家庭教師PRINCIPESSAユニ!   作:霧ケ峰リョク

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すみません遅くなりました。
取り敢えず今回からハートフルな感じでやっていきたいと思います。


二度目の入院

――――あれ、ここは何処だ?

 

 不意に意識が覚醒した綱吉は、朦朧としながらも自分が今何処に居るのかについて考えを巡らせる。

 何故かは分からないが身体は動かす事が出来ず、顔の上に何かが覆い被さっているのか左目は何も映す事は無く真っ暗だ。

 そして周囲には沢山の人達が忙しなく何かをしていた。

 よく聞こえないが大きな声で言い合っているのは分かる。意識を耳に集中しても何を話し合っているのか分からない。

 

――――そもそも、何でオレはこんな所に居るんだろう。

 

 朦朧としていた意識もはっきりし始め、明瞭になってきた為か改めてここが何処なのかを確認する。

 明るい光に照らされているとても清潔な空間、周りに居る人間は大人達で手術をする時に着ているような格好をしている。

 ふと視線を下に向け、大人達が何かをしている箇所を見やる。

 そこは綱吉の右腕があった場所で、大人達は針や糸等の医療器具を持って右腕を縫っているのが見えた。

 

――――ああ、そうだ。オレ、右腕斬られてたんだった。

 

 どうしてこんな所に居るのか、全ての理由を理解した綱吉はあまりの眠気に瞼を閉じる。

 

――――二人は、大丈夫かな?

 

 そして自分が守った少女達の安否を気にする。

 多分、守れたと思いたい。少なくとも二人は敵の攻撃を受けることは無かったし、あの後隠れていた敵が襲い掛かって来たとかも無い筈だ。

 そう考えていると綱吉の耳に医師達の声が耳に届く。

 

「先生。やはり繋げるのはいくらなんでも無理が…………今からでも切除に切り替えるべきでは」

「…………そう、だな。そうした方が良さそうだ」

 

 さらりと口にした医師達のその言葉に綱吉は息を飲む。

 腕を切り落とされ、もう元には戻らないかもと覚悟はしていた。

 だがこうして身動きすら取れない状況で、かつ繋いでいる真っ最中にも関わらずこういう事を自分が関わらないところで勝手に決められると流石に心に来る。

 そして綱吉の心中を知らずに医師達はメスやノコギリを持って繋ぎかけていた腕を再び切断しようとする。

 

「おっと待ちな」

 

 そして綱吉の腕が再び切り落とされそうになった瞬間、一人の男の声が響いた。

 

「な、何だ君は! ここは関係者以外立ち入り禁止だ! 早く出て行きたまえ!」

「悪いな。そこの坊主に関しちゃお前らが無関係者だ。つーかもし腕を切り落としてたらお前ら危なかったぞ。繋げられる可能性の方が高いにも関わらず、切り落とすなんて真似したらな」

 

 手術室に男が入って来ると同時に複数人の医者らしき人間達も中に入って来る。

 そして今まで手術を行なっていた医者や看護師達を外に出すと再び手術を再開した。

 

「ったく、オレは男は診ねぇっていうのによぉ。ボンゴレやジッリョネロにお願いという名の脅迫をされたら断る事すら出来ねぇ。とはいえ、これで色々とチャラにしてくれるっていうんだからまだマシか」

 

 男はそう呟きながら針と糸を手にする。

 

「ま、お前さんが女の為に命張れる奴じゃなかったら断ってたんだけどな。運が良かったなボンゴレ坊主。オレが日本に居てよ」

「…………あ、ぅ」

「無理して喋んなくて良いぞ。むしろ寝とけ。ったく、一体どうして麻酔が切れかかってるんだか…………」

 

 綱吉に対しそう告げると男は新たに入って来た者達と共に斬り落とされた腕の再接着手術を始める。

 

「…………ふた、りは」

 

 右腕があった場所から鈍く、小さく、それでいながらも鋭い痛みが走り始めている中。

 口に呼吸器を付けて上手く話す事が出来ない状態の綱吉の口から出た言葉はそれだった。

 その言葉を聞いて男は一瞬目を見開くも、すぐに目を細める。

 

「二人とも無事だ。だからとっとと寝ちまえ」

 

 男の口から語られたその言葉を聞き、綱吉は漸く安堵する。

 そして襲い来る眠気に誘われるがまま意識を手放した。

 

「…………ったく、本当に辛い仕事だぜ」

 

   +++

 

「――――DR.シャマル。手術はどうでしたか?」

 

 赤く点灯していた灯りが消え、手術室から出て来た男にユニは話しかける。

 声音からは心配と不安が入り混じっており、表情は後悔の色が浮かんでいる。

 Dr.シャマルと呼ばれた男はそんなユニに対し何とも言えないような浮かない表情で告げる。

 

「雷の死ぬ気の炎でついた顔の傷は残っちまうが、腕の手術の方は無事に成功したぜ。ジッリョネロの嬢ちゃんよ」

「そうですか…………」

 

 安堵の息を漏らすユニだったが、そんな彼女を見てシャマルは難しい表情を浮かべる。

 

「だが問題はこれからだ。失った腕を繋いだからってすぐに動かせるわけじゃねぇ。しんどいリハビリを長期間続けなくちゃならないし、それをしたからって元に戻るという保証もねぇ。一生不自由って事だってありえる」

「それは…………」

「逆に以前よりも器用に動かせるようになるって可能性もあるがな。これは努力だけじゃどうにもならねぇ。努力が必要なのは当然で、それ以上に運や時間も必要だ」

 

 そこから先をシャマルは口にしなかった。

 言わなくても分かっているとは思っていたし、女好きを自称する故にこんな少女に告げるのは酷だとも思った。

 努力はどうにかなるだろうが、時間は圧倒的なまでに足りない。

 今までの襲撃を乗り越えて来たのだから運はあるのかもしれないが、ここから先を乗り越えられるかどうかは分からない――――。

 

「大丈夫」

 

 綱吉とユニ。二人のこれからを考えて不憫に思っていると、ユニの背後に居た少女が声を上げた。

 

「私がボスを、ユニを守る」

 

 年頃の割に華奢で妖艶で、可憐な少女は自分自身に誓いを立てるかのように言う。

 表情こそ変わっていないように見えるものの、その瞳には強い決意と覚悟が秘められており、口先だけの言葉じゃないと確信出来るほどだった。

 

「もう、ボスに守られて庇われるだけじゃない。私が二人を守る。今度こそ、絶対に…………」

 

 そして、凪の強い決意に反応するかのようにユニが預かっていた(マロッキョ)のヘルリングが共鳴するかのように揺れ動く。

 

「へ、ヘルリングが…………!」

 

 リングは持ち主に媚びたりする事は無い。しかし、リングが持ち主を選ぶ事はある。

 一流の彫金師にはリングの声を聞く事が出来る者もいると言うが、ユニはリングを製作する彫金師ではないしリングの声を聞く事は出来ない。

 しかし、自らの懐で蠢くヘルリングが凪を使い手として認めたという事は何となくだが分かってしまった。

 

「そういうわけでユニ。あの人から取ったリング、渡して欲しい」

「ダメです」

 

 今の凪にこのリングを渡してはいけない。渡したら間違いなく、彼女の人格に大きな影響を及ぼしてしまう。

 この時、そう判断したユニの選択は間違っていなかった。

 

「まぁ、何だ。暫くはオレも日本に居るし、助っ人も来る予定になっているから安心しろ」

 

 二人の会話を聞いていたシャマルは頭を掻きながら呟く。

 

「助っ人、ですか?」

「ああ。とっても心強い助っ人達だ」

 

 ユニからの質問に対し、シャマルは笑みを浮かべた。

 

   +++

 

「――――どうして面会出来ないんですか!?」

 

 病院の入り口、受付にてコートを羽織った二人組の男性が一人のナースに詰め寄るように話をしていた。

 話をする、というよりは半ば問い詰めるような形ではあったが、ナースはそんな二人に対しきっぱりと断る。

 

「ですから先程も申し上げたようにまだ患者は意識を取り戻していないんです! そんな状態で面会という名の事情聴取等出来る筈がありません!」

「そこを何とか! 彼は例の事件の被害者にして重要参考人です!」

「何度も申し上げますが警察の方とはいえ、患者に無関係な方の面会は現在お断りしています!!」

 

 言外に「とっとと帰れ!」と言わんばかりの態度でナースは応対する。

 しかし二人組の男、警官達も負けじと食い下がろうとする。

 彼等もここで帰るわけにはいかなかった。この前から発生している怪事件の数々。

 警察官や決して少なくない数の一般人が突然失踪し、見つかったとしても見るも無残な死体になっている。とてもではないが人間がやった事だとは思えない、思いたくない程に酷い有様だった。

 だが解決しようにも一向に進展は無く数々の怪事件を引き起こしている犯人、もしくは関わっている重要参考人と思わしき人間達は皆並盛町に集まり、そこで消息を絶っているのだ。

 今回、怪事件を起こしているとされている犯人達に襲われながらも生還した沢田綱吉を除いて。

 故に警官達が綱吉に詰め寄ろうとするのは当然の事だった。

 

「君達、何をしてるの?」

 

 しかし、それを許さないのが一人居た。

 警官達の前に姿を現したのは黒い学ランを肩に羽織った少年だった。

 少年は鋭い目付きで警官達を睨み付ける。

 

「残念だけど、ここに君達を入れるわけにはいかないよ」

「子どもには関係の無い話だ。早く家に――――」

 

 帰りなさい、そう言おうとした男は最後まで口にする事なく地に倒れ伏した。

 

「君達が何処の所属かは知らないけど、ここは僕の町だよ。それを忘れたのかい?」

「…………す、すみません。ですが我々にも」

「君達の面子なんて知った事じゃ無いよ。ここでは僕がルールだ。例の事件も僕がやるから」

 

 その言葉を聞いて残された警官は唇を噛み締める。

 本来ならばそのようや事、許される筈が無い。しかし、この町は例外だった。

 

「それに、僕も彼に用があってね。色々と聞きたいことがあるんだ」

 

 そう言うと少年、雲雀恭弥は上を見上げた。




ハートフル、ハートフルボッコ。
何故足しただけで違う意味になるのか。
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