理由はもう一つの作品を書いていた事と仕事が忙しかった事。
そしてあるキャラの口調とかを色々と悩んでました。
まあこうなったからにはちゃんとやりますので、気長にお待ちください。
幼少期の出来事で一番記憶に残っているのは姉が作っている猛毒料理を食べさせられる事と自分と同じ髪の色をした女の人にピアノを褒められた事だ。
特に記憶に残っているのは後者の方で、時々やって来るその女性に沢山の事を教えられた。
音色の奏で方を、音の合わせ方を、人の心に残るにはどうしたら良いのかを。
姉が作る猛毒料理を食わされて行われるピアノの発表会には辟易していたが、あの女の人に教わっている時が一番心が安らいだと思う。
そんな彼女が倒れたのは、自分の二歳の誕生日の時。自分にプレゼントを渡したその時だった。
そして父親から知らされた。
自分と同じ髪の色をした女性が自分の本当の母親であるという事を、彼女が大病を患っていて余命幾許も無いということを――――。
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「――――隼人、起きてる?」
「…………起きてるよ姉貴」
客船に用意された自分の居室。
そこに入って来た姉に対し不機嫌そうに銀髪の少年、獄寺隼人は呟く。
実際のところ起きたのは姉の声が聞こえたからで、出来る事ならもう少し夢の中で過ごしていたかった。
そう吐き捨てたくなるのをなんとか堪え、隼人は視線を姉の方に向ける。
姉、ビアンキは誰もが見惚れるであろうその美形を惜しみなく晒していた。
それが意味する事はただ一つ――――
「ぐ、ぐぁあああああああああああああああああ!!」
ギュルルルルと腹から地獄のような音が鳴り響き隼人はベッドから転げ落ちる。
「隼人、大丈夫?」
ビアンキはベッドから転げ落ちた隼人の顔を両手で掴み上に向けさせる。
自身の顔を直接見せるような形で。
「がはっ!」
最早わざとやっているのではないかと思ってしまうような行いに内心怒り心頭になる。
だが姉には色々な意味で弱い隼人には抵抗する事も許されず、そのまま意識が闇の中に沈んでいく。
「た、頼むから…………顔を何かで隠してくれ…………!」
このままでは意識を失い、取り戻した瞬間にまた意識を失うという負の無限ループを味わう事になる。
そんな未来を予知した隼人は姉に対し必死に懇願する。
「分かったわ。全く、恥ずかしがり屋なんだから」
「て、てめぇ…………」
本気で姉に殺意を抱くものの隼人はビアンキに絶対に逆らえない。
サングラスをかけたことでビアンキの顔を見ても腹痛が発生しなくなった事実だけを受け入れつつ、隼人は尋ねる。
「ったく、で、オレの部屋に来たって事は何か用事でもあんのか?」
この船に乗る前に隼人はビアンキに勝手に自分の部屋に入らないようにと言っている。
ビアンキはそれを思春期特有のものと判断していたが一応は了承していた筈だ。
にも関わらず勝手に入って来たのだから何か用事がある筈だ。
尤も、この姉はそういった用事が無くても勝手に入って来るような人間だが。
そう考えている隼人に対し、ビアンキはいつもと変わらない何を考えているのか分からない表情のまま答える。
「ええ、この船が襲撃されたって事を伝えに来たのよ」
「大事じゃねぇか!! もっと慌てろよ!!」
能天気な顔のまま話すビアンキの言葉に隼人は思わずツッコミを入れるのであった。
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ボンゴレファミリー、及びその同盟と傘下のマフィアが用意した日本行きのこの船は極秘に用意されたものだった。
部外者には情報が行き渡らないように細心の注意を払い、乗船をした子ども達の身を守る為にリングと
それでもなおこの船が襲われたのは、技術の進歩が早過ぎた事だろう。
『諸君。この船は我々、チカーラが占拠した』
船内に響き渡る男の声はどうしようもなく最悪の状況である事を告げていた。
『きみ達にはボンゴレとその同盟ファミリーに対する人質になってもらう。抵抗さえしなければ命の保証はしてやろう。命、はな』
イタリア語で蝉を意味する名を持つ襲撃者達の首魁と思われる人間が出した一方的な要求。
その要求を拒絶する事はこの船を占拠した襲撃者達と戦うという事を意味する。
『それでは、きみ達の賢明な判断をする事を期待している』
自分達を警護していた大人達が敗れたという事は敵もまたリングと匣を使う事が出来るという事。
現在避難している自分達が戦って勝てる相手ではない。人数も、戦力も、そして武器も、その全てが負けている。
この状況で逆らうという事が何を意味するのかなんて分かり切っている。
「ふざけやがって…………!」
しかし、だからといって大人しく人質になる気は毛頭無かった。
隼人は親指の爪を噛みながら視線を集まった避難者――――もとい人質達
今ここに居る人質達は全員が全員戦えるだけの力を持っているわけではない。
ボヴィーノファミリーの牛柄の服を着たアフロのランボやアルコバレーノ
そして二人よりは年上のフゥ太も戦闘力があるとは思えない。
よって戦う事が出来るのは自分とビアンキの二人。そして――――。
「お前等だけって事か…………」
隼人の視線が他の乗客、自分と同じ計九人の人質達に向けられる。
「オレはティフォーネファミリーの獄寺隼人だ。で、こっちが姉貴のビアンキだ」
本当はやりたくないが、現状自分が纏め役をやるしかない。
そう判断した隼人は自分達の身分を明かす。
「命が惜しいから大人しく捕まるというのも選択肢の一つとしてはありだと思っている。だからこれは強制しない」
「…………その言を察するに、きみ達は戦うつもりか?」
「ああ。親父からリングと匣は持たされているからな。やり方次第では通じる筈だ」
金髪の少年に自分が付けている嵐属性のリングと匣を見せながら答える。
「それに…………連中が何もしないとは限らないだろうしな」
敵は何もしなければ命の保証はすると言った。
裏を返せば命に関わる事以外はしてくるかもしれないのだ。
人質の中には女もいるし、そういった下世話な事をされるかもしれない。尤も、それは男も例外ではないのかもしれないが。
「…………悪いけど、僕達シモンファミリーに出来る事は無い。リングも、匣も持ってないから」
「そうか。まあ、リングも匣も高級品だしな」
赤髪の少年の言葉を聞いて隼人は必要最低限だけを口にする。
シモンファミリーと言う名は初めて聞いたが、察するに弱小ファミリーなのだろう。
今のマフィア界ではリングと匣の二つが戦いの最低条件のようなもの。それを持っていない者を戦いの場に出すような事は出来ない。
「オレとリゾーナは匣は持っていないがリングはある。戦う事は出来る筈だ」
「…………お前の名前は?」
「アルビートだ。所属はエヴォカトーレファミリー」
「そうか。助かる」
後は敵に気付かれないように潜伏して一人ずつ各個撃破していくのが理想だろう。
そう考えて行動しようとした時だった。
「ランボさんもたたかう――――!」
ボヴィーノファミリーのランボが大声をあげたのは。
「っ」
何をやってんだこのアホ牛、そう口に出すよりも先に敵と思わしき格好をした男達が姿を現す。
まだ距離は離れているがその手には既に武器が握られており、抵抗する様子を見せたら間違いなく攻撃される。
いや、ランボが「たたかう」と言った時点で向こうは戦闘する気になっているだろう。
「くそっ、間に合うか!?」
自分達に向かって走り寄って来る敵を見て隼人は思わず舌打ちをする。
そして懐から取り出した匣に死ぬ気の炎を注入しようとする。
一触即発、流れる時間すらも緩やかになっているのではないかと錯覚してしまうような状況の中、突然壁が爆発が爆発し大穴が開いたのは。
「あの、雲雀さん。もうちょっと静かに出来ませんか?」
「中に侵入できるなら何でも良いと言ったのはきみだよ。沢田綱吉」
「確かに言いました。そう言いました。でもこれだけ大騒ぎを起こしたら敵に見つかると思うんですけど」
「全員かみ殺せば良いだけだよ」
「うん。その通り。私達なら全員倒せる」
「そっちの心配はしてないよ。ただ戦わずに済むならそれで良かっただけだから」
穴から船の中に入って来たのは三人の少年少女だった。
一人は学ランを肩に羽織り、トンファーを手に持った少年。
もう一人が同じように学ランを肩に羽織り、セーラー服を着た少女。
そして最後の一人は学ランに袖を通した、左の眼の下に赤い十字の傷が刻まれた少年だ。
「まぁ、こうなったら仕方が無い…………全員叩きのめす」
溜め息交じりに十字の傷の少年が呟くと同時に額に死ぬ気の炎が灯る。
その炎の色はオレンジ色で、大空の属性の死ぬ気の炎である事を示していた。
この作品の獄寺隼人のお母さん、ラヴィーナは原作と同様に死んでいます。
が、彼女は何とか気力を振り絞り誕生日プレゼントを自分の手で渡す事が出来ました。
彼女は自分の息子に母親であると告げる事が出来たのです。
それはそれとして一気にメインキャラ14人は増え過ぎやで…………。