家庭教師PRINCIPESSAユニ!   作:霧ケ峰リョク

2 / 40
今回はお色気回です。
今更ながらまともなお色気回なんて書いたこと無かったなぁ…………(過去を思い返しながら)

むしろ男の方が酷い目にあっているような気が…………。


家庭教師ユニ

 綱吉の自室にてユニは座布団の上に座り、テーブルの上にあるお茶に口をつける。

 

「このお茶、美味しいですね」

「よ、良かったよ…………」

 

 ニコニコと笑みを浮かべながら出されたお茶の感想を言うユニに対し、対面する綱吉はガッチガチに緊張していた。

 ガールフレンドはおろか、友達すら居ない綱吉は今まで自分の部屋に家族以外の人間を招いた事は無い。そんな中、自分の家庭教師と自称する少女が唐突にやって来たのだ。

 別にコミュ障というわけではない。だが全く緊張しないわけではなかった。

 こんな事になるならちゃんと部屋を掃除しておけば良かった、そう考えて酷く後悔する。

 そんな綱吉の心情を察したのか、ユニは心配そうな顔をして話しかけてきた。

 

「どうかしましたか?」

「えっ!? いや、何にも無いから!!」

「それなら良いんですけど…………」

 

 此方の顔を覗き込むように視線を向けてくるユニに綱吉は顔を真っ赤にする。

 改めて近くで顔を見ると本当に可愛い。

 学校のマドンナである笹川京子が太陽ならば、ユニは虹だろうか。

 とても綺麗なのに少しの間しか存在しないような、そんな神秘的な儚さを眼前に座る少女から感じた。

 

「さて、と。改めて自己紹介をしましょうか。私はユニ・ジッリョネロと言います。沢田さんの家庭教師として来ました。それで、こちらがカメレオンのレオンです」

「ご、ご丁寧にどうも。オレは沢田綱吉────って、そうじゃない!」

 

 ユニが放つ優しく包み込まれるような雰囲気に流されそうだったが、綱吉は堪える。

 

「家庭教師なんていらないよ。それにユニってオレと同い年なんだろ?」

「そうなんですが…………一応大学も卒業してますので問題無いですよ」

「いや、そういうんじゃなくて」

「それに私は沢田さんに用事があって日本に来たんです」

「オレに用事?」

 

 見るからに日本人ではない少女が、初対面である筈の彼女が一体自分に何の用があるというのだろうか?

 そう考えながら温かいお茶を啜る綱吉に答えるかのようにユニはゆっくりと口を開く。

 

「イタリア最大最強のマフィア、ボンゴレファミリー。その10代目として選ばれた沢田綱吉さんを立派なボスとして教育すること。それが私がこの日本にやって来た理由なんです」

 

 ぶふっ、と綱吉は口からお茶を噴き出す。

 

「ゲホッ……ガハッ………おぇ……」

「だ、大丈夫ですか?」

 

 飲んでいたお茶が気管に入り、綱吉は激しく咽せる。

 それを見てユニが心配そうに声をかけて来たが全く耳に入らなかった。

 

「ま、マフィア…………!?」

「はい────」

 

 困惑する綱吉にユニは説明を始める。

 伝統・格式・規模・勢力すべてにおいて別格といわれるイタリアの最大手マフィアグループ、ボンゴレファミリー。

 現在、組織のボスであるボンゴレ9代目は高齢であることを理由に引退し、ボスの座を10代目に継承する事を決めた。

 しかし、不幸なことに10代目候補の三人が命を落としてしまい、日本に居る綱吉にボスとしての白羽の矢が立ったのである。

 

「どうしてオレがっ!!?」

「沢田さんの家系はボンゴレⅠ世、初代の直系の末裔だからです」

 

 説明を聞いて混乱する綱吉にユニは補足を入れる。

 

「元々自警団だったボンゴレファミリーを創設したボンゴレⅠ世は早々に引退し、日本に隠居したんです。そしてその子孫が沢田綱吉、貴方なんですよ」

 

 奈々が淹れたお茶を飲みながらユニは一息つく。

 それに対し綱吉は狼狽していた。と、いうより話の内容が受け入れられなかった。

 マフィアのボスの家系で、自分は次期10代目候補。

 まるで嘘としか思えないようなふざけた話だ。

 だからこれは彼女が自分を脅かす為の嘘なのだろう。

 そう自分に言い聞かせようとする綱吉にユニは懐からある物を取り出して前に置く。

 黒く鈍く光る拳銃と弾丸だった。

 

「んなぁ────!? 本物ぉ!!?」

「はい。ただ弾の方は実弾ではなくボンゴレファミリーに伝わる特殊弾、名を死ぬ気弾と言います。これを眉間に撃たれたら死ぬ気になって蘇ると聞いてます」

「そ、そんな説明はどうでも良いから!!」

 

 綱吉は確信した。彼女は嘘を一言も言っていないと。

 流石に死ぬ気弾の辺りは胡散臭いもののマフィアの部分については本当の事なのだろう。

 

「冗談じゃない…………!」

 

 自分はマフィアのボスになんかなるつもりは無い。

 そう彼女に言おうとしたところで、いつのまにか近くに移動していたユニが自身の手を掴んだ。

 

「別に今すぐなれとは言いません。後を継ぐのか、継がないのかなんていうのはもっと経験を積んで、それからで良いんです。私としては、沢田さんに10代目になってもらいたいんですけどね」

「ゆ、ユニ…………」

 

 ユニの言葉を聞いて、綱吉は落ち着きを取り戻す。

 まるで自分の心を見透かしているみたいだ。だからこそ欲しい言葉を言ってくれる。

 だが、それでも綱吉の答えは変わらなかった。

 

「オレは…………マフィアのボスにはなるつもりはないから」

 

 元々が自警団だったとしても今は犯罪組織でしかない。

 どれだけ強大な組織なのかは知らないし、どれだけお金があろうともそんなものを継ぐ気は欠片も無かった。

 とはいえ、それをユニに向かってはっきりと言うつもりは無かった。

 この話を持って来た彼女がマフィア関係者だというのは言わなくても分かる。

 だからといって初対面の人間である目の前の少女相手に暴言を吐く気も蛇蝎の如く嫌う気も欠片も起こらなかった。もし来たのがもっと乱暴な人間だったならば反抗的にもなっていただろうが。

 

「そうですか…………分かりました」

「…………良いの?」

「私はあくまで家庭教師。生徒を教え導くのが仕事です。沢田さんならきっと良きボスになれるとは思いますが、本人の意思が何より大切だと考えています。だから、私は沢田さんの意思を尊重します」

 

 ユニの言葉に綱吉は言葉を失った。

 まさか素直に諦めてくれるとは思わなかった。いや、決して諦めたわけではないのだろうが、あくまで決定権は自分にある。彼女はそう言っていた。

 思えば、こうして自分の意思を尊重してもらえたのは初めてだろうか。

 ならばユニもこのままイタリアに戻るのだろう。そのことに奇妙な寂しさを感じながらも、平穏が保たれは事に綱吉は安堵する。

 だがユニは帰る準備をする事なく、ここに来る際に持って来ていたスーツケースから数冊の本を取り出す。

 

「それじゃあ、早速授業に入りましょうか」

「えっ? 帰るんじゃないの?」

 

 ユニの発言に困惑を隠せず、綱吉は目を丸くして尋ねる。

 

「帰らないですよ。沢田さんがマフィアのボスになるつもりがなくても、私は貴方の家庭教師としてここに来たんですから」

 

 その言葉に綱吉は言葉を失う。

 

「これからよろしくお願いします!」

 

 笑顔でそう言った後、此方に手を差し出すユニ。

 差し出されたその手をつい反射で取ってしまい、二人は握手を交わした。

 

   +++

 

「────今日はここまでにしておきましょう」

「あば、がががががが…………」

 

 ユニが授業の終了を告げて、綱吉はテーブルに顔を突っ伏す。

 頭から煙が上がりそうな程辛い時間だった。

 飛び級をしていると言うだけあって、ユニは非常に頭が良かった。

 それだけじゃない。教える事でさえ学校の教師よりも上だ。分からないところがあればどうしてこうなるのか、どのようにすれば解けるようになるのか。ダメツナにも分かりやすいように懇切丁寧に教えてくれる。

 とはいえ、勉強が苦手な綱吉にとってこの勉強の時間は拷問にも等しかった。

 

「続きは明日にしましょう。それでは、失礼します」

 

 動けなくなった綱吉にそう告げるとユニは部屋から去っていった。

 ようやく勉強から解放された。その事実に心底安堵する。

 分かりやすいのは事実だったし、可愛い女の子と一緒に居れるのは役得だ。が、だからといってこんな時間が毎日続くのは御免だった。

 顔を突っ伏してから約三十分ぐらいの時間が流れて、綱吉はようやく身体を起こす。

 

「…………つ、疲れた」

 

 もう何も考えたくない。

 覚束ない足取りで階段を下りる綱吉はそのままお風呂場に直行する。

 憧れの女の子が先輩と付き合っていたりや自分がマフィアの10代目候補だったり等、今日一日だけで一生分の驚きを味わった気分だった。

 こんな日はとっととお風呂に入って疲れを取りたい。

 そう考えながら綱吉は服を脱ぎ捨てて風呂の扉を開けた。

 浴室の中にはユニが居た。

 

「――――えっ?」

「は――――っ?」

 

 二人の同時に間の抜けた声を出す。

 一体なんでユニがお風呂場に居るのか、そう言葉に出すよりも先に彼女の今の状態が視界に飛び込んでくる。

 お風呂場に居るのだからユニは裸であり、対する綱吉もまた裸だ。

 互いの視線が交差する。視線の先にあるのは互いの一糸纏わぬ姿だった。

 

「――――ッ!!?」

 

 ユニの顔が一瞬で茹蛸のように真っ赤に染まる。

 

「ぶふっ――――!!」

 

 刺激が強かったのか、綱吉は鼻から盛大に鼻血を噴き出してそのまま気絶した。

 この後、二人は顔を気まずい中、顔を真っ赤にして夕食を食べる事になるのは語るまでも無い話である。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。