そろそろ第一部終了の予定です。
ちなみに現在カクヨムの方でオリジナル小説を投稿してるので、興味があったら見てやって下さい。
「ふぅん。成る程、裏社会の殺し屋ね」
病院内を移動しながら綱吉の説明を聞き、恭弥は納得したように淡々と呟いた。
明らかに怒っているを通り越して怒り狂っているのが見て分かる程であり、それでもなお冷静に見えるのは噴火寸前のところで我慢しているからか。
「マフィアごっこ…………って感じにも見えないしな」
武は床に倒れた人達を起こし、壁に背を預けて座らせる。
壁に背を預けて呻き声を上げている。が、この様子ならまだ大丈夫そうだ。
尤も、これはあくまで健康な人間、もしくは体力に余裕がある人だからだろう。
余裕が無い人はより大きいダメージを受けているだろうし、体力が無い人は――――。
「取り敢えず、この結界を張った奴を見つけよう。二人はオレからあまり離れないように」
脳裏に過った最悪の可能性、それはこのまま放置すれば被害者は増えていく。
そうなる前に一刻も早く結界を破壊、もしくはこの結界を張った奴を倒す。尤も、後者に関しては術者が何処に居るのか分からない為、選択出来ない。
いや、そもそもとして結界内に敵が居るとは思えないが。
「…………群れたく無いんだけど」
「状況が状況だから我慢して下さい。一人単独行動して倒れられても困るんで」
「言うようになったねきみ」
「こんな不条理が毎度の如く来ていたら誰だって怒りたくなりますよ」
恭弥の言葉に軽口を叩きながら、曲がり角から此方に向かって突撃して来たさっきの襲撃者と同じ顔、同じ背丈をした男に刃を振るう。
すれ違い様に斬られた男は血を流し、その場に倒れ伏す。
身体に刻まれた傷は決して軽くないにも関わらず、男はそれでも行動しようとする。しかし、灯っていた死ぬ気の炎が消えると同時に活動を停止した。
まるで
「沢田綱吉。これ、きみの肩に乗ってるライオンみたいだね」
恭弥の発言に綱吉は口を強張らせる。
「へぇ、その様子だと気付いてたんだ。いや、あえて目を逸らしてたのかな?」
「…………確証が持てなかっただけです」
出来る事なら外れていて欲しかった。
そう強く願う綱吉だったが現実は酷く残酷で、冷淡に現実を突きつけた。
「なぁ、二人は何の話をしてんだ? この人達がどうしたんだ?」
「これは人じゃないって事だよ。山本武」
武の疑問に恭弥はしゃがみ、倒れて動かなくなった男を触りながら答える。
「彼の話を、匣と呼ばれる兵器の話を聞けば何となく予想は出来るよ。実際にこの瞳で見ているわけだしね。それに現実としてここにあればそれは一つの真実だ」
恭弥は話しながらも身動き一つ取らない男を弄り、納得したように立ち上がる。
そして綱吉の方に視線を向け、一言。
「沢田綱吉。彼等はきみが言っていた匣兵器だ。違うかい?」
「……………多分その通り、だと思います」
身体に刻まれたダメージを無視しでも活動しようとするのに、死ぬ気の炎が消えれば糸が切れた人形のように動かなくなる。しかもただ動かなくなるだけではなく、心臓の鼓動等も聞こえなくなった。いや、そもそも最初から動いてなかったのかもしれない。
同じ顔、同じ背丈をした全くの瓜二つの人間が同時に複数存在するというのも匣兵器なら説明がつく。
ナッツのように意志を持たせないで命令に忠実に従う人形としてなら簡単に作れるだろう。
相手にダメージを与える結界で標的が逃げられない様にし、弱っているところを人形達で止めを刺す。
これを考えた奴が危険な場に居るとは考えられない。当然、安全圏から事が終わるのを待っているに決まっている。
「自分の力で戦う自信の無い卑怯者のやる手だ。反吐が出るよ」
心底嫌悪していると言わんばかりに吐き捨てる恭弥を見て、綱吉は何とも言えない気持ちになる。
本音では恭弥と同意見だ。しかし、この敵は自分を仕留める為にこんな手段を使っている。
自分さえ居なければ今この場で苦しんでいる人達はこんな事にはならなかった。
だから、自分には何も言う事は出来ない――――。
「ツナは悪くねぇよ」
一人落ち込んでいる綱吉にそう告げたのは武だった。
「オレさ。頭良くないからツナが言ってた事あんま分かんねーけどさ、ツナは何一つ悪くねーって思うぜ」
「山本…………」
「悪いのはこんな事をしでかした奴だろ。だからツナは怒って良い。罪悪感なんて感じる必要は無いんだ」
自分を励ます彼の言葉に綱吉は少しだけ泣きたくなった。
悲しさからではない、嬉しさから出た感情だった。
「それでも黙っていた事には変わりないから風紀は乱していたけどね」
「雲雀さん」
「だからきみをかみ殺すのは後だ。先にかみ殺すのはきみの言う裏社会の奴だ」
「結局オレかみ殺されるんですね」
「当たり前だよ」
むしろ何でかみ殺されないと思っているのか、そう言わんばかりの表情をする恭弥に綱吉は苦笑する。
痛いのは嫌だが、それでも二人の励ましに綱吉は少しだけ気が楽になった。
――――雲雀さんに関しては励ますつもりなんか皆無だろうが。
「ありがとうございます。でも、雲雀さんの出番は無いと思います。オレは今回仕出かした奴を、許さないから…………オレがやらなくちゃいけないことだから」
それでも綱吉は二人に対して毅然と告げた。
「その言葉の意味、理解してるの? いや、ちゃんとやれるの?」
「理解してるし、ちゃんとやれると思います」
ただ今度はあの時とは違い、反射的な行動ではなく自分の意志でやる。
途中で手が止まるかもしれない。こんな事をした理由を聞けばその気が無くなるかもしれない。
でも、これに関してはそういった事は無いだろう。
「そう、ならきみに任せるよ。その代わり、きみには後でやってもらいたい事がある」
「は、はは…………お手柔らかにお願いします」
恭弥が言う後でやってもらいたい事に恐怖を覚える。
雲雀さんに全てを話すの、仕方が無かった事とはいえ早まったかもしれない。
「ツナ。オレも何か手伝おうか?」
「大丈夫。強がりなんかじゃない。山本の言葉に助けられたから」
死ぬ気の炎の強さは覚悟の強さ。
使っているリングによって限界はあれど、炎の出力と純度は本人の覚悟によってその力は高まっていく。
ユニと会って覚悟を知り、そこから死ぬ気の炎を使えるようになって、ようやく今になったその意味を理解する。
自分の覚悟は大切な人達を守る為にある。世界中の人間を守りたいなんて正義の味方染みた真似は出来ない。それでも、目の前で苦しんでいる人を助けないだなんて真似は出来ないし、たかが13年しか生きていないこんなダメな自分でも守りたいと思うものが沢山出来た。それこそ自分の両手から零れ落ちてしまう程に。
――――守るという事は結局のところ、誰かと戦うということで、誰かを守らないことだ。
守る事にも色々意味があるし戦わない方法で守る事もある。でも、大抵は敵対者からの攻撃から守る事で、敵対者を倒すという事でもある。
その意味から自分は今まで目を逸らして戦って来た。
本当の意味で覚悟を決めた今でも争いは嫌いだし、後になって他に良い方法が無かったのかと後悔するに決まっている。
でも――――、
「オレ、戦うよ」
後でこうしたら良かったって後悔するのはもう御免だった。
多分、最後まで貫き通す事は出来ないかもしれないが。
「で、きみは敵が何処に居るのか分かってるのかい?」
「それはまだ。なんで取り敢えずは合流したい人達が居るんでそっちからやっていこうかと」
恐らく病院内に居るディーノさんやリボーン、ユニと合流する。
それが今綱吉が選んだ選択だった。
+++
「…………何やってるんですかディーノさん」
二人を連れて病院内を歩き回った綱吉が見たものは地面に倒れ、自身の武器である鞭で雁字搦めになったディーノの情けない姿だった。
その周囲には行動不能となった人間型の匣兵器らしき男達が複数人転がっており、戦闘があったのは何となく予想できる。
しかし何でこうなってるかは分からなかった。
「いつつ…………今日は何だか調子が悪くてな」
綱吉と武の二人でディーノの身体に巻き付いた鞭を解いていく。
どうしてこんなことになっているのか、非難がましい視線を近くに居たリボーンに向ける。
「ディーノは仲間の前じゃないと実力を発揮出来ない体質なんだ」
「じゃああのロマーリオって人は?」
「今日は別行動だ」
「…………使えねぇ」
思わず本心からの言葉が出てしまう。
病院全体を巻き込むような方法で攻撃して来たという状況が状況なだけに仕方がない面もあるが、だからといって一人にさせちゃいけないまろう。
「ついでに付け加えておくとオレも何だか調子が悪くてな。そこまで動く事もできねぇ」
「…………期待したオレがバカだった」
自分一人で戦わなくちゃいけない。
期待していた分落胆も大きいが、いつもの事だと自分に言い聞かせて立ち直る。
「それで、ユニは?」
ふと、何気無しに言ったその言葉。
多分来ていないかもしれないが、来ていたとしたら大変だ。自分が守らないと。
その程度の思いから発した言葉にリボーンは一瞬だけ口を閉ざす。
「…………あっちだ」
リボーンが視線を向けた先に綱吉も目を向ける。
そこには呼吸を荒くしているユニが居て、彼女が背を預けている壁が血でべったりと汚れていた。