現在仕事がマジで忙しいので遅れました。
イタリアにある人里離れた場所にある古城、ボンゴレファミリー本部。
そこには現在、ボスであるボンゴレⅨ世ティモッテオと幹部達がそれぞれの席に着き、会議を開こうとしていた。
尤も、今この場に参加している者達の顔色は暗い。それはティモッテオも例外では無かった。
「――――現在、ボンゴレのシマには薬物が流行っている。恐らく、死ぬ気の炎と
「そっちもそんな感じか。こっちも敵対勢力との抗争で匣兵器ではないが死ぬ気の炎を使ったと思われる新兵器で少なくない犠牲が出た。勝利こそしたが…………此方が得るものは殆ど無い」
「…………皆、似たような感じか」
この場に集められた6名程欠席しているが皆、長年ボンゴレファミリーに仕えてきた幹部達だ。
中には若者も居るが才能豊かな人物でボンゴレに益を齎している。
しかし、それでも現在の情勢に解決策を提示する事は誰にも出来なかった。
それは神の采配と謳われるティモッテオの決断でさえ、一時的には打開出来てもこの情勢から抜け出せないでいる。
「…………そういう時代、という事なのだろうな」
静かに呟いた誰かの言葉に誰も彼もが暗い表情を浮かべる。
如何に最大最強のマフィアといえど決して無敵というわけではない。長い歴史の中で抗争などの理由で幾度となく危機に見舞われてきた。
だが、ここまで情勢が悪くなったのはそう無いだろう。
「だが、それでも良い事が全く無いわけではない」
誰もが暗い面持ちの中、ティモッテオは笑みを浮かべる。
「日本に居る綱吉君が成長している」
沢田綱吉。門外顧問機関、
ボンゴレⅠ世の直系の子孫でありながらも決して才能溢れる人物というわけではなく、その逆で落ちこぼれだった彼が次期ボス候補になった時は誰も彼もが顔を暗くしていた。
しかし、ここ最近の活躍は目を見張るものばかりだ。
ボンゴレファミリーの監視網を抜けた、最近裏社会で名を馳せているイカれた狂人達やかつて名を馳せた歴戦の殺し屋達を返り討ちにしている。
つい最近まで表社会で生きてきたダメダメな少年だったとは思えないほどの戦果だった。
本音を言う事が出来るのならば、心の底から喜ぶ事は出来ないが。
「つい先日まで表社会で生きてきた彼が頑張っているというのに、裏社会で何年も身を置いてきた我々が頑張らないわけにはいかないだろう。むしろその逆、我々が彼を助けなければいけないんだ」
そう言ってティモッテオは幹部全員を鼓舞する。
だが、ティモッテオの言葉に反し幹部達の顔色は暗かった。
「…………9代目、実は――――」
そして一人の幹部の口から語られた言葉にティモッテオは目を見開く。
「なっ、これ以上綱吉君に負担を掛けるのは…………!」
「お言葉ですが9代目。彼は自分の意志でボンゴレ10代目になると宣言しております。ましてや、死ぬ気の炎を扱う事が出来て、名うての
「だが、いくらなんでも」
「9代目、ご決断を」
幹部の言葉にティモッテオは頭を抱える。
だが頭を悩ませても答えは一つしかなかった。ボンゴレファミリーという組織を率いる長として、ボンゴレファミリーのボスとしてこの選択を拒否する事は出来ないのだから。
+++
病院襲撃事件から一週間の時が流れ、綱吉、ユニ、凪の三人は綱吉の自室で揃って頭を抱えていた。
リハビリも終了し斬り落とされる前と同じくらいに動かせるようになった綱吉と、無事に怪我が完治したユニの退院祝いを行う予定だった。
そう、その予定だったのだ。何かしらの書類を見て顔を暗くし、何があったのかをユニが説明する前までは。
「…………オレもさ、ボンゴレファミリーに余裕が無いってのはよく分かってるんだ」
長い沈黙を破り、綱吉はげんなりとした表情で呟く。
「来ちゃってるけど一応日本に敵が来ないようにしてくれているのも知っているし、オレ達のサポートをしているのも理解している。しているんだけど、さ」
そう言って綱吉はユニが持っていた書類を手に取り目を通す。
イタリア語で記されているその書類を見たところで綱吉には何が書かれているかは分からない。ただその書類に記載されている自分と同い年、もしくは年下の少年少女の顔写真が記載されていた。
「オレ達の事だけでも手一杯なのに、他の人も守らなくちゃいけないってのはちょっと酷くない?」
「…………おっしゃる通りです」
ボンゴレファミリーから届いた指令。
それはボンゴレファミリーと同盟を結んでいる傘下のマフィア、及びその関係者の縁者を避難の為に日本に送るということ。
要するにマフィア関係者の子どもを守ってほしい、という事だ。
「オレに負担を掛けさせたいのか、ボンゴレファミリーにそれだけ余裕が無いのか」
「さ、沢田さんが評価されてると前向きに考えましょう」
何とか自分を励まそうとするユニだったが、その顔は引き攣った笑みになっている。
恐らく彼女も自分と同じような事を考えているのだろう。
そう考えながら綱吉はボンゴレファミリーのボスになるという決意をした事を、早まったと若干後悔する。
とはいえ――――。
「引き継ぐって言った以上、受けるしかないんだけどさ」
拒否する権利があるかは謎だが、最初からするつもりは無い。
平和な日本でさえあんなヤバい連中が襲って来ている。マフィアの本拠地であるイタリアが魔境になっていてもおかしくはない。
子を思う親ならば危険地帯ではなく、安全な場所に居てほしいと願うのは当然の話だ。
「それに、こんな子どもも居るんだから断る事なんか出来ないよ」
そう言って綱吉は三枚の顔写真が記された書類に目を通す。
一人はアフロに牛のような装いを着た元気そうな子どもで、二人目はおさげが特徴的な子ども、そして最後の一人はマフラーを首に巻き、大きな本を持った少年だった。
それ以外にも同い年ぐらいの銀髪の少年や金髪の少年少女、そして赤髪で傷だらけの少年とその他六人。
仲良く出来そうかと聞かれても自信は無いが、それでも出来る事はやる。
「それで、この人達が来るのは何時頃なの?」
「はい。後一週間程だそうです」
「ならその一週間までの間に出来る事はやっておかなくちゃね。主に雲雀さんに説明するとか」
これからマフィア関係者が来ると言っておかなければ間違いなく厄介な事になる。
言っても言わなくても結果は変わらないだろうが、それはそれとして説明しなければこっちをかみ殺してくるだろう。
「本当に前途多難だ」
いずれにせよ厄介事が待ち受けている事に綱吉はゲンナリとした表情を浮かべる。
「大丈夫ボス。いざとなれば私が何とかする」
「うん。それは最後まで使わないでね」
何となくだが凪が実行しようとした事に危機感を覚えた綱吉は静止するよう促す。
本当にどうしようもなくなったら任せるしかないが、出来ればそうならない事を祈りたい。
「まあ、嘆いてばかりもいられないし…………ユニ。これから来る人の事全部教えて」
「はい――――ふふ」
「ん? どうしたの?」
自身を見て微笑ましそうに笑みを浮かべるユニに綱吉は問いかける。
「いえ、こんな忙しい時に思ってはいけないんですが…………強くなったって思いまして」
「強く…………」
「正しくは自信があるって言うべきですね。今の沢田さんは、出会った時に比べたら変わりました。勿論、良い方向にですよ」
ユニの言葉に綱吉は思わず考え込み、何とも言えないような顔をする。
世界征服を企んでいるのが良い方向なのか、正直微妙なところだ。
だが、ユニがそう言うということはきっと間違ってはいないのだろう。
「…………ありがとう。でも、やっぱりユニが居たからだよ」
綱吉は照れ臭そうに、けれども嬉しそうに笑みを浮かべた。