転職活動などなどやってたらスランプに陥ってしまって、今少しずつ回復中ですので気長にお待ちください。
さて、今回からファミリー集めに入ります。
出来ればお色気要素も入れたかったんですが、暫くは先になります。
今回の出来事はとても後味の悪い結末だった。
席を外した綱吉の後ろ姿を、ユニは何とも言えない表情を浮かべて眺めていた。
「――――すみません、沢田さん」
ユニは申し訳なさそうに唇を噛み締める。
殺し屋が来ると言う事は未来予知で分かっていた。
だが、ここまで酷い結末になるとは思っていなかった。
口に出してしまえば、否、心の中で思うだけでも言い訳になってしまうだろう。
それでもそう思わざるをえなかった。
自身の予知はそこまで便利なものではない。必ずしも見たい未来が見れる訳ではないし、具体的にどうなるのかが分からないという事も多い。
「私の甘さがこのような結果を招いてしまった」
今回の予知はあくまで殺し屋が襲撃しに来る事ぐらいしか分からなかった。
どんな言い訳をしようとも、結局は自分の不手際が原因だ。
マフィアは決して無法者というわけではない。むしろ裏社会に属している者だからこそ、守らなくてはいけない柵やルールがある。
だが、前回のマッドクラウンや今回の少女はそのルールを破っている
両名とも堅気の人間に対し、積極的に危害を加えていた。
この国には二度ある事は三度あるという言葉があるように、次の刺客も同様に手段を選ばない可能性が高い。
いや、ここまで来たら楽観視する事は出来ないだろう。
既存のルールが意味を成しておらず、そのルールを取り仕切る側も対応に追われている状態だ。
――――平和な日本であってもそれは例外では無い。
自分達が置かれている現状を再確認したユニは苦虫を嚙み潰したような表情をする。
命を狙われているという立場上、受け身になるのは仕方が無い。
だがこうも後手に回っている状態はあまり芳しくない。
「…………やはり、人手が足りないですね」
結局のところ、その一言に尽きるのだろう。
何をするにしても今の自分達に足りていないのは人手だ。
家庭教師である自分に戦闘技能が無い為、こういった荒事は生徒である綱吉がやらなくてはいけない。
結果、綱吉一人に負担が集中する事となる。いや、既に負担をかけている。
つい先日までごく普通の表社会で生きて来た普通の人間を、人殺しにしてしまった。
それは時を巻き戻しでもしない限り取り返しのつかない事。
十四歳の少年が背負うにはあまりにも重過ぎる十字架。
「何とかしなくちゃ、いけないですよね。だって――――」
ユニは決意を固めた表情を浮かべ、空を見上げる。
「私は沢田さんの家庭教師なんですから」
+++
「…………はぁ」
ユニと別れ、一人になった綱吉は木に背を預けて力無く溜め息をつく。
「オレ、本当に強くなれたのかな?」
強くなれたのは間違いない。
以前の自分だったなら死ぬ気モードを解除した後、間違いなく筋肉痛で苦しんでいた。いや、そもそもとしてさっきの戦いで勝利し、殺されずに済んだのは間違いなく特訓の成果だと言えよう。
だが、強くなっても助ける事が出来ない。
あの殺し屋の少女の手によって肉体を改造させられた人を元に戻す事は出来ないのだ。
「本当に、無力だなぁ…………オレって」
ユニは仕方の無い事だと言った。
分かっている。自分達に出来る事は皆無だと理解している。
それでもどうにか出来ないのだろうかと思った。それでもどうにかしたいと考えた。彼等彼女等があんな姿になって苦しんでいるのは自分のせいなのだから。
「強く、なりたいなぁ…………もっと、強く…………」
自分は確かに強くなった。以前の自分とは比べる事すらおこがましい程に強くなれた。
だが、それでもまだ足りない。
もっと強くなりたい、強くならなければいけない。
彼女に、ユニにあんな辛そうな表情をさせたくないのだから。
「ユニにはずっと笑顔でいてほしいから」
ふと口から出た言葉に、綱吉は少しだけ顔を赤くする。
まるで告白しているみたいだ。そう考えると恥ずかしくなってくる。
今この場にユニが居なくて良かった。もし聞かれていたら凄く後悔していただろう。
だが、彼女の辛そうな表情を見たくないのは事実だ。
それが
「うん、頑張ろう」
綱吉はそう自分に言い聞かせて決意を新たにする。
「沢田さん」
するとユニの自分を呼ぶ声が耳に届いた。
声に反応した綱吉は一瞬だけ身体をびくりと震わせる。
聞かれた、いや、もしかして最初から近くに居たのだろうか。そう考えた綱吉だったが、遠くの方からこっちに近付いて来るユニの姿を見て、その考えを否定する。
「沢田さん、大丈夫ですか?」
自身に近付き、顔を覗き込むようにして見て来るユニに綱吉は恥ずかしさから僅かに顔を背ける。
「うん、もう大丈夫。ごめん、心配かけて」
「いいえ、気にしないで下さい。私は沢田さんの家庭教師ですから」
ニッコリと微笑むユニの顔を見て、少しだけ気分が軽くなる。
「…………ユニ」
「何でしょうか?」
「ありがとう。オレの家庭教師がユニで良かったよ」
綱吉がそう言うとユニは一瞬だけ目を見開く。
が、すぐに目を細める。そして嬉しそうに微笑みを見せた。
「ありがとうございます」
普段浮かべている明るい笑みとは違い、今にも消え入りそうな笑みだった。
その言葉に、その感謝の言葉にどのような意味が込められていたのかは分からない。
だが一つだけ、彼女が嬉しいと感じたのだけは何となく理解できた。
+++
修行を終えて山から下山してから数日が経過した。
あの後、ボンゴレファミリーと称する見張りの人がやって来て少女と三人の被害者の身柄を預ける事となった。
彼女等、特に被害にあった人達に関しては出来る限りの手は尽くすとは言っていたものの、やはり難しいだろう。
ちなみに殺し屋の少女については何も言わなかったので、綱吉達も聞かない事にした。
そして現在。雨が降る中、綱吉は傘をさしながら一人町を歩いていた。
「はぁ…………こんな雨の中、おつかいを頼まなくてもいいだろ」
綱吉は溜め息をつき、項垂れながら文句を呟く。
とはいえ、釣り銭は貰っても良いと言ってた為、そこは嬉しいところだ。
それでもこの雨の中、外に出るのは中々に辛かった。
そう考えていると近くで一台の車が水溜りに突っ込み、水が跳ね上がった。
「っ、と」
自分にかかりそうだと判断した綱吉は傘を盾にして水を防ぐ。
「あっぶな…………」
もしあの水に掛かっていたら気分は最悪な事になっていただろう。
それでも昔なら防ぐ事すら出来ずにびしょ濡れになっていた。これも修行の成果とでも言うべきなのだろうか。
こんな事で修行で強くなった事を確認するなんて、微妙なところだ。
ただ傷付き苦しむような命懸けの戦いよりは遥かにマシだが。
「さて、と…………とっとと帰ろ」
傘を上に上げて、綱吉はそのまま帰路に着こうとする。
その瞬間だった。視界の端で黒猫を助けようとして車道に飛び出した少女が映り込んだのは。
「…………!! 危ない!!」
少女が轢かれそうになっている事に気付いた綱吉は傘と買い物袋を投げ捨てて、少女を助けようと車道に飛び出す。
だが――――、
「っ、間に合わない」
もし、ブレーキを掛けていたなら助ける事は出来ただろう。
だが雨のせいで視界が悪いからか車は急ブレーキをかける事も無く、速度を維持したまま走っている。そのせいで猫を助けようとして飛び出した少女を助ける事は不可能だった。
少女を突き飛ばす事も間に合わないだろう。
無情な結論に綱吉は思わず歯噛みし、少女を守るようにして車の前に立つ。
「こうなったら、死ぬ気で守る!」
死ぬ気弾は外部のプレッシャーにより身体の中のリミッターを外す。
ならば同じように生死の掛かった状況の場合なら、同じように死ぬ気モードになれる筈。
そう考えた綱吉は迫り来る鉄塊の恐怖を飲み干し、車と衝突する。
そして――――。