キャストリアがそろそろ完結予定なのでこっちの方も再開していきます。
――――まるで悪夢でも見ているようだった
武装組織チカーラに所属している青年は目の前で繰り広げられている光景に力無く笑った。
死ぬ気の炎に
使い手の覚悟が試されるその力に適応し、かつての自分達とは比較する事すら烏滸がましく感じる程の力を手に入れた。
加えて、ボスに至ってはある匣兵器を使う為に手術を行っている。
ボスが手に入れた新しい力を見たのは一回だけしか無かったが、その一回で自分達全員が束になってかかっても勝ち目は無い。そう断言出来る程の力を手に入れた。
その力を使って裏社会を成り上がる。その手始めとして日本に避難しようとしているボンゴレ同盟ファミリー関係者の子息子女を人質に取る。
そう考えての行動で、それが今最悪の形となって自分達を蹂躙していた。
「次」
額に大空属性の死ぬ気の炎を灯した少年、今現在裏社会で尤も有名なボンゴレ10代目沢田綱吉。
人質を取り油断、慢心していた自分達に強襲を仕掛けた彼は流れ作業の如く仲間の意識を刈り取り武器を奪い、手慣れているとは決して言えない手付きで迷いなく武器を扱った。
振るうナイフは決して洗練されたものではなく力任せで乱暴だ。
小銃も銃として使わずに銃身の方を持って鈍器として扱っている。
素人が出鱈目に振るっているとしか言いようがない――――にも関わらず強かった。
死ぬ気の炎のバリアもぶち破り容赦なく仲間達を叩きのめしていく。
「これが、これが―――――ボンゴレ10代目…………!」
最後に残された自分に向かって振り抜かれる小銃を最後に男の意識は闇に沈む。
プロの戦闘者をも圧倒する未来の王、その名に偽りは無かった。
+++
ディーノとリボーンの二人がイタリア行きの飛行機に乗る前の出来事。
大怪我をしたユニが見送りに来る事が出来ず、代わりとして見送りに来た綱吉と凪にリボーンは短く呟いた。
「技や力は急には身につかねぇ。努力なんていうのはやって当たり前。戦闘経験は生き残らなければ積む事も出来ない」
「そんな事、言われなくたって分かってるよ」
今まで戦って来た相手は皆自分よりも格上の存在だった。
勝利する事が出来たのはユニや凪が居たからで、自分一人では生き残る事すら出来なかった。
「何人も敵を退けたオレのところにこれからやって来る敵は、もう油断や慢心なんかしない奴ばかりになる」
「ああ、そうだ」
「努力もする。技や力も磨く。知恵だって、自信は無いけど死ぬ気で覚える。生き残る為に、ユニや皆を守る為には…………オレには足りないものが多過ぎる」
「そうだな」
「甘いって言われるかもしれないし自分でも甘いと思う。それでも、敵であったとしても死なせたくない」
「甘いな」
「その甘さを貫き通せるよう強くなれば良いだけだ。相手がオレを殺すまで止まらないって言うなら叩き潰して強引に止めさせて、オレを殺す為に関係無い誰かや周囲の人達を巻き込むって言うのなら守って助けられる力を身に着けて、自殺するって言うのならそれを止められるようになれば良い…………それだけ出来るようになるまで時間は凄くかかると思うけど」
自分で言っていて現実的じゃないし、それだけ強くなる事がどれだけ難しいかも分かっている。
否、そもそもそんな事出来るようになる事すらも怪しい。
ダメツナである自分だからではない。きっと他の誰かであっても酷く困難な道のりだ。
それを分かっていたからこそ、リボーンは何も言わなかった。
無理難題である事は最初から分かっている。なら何を言ったところで無意味でしかないのだから。
だからこそ、リボーンは最初に出会った時に見せたニヒルな笑みを浮かべて言った。
「戦いにおいて一番重要なのは迷わない事だ」
「リボーン?」
「お前が選んだ選択の話だけじゃねぇ。戦いの中で選ぶ事が出来る選択は限られていて、その上選ぶ事が出来る時間は短い。後からこうすれば良かったと後悔するような事ばっかりだ」
「…………そう言うって事はリボーン、お前もそんな事があったのか?」
「いや、オレはお前のようにうじうじ悩んだりしたことは無かったな」
「こ、この野郎…………!」
「ボス、落ち着いて」
リボーンの言葉に怒りを募らせる綱吉、それを凪が諫める。
そんな二人の様子を見て笑みを浮かべながらもリボーンは話を続ける。
「だがそれはオレが
「…………辛くは無かったのか?」
「オレは最強の殺し屋だからな。仕事に私情は挟まねぇようにしている。が、若い頃はそれなりに心に来る事はあったな」
今の時点で赤ん坊の癖に何を言っているんだ、と思うがアルコバレーノは特殊な存在らしい。
どういった意味で特殊なのかは分からないが、リボーンも過去に何かしら辛い出来事を体験しているのも本当の事なのだろう。
「戦いの中での迷いは一瞬の遅れを生み、取り返しのつかない事態を招く事もある。お前が自分の思いを貫くっていうのなら、迷わない事だな」
+++
「…………よし」
敵の主力を一通り倒した綱吉は先日リボーンから教わった事を思い返しながら自身の手を見る。
人を殴ったり、ナイフで斬ったりする感覚に慣れる事は絶対に無い。むしろ忌避感の方が強い。
それでも今の一連の戦闘において、迷わずに行動する事が出来た。
敵だって弱いわけじゃない。リングに死ぬ気の炎を灯して匣兵器を使える上、戦闘訓練を積んだ元傭兵だ。
雲雀と凪の二人が居たのもあるが、前までの自分なら苦戦した相手だろう。
「沢田さん」
「大丈夫」
綱吉の心配をしてか、前に出て声を掛けたユニに返事を返す。
彼女の背後では匣兵器や武器を携えた子ども達が攻撃に参加しようとして、攻撃する間も無く敵が倒れた事に唖然としている。
特にダイナマイトを持ち、左腕に付けた髑髏型の武器に装填しようとしていた隼人は口に咥えていた煙草が落ちてしまっていた。
「…………強いんだな。あんた」
まだ火がついている煙草が延焼しないよう、踏み潰しながら隼人は言う。
「強くないよ。弱いから必死になって頑張ってるだけだよ」
羨望が籠った視線を向けられながら綱吉は自嘲し吐き捨てる。
「それよりも、次はこの連中のボスだ」
倒れた敵からリングと匣を取り上げながら、襲撃者達の親玉が居るであろう部屋に目を向ける。
その場所は操舵室。この船の船長を拘束して占拠している。
「どうやって中に入ろうか」
扉の前に立ち綱吉は考える。
侵入出来る場所は船内からはこの扉だけで、外側からは窓を壊さなければ入れない。加えて扉は外開きであり、この扉を蹴り破って中に入る事は不可能。
そして、中に居るのは襲撃者の親玉と船長の二人だけ。
ならば窓と扉の両方から同時に中に入り、攻撃を仕掛けた方が良さそうだ。
「雲雀さん、オレが外から中に入るんで扉から――――」
「そんな面倒な方法よりもっと手っ取り早い方法があるよ」
恭弥はそう言って匣にリングの炎を注入しようとする。
これから何が起こるのかを察した綱吉は止めようして間に合わない事を察して後方に下がる。
それと同時に恭弥の手中にあった匣が開匣し、中から
弾丸の如く射出された雲ハリネズミは扉を破壊し中に侵入。
「なっ――――がぁあああああああああああああ!!?」
地に倒れて拘束されている船長に攻撃が当たる事は無く、武器を構えて椅子に踏ん反り返っていた男のど真ん中を撃ち抜いた。
沢山の鋭い棘が回転する事によって男の肉体を深く傷付け、血肉を抉り窓へと叩き付ける。それでも勢いが収まる事は無く窓を破壊し男は外へと投げ出され、海の中へと沈んだ。
「よ、容赦ねー…………」
自分とは別の意味で迷わず敵を攻撃し、容赦なく海の中へと沈めた恭弥に綱吉は思わず素が出てしまう。
「これで終わり?」
呆気ないと言わんばかりに不満顔を浮かべる恭弥に綱吉は引きながらも、窓枠ごとひしゃげて破壊された窓を、正確には窓の外へと叩き出されて海の中へと沈んだ敵の方に目を向ける。
容赦の欠片も無い恭弥の攻撃に沈んだ敵は間違いなく戦線復帰が不可能な程のダメージを負った。
少なくとも腹の肉が抉れてすぐに戦う事が出来るような人間を綱吉は――――残念な事に知っている。と、いうか綱吉自身そっち側の人間だ。
だからこそこれで終わるとは到底思えない。
そして、少し遅れて綱吉の超直感が敵の健在を告げた。
「まだ終わってない」
綱吉がそう呟くと同時に海面から嵐の炎の火柱が立ち上る。
炎の中から姿を現したのは蝉と人間を融合させたかのような、奇妙でグロテスクで、悍ましい怪物のような存在。
超直感が告げる――――あの怪物がこの船を襲った敵のボスであると。
「…………ここ最近びっくり人間ばかり見てるが、ここまで完全に化け物なのは初めてだ」
超死ぬ気モードになった綱吉は怪物となった敵を見据え、大空の死ぬ気の炎を漲らせた。
このツナ君ならシモン篇で家光が殺したと言われて戦意喪失する事はありません。
それどころか普通に返り討ちにします。
そして改めて思った事。
この覚悟ガンギマリになったツナが骸やヴァリアーとかのネームド以外の相手に負けるイメージが湧かない。
てか雲ハリネズミの攻撃力が高過ぎてイージーゲーム過ぎるの!!