家庭教師PRINCIPESSAユニ!   作:霧ケ峰リョク

33 / 40
すみません大分遅くなりもうした。
カクヨムの方でのオリジナルも要因の一つではありますが、単に仕事からが忙しくて中々書く機会が無かったので。
もうちょっと楽にならないかなぁ…………。


決断

「――――っ!」

 

 血に染まって倒れているユニを見た瞬間、綱吉は顔から血の気が引くというのを実感した。

 何故こんなことに、と口に出すよりも早く壁に背を預けて気を失っているユニの下に駆け寄る。

 怪我なんかしていない、ただ気絶しているだけ。

 自身にそう言い聞かせて落ち着かせようとするも現実は残酷で、ユニの背中には決して小さくない傷が出来ていた。

 

「…………何を」

 

――――やってたんだ。

 

 怒気に任せてユニを守れなかった二人に口に出そうとした言葉を綱吉は唇を噛んで必死に堪える。

 自分が怪我をして、その自分の代わりにやって来たのがリボーンとディーノの二人だ。そしてその二人にユニを守るのを任せたのは自分だ。

 例え怪我をしていなかったとしても今の自分なんかとは比べものにならない実力があるし、不調であったとしても自分なんかじゃ勝てないだろう。

 そんな二人が居てユニが大怪我をしているのなら、自分だったなら大怪我どころじゃ済まないかもしれない。

 

――――分かっている。

 

 何があってユニが怪我をしたのか、その理由は分からない。

 分からない、が、ある程度の予想は出来る。

 壁に背を預けて倒れている彼女の近くには気絶している呼吸が荒い子どもが居る。

 当初はユニしか見えていなかったから分からなかったが、多分ユニはこの子どもを庇って傷を負ったのだろう。

 ユニは優しいから、裏社会の住人とは思えない程に優しいから、顔も知らない子どもを庇って傷を負うのもありえない話じゃない。

 

「何が、あったんですか?」

 

 それでも綱吉は二人に問う。

 身動きを取る事すら苦痛であるかのように顔を顰めているリボーンに対し、下されたディーノは申し訳なさそうする。

 

「多分、そっちと大差無い。突然結界を張られて襲撃を受けたんだ」

「それはわかります。ユニは、どうして」

「そこで倒れてる子を庇ってだ。動く事すらキツイのにな」

「動く事すら、きつい?」

 

 リボーンの言葉に綱吉は不思議そうな顔をする。

 戦闘力が無いとは言え、ユニは死ぬ気の炎が使える人間だ。結界内でも問題無く行動出来る筈だ。

 そう考える綱吉だったが、その理由をリボーンは語り始める。

 

「ユニはオレと同じアルコバレーノっつう存在だ」

「アルコバレーノ?」

「裏社会に居る七人の呪われた赤ん坊の事だ。ユニの場合は祖母のルーチェがアルコバレーノで、その呪いを引き継いでいるんだが」

「呪い?」

「今は関係の無い話だ。それについて聞きたきゃユニに聞け」

 

 そう言ってリボーンは呪いについて話す事は無く、綱吉も今は重要な事じゃないと後回しにする。

 

「兎も角、最近オレ達アルコバレーノに対して有害なものが発見されたと聞いている。詳しくは知らないが恐らくそれだ」

「そのせいで動けないと?」

「ああ。アルコバレーノの身体構造は異形だからな。そのせいで体調最悪だぞ」

 

 アルコバレーノという単語は初耳だし、まだ分からない事だらけだがリボーンの様子を見る限り嘘は吐いていない。

 そんな酷い状態にも関わらず、ユニは初めて出会ったであろう子どもを助ける為に身を挺して庇ったのだ。

 

「ごめん、オレ…………自分の事しか考えてなかった」

 

 綱吉は傷口が下にならないようにユニを横にする。

 彼女がこうなったのは全て自分の責任だ。

 モルトとの戦いで腕を落とされる程の傷を負わなければこんな事にはならなかった。

 いや、そもそもモルトとの戦いだって殺すつもりで戦えば結果は違ったのだろう。

 全ては自分の甘さが原因で、優柔不断さが原因だ。決断する事だって遅くて、何もかもが手遅れになってからだ。

 その決断だって甘過ぎるとこうして突き付けられている。

 

「オレ、本当にダメツナだよ――――」

「――――そんな事は、無いですよ」

 

 自身の不甲斐なさに絶望していた綱吉の耳に届いたのは、ユニの声だった。

 

「ユニ?」

 

 綱吉は守るべき少女を、守れなかった少女の声を聞いて彼女の顔を見る。

 顔色は真っ青で酷く苦しそうにしていたが、その瞳はボンヤリと開いていた。

 意識も朦朧としているのか、焦点が定まってないようにも見える。

 実際定まってないのだろう。彼女が負った傷は決して浅くないのだから。

 

「大丈夫。私は、大丈夫です」

「そんな、嘘だ…………! だって、こんなに血を流して…………!」

「…………ええ。嘘です。あまり大丈夫じゃないです」

「なら安静にして! 今応急処置するから!」

 

 苦しそうに笑うユニに綱吉は慌てふためきながら治療出来そうな道具がないかを探しにいこうとする。

 

「でも、沢田さんの痛みに比べたら大分マシです」

 

 しかし、大怪我を負ったユニの口から出たその言葉を聞き、綱吉の身体の動きは止まった。

 

「私は、沢田さんに嫌な事ばかりさせてしまっていました。マフィアのボスになりたくないっていう沢田さんの意思に反して、マフィアのボスとして必要な事ばかりを教えてきました」

「そんな事は…………」

 

 そんなどうでも良い事は今は話さなくて良い。

 そう言いたい綱吉だったが、ユニは構わず話し続ける。

 

「本当に酷い先生です。嘘吐きで、家庭教師失格です」

「そんな事は無い!! ユニはダメな先生なんかじゃない!!」

 

 自らの自虐を始めたユニの言葉に対し、綱吉ははっきりと否定する。

 

「ユニだけが、オレをダメツナじゃないって言ってくれたんだ! 自分でさえ信じれなかった奴を信じてくれたのはきみだけだった! そんな人が、ダメな先生であるものか!!」

 

 それは心の底からの思い。

 今まで共に過ごし、信じてくれた人に対する感謝の言葉でもあった。

 確かに彼女の言う通り、嫌な事ばかりやってきてはいる。だがそれは彼女に言われてやったからではない。

 自分の意思で戦い、行動して来た。

 例え咄嗟の反応で本心から言えば人なんか殺したくはなかったとしても、自分の意思で戦って殺した。

 

「――――そうですか。それは、嬉しいです」

 

 綱吉の思いを聞いて、ユニは笑みを浮かべる。

 力無く、とても弱々しい笑みだった。きっと、自分を心配させまいとした表情なのだろうが、それを見ているだけで心配になってくる。

 

「沢田さんは、沢田さんのやりたい事をやってください。やりたくない事を心を殺してまでやる必要は無いです」

「ユニ…………」

「沢田さんならきっと良いボスになれるとは思いますが、マフィアのボスになりたくないって言うのならそれで良いんです。誰かを傷つけたくないという優しさが間違ってる筈が無いんですから。私は、沢田さんの優しさが大好きですから」

 

 こんな時になっても自分の身ではなく、他人の事ばかり。

 誰かが護ってあげなきゃ生きていられないのではないかと思ってしまうくらいには、弱々しく儚げだった。

 

――――そう、答えは最初から決まっている。

 

 ついさっき病室で武とした会話で決めた覚悟を再確認する。

 そして、綱吉はついさっき病室でした決意を口にした。

 

「ユニ。オレ、マフィアの、ボンゴレのボスになるよ」

 

 強い決意を伴った言葉にユニは少しだけ悲しそうな顔をする。

 

「それで、本当に良いんですか?」

「今でもマフィアのボスが嫌だってのも変わってないよ。でもさ、ユニが来てからの短い時間で色々あって思ったんだ。これを許しちゃいけないって」

「沢田さん…………」

「こんな間違いを広げている裏社会をぶっ壊したい。それが、今のオレのやりたい事なんだ」

 

 マフィアのボスとしてはあまりにも甘過ぎる幼稚な子どもの絵空事、あるいは酷い物を沢山見て来たが故に少しでも良くしたいと思う心の嘆きを聞いて、この場に居る全員が黙る。

 一人一人考えている事は違うが、至る結論は同じだった。

 沢田綱吉は大人の階段を一歩踏み出したのだ。その一歩がどれだけ過酷で辛いものかを知った上で、その結論を出したのだ。

 

「――――ごめんなさい。私は、貴方に普通に生きていける道を用意してあげられませんでした」

 

 謝るユニの言葉に綱吉は笑顔で返す。

 

「気にしないで。全部、オレの意志で決めた事なんだから」

 

 そう言って綱吉は立ち上がる。

 誰かが悪いわけではない、きっとこうなる運命だったのだろう。

 

「だからユニは休んでて。オレが何とかして見せる」

「…………無茶だけはしないでくださいね」

「大丈夫――――なんて、口が裂けても言えないけど」

「そこは口だけでも大丈夫って言うところですよ?」

「ゴメン。でも、ユニの言う通り、オレがやりたい事をやるよ」

「そうですか…………なら、安心ですね」

 

 ユニは最後にそう呟くと意識を手放した。

 彼女が気絶したのと同時に綱吉はディーノの方に視線を向ける。

 

「ディーノさん。オレはこれからこんな事をした元凶を倒しに行ってきます」

「お、おう。だが、一人で大丈夫か?」

「一人で大丈夫です。これは、オレが一人でやらなくちゃいけない事だから。ディーノさんはここに残って皆を守ってください。次は約束、破らないでくださいね」

「――――ああ、分かった。今度は破らない」

 

 綱吉の言葉に頷いた後、ディーノは死ぬ気の炎を灯す。

 これで自分が傍に居なくても大丈夫。そう判断した綱吉はこの場から離れようとする。

 

「山本、雲雀さん。二人はここに残って」

「お、おう。けど、ツナ…………」

「僕に群れろって言うのかい?」

 

 離れようとする綱吉に対し、武と恭弥の二人は呼び止める。

 武は酷く心配していると言わんばかりの表情で、恭弥は苛立ちが頂点に達しているかのような表情をしていた。

 対照的な二人の反応に綱吉は苦笑いする。

 

「…………まあ、貸しにしておいてあげるよ。後で覚えておいてね」

「雲雀さんに貸しって、何か凄く恐ろしい事になりそうな気がするんですが」

「さぁね」

 

 不敵な笑みを浮かべる恭弥を見て、綱吉は早まったと思ってしまう。

 多分、この後酷い目にあいそうだ。そう考えながら視線を武の方に移す。

 

「山本、悪いけどディーノさんとここで待ってて欲しいんだ。すぐに終わらせて来るから」

「本当に一人で大丈夫なのか?」

「さっきも言ったけど、オレが一人でやらなくちゃいけない事だからさ。山本はここで待ってて。不安かもしれないけど」

「…………分かった。悪いなツナ。手伝ってやれなくて」

「ありがと。その気持ちだけで十分だよ」

 

 そう言って綱吉は全員に背を向けて走り出す。

 とはいえ、皆を前にあれ程の啖呵をきったものの、敵が何処に居るかは分かっていない。

 結界の中に居るのか、それとも結界の外に居るのか。

 現状、今の自分はそれすらも分かっていない状況だ。

 しかし、今やらなくちゃいけない事は分かっている。

 先ずはこの病院を覆っている結界を破壊する。そうすれば病院の外にも行けるようになるし、これ以上犠牲者が増えるよつな事もなくなるだろう。

 

「でも、その前に腕を治す!!」

 

 右腕全体を死ぬ気の炎で燃やすように包み込む。

 激しい痛みと燃えるような熱さに顔を顰める。

 そして自身の右腕を動かして感触を確認する。

 

「っあ、ぐぅ…………これで、少しは動く…………!!」

 

 思っていた通り、大空の特性を使えば腕も動かせるようになる。

 まだ完全には動かせないし、違和感も大分残ってはいるもののこれで両手が使える。

 恐らく時間制限はあるだろうが、今回の戦いまでなら問題無い筈だ。

 

「ふぅー、ふぅー…………よし、行くか」

 

 呼吸を整え、剣を片手に携えて歩き始める。

 その足取りにもう迷いは無かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。