これからは仲を深めていく段階です。
が、それはそれとして応募用の作品がまだ仕上がってないので暫くはそっちに集中するかと思います。
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それは死ぬ気モードを超える戦闘形態。
歴代のボンゴレファミリーのボス等の一部の例外を除けばリング等の媒体を通してでなければ扱う事が出来ない死ぬ気の炎を人体でも使用可能になった状態の事である。
その戦闘能力は死ぬ気モードの比では無い。
「成る程、噂に違わぬ威圧感。加えて死ぬ気の炎もより強大になっている」
少なくとも見掛け倒しではないだろう。
だが、それでもモルトは落胆せざるおえなかった。
「その状態にもっと早くなれていれば、まだ話は違ったのですがね」
綱吉が使っていた大空属性のリングは右手に付いており、現在そのリングは斬り落とされた綱吉の右腕ごとユニが持っている。
如何に戦闘力が上がろうとも、戦闘に重要なものであるリングや
誰がどう見ても綱吉に勝ち目は見えない。
しかし――――、
「そう思うか?」
綱吉の瞳には自身が負けるといった思いは一欠片も無かった。
「ならば強がりか痩せ我慢か確かめてみましょう!」
モルトは綱吉に向けてリングを向け、攻撃を放つ。
それに加えて今度の攻撃には雷の死ぬ気の炎も帯びている。
――――この攻撃を防ぐのは困難ですよ。
霧属性唯一の弱点を補い、より強力となった霧と雷の複合属性の攻撃が綱吉に迫る。
如何に死ぬ気の炎をリング無しでも出せるようになったとはいえ、その出力や純度が高いわけではない。
どう考えてもこの状況を打開する方法は無いに等しい。
にも関わらず綱吉の顔には一切の恐怖が無く、逆にモルトが放った攻撃に向かって突貫した。
「――――今だ、ナッツ」
綱吉が短く、そして小さい声音で相棒である匣アニマルの名を呼んだ瞬間、モルトの右腕に衝撃と共に痛みが走った。
視線を右腕の方に向けると、そこには綱吉の相棒である天空ライオンが噛み付いていた。
「なっ、いつの間に…………!?」
モルトはいつの間にか側まで接近していた天空ライオンに困惑する。
思い返せばこの匣アニマルは綱吉が開匣したものだ。さっきの攻撃でリングを失った際に機能停止したと判断していたが、まさかまだ動ける状態だったとは。
天空ライオンの存在を失念していた事にモルトが呻くのと同時に、右手の指にはめていたリングに灯っていた死ぬ気の炎が消え、鉤爪もまた最初から無かったかのように掻き消える。
「なっ、これは…………!?」
「ヘルリングの力は確かに脅威だ。でも、どれだけ凄い力を持っていてもリングである事には変わらない」
攻撃が消失した事でモルトの懐に接近出来た綱吉は刃を振り上げる。
半ばまで圧し折られてこそいるものの刀身には死ぬ気の炎が灯っており、武器としての役割は十二分に果たす事が出来るだろう。
「リングは所有者の波動を死ぬ気の炎に変える。なら、その波動に大空の特性である調和を直接流し込めばその機能は停止する!!」
ましてや、死ぬ気の炎を使っていない人体程度ならば容易く切断が可能だ。
「くっ…………!」
モルトは天空ライオンに噛まれて動かせない右手から剣を左手に持ち替え、攻撃を防ごうとする。
しかし既に懐に潜り込んでいた綱吉の方が行動が早く、死ぬ気の炎が灯った刃がモルトの右腕に振るわれた。
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「ぐ、ぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!! 」
右腕を失った瞬間、モルトは亡者のような叫び声を上げた。
それと同時にモルトの全身をドス黒い霧の死ぬ気の炎が覆い尽くした。
「…………これで終わりだ」
地面に転がったモルトの右腕を蹴り飛ばし、ナッツを左腕で抱き抱え、後方に下がって距離を取った綱吉はモルトに対し告げる。
あの悍ましい姿に変身した際にも同じ様に死ぬ木の炎が全身を覆っていた。しかしモルトは右腕ごとリングを失い、死ぬ気の炎を扱う事も出来なくなった。にも関わらず死ぬ気の炎がモルトの全身を覆っているという事は、そういう事なのだろう。
「う、ぉあ……………」
全身を覆っていた死ぬ気の炎が消失するとモルトの身体は先程までの悍ましい姿から一転、元の人間の姿に戻った。
いや、戻ったというには正しくない。その姿は明らかに消耗し、やつれていた。
当然といえば当然だ。ヘルリングに精神を喰わせるなんていう真っ当じゃないパワーアップをしているんだ。
負担が無いわけが無い。
「…………見事です」
モルトは地に膝を付き、右腕の傷口を抑えながら称賛の声を上げる。
武器を失いリングも奪われて挙げ句の果てには右腕は斬り落とされた。一方の綱吉は右腕こそ失っているが死ぬ気の炎は使え、武器も持っている。刀身が半ばまで無くなった剣ではなく、モルトが今まで使っていた剣に持ち替えている。
そして、匣アニマルであるナッツや後方に下がっているユニや凪も居る。
状況は既にひっくり返っていた。
「これは、もう勝ち目はありませんね」
「ああ、だから降参しろ」
「それでもケジメは付けなければいけません」
綱吉の言葉に耳を貸す事は無く、モルトは懐から拳銃を取り出す。
「…………何でだよ」
拳銃を取り出して此方に銃口を向けるモルトに、綱吉は身体を震わせる。
その震えは恐怖からくるものでなければ武者震いでも無い。ただひたすらに怒りという激情にかられたものだった。
「どうしてそんなに争おうとするんだ!! どうしてそんなに死にたがるんだよ!! 戦いなんて痛いだけで、争いなんて辛いだけだろ!!」
モルトの行動、そして言動に対し綱吉は怒りを爆発させ本音をぶち撒ける。
それは今までの襲撃者に対する怒りや憤りも多分に含まれていた。
「何で、ですかね」
それに対しモルトは先程のように他人事で話すのではなく、綱吉に同意するかのように頷いた。
ヘルリングの呪縛が無くなったからか、あるいはさっきの死闘で全てを出し切ったのか。狂気はまるで感じられず、人の良さそうなお爺さんに見えた。
恐らく、これが彼の素なのだろう。
「貴方の言う通り、戦い等当事者にとっては辛い事でしかなく、それで手に入れるものも戦いで失ってしまったものに比べれば価値が無い」
「なら――――!」
「ですが世の中の大半の人間はその失ってしまうもの以上に戦いで得られるものの方が価値があるように見えるのです。いえ、それは正しくありませんね。大半の人間にとって貴方が求めているものよりも、貴方が忌避し疎んでいるものの方が価値がある」
皮肉な話ですがね、と話を続けるモルトの言葉に綱吉は何も言えなくなる。
「…………随分と勝手な言い分だ」
「私もそう思いますよ。ですがある意味では真理です」
「そんな真理があってたまるか!!」
綱吉の怒声にモルトは目を見開く。
そして心の底から憐れむかのような眼差しで見つめてきた。
「貴方は貴方が思っている以上に優しいのでしょう。だけど他者は貴方のように優しくはない。それは裏社会での話じゃない。表社会でさえ、貴方は生きるのが難しい」
「そんな事は――――」
「無いと本当に言い切れますか? 貴方のクラスメイト達は今までどんな視線で貴方を見てきましたか?」
モルトのその言葉に綱吉は何も言えなくなる。
否定しなければいけない、そう思うにも関わらず綱吉の脳裏にはユニと出会うまでの記憶がこびり付いていた。
そして、その記憶がモルトの言葉が正しいのだと告げていた。
「優れているのであれ劣っているのであれ、人間という生き物は排除する存在。貴方は非凡な平凡な人間ではありますが、それは貴方が他の人間と同じというわけではない。むしろその逆で、貴方は他の人間とは明確に違うという事」
「そんなの、誰だって同じだ」
「いいえ。違います。尤も、いずれ貴方も思い知る事になるでしょう」
そう言うとモルトは笑みを浮かべたまま綱吉に向けていた銃口を自らの蟀谷に押し付ける。
「ああ、本当。もっと早くにこうすべきでした」
「っ、何を…………!」
「言ったでしょう? ケジメと。ヘルリング、呪われたリング。地獄を味わった私なら大丈夫だと過信していましたが、やはり呪われたリングという事でしょうね。こんな簡単な事に何年も気付かなかったとは」
自分で自分を嘲笑うかのような、本当に後悔していると言わんばかりの表情を浮かべる。
そして綱吉の方を見て安らかな笑った。
「貴方には感謝します。尤も、こんな男に感謝されても嬉しくは無いと思いますが」
「っ! 待て――――」
これからモルトが何をしようとしているのか、理解した綱吉は止めようと手を伸ばす。
しかし距離を取っていた事もあり間に合う事はなく――――、
「では、さようなら」
パンッと乾いた音が鳴ると共にモルトは頭から血を流し、倒れて動かなくなった。
自殺。ヘルリングという恐ろしき力を使った男の最後がそれだった。
額に灯っていた死ぬ気の炎が消失し、綱吉の全身に凄まじいまでの疲労感が襲い掛かる。
どうして、と疑問に思う間も無く綱吉の意識は闇に沈んでいく。
「沢田さん!!」
意識を手放す瞬間、ユニの声が聞こえたような気がした。
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「――――では、お大事に」
病院の医者にそう言われ、山本武は浮かない表情で診察室から出た。
右腕には包帯が巻かれており首から吊り下げている。
骨折だった。野球の練習のし過ぎによる疲労骨折だったという。
安静にしていればすぐに治るとは言っていた。しかし、その治るまでの間は当然野球は出来ないし、治ったとしても大会にはとても間に合わない。
「…………くそっ」
武は悔しさから普段はしないであろう顔をする。
もしこの場に級友が居たとしたならば普段の武とのギャップに驚くかもしれない。
それくらい山本武という少年にとってこの怪我はあまりにも大きかった。
それこそ、野球の神様に見捨てられたと思ってしまうくらい。
「す、すみません!!」
どんどんとネガティブな思考になっていく中、武の耳に届いたのは切羽詰まったかのような少女の声音だった。
何気無しに視線を声がした方向に向けると、そこには信じられない光景が映っていた。
周囲の人達もその光景を見て驚き、声を失っている者も居る。しかし、武は他の者とは違う意味で声を失っていた。
「お願いします! 沢田さんを、助けて下さい!」
病院の玄関に二人の少女に抱えられた一人の血だらけの少年が居た。
その少年は剣で斬られたかのような大きな傷を負っており、抱えている二人の少女も少年の血で酷く汚れている。
だがそれ以上に目を引くのは右の方に居る少女が持っている物で、それは人間の腕だった。よく見れば抱えられている少年は右腕が無い。
そして、その右腕が無い大怪我をした少年の姿は――――、
「つ、ツナ…………?」
最近自身が注目しているクラスの友人だった。
凪「救急車を呼ぶよりも抱えていった方が早い」
その結果病院内は騒然する事になりました。