最近仕事が忙しいのとバンカラ地方とパルデア地方に行くのが忙し過ぎて…………。
取り敢えず年末までにある程度進めたいなぁ。
「沢田さん、おはようございます」
意識を取り戻した綱吉の視界に映ったのは安堵したユニの顔だった。
目の下にはクマが出来ており、全く眠っていないようにも見える。
「ゆ、に…………?」
「はい」
自身を心配している様子の少女の名を呟くと、ユニは目を細めて笑顔を浮かべる。
その瞳には薄っすらと涙がにじんでいるのが見えた。
次に視線を何かが乗っかっているのか酷く重い腹部の方に向ける。
腹部、正確にはお腹の辺りに位置する掛布団の上に凪が頭を乗せて眠りこけていた。熟睡だった。
「オレは…………一体――――ッ!?」
どれだけ眠っていたのか、そう口にしようとした瞬間、全身に走った激痛に言葉を発する事すら出来なくなる。
一番痛いのは右腕だったが、それには劣るものの全身も凄く痛い。
身体中の筋肉が悲鳴を上げている。
「さ、沢田さん!?」
「反動だろ。
「シャマル…………!」
声も無く呻く綱吉にユニは心配そうに声を掛けると、その疑問に答えるかのように病室に白衣を見に纏った無精髭の男、ユニがシャマルと言った男が入って来る。
入室した男は綱吉が手術中に見た男だった。
あの時は顔がマスクで隠れていた為、素顔は見れなかったが間違いなくあの時の人だと理解する。
「おっすボンゴレ坊主。元気にしてるか? って、見なくても分かるわな」
激痛で悶え苦しみ起き上がる事すらままならない綱吉を見て、シャマルは淡々と呟く。
「まあ、峠は越えたから問題ねぇだろ。後は本人の頑張り次第だろうがな」
シャマルはそう言うと綱吉達に背を向け、病室を後にしようとする。
「ま、待って…………!」
綱吉は此方に背を向けて去ろうとするシャマルに声を掛ける。
シャマルは鬱陶しそうにしながらも綱吉の方へ振り向く。
「んだよ。男からの感謝とかいらねぇよ。どうせ貰うなら可愛いお嬢さんの声援が欲しいくらいだ」
「だとしても…………感謝くらいはしないと、気が済まない」
「律儀な奴だな。そういう時はラッキーぐらいに思っておかないと気が休まらないぞ」
「腕をくっ付けてくれたのにラッキーで済ますわけにはいかないだろ」
最悪意識がある中で腕を切られていたかもしれなかったのだ。
感謝の一つや二つではとても気が済まない。
「前にも言ったろ。オレは男は見ねぇってよ」
綱吉の思いとは裏腹にシャマルの態度は突き放しているようにも見えた。
しかし、本当に冷酷な人間とは思えなかった。少なくとも今まで出会って来た裏社会の人間の中では常識人寄りの人物だった。
一般人からしたらまともとは言い難いのかもしれないが、それでも過去の襲撃者達に比べれば遥かにマシだ。
「まあ、あれだ。大怪我したからって次は治さねぇからな。気ぃ付けろよ。お前の様子なら言わなくても大丈夫だとは思うがな」
「…………わかりました」
好き好んで大怪我をしたわけじゃないし、そもそも望んでこうなったわけでもない。
言われなくても気を付けている。ただ、気を付けてもどうにもならないのが現状だ。
「でも、オレにそんな余裕は――――」
「安心しろ。絶対安静のお前しか戦える奴が居ない状態で、放っておく程ボンゴレは落ちぶれちゃいねぇ。お前さんが回復するまでの間、助っ人達が来る事になったんだよ」
「助っ人達…………?」
「ああ。心強い、強力な味方だ」
シャマルがそう言うと何者かが扉を開けて中に入って来る。
入って来たのは三人で、内一人は黒いスーツを身に纏った人間だった。
黒い髪に黒い髭、眼鏡を掛けた男は一見して堅気の人間には見えないものの温厚そうな人物だった。
もう一人が金髪の青年だ。革ジャンに袖を通しており見るからにイケメンといった感じだ。雰囲気も明るく、同級生の山本武を連想させる暖かさだ。腕にタトゥーがあるみたいだが、日本なら兎も角、外国人なら然程珍しくないだろう。
そして最後の一人は金髪の青年の肩に乗っている黒いスーツを着て、ボルサリーノを深々と被り、黄色のおしゃぶりを付けた赤ん坊だった。
明らかにこの場に似つかわしくない、を通り越してマフィア関係者とは思えない。眼鏡をかけた男性と金髪の青年は裏社会の関係者に見えなくもないが、この赤ん坊に関してはコスプレをした赤ん坊にしか見えなかった。
仮に関係者だったとしても、金髪の青年の弟、もしくは息子だろう。
「誰がこのへなちょこディーノの
「ぐへっ!?」
綱吉が突然入って来た三人の事を考えていると、突如として赤ん坊が金髪の青年の顎に蹴りを放った。
まるで実際に綱吉の頭の中を覗き込んだかのような言動、それが気にならなくなってしまう程、金髪の青年の身体は宙を舞う。
情けない悲鳴を上げながら宙を舞う美青年の姿に綱吉は唖然とする。
とても信じられない光景だが、今のは青年のオーバーリアクションなんかではなく、本当に赤ん坊の蹴りで吹っ飛んだのだ。
そんな小さな身体の何処から大の大人を蹴り飛ばすだけの力があるんだ。やはり裏社会には化け物しか居ないのか?
内心そう考えながら綱吉は目の前の赤ん坊に対し、恐ろしいものでも見るような視線を送る。
実際、恐ろしかった。この赤ん坊は明らかに自分じゃ勝てない程強い。
天と地程の差があると言っても過言じゃない。
「そんな熱い視線を向けるな。ホモか?」
「誰がホモだ――――っ、いつつ…………っ!!」
叫んだ事で全身に痛みが走り、疼くまる。
本当に何だこの歯にも着せぬ物言いの赤ん坊は。見た目だけ可愛い赤ん坊だが中身は傍若無人の塊のような存在だ。
一体どんな育て方をされればこんな理不尽になるというのだろうか。
そう考えているとユニはその赤ん坊を見て笑みを浮かべる。
「お久しぶりです。リボーンおじ様」
「おじ、様? おじ様、えっ、えっ?」
ユニが告げた言葉に綱吉は思わずボルサリーノを被った赤ん坊、リボーンとユニに視線を向ける。
ありえない、話ではないだろう。叔父と姪の関係性なら不思議な話じゃない。
とはいえ、このニヒルな笑みの赤ん坊と天使のようなユニが血縁関係にあるとは到底信じられない話だが。
「一から説明するのは面倒だし、そこまで教える義理もねぇ。ただ一つだけ教えとくぞ。オレは見た目通りの年齢じゃねぇ」
「…………裏社会には若返りの方法すらあるっていうの?」
リボーンの見た目に似合わない雰囲気の理由に得心するも、綱吉の考えを否定するかのように首を横に振る。
「流石にそんなものはねぇぞ。裏社会にもな」
「じゃあ、表社会?」
「そっちにもねぇぞ。仮にあったとしても権力者が秘匿して表には出て来ないと思うがな。ま、この話はここまでだ。それよりもオレ達が何者なのか、そして何で来たのかを説明するぞ」
そう言うとリボーンはそれ以上この事について話す事は無かった。
反応から察するにあまり触れてほしくない話題なのか、話題を次に移す為に床に転がっている金髪の青年の頭を蹴り上げる。
「起きろへなちょこディーノ」
「ぐべっ!」
「お、鬼だ…………!」
意識を手放していた青年を蹴り飛ばすリボーンの姿を見て綱吉はドン引きする。
ユニもこの鬼畜行為は良く思わなかったのか、引き攣ったような苦笑を浮かべていた。
「いつつ、ったく。後輩の前なんだから少しはかっこつけさせてくれても良いだろ?」
「お前はへなちょこなんだからすぐにボロが出るだろ。だからお前の情けなさを先に見せておこうと思ってな」
「ひっでぇなおい!」
「あ、あの…………貴方達は一体?」
目の前で身体を張った漫才を繰り広げている二人とそれを見て「騒々しいぜ」といつもの日常を見ているかのような男に対し、綱吉は質問を投げる。
これ以上この人達のペースに合わせていたら話が全く進まない気がした。
「っと、そうだったな。自己紹介といこうか。オレはディーノ。ボンゴレの同盟ファミリーであるキャバッローネファミリーのボスだ。んでこっちがロマーリオ。オレの右腕だ」
「おう。うちのボスが迷惑をかけてすまないな」
そう言ってディーノは綱吉に手を差し出すが、今の綱吉の状態を見て手を戻す。
「はぁ…………そのキャバッローネファミリーのボスがどうしてここに…………?」
「お前が大怪我を負って身動きが取れなくなったからな。お前の傷が癒えるまでの間、守りに来たんだぞ」
綱吉の疑問にリボーンが答える。
「そんじゃ、改めて自己紹介するぞ。オレはリボーン。ディーノの家庭教師で、本来ならお前の家庭教師をやる予定だった者だ」