実はあまりあくせくと働く必要は無かったりする。

 のび太はのび太なりに、毎日なにかしらの仕事をして町に貢献してはいるものの、彼の主なライフワークは“小説を書く事”。

 まだ若いのび太は、いずれこの町の代表者となるべく、丸尾くんから様々な教えを受けてはいる。けれど一番の関心事は、趣味である小説の事だった。

 

 のび太は物書きだ。少なくとも彼はそのつもりでいる。

 でものび太が書く小説は、あくまで“それなり”の物でしかなく、お世辞にもあまり中身があるとは言えなかった。

 

 試しに丸尾くんに見せても、友人に見せても、意中のガールフレンドに見せてみても……評判は芳しくない。とても彼らの尊敬を得るには至らない。

 だがのび太はいつも懸命に打ち込み、そして自分の作品を大切に大切に、机の引き出しに保管していた。

 

 いつか絶対に、すごい小説を書いてやるぞ――――

 才能や腕はともかくとして、そのどこか不思議なまでの情熱だけは、本物に見えた。

 

「じゃあ丁度いいし、少し出かけてくるよ。のんびりしててね丸尾くん」

 

「はい。気を付けて行ってらっしゃい、のび太さん」

 

 ソファーに腰かけている丸尾くんに声をかけ、のび太は玄関の扉を開ける。

 すぐ目に飛び込んできたのは、春の訪れを感じさせる暖かな光。そしてすぐ隣に住むご近所さんの姿だった。

 

 

「こんにちは、みぎわさん」

 

「あ~らのび太くん。お出かけぇ?」

 

「はい、少し町の様子を見に。

 あっ! みぎわさん、明日の集会のこと忘れずにね?」

 

「んふふ、はいはぁ~い」

 

 苦笑を返しながら、みぎわさんが目の前にあるロッキングチェアの方に向き直る。

 そこに座っているのは、みぎわさんをそのまま幼くしたような容姿の若い娘だ。

 彼女は身体が不自由で、一人で歩く事が出来ない。だからこの子の身の回りの世話は、全て母親であるみぎわさんが行っている事を、のび太は知っている。

 

 一人で歩く事は出来なくとも、彼女が今とても明るい笑顔で、こちらにフリフリと手を振ってくれている。

 のび太の目から見ても、この母娘はとても仲睦まじい、素敵な親子に思えた。

(ちなみにこの娘さん役には、コピーロボットを使っている。ドラえもんの道具に感謝だ)

 

「それじゃあねぇ、のび太くん。町のみんなによろしくぅ~」

 

「ええ、それじゃあ」

 

 

 みぎわさんに別れを告げて、のび太は町の中央にある(にれ)通りを歩き出す。途中に通りすがる子供達に「やぁ」と声をかけながら。

 

 実はのび太には、自室で紙に向かう以外にも、もうひとつ情熱を傾けている事があった。

 時折、彼は町の人々を集め、“道徳再武装運動”なる集会を開いているのだ。

 

 この町にも伝道所(教会のような物)はある物の、こんな辺境の地に牧師は来てくれない。

 だからその代わりと言うワケでは無いが、のび太はこの集会を定期的に開き、人々を教え導く試みをおこなっている。

 たった15人ほどしかいない、こんな小さな町に住んでいるとしても、道徳を忘れずに良識を育み、人としてより良く生きていく為に。

 それが町の人々のためになると、彼は信じていたのだ。

 

 

「やぁジャイアン、今日も農園かい?

 明日の集会には来るんだろ?」

 

「……」

 

 やがて通りを進む内に、沢山の薪を背負って歩いてくるジャイアンの姿を見かける。

 のび太は手をあげて挨拶するも、ジャイアンは少し嫌そうな顔。そして気だるい声で返事をする。

 

「ああ、別にわざわざ説教なんか聞きたかねぇけどよ。

 ……でも行かなきゃ女房がうるせぇんだ」

 

「ん、たまちゃんが? そんなに言われちゃうの?」

 

「おうよ、アイツは生真面目だからな。

 ガキの教育にも、神様へのお祈りにも熱心だ。堅物すぎて息が詰まっちまうよ」

 

「それはご愁傷さまだ。同情するよ?

 でもぜひ来てよジャイアン。みんなで意見を交わす時間は、きっと有意義なハズさ」

 

「へいへい……。わーったっての」

 

 本当は集会などより、自身のリンゴ農園の事だけ考えていたい。そんな気持ちが透けて見える態度だが、のび太の朗らかな顔に毒気を抜かれているのも見て取れる。

 なにはともあれ、ジャイアンは参加を了承してくれた。その事に気を良くしたのび太が、次の場所へと歩き出そうとした、その時……。

 

「おい、何だこれは!? 誰がやった!」

 

 突然ジャイアンが、怒気を孕んだ声をあげる。

 

「誰が山田に餌をやった! 肉など食わせたんだ!」

 

 変わった名前ではあるが、山田とはジャイアンの飼い犬の事だ。

 彼はふと目をやった山田が、肉のついた骨を食べているのを見つけた途端、烈火の如く子供達を怒鳴りつけた。

 

「ぶ、ブー太郎よ……。さっきあげてたわ」

 

 外で縄跳びをしていた子供達は、兄妹であるブー太郎の名前をあげた。

 その子は縄跳びを中断し、俯き加減で父親の方へと歩いてくる。

 

「食べ物を無駄にするな! 番犬なんか、腹を空かせとけば良いんだッ!

 肉などやるんじゃないッ!」

 

 そう叱られ、しょぼくれてしまったブー太郎を気遣ってか、のび太が諫めに入る。

 子供のした事だし、犬を可愛がるのは悪い事じゃない。許してやれと言うように。

 

「ほら、ブー太郎だってもう分かったさ。……もうしないよね?」

 

 優しく声をかけてもらい、ブー太郎もコクリと頷く。父であるジャイアンは未だに渋い顔だが。

 

「それに番犬って言ったって……いったい何を守るのさ?

 こんな小さな町に、盗む物なんて無いだろう? 普通に可愛がれば良いじゃないか」

 

「馬鹿野郎、今は不安定な世の中だ。じき俺達よりも、貧しい連中が来るぞ――――」

 

 そう言い捨てて、ジャイアンが自宅へと去っていく。

 のび太はそれをため息をついて見送り、また次へと歩き出して行った。

 

 

「こんにちは土橋さん。椅子の準備は出来てる?

 集会は明日だから、よろしく頼んだよ?」

 

 のび太は多忙だった。しかしその忙しさは、小説による物では無い。

 ではどんな事で忙しいのかと問われたならば、彼は“採掘”だと答えるだろう。

 これは岩を掘るのではなく、もっと困難な物。すなわち“人の心”の奥を掘り起こすべく、こうして町を見て周っているのだ。

 

「ええ、準備は出来ているわ、のび太くん。

 あっ、でももしオルガンを使うなら、ちゃんと許可を貰わないと……」

 

 この伝道所の管理人である、土橋さん。

 彼女は笑顔で挨拶を返しながらも、少し不安げな声でのび太に告げる。

 あれは自分達の物では無く、教会の持ち物であるのだから、勝手に使用してはいけない決まりだと。

 

「いらないよ土橋さん。オルガンは使わないし、賛美歌や聖書だって必要ないんだ。

 これは僕ら自身が考え、議論していく場なんだから」

 

「あっ……そうだよね。ごめんなさいのび太くん」

 

「ううん? 良いんだよ土橋さん。

 それじゃあ今日も、7時になったら鐘を鳴らしてね。明日はよろしく」

 

「うん、それじゃあねのび太くん。また明日」

 

 土橋さんは時報として、毎日決まった時間に伝道所の大きな鐘を鳴らすという、大切な役目を担っている。これは町の人々の為にと、彼女が厚意でおこなってくれている事だ。

 

 それに労いの言葉をかけてから、のび太はまたテクテクと楡通りを歩き出す。

 暫くすると、目の前に小さな畑が見えてきた。

 

 

「やあまる子、今日も精が出るね。

 ……でもそんなにクワを入れたら、土が駄目になっちゃうんじゃないかな?」

 

「うるさいのぉ! 余計なお世話はよしとくれよ、のび太っ!」

 

 ここはまる子が管理している、グーズベリー畑。

 彼女は今もせっせと土を掘り返しているが……のび太の目から見て、それは少し手荒で、やりすぎのように思える。

 

「うーん。でも土は生きてるんだからさ?

 頑張るのは良いけれど、少しやりすぎだよ」

 

「いーのぉ! 自分の畑は、自分で耕すのぉ! ほっといとくれっ」

 

「くっくっく……! 同感。クワ入れ過ぎの助……」

 

 気が付けば、野口さんもこの場にやってきていた。

 まる子は悪い人じゃないし、頑固なのはいいけど、せっかくの畑が台無しだ。それを二人して「あーあ」と苦笑する。

 

「……ちょっと野口さん?! あんたまで笑う事ないじゃないのさぁ!

 のび太だって、あたしの焼いたパイ好きでしょ? 美味しいでしょお?」

 

「いや、そりゃあ大好きだよ? すごく美味しいもの」

 

「……同感。あれは町で一番の助……」

 

「でしょー! そうでしょー!

 それはこうして、たーくさん土を耕すからなのさ♪ だからこれでいーの♪」

 

「あはは……」

 

 

 その後も頑なにクワを入れるまる子をからかいつつ、そしてまたパイを焼いてもらう約束を取り付けつつ、なんだかんだと楽しく話してから、のび太は花壇を後にした。

 

 町の一番端まで足を延ばせば、ちょうどそこに藤木の運転するトラックがやって来たので、門を開ける手伝いをしてやった。

 「運送業界の調子はどう? 不況だって聞くけど」と尋ねれば、「からかわないでよのび太。疲れてるんだ」とそっけなく返される。

 藤木は毎日頑張ってはいるものの、あまり今の仕事を良く思っていない事が、見て取れた。

 

 また今度お酒でも飲もう。一杯奢るよ。

 そう約束をしてから、藤木と別れる。

 

 その後ものび太はいくつかの家々を回りながら、のんびりと町を歩いたのだった。

 

 

………………………………

………………………………………………………………

 

 

 

 

7時。ドッグヴィルに、鐘の音が鳴り響く――――

 

のび太はそれを合図に、幼友達のはまじとSHOUGIをするべく、彼の家に向かう

 

はまじは、愚鈍な男だった

エンジニア志望だが、それを叶えるには、あまりに愚かすぎる

友人であるのび太は、特にそれを気にしてはいないが

 

耳を澄ませてみると、遠くから刑務所を建設する、杭打ち機の音が聞こえる

それはこの谷全体に響き、ドッグヴィルの町にも、しっかりと届く

たしか運送業のスネ夫は、その仕事をしたがっていたなと、ふと思い出す

 

のび太は歩みを進める。今日もSHOUGIで、はまじを打ち負かす為に

だが町の噂では、彼の姉である城ケ崎さんに会うのが、本当の目的なのでは? という話だ

 

そしておそらく、それは間違いでは無かったのだろう

 

あの家には“もう一つの地平線”があった

この谷の彼方にある広大な地平線、それと同様に、のび太の心をそそる物。

城ケ崎さんという女性が持つ、肉感的な曲線による地平線だ

 

それは甘美で、狂おしい、悩ましい程の深淵―――

 

〈ナレーションボイス、ドラえもん〉

 

 

 

 

 

「やぁ城ケ崎さん、こんばんは」

 

「あら、また貴方なの? こんばんは、のび太くん……」

 

 玄関をノックすると、そこに城ケ崎さんの姿。

 彼女は少し困ったような、気だるい表情をしている。

 

「なぜ毎晩来るの? たまには違う人が来たら面白いのに。

 少しぐらい、日常に変化が欲しいわ」

 

「……」

 

「言っておくけど、私は余所の町に婚約者がいるの。

 彼に仕事が見つかれば、こんな町すぐにでも出ていくつもりよ?

 なんのつもりかは知らないけれど……きっと貴方の期待には応えられないわ」

 

 ドアを半開きにしたまま、玄関で向かい合う。

 ため息をつく城ケ崎さんに耐えかねたように、慌ててのび太が要件を切り出す。

 

「えっと……、はまじはいるかい?」

 

「いるわ。いつだっている。

 弟は家で勉強、でも私はいつもグラス作りの手伝いなの。

 ……私の方が、よっぽど頭が良いのに……」

 

「あの、入っても構わないかな……? 彼とSHOUGIをするんだ」

 

「…………ええどうぞ。もちろんよのび太くん」

 

 入り口を塞いでいた身体をどけ、ようやく中へ迎え入れられる。

 のび太は少しキョドキョドしながらも、安堵のため息をついて中へと入っていく。

 

 途中でグラス加工の作業中であった笹山さん、そして永沢くんに「お邪魔します」と一言声をかけておく。

 彼らは夫婦であり、街から仕入れてきた安物のグラスを綺麗に削って、それを高級品のように加工する事で生計を立てている。

 

 永沢くんも笹山さんも娘とは違い、朗らかに「いらっしゃい」と言ってくれた。

 

 

………………………………

………………………………………………………………

 

 

「知ってるかよ? FURIBISHAってのは“不利”BISHAなんだぜ?

 HISHAを横に動かすなんて邪道、単なる手損だ。常識だろのび太?」

 

「君こそ、まだBOUGINなんて物に頼ってるのかい?

 狙いが単純すぎるって、いつも言ってるじゃないか。

 プロが指すならともかく……ほんとに使いこなせてるの?

 僕には通用しないよ、はまじ」

 

 そんな舌戦を繰り広げながら、のび太たちがKOMAを動かしていく。

 時にそっと、時にパチンと音を立てながら、お互い陣形を整えていく。

 

「不利BISHAだなんて……よくもまぁ、聞きかじっただけの知識をペラペラと……。

 なら貫いてごらんよ? 君に僕のMINOが崩せるのかい?

 僕のノーマルSIKENは――――道だッ!!」

 

「FUをタダにしてやったのに、それを取る度胸もねぇってか?

 ちっ……対策してやがんな。ぜんぜん誘いに乗って来やがらねぇ!

 これじゃあ定跡の通りになんねぇよっ……!」

 

「本で覚えた局面なんて、実戦ではそうそう出てこないよ、はまじ。

 丸暗記しただけの定跡……それだけで勝てると思ったら大間違いだ!

 SHOUGIを舐めないでよッ!!」

 

 バチン! と大きな音を立てて、のび太が持ちGOMAをBANに打ちつける。

 

「なっ……?! FU打ち?! HISHAの頭かよ!?

 こ……こんなの、いったいどこに逃がせば……?!」

 

「どうしたの? 攻めが止まってるよ?

 BOUGINは、GINを前に繰り出していく戦法……。

 そっぽで立ち往生したら――――そこで負けなんじゃないのッ!!」

 

 まだSHOUGIは中盤ながら、局面は大きく傾いている。

 一度KOMAがぶつかった途端、お互いがノータイムで指し合い、そして瞬く間に形勢に差が付いた。

 

 攻め筋を潰され、HISHAが抑え込まれ、はまじの仕掛けは完全に頓挫。逆にのび太に守備GOMAを食い荒らされる始末。

 見る者が見たならば、これはすでに勝負がついている局面だろう。

 のび太のMINOGAKOIは手つかず。対してはまじのFUNAGAKOIにはもう、火が着いてしまっているのだから。

 

「そ……そういやよのび太? 例の“道徳再武装なんたら”の話だけどよ……?」

 

「ん?」

 

 これはいつもの事なのだが……局面が傾き、もう指し手に困った時、はまじはいつも勝負を諦めて、話を別に逸らそうとする。

 なんとか勝負をうやむやに出来ないものか……そう試みる所までが、彼の定跡であった。

 

「正直さ? 俺はちょっと、よく分からねぇんだよ。

 なぜ集会なんかすんのかなって……。自由でいいじゃんかよ」

 

「駄目だよ。集会はこの町に必要だ。

 みんなで議論して、より良い道徳を身に着けないと」

 

「でもよ? 別に今のままでも、みんな上手くやってんじゃん。問題ねぇよ」

 

「僕はそうは思わない。

 この国が、そして人々が忘れかけている事を、みんなに思い起こさせたいんだ。

 ただでさえ僕らは、こんな閉鎖的な小さい町に住んでるんだからさ?

 道徳を学び、人間性を磨こうよ。

 そしてより良く生きようっていう意識が、何よりも大事なんだ」

 

 のび太はそう言い聞かせるも、はまじはイマイチ納得いかない顔。

 それでも熱っぽく、辛抱強く語り掛けていく。

 

「じゃあよ? 何について話すんだ?

 俺たちは何を学べば、もっと健やかに生きていけるんだ?

 牧師も来ねぇ、人だって15人しかいねぇ、こんな寂れた町でよ」

 

「……分からない。みんな何かを受け入れる事が苦手だ。

 ここは過去で時が止まっているみたいに、閉鎖的な町だから」

 

「別に門を閉ざしてるワケじゃねぇけど、新しい人間なんて入って来ねぇもんな。

 だからみんな、ずっと昔のまま。新しい風が吹かねぇんだ。

 頭も凝り固まってるよ」

 

「例えばだけど……具体的に何かを与えてみたらどうかな? 贈り物とかさ」

 

「それどこからだ? 誰かが突然やって来て、ポンと贈り物をくれんのか?

 こんな町に物なんかねぇし、金だってねぇよ」

 

「うん……そうだよね。方法を考えてみる。

 土をいじったり、作物を作るばかりじゃいけないんだ。

 どうやったら、みんなの意識を変えられるのか……ちょっと考えてみるよ」

 

 のび太が腕を組み、ウンウンと悩み始めた時、なにやらはまじの顔が挙動不審になる。

 わざとらしく「♪~」と口笛なんか吹きながら、キョロキョロと明後日の方を向いている。

 

 

「ちなみにはまじ、君のGINはそこじゃなかっただろう?

 さっき3六のFUを取ったんだから、同じ所にいなきゃ」

 

「うげっ?!?!」

 

 

 さりげなくやったイカサマを見破られ、はまじはもう駄目だと天を仰ぎ、KOMAをばら撒く。

 

 そんな情けなくも愛嬌のある姿を見て、のび太は楽しそうに微笑んだ。

 

 

 

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