家庭教師PRINCIPESSAユニ!   作:霧ケ峰リョク

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お待たせしました。
話の展開を考えるのに苦戦してました。
なんで少し考えたのですが、他の仲間達の出会いも早める事にしました。
次回は、早く投稿したいと思っています。


持物検査雲雀恭弥

「沢田さん。お邪魔しても良いでしょうか?」

 

 時刻は深夜0時。

 綱吉の部屋の前の扉からユニの声が聞こえた。

 一体何だろうか。疲労感に包まれ今にも眠気に負けそうになりながらも、綱吉は扉を開ける。

 そこにはパジャマ姿のユニが立っていた。

 

「すみません。これから眠ろうとしてたところを」

「気にしなくて良いよ。でもどうしたの、こんな夜更けに…………」

「それは…………部屋の中で話しましょうか」

 

 真剣な表情でそう呟くユニを部屋に招き入れる。

 

「さて、凪さんも眠りにつきましたし、少し真面目な話をしましょうか」

「真面目な話?」

「はい。これからの事について、というよりも凪さんについての話になりますね。凪さんが居たら話せませんでしたから」

 

 そう言ってユニは視線をこの部屋の戸に、正確には自身の部屋に向ける。

 現在、ユニと凪は同じ部屋を使っている。

 

「ああ、成る程…………」

 

 ユニが話したい事が何なのか、綱吉は何となく察する。

 一般人で普通の人の凪の前で話せない事と言えばただ一つ、裏社会関連の話だろう。

 確かに、彼女の言う通り凪が居たら話せない事だ。

 

「単刀直入に聞きます。凪さんにマフィア関連の事を話しますか?」

「話さないよ」

 

 キッパリと、綱吉はユニの言葉を否定する。

 

「私もあまり話したくはありません。ですが、沢田さんの妹となった以上、凪さんも無関係ではいられません」

「分かってる。それでも凪をオレ達の事情に巻き込む事なんて出来ないよ。ただでさえ、今まで辛かったんだから」

 

 本音を言うならばユニにも争いとは無縁の所に居てもらいたい。

 尤もそんな事を言った所で、ユニが言う事を聞くとは思えないが。

 

「大丈夫。ユニも凪も、オレが絶対に守るから」

 

 ならばせめて、彼女達に火の粉が降りかからないようにしよう。

 その為には強く、もっと強くならなくちゃいけない。今のままじゃ、大切な物は何一つ守ることが出来ないのだから。

 

「沢田さん…………」

「だから、何も心配する事なんか無いよ」

 

 心配そうな表情を浮かべるユニに対し、綱吉は不安にさせないように笑みを浮かべる。

 焦燥感にも似た強い思いを胸の内に秘めながら――――。

 

   +++

 

「それじゃあ、お休みなさい」

 

 パタンと音を立てて綱吉の部屋の扉を閉める。

 そして扉に背を預けた後、ユニはその場に座り込んだ

 

「…………はぁああ」

 

 片手で頭を抱えて溜め息を吐く。

 今まで吐いた事の無いような、非常に疲れ切ったと言わんばかりの溜め息だった。そんな溜め息が自分の口から出た事に少しだけ驚きながらも、それも仕方がないと自分に言い聞かせる。

 

「本当に、どうしよう…………」

 

 ユニは苦虫を数匹噛み潰したかのような表情を浮かべる。

 ついさっきまで話し合っただけだが理解できた。彼は今、精神的に追い詰められている状態だ。

 それも当然の話だ。

 何処にでも居るようなごく普通の心優しい少年が殺し殺される生活を送る羽目になったのだから。

 むしろあんな風に笑顔で強がれるだけ、まだマシなのだろう。

 

「いっその事、責めてくれれば良かったのに」

 

 そうしないのは彼がとても優しいということだろう。

 だけど今のままでは間違いなく潰れる。

 素人目から見ても分かる。自分を騙して頑張り続けた所で待っているのは破滅だ。例え破滅を回避したとしてもあまり良い未来にはならない。

 試しに未来を見てみる。

 未来の綱吉は血に塗れ、傷付きながらも一人で戦っていた。

 

「…………未来を見る力なんて、無い方が良いですね」

 

 いつもいつも、肝心な時に役に立たない。

 自分の望む未来を見る事なんて無いし、大抵あまり良くないものばかり。

 そして未来を見ればかなり疲れる。

 どっと押し寄せて来た疲労感にユニはふらつきながらも立ち上がる。

 

「今は、私に出来る事をしましょう」

 

 そう呟いた後、ユニは顔を洗いに下に降りる。

 だからこそ気付かなかった。彼女の言葉を聞いていた者が居たことに。

 

   +++

 

「ぁあああああ!! 遅刻するぅ!!!」

 

 早朝から少しばかり時が過ぎ、時刻は朝8時15分。

 綱吉は通学路を全力で駆け抜けていた。

 朝っぱらから全力疾走をしている理由、それは単に寝坊しただけである。

 怪我による痛みと精神的な疲労が合わさった結果、これ以上無い程に熟睡してしまった。腕の痛みが軽くなったものの、このまま遅刻すれば間違いなく酷い目にあう。

 普段ならばそこまで気にしなかったが、今日は風紀委員会が校門で持ち物点検をやっている。そんな時に遅刻をすればどんな事になるのか、それは馬鹿にでも理解出来る事だった。

 

「何でこんな時に限って全員寝坊しちゃうんだよ!!」

 

 普段ならば奈々が起こしていたが、今日は用事があって朝から出掛けていた。

 ユニと凪も綱吉と同様に寝坊してしまい、起こしてくれる人が居なかった。

 その結果がこれである。

 

「で、でも…………何とか間に合ったぁ…………」

 

 それでも死ぬ気で走った結果、何とかチャイムが鳴る前に並中に到着する事が出来た。

 綱吉は安堵の息を漏らし、額から流れる汗を拭う。

 これで風紀委員会に目を付けられずに済む。内心安堵しながら持ち物検査をしている風紀委員達の所に歩み寄ろうとする。

 

「1年A組、沢田綱吉。少し良いかい?」

 

 だが校門に入るよりも前に後ろから誰かに声を掛けられる。

 一体誰だろう。自分の名を呼ぶ声に綱吉は疑問を抱きながら振り返る。

 其処に居たのは学ランを肩に羽織った人物だった。

 その学ランには風紀委員会の腕章が着いており、彼が風紀委員である事を示している。

 聞いた事がある。並中の風紀委員の委員長は学ランを羽織った少年であると。

 そして、その少年の名を――――。

 

「雲雀、恭弥…………」

「へぇ、呼び捨てかい?」

「っ、いえ! すみません!! 少し呆気に取られててっ!」

 

 笑みを浮かべながらも全く笑っていない様子の雲雀恭弥の態度に綱吉は恐怖する。

 マッドクラウンに襲われた時も怖かったが、彼から感じるものは全くの別物だ。と、いうか下手したらマッドクラウンよりも恐ろしいかもしれない。

 そう考えていると、いつの間にか周囲から人影が消えていた。

 周囲を見渡すと生徒達が自分達の事を遠巻きに見ていた。その中には風紀委員の生徒も居る。

 どうやら全員、風紀委員長が恐ろしいらしい。

 

「…………群れ過ぎ」

 

 遠巻きに眺めている生徒達を見て、苛立ったのか恭弥はトンファーを構える。

 噂でしか聞いた事が無いが、雲雀恭弥は様々な仕込みが施されたトンファーを愛用しているらしい。

 手慣れた様子で武器を構える恭弥の姿に、綱吉は噂が真実だった事を知る。

 

「あ、あの!! オレに何か用事でもあるんですか!?」

 

 すぐにでも彼から離れたかった綱吉は苛立っている恭弥を宥めつつ、本題に入る。

 

「ああ。きみに聞きたい事があってね。獅子島憲之、いや、この写真の彼の事を知ってるかい?」

 

 そう言うと雲雀恭弥は一枚の写真を取り出す。

 写真には見覚えがあるリーゼントヘアの風紀委員の姿が写っていた。

 あれは確か、マッドクラウンが襲撃を仕掛けて来るよりも少し前だっただろうか。

 

「彼に最後に会ったのは君だからね」

「…………はい。でも、この人がどうかしたんですか?」

「行方不明なんだよ。自宅にも戻っていない」

 

 雲雀恭弥のその言葉に綱吉は言葉を失う。

 心当たりが無い――――わけでは無い。写真の風紀委員がどうして行方知れずなのかは分からないが、全く皆目検討つかないわけでもない。

 写真の彼に声を掛けられた時、不審者が出没していた。そしてその不審者というのがイカれた殺人鬼であるマッドクラウンだった。

 あの後、何が起こったのかは知らないが無関係という事は無いだろう。

 それはつまり――――。

 

「沢田綱吉。きみ、何か知らないかい?」

 

 脳裏に過った最悪の、それも限りなく真実に近い想像をしている綱吉に雲雀恭弥の冷たい声が染み渡る。

 まるで此方を見定めるかの如く向けられる視線に対し、綱吉は恐怖を覚えながらも答えを呟く。

 

「…………すみません。オレも分からないです」

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