そして今回から難易度ハードでいきます。
並盛には二つの中学校が存在する。
一つが並盛中学校、もう一つが黒曜中学校だ。
どちらも不良が多い為、実質的にはそこまで大差は無いが黒曜中の方が治安が悪い。
その為、黒曜中の制服を身に纏った不良が町を我が物顔で闊歩していた。
そして人気の無い裏路地に三人の不良が一人の男を囲んでいた。
「おい翔ちゃん。こいつ、ピエロだぜ」
「スゲェ。マジ受ける」
「おい。何か芸やれよ」
三人の不良は道化師の装いをした男を囲みながら詰め寄っている。
その手にはそれぞれ木刀や斧などの武器を持っている。
「つまらなかったら有り金全部貰うからな」
そう言い放つ翔ちゃんと呼ばれた男。
当然だが道化師が面白い芸をしようが最初から金を巻き上げるつもりだった。
「良いヨ! 本当ハ人を探してるんだけド、僕ハ笑イが大好キだからネ!!」
不良達の思惑を知ってか知らずか、道化師はニッコリと笑みを見せる。
そんな道化師の態度を見てニヤニヤと下劣な笑みを浮かべる。
「じゃア! 行くヨ!!」
道化師がポケットに手を突っ込み、あるものを取り出す。
それは刃の部分が赤い炎で燃え盛っているチェンソーだった。
「はっ?」
ポケットから巨大なチェンソーが出て来るという、質量保存の法則を無視したそれに不良達は呆気に取られる。
道化師は固まった不良達に稼働したチェンソーを思いっきり振るった。
血飛沫が舞う。肉が弾ける。骨が砕ける。コンクリートの大地が真っ赤に染まる。臓物が地に散らばる。
二人の不良の身体が斜めに崩れ落ちた。
「う、うわぁあああああああああああ!!」
一人だけ無事だった不良が仲間達が物言わぬ亡骸となったことを理解し叫ぶ。
「ダメだヨ。笑わなきゃァア」
恐怖に顔を歪める不良にそう告げると零れた不良の臓物を口の中に押し込んだ。
突然口の中に人間の、それも友人の臓物を詰め込まれた不良は吐き出そうとする。
しかし、強引に押し込んでくる道化師の力には敵わず、そのまま壁に押し付けられる。
「あラ? 愉しくなイ? じゃあ――――」
涙を流しながら抵抗を続ける不良に対しそう告げると、道化師は無表情になる。
「死ぬしか無いネ」
道化師は赤く燃えるチェンソーを不良の腹部に宛がう。
これから何をされるのか、それを察した不良は「止めて」と言おうとする。
だが口は臓物によって塞がれており、くぐもった呻き声しか出すことが出来ない。
そして――――。
+++
ユニ・ジッリョネロが沢田家にやって来てから三日の時が流れた。
初日に起こった出来事の後、綱吉とユニは暫くの間ギクシャクしていた。
尤も、それも当然の話。不可抗力とはいえ年頃の同世代の男子女子が互いの裸を見てしまったのだから。
それも互いに産まれて初めて見る家族以外の異性の裸だ。
ドギマギしないわけがない。それでもいつまでもこのままというわけにはいかず、何とか元の調子を取り戻したが。
「うぅ…………」
それでもふとした拍子に、意識した際にユニの裸を思い出してしまう。
学校の教室。自分の机の上に綱吉は顔を突っ伏す。
まさか自分の家に一緒に暮らす事になるとは思わなかった。
三日前。何とか平静を取り戻したユニの説明を思い返しながら溜め息をつく。
綺麗だった。本当に綺麗だった。美しいという言葉以外浮かんでこない程にユニの白い素肌は綺麗だった。
脳裏に浮かんだユニの裸の記憶を綱吉は何とか脳の片隅に追いやる。
あそこまで強い衝撃があればそう簡単には忘れられないだろう。と、いうか忘れる事が出来ない。
「うぐぅ…………」
「よぉダメツナ。何をそんなに唸ってるんだ?」
今も脳裏に浮かぶユニの裸体に一人悶えていると、クラスメイトが話し掛けて来た。
「い、いや! なんでもないよ!!」
「紛らわしいんだよ。ま、大方昨日やったテストが今日帰ってくるから唸ってたんだろ?」
「違いねぇ。ダメツナだしな」
「は、はは…………」
割と失礼な事をクラスメイトの二人に言われながらも綱吉は何も返せなかった。
ダメツナの通りであるし、何より昨日やったテストについてもあまり記憶に残っていない。昨日一日は煩悩のせいでまともに集中出来ていなかったからだ。
そうしていると教室に教師が入ってくる。
席を離れていた生徒達は自らの座席に座った。
「では、前日のテストを返すぞ」
その言葉と共に名前を呼ばれて、テストが返却されていく。
返されたテスト用紙の点数を見て一喜一憂する中、綱吉の名前が呼ばれた。
どうせ今回も散々な結果なのだろう。
そう思いながら教団の前まで移動し、テストを受け取ろうとする。
だが教師はテスト用紙を渡す事なく、神妙な面持ちで一言。
「…………沢田。体調が悪いなら遠慮せずに言うんだぞ」
「えっ?」
唐突に心配する素振りを見せた教師の態度に困惑しながらも綱吉は返されたテストに視線を向け、瞬間凍り付いた。
テスト用紙にはペケが一つも無く、その全てが赤い丸で点数欄には100と書かれた数字があった。
頬を抓る。痛かった。夢ではなかった。その事実に綱吉は思いっきり目を見開く。
「どうしたんだよダメツナ。悪い点数だったのか?」
「まぁダメツナだからな。0点でも驚かない────」
テストの点数を見て立ち尽くしている綱吉の背後に二人の同級生が現れ、ツナの持っているテストを覗き込む。
瞬間、覗き込んでいた二人が絶望の叫びを上げた。
「あ、あのダメツナが満点だと!!?」
「嘘だ…………嘘だぁああああああああああああああああああ!!!」
かなり失礼な叫びと共に綱吉がテストで満点を取った事が教室中に響き渡った。
+++
「つ、疲れた…………」
綱吉は疲弊しきった表情で帰路につく。
テストを受け取った後、教室中が騒ぎに包まれた。
その際に満点を取れたのはカンニングをしたからだ等と因縁をつけられたりもしたが、カンニングはしていないことを教師から保証されたので問題は無いという事になった。
尤も、納得していない者は綱吉に対し非難がましい視線を向けていたが。
「でも…………」
百点満点のテストを手に取って笑む。
「こんなダメツナでも、頑張れば百点取れるのか」
勿論、自分一人ならここまで良い点数なんか取る事は出来なかっただろう。
それどころか全く逆の結果になっていたかもしれない。
「これも全部、ユニのおかげだな」
ユニに心の底から感謝しながら綱吉は足早に家に向かう。
正直な話、最初は家庭教師に対して否定的だった。だがこうして結果に現れるのならむしろこのまま続けた方が良いとすら思えてしまう。
どちらにせよ、ユニのおかげで満点が取れた事を教えなければ。
そう思いながら歩いていた時だった。
「そこの生徒、少し止まれ!」
何者かが声を掛けてきたのは。
声をかけられた事で綱吉は思わず反応して足を止め、声が聞こえて来た方向に視線を向けてしまう。
そこに居たのは黒い学ラン服姿のリーゼントヘアーの男だった。
若干古臭く感じるその装いは並盛中学校の風紀委員会の証明だった。
尤も、風紀と書かれた腕章を付けているから風紀委員なのは確かなのだが。
「えっ、は、はい!」
急に呼び止められた綱吉は困惑する。
風紀委員会と言われているが、実際のところ並中最強の不良とその配下達だ。
一体どんな因縁を付けられるか分かったものじゃない。
綱吉か恐怖に震えていると、風紀委員の男は綱吉に近寄る。
「すまない。怪しい人影は見なかったか?」
「怪しい人、ですか? えっと、すみません…………見てないです」
「そうか。最近ここら辺りで不審者が目撃されていてな。なんでもチェンソーを片手にピエロのような恰好をしてこの辺りを徘徊しているらしい」
話を聞くだけで不審者、否、それを通り越して危ない人だ。
見聞きした印象だけで綱吉はそう思ってしまう。
「もしそれらしい人影を見掛けたら風紀委員会に報告してくれ」
風紀委員の男は最後に「呼び止めてすまなかった。では、気を付けて帰ってくれ」と残して立ち去っていく。
不良っぽい外見に反して意外と良い人だったのかもしれない。
綱吉は安堵の溜め息を漏らしながら歩き始めた。
元々途中まで歩いていた事もあり、自宅に到着するのに十分も掛からなかった。
「ただいまー」
「おかえりなさい沢田さん」
扉を開けて中に入るとユニが出迎えてくれた。
「母さんは?」
「お買い物に行ってくると言ってました」
「そっか…………」
出来れば満点のテストを見てもらいたかったのだが、居ないのならば仕方がない。
そう考えながら綱吉はテストをユニに見せる。
「百点満点。凄いじゃないですか!」
「ユニが勉強を教えてくれたおかげだよ。教えてもらえなかったら絶対に取れなかったよ」
「そんな事はありません。私がやったのは分かりやすく教えただけ。それを覚えてこの点数を取る事が出来たのは沢田さんの力です」
自分が満点のテストを取ったことを、まるで自分の事のように喜ぶユニ。
綱吉はそんな彼女の振る舞いを見て嬉しくなる。
ユニはそう言っているが、やはり満点を取る事が出来たのは彼女のおかげだ。
「それじゃあ、この成功を無駄にしない為にも勉強を頑張りましょう!」
ユニの発言に綱吉は乾いた笑みを浮かべる。
だが、不思議と悪い気はしなかった。これから先もこんな日常が続いていくのだろう。そう思ってしまうくらいには心地良いものだった。
とはいえ、本音を言えば勉強をするのは嫌なのだが。
内心少しだけ嫌がりながらも、綱吉はユニと一緒に自室に戻り勉強をしようとする。
その瞬間だった――――ブォオオオンという音が背後にある扉の外から聞こえたのは。
「っ、沢田さん!!」
「えっ――――うわぁ!!」
何かしらの稼働音のようなものが聞こえた瞬間、ユニは血相を変えて綱吉の腕を掴み引っ張った。
突然腕を引っ張られた綱吉はバランスを崩して転倒し、そのままユニを押し倒してしまう。
「いきなり何を」
するんだ――――そう口に出すよりも先に後方の扉がバラバラに切り裂かれた。
カランカランと軽い音を立てて複数の欠片になった扉は玄関に散らばる。
「もしもし、モスィモースィー?」
扉だったものを残骸に変えたモノを、チェンソーをふかしながら家の中に入って来る。
白い化粧で顔を隠し、赤い鼻に奇抜なメイク。一見、それは
「キミ達がボンゴレ10代目とジッリョネロの10代目デー、あってマスよネ?」
だが、その道化師が観客を楽しませる気が無いのは一瞬で理解できた。
その手に持っているチェンソーと、道化師の狂気に歪んだ笑みを見れば――――!
「…………
ユニが道化師に対しそう言い放つと、道化師は口元に弧を描く。
「クヒヒハヒヒ!! その命! 貰いマース!!」
道化師、マッドクラウンは喜悦に顔を歪めながらチェンソーを振り上げる。
可動音を鳴らしながら刃を回転させるチェンソー。すると刃の部分が赤く燃え上がり始めた。
「う、うわぁああああああああ!?」
自らに向けて振われようとしているチェンソー、そしてその所有者であるマッドクラウンからの殺気に綱吉は悲鳴を上げる。
だがその刃が綱吉とユニに振るわれるよりも先に、ユニが懐から何かを取り出した。
それは手の内に収まるような筒――――
「耳と目を閉じて下さい沢田さん!!」
ユニはそう言うとスタングレネードを床に叩きつける。
瞬間、世界が光に包まれた。
Q.ユニが家庭教師なら死ぬ気弾とか使わないんじゃないの?
A.死ぬ気弾を使わなければいけない状況に追い込めば良いのです。
原作でも日常編でも暗殺者とかを差し向けられてたりしますしね。
ちなみに、次回のヒント。
ツナは甘くて非常になれずマフィアのボスには向いていないと言われていますが、だからといって手を汚していないわけではないです。