頭の中が他の作品でいっぱいになってたので遅れました。
次回はここまで遅れないようにします。
名高いボンゴレ10代目と言えど自分達と同じ子ども。
隼人はその考えを目の前で繰り広げられる戦闘を見て改める事となった。
死ぬ気の炎が灯った拳を振るい、一人一人一撃で仕留めていく。
つまり彼は自分の匣兵器を持っており、それ以外の匣も有している。
大空の属性は全ての匣を開ける事が可能。
にも関わらず彼は匣を使わずに男達を倒していた。
それは匣を使われていようが関係無いだけの実力を持っているという事でもあった。
そしてそれは他の二人も同様だった。
トンファーを持つ少年は雲属性の死ぬ気の炎を使っており、側から見ても異常という他無い強大な炎だった。
何故そのリングでそれだけの死ぬ気の炎が出せるのか、理由が分からない程だ。
最後の一人、セーラー服を着た少女は先の二人と違い、積極的に戦っているようには見えない。が、彼女の持つ霧属性の炎は三人の中でも純度が高く、それでいて底冷えするような悍ましさすら感じた。
それに、彼女の周囲に居る敵の様子がおかしい。まるで見えない何かに襲われているかのようだ。
「ぐっ…………調子に乗るなぁ!!」
次々と仲間達が倒されていく中、襲撃者の一味である男は懐から3つの匣を取り出し、嵐属性の死ぬ気の炎を注ぎ込む。
出現するのは
初心者にも扱い易くコピーを作成しやすい極めて安価。
特に嵐ハイエナは性能は弱者が使っても強く、強者が使えばより強くなるという非常に優秀な匣だ。
リングに死ぬ気の炎を灯せる時点で弱者は存在しないが。
「行けっ! あのガキどもを根絶やしに――――」
「ぎゃんっ!」
「しろ――――えっ?」
しかしその優秀な匣兵器は傷一つ付ける事すら出来ずに無力化された。
黒手裏剣はボンゴレ10代目が懐から取り出した鞭で破壊され、嵐ハイエナは拳一発で殴り飛ばされる。そして吹っ飛んだ先に居た黒髪の少年のトンファーを喰らって地に沈んだ。
流れ作業の如く処理された自分の匣兵器を見て男は呆気に取られる。
そして理解する。自分はこれから倒されるという事を。
「う、うわぁあああああああ」
男は頭上から振り下ろされたトンファーと鞭による一撃が頭部に叩き込まれ、匣兵器と同じように地に沈んだ。
「ディーノさんから貰った鞭…………ようやく動く敵にも当てられるようになった」
「…………僕一人でやりたかったんだけど」
「こいつ等だけじゃないんだからそう言わないで下さい。まだ沢山居るんですから」
叩きのめした敵からリングと匣を没収する会話する黒髪の少年に言い放つとボンゴレ10代目は隼人達の方に視線を向け、笑みを浮かべた。
「間に合って良かった。怪我は無い?」
「あ、ああ…………」
心の底から自分達の心配をするボンゴレ10代目の顔に一瞬呆気に取られてしまう。
ついさっきまで敵対者に見せていた眉間に皺を寄せて戦ってるとは思えないような、何処までも平凡な子どもの顔だった。
目の前で今の戦いっぷりを見ていたにも関わらず、別人としか思えない。
脳がバグを引き起こしているみたいだ。
「ボス」
目の前の現実を受け入れられず困惑していると、彼の仲間であろう少女が口を開く。
「周囲に敵は居ないみたい」
「ありがとね凪、索敵してくれて」
「ん」
ボンゴレ10代目の言葉を受けて凪と呼ばれた少女は短い返事をする。
が、喜んでいるのは誰の目から見ても明らかだった。もし犬だったら尻尾を振っている事だろう。
「沢田さん」
そう考えていると三人が開けた穴からもう一人船内に入って来る。
左頬にある特徴的な痣、これは沢田綱吉もそうだが同年代にしては比較的小柄な体躯。
噂のジッリョネロの姫とは彼女の事だろう。
「ユニ、外で待ってても良かったのに」
「そういうわけにはいきません。私は沢田さんの家庭教師なんですから…………生徒一人だけ危険な場所に行かせるわけにはいきませんから」
二人は互いに少しの間見つめ合うとボンゴレ10代目の方が折れたのか、仕方ないと言わんばかりの顔をして笑みを浮かべた。
そして視線を自分達の方に戻す。
「さて、と…………ここに居るので全員だよね。取り敢えず外に避難船は用意しているから皆はそれに乗って脱出してほしい」
その言葉を告げられるとともに視線を入って来た穴の方に向ける。
穴の向こう側では小型船がこの船に寄り添う形で浮かんでいた。
操縦席に居るのはリーゼントとポンパドールが特徴的な老け顔の少年だった。
「…………僕達が居なくなって、バレないの?」
「すぐにバレるとは思うよ。でも凪の幻覚で船体を隠す事が出来るから、脱出は問題なく出来るよ」
ボンゴレ10代目の発言を聞いて、安堵の空気で満たされる。
霧属性の死ぬ気の炎を用いた高度な幻覚は精密機器すらも騙す事が可能だ。
彼の言う通り、この状況から脱出するだけならその手が一番なのだろう。
だが――――、
「…………悪い。オレは行けねえ」
ただ一人、ボンゴレ10代目の提案に隼人だけが首を横に振った。
隼人の発言に周囲に居た全員が驚いた表情で視線を向ける。
「この船には、オレの母親のピアノがあるんだ。死んだ母親の形見なんだ。悪いけど、その形見を置いてオレは行けねぇ」
「…………オレはきみのお母さんを知らないけど、それを望むとは思えないよ」
「分かっている。けど、オレにとっては自分の命よりも大事な物なんだよ」
今となってはどんな声をしていたのか、どんな人だったのかすらも曖昧になってきている。
それでも隼人は捨てる事が出来なかった。何故なら、幼少期の頃に見せたあの人との思い出が、あのピアノには詰まっているのだから。
「…………そっか」
ボンゴレ10世は隼人の言葉を聞いて残念そうな表情をする。
「それなら仕方ないね」
+++
命よりも大切な物なんか無い、昔の自分はそう考えていた。
最近はそんな事を考える余裕も暇も無いくらいに忙しかったが、ユニと出会ってから様々な殺し屋と相対し撃退し続けてきた今はまた違う答えが出せる。
酷く残念な話になってしまうが、人には命以上に大切なものがあるのだ。
そして、そういった人間だけが死ぬ気の炎を灯す事が可能なのだと思った。
死ぬ気の炎とは覚悟であり、譲れない誇りそのもの。
今まで戦って来た敵の思いは理解も共感も出来ないしこれから先も理解する事は無い。目の前の銀髪の彼、獄寺隼人の思いは綱吉でも理解出来た。
きっと彼のお母さんはそんな事を望んでいない、自分との思い出の品よりも生きていてほしいと願う筈だ。
だが、獄寺隼人からしたらそれを捨てる事は命を捨てる事以上に重い事なのだ。
命よりも大切な物があると知った、今の綱吉には獄寺隼人を説得する術を持っていなかった。
だから綱吉は隼人の生存を諦める――――、
「じゃあ、元のプラン通り敵を全員倒すか」
――――なんて事をするわけが無く、元々の目的通り襲撃者の制圧にシフトする事にした。
「へっ?」
「元々さ、敵を倒すのは予定に入っていたんだよ」
襲撃された船へと行く為、風紀委員会が所有するクルーザーに乗船する為の条件の一つ。
それが並盛の風紀を乱した敵を一人残らずかみ殺すというものだった。
綱吉は難色を示しながらもそれに同意し、ここまで来たのである。
とはいえ、避難者の保護を優先し最低限の戦闘だけで済ませるつもりだったし、恭弥に全てを任せるつもりだったのだが。
「そういう訳だからオレも制圧しますから」
「僕一人で十分なんだけど」
「条件にはオレが戦ってはいけないなんて言ってませんよ」
「ワオ、言うようになったね沢田綱吉」
恭弥と軽口を叩きながら綱吉は匣を開匣し剣を取り出す。
「じゃあ、この船を死ぬ気で取り戻そうか」