<城塞都市 エ・ランテル>
こちらの世界の情報収集が目的で冒険者になるためこの地へやってきたカイトと見事激闘(じゃんけん)を制しカイトの同行できる権利を勝ち取ったナーベラル・ガンマがこの都市に足を踏み入れた。2人はお揃いのマントを装備し、カイトはいつものように仮面をつけている
冒険者登録を無事に済ませた2人は寝床を確保するため宿屋備え付きの酒場に入った
「宿だな。相部屋で1日5銅貨。飯は...」
「2人部屋希望でお願いします。食事は不要です」
2人部屋と聞いて残念がるナーベラルを気にしながらもカイトは続ける
「お前さん、”カッパー”のプレートだろ。ならここは...」
「先程組合で登録してきたばかりでして」
「1日7銅貨!前払いだ」
「それで大丈夫です」
カイトは7枚の銅貨をカウンターにそっと置く
「部屋は2階の奥だ」
「わかりました」
マスターの指差す方向に向かおうとすると近くのテーブルに座っていた柄の悪い男が進行方向に足を出してきた。カイトは構わず進む
「おいおい痛てーじゃねぇか。どうしてくれんだよおい。んー?ほぉ、こりゃそっちの女に優しく介抱してもらうしかねぇな」
「ちっ...」
「すいません」
「あぁん?うわっ!」
カイトは男の胸ぐらを掴み持ち上げる
「ナーベに手を出したら、殺しますよ?雑魚が」
男を投げ捨て他の連中を牽制し奥に入って行った
「ですがカイト様がこのような場所に滞在されるなど」
「いいんですよ。逆にこれぐらいの方が自分には合ってます。ナザリックのベッドは広すぎて落ち着きませんから」
カイトが言うようにユグドラシルではソロで活動していたためこういう下宿には慣れていた
「さて、これからのことについて話しましょうか」
「はっ!」
「あー、ナーベラルさん...今は自分とナーベラルさんは冒険者仲間なんです。なので跪いたりする行為は不要なんです。ナザリックでも自分にする必要はないと感じますが」
「かしこまりました、カイト様」
「それも無しにしましょう。冒険者としては自分は”ムメイ”、貴女は”ナーベ”という名で通して行きます」
「承りました、ムメイ様」
「様も無しで...」
「わかりました、ムメイさーーーーーん」
(何それちょっとマヌケっぽいけどそれもまたいい!)
「ま、それでいいです。さて自分達の目的はここを基点に有能な冒険者としての地盤を固め、この世界の情報収集を円滑に進めます」
冒険者はランクで別れておりそれぞれ”プレート”と呼ばれる物を所持している。ランクに応じてプレートの種類も別れており下からカッパー、アイアン、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトの9種類となっている。オリハルコンやアダマンタイトクラスにでもなればその分大きな依頼や国家レベルの依頼も行うためその分情報が集めやすくなる
「ってなわけなんですが、当分は資金集めを目的に依頼をこなして行きます」
「はっ!さすがでございますカイト様」
「ありがとうございます。ナーベラルさんも何か疑問だったり意見があったら遠慮なく言ってください」
「カイト様のお考えに疑問などございません!仰せのままにこの身をお使いくださいませ」
(はぁ〜...アインズさん、貴方と同列のように扱えなんて言ったばっかりに...なんとかしなくては!)
「まぁとりあえず仕事を探しに組合に行きましょうか」
「かしこまりました」
ナーベラル達の性格改変のことは追々としてカイト達は組合へ向かった
組合にはたくさんの冒険者が集まっていた。そして掲示板に張り出されている用紙1つ1つが依頼書だ。しかし...
(読めん...)
この世界の字はユグドラシルやもちろん現実世界のそれとは全くの別物であるため仕事を見つけようにも読めないんじゃどうしようもない
(字を覚えるのも急務だな...仕方ない)
カイトは依頼書は何も取らずに受付にいる女性に話しかけた
「すいません、少々お尋ねしたいことが」
「はい。何でしょう?」
「今ある以来の中で自分でも受けられるものの1番高いレベルの依頼を見繕っていただいてもよろしいですか?」
「かしこまりました」
受付嬢が持ってきたのはゴブリンやオーガと言った場外にいる商人達を害するモンスターの退治と言ったものだった
「今あるカッパーへの依頼となるとこの辺りが難しいレベルのものです」
「ありがとうございます。して報酬の受け取り方はどのように?」
「倒したモンスターの一部を切り取って提出していただければその数や難易度に見合った報酬をお渡しします」
「ありがとうございます」
「ご武運を」
カイトはすぐにその依頼を受けナーベラルを連れて出立した
「さて、こっちの世界のモンスターの強さを知るいい機会ですし、ナーベラルさんも相応の力を出して大丈夫ですよ」
「仰せのままに」
カイトは円を使い都市周辺の感知を行う。するといくつかの地点からまとまったモンスターが感知に引っかかった
「んじゃ行きましょうか」
「はい」
2人は都市を出て草原をゆっくりと歩く。そしてそれに気づいたモンスター達がうじゃうじゃと出現した
「来たな。来い”白虎”」
カイトは白を基調とした刀を出しナーベラルも魔法を繰り出すべく構える
「シッ!」
「”ライトニング”」
カイトの刀が相手を木っ端微塵にし、ナーベラルの魔法が相手を貫いた。戦闘時間約3秒
「ん〜」
「いかがかされましたか?」
「いや、不謹慎ですが弱いな〜と思いまして」
「カイト様であれば当然です」
「ありがとうございます」
2人は倒したモンスターから残骸を一部切り取っていく
「この分なら掃討は早そうですね」
「このような虫けら、私だけで掃討して参ります」
「えっ...行っちゃった...」
そして3分後、ナーベラルは大量のモンスターの残骸の一部を持って戻ってきた
「さすがですね」
「恐れ入ります」
「おかげで周辺のモンスターは刈り尽くしちゃいましたかね」
「はっ!申し訳ございません!」
「いや、そういう意味じゃないですよ。感謝してるんです」
「あ、ありがたき幸せ!」
「それじゃあ帰りますか」
「はい!」
2人は街に戻り組合にモンスターの残骸を提出し相応の報酬を受け取った。その量に組合の職員は一同驚愕しそれを2人で狩ったと聞かされさらに驚愕した。そして噂はすぐに広まった。周辺のモンスターをたった2人で狩り尽くした驚異の新人がいる、と...
カイトとナーベラルが冒険者になって2日目。昨日の報酬のほとんどはナザリックのこれからの資金としての貯金に回したため本日も2人は仕事を探しに組合に足を運んでした
(ふむ、やはり読めん...)
カイトが今日も掲示板の前で唸っているととある4人組が声をかけてきた
「よろしければ私達の仕事を手伝ってはいただけませんか?」
「はい?」
カイトは突然のことに驚いきはしたがとりあえず話を聞こうと2階に上がった
「それでは改めまして、私が”漆黒の剣”のリーダー、”ペテル・モーク”です。そしてあちらがチームの目と耳であるレンジャーの”ルクルット・ボルブ”」
真面目そうなリーダーとチャラ男っぽい外見のレンジャー。そのルクルットはナーベラルに向かって笑顔で軽く手を振るが彼女は無視する
「そして治癒魔法や自然を操る魔法を使うドルイドの”ダイン・ウッドワンダー”」
「よろしくお願いする」
「そして最後にマジックキャスターでありチームの頭脳、”ニニャ・ザ・スペルキャスター”」
「よろしく。しかしペテル、その恥ずかしい二つ名やめません?」
「え、いいじゃないですか」
人間サイズのドワーフのようなドルイドとちょっと子供っぽさを感じる顔立ちのマジックキャスター
「こいつ”タレント”持ちなんだ」
「ほぅタレントですか」
タレントとはこの世界で生まれつき持った特殊能力みたいなものである
「”魔法適正”とかいうタレントで確か習熟に8年かかる魔法が4年で済むんだっけ?」
「それはすごいですね」
「この能力を持って生まれたことは幸運でした。夢を叶える第一歩が踏み出せたのですから」
「何はともあれこの都市では有名なタレント持ちであるということです」
「まぁ私よりもっと有名な人がいますけどね」
「”バレアレ”氏であるな」
「ほぅ。あぁこちらも自己紹介を。自分はムメイ、こちらはナーベです。それでそのバレアレという方はどんなタレントをお持ちなんですか?」
「なるほど。彼のことを知らないということはこの辺りの人ではないのですね」
「えぇ。先日到着したばかりでして」
「”ンフィーレア・バレアレ”と言って名の知れた医師の孫にあたる人物なのですが、彼のタレントは”あらゆるマジックアイテムを使用可能”というものでして」
「そうですか...」
「その人間危険かと」
「そうですね」
「それで今回の仕事の話なのですが、ここから少し行ったところり川がありまして、そこに架かる橋を渡って行き来している商人が最近モンスターに襲われているようでそれを狩るのが仕事です」
「そうでしたか」
「実のところ依頼された仕事というわけではないのです...」
「というと?」
「相談してきた商人は前からお世話になってる人でして。ですので恩返しも兼ねてのことでして。そこへここ周辺のモンスターをたった2人で狩り尽くしたと噂されているお二人に協力をお願いしたいのです!」
「理解しました。こちらこそよろしくお願いします」
「ありがとうございます!つかぬ事をお聞きしますがその仮面は...」
「あぁ。昔住んでいた村がモンスターに襲われ、顔に酷い火傷を負いまして。できれば触れないでいただけると助かります」
「そうでしたか。それは失礼しました」
「ところでお二方はどのようなご関係なのでしょうか!」
「ナーベは自分にとって最も大切な存在の1人です」
「なっ!」
「ですので、言い寄るのはよしていただけますか...?」
「仲間がご迷惑を...」
(やっべー!なんかチャラ男にムカついてあんなこと言っちゃったけど、迷惑じゃないよね...)
心配になってナーベラルの方に目をやると当人は頰を赤くして俯いていた
(あっ、照れてるナーベラルさん可愛い...)
話し合いは終了し階段を降りていく一同
「お互いに用意も揃ってますし、すぐに出立しましょうか」
「はい」
「ムメイさん」
「はい?」
「ご指名の依頼が入っております」
「一体どなたが?」
「ンフィーレア・バレアレさんです」
その名を聞いた瞬間ナーベラルが前に出て剣を構えようとするのをカイトが慌てて止める
「ナーベラルさん、あの人物が危険で貴女が自分を守ろうとしてくれているのはわかっています。しかしここで問題を起こせばアインズさんに迷惑がかかります。なので少し抑えましょう」
「も、申し訳ございません...」
「はじめまして。僕が依頼させていただきました」
「大変申し訳ないのですが自分は既に別の仕事の契約を交わした身ですので、光栄なお話ではありますが今回は」
「ムメイさん!名指しの依頼ですよ!?」
「そうかもしれませんが、それでも先に受けた依頼を優先するのは当然です」
『おぉ〜』
「しかしせっかくの指名を」
「ではどうでしょう。バレアレさんのお話を聞いてから考えるというのは」
それに賛同したペテル達は再び2階へ戻った
「僕はンフィーレア・バレアレ。この街で医師をしています。今回薬草採取のためにカルネ村近くの森まで行くつもりです」
(カルネ村?それってこの前の...)
「それでそこまで警護と薬草採取の手伝いを依頼したいのです」
「警護ですか」
(警護か。円で周囲感知はできて第三者自身を守るスキルなんて持ってないし)
「報酬は規定の...」
「ペテルさん」
「え...」
「自分に雇われませんか?」
「というと?」
「警護任務となるとレンジャーであるルクルットさんみたいな方が必要ですし森での採取であればドルイドのダインさんがいた方が効率がいいと思いまして。それに先程の橋はカルネ村に行く道筋にあったはず」
「うん、ムメイ氏の慧眼見事である」
「こっちは全然問題ないぜ」
「ありがたい申し出です!」
「僕の方もそれで問題ありません」
「よかった。では最後に1つ、なぜ自分なんですか?」
「モンスター退治の噂を聞いたからです。それにカッパーのプレートの方ならお安いかと思いまして」
「確かに
「他にご質問は?」
「いえ、私達はすぐにでも出られます」
「わかりました。それでは早速出発しましょう」
(あのタレント。カルネ村。アインズさんに報告しといた方がいいな)
かくしてモンスター狩り兼護衛の任務を受け出発した
ンフィーレアが乗った馬車を囲うように前方、左右に漆黒の剣のメンバーが配置され、後方にカイトとナーベラルが位置どりながら道を進んでいった。そして危険地帯に入ったあたりでニニャが”森の賢王”なる者の話を出した。なんでも魔法が使える魔獣のようだ。カイトはそれも含めて歩く最中にアインズにメッセージを飛ばし報告を行った
「へぇ魔法でそんなことが」
「はい。”生産魔法”と言って塩や砂糖を作ったりその他にも”アラーム”という危険が近づくと教えてくれる魔法とか」
「では伺いたいのですが...」
道中ニニャはいろんな魔法の情報をカイトに教えていた
(ここの世界は魔法で独自の発展を遂げているのか。ということは逆にコンピューターみたいな機械などの発展はないと見る方がいいな)
「ナーベちゃんてさー、いつも余裕の表情だよねー。やっぱり俺がいるからー?」
「あなたじゃありません。ムメイさんがいるからです」
興奮するナーベラルの肩に手を置いて落ち着かせるカイト
「やっぱり2人は恋人関係なの?」
「こ、恋人!?何を言うのですか!私達の関係はそのような...」
「そう捉えていただいて結構です」
「なっ!カ...!ムメイさ.......ん!?」
「ナーベは、イヤですか?」
「そ、そんなことは...!」
「ふふっ。ということなので悪しからず」
「そのようですね」
「ムメイさん、仲間が申し訳ない」
「いえ、これから気をつけていただければ」
「ルクルット!お前もいい加減に!」
仲間を叱ろうとするペテルを真剣な表情で止めるルクルット。それとは反対にニヤけが止まらないナーベラル
「動いたな」
「ナーベ、準備を」
「っ!はっ!」
「ムメイさんも気づいたか」
「はい」
「どこだ!」
「あれだよあれ」
ムメイの円にも反応があった。ルクルットの指差す方にはオーガとゴブリンの群れがこちらへ向かってきている
「こりゃ戦闘は避けられないな」
「ンフィーレアさんはそのまま馬車に体を伏せて隠れていてください」
「はい、よろしくお願いします」
「ムメイさん、分担はどうしましょう?」
「みなさんはンフィーレアさんを守っていただけますか?」
「でもそれではムメイさん1人で」
「大丈夫です。ナーベも一緒ですから。自分の実力の一旦をお見せします」
「了解しました。ですができる限りの戦闘支援はさせてもらいますよ」
「このまま戦闘を開始すると森に逃げられる可能性があるけど」
「ならいつも通りの手で行こうぜ!亀の頭を引っ張り出す感じでな!」
「それがよいのである。それでペテル、敵の突撃はムメイ氏がブロックするとして残った敵の対処は」
「オーガは”武技 要塞”を起動させて私が抑える。ゴブリンの足止めはダイン!」
「承知したである!」
「ニニャは防御魔法を私に。その後戦況を見つつ攻撃魔法に専念してほしい」
「うん、了解!」
「ルクルットはゴブリンを狩っていってくれ。もしオーガが抜けてきたらブロック」
「任しとけ!」
「ムメイさん達もよろしいですか?」
「えぇ」
「んじゃまずは!」
開幕一発目、ルクルットが弓を放つ。しかしそれはモンスターの遥か手前で落ちてしまった。それを見たモンスター達は一斉に駆け出した
「かかったな!」
それを見たルクルットはすぐ二射目を放ちそれは見事ゴブリンの頭に命中した
「”リーンフォース・アーマー”」
「”トワイン・プラント”」
ニニャの魔法でペテルに防御魔法が付与されダインの魔法で土から生えたツルがオーガの体に絡まり動きを封じた
「シッ!」
カイトは襲いかかってきたオーガの巨体を居合で真っ二つに切った。その剣筋はペテル達には目ないほどだった
「すげぇ...」
「ミスリルどころかオリハルコン...いや、まさかアダマンタイト!」
その後も来る的をことごとく真っ二つにしていくカイト。そんなカイトにゴブリン達は敵わないと考えたのか他のメンバーへの攻撃に切り替えた
「来たぞ!」
「”マジック・アロー”!」
その中でもマジックキャスターであるニニャがいち早く狙われた
「来やがったな!」
「行くである!」
(いいパーティーですね。互いの能力を知り連携がしっかり取れている)
戦闘しながらずっとソロでやってきたカイトは漆黒の剣の連携に素直に感心するのであった
「ナーベ、頼めますか?」
「お任せを」
カイトに恐れをなしたのか逃げ出す残りのオーガをナーベラルが”ライトニング”で屠った。それを見て逃げ出すゴブリン達。しかしそれをカイトが見逃すわけもなく、逃げ道に先回しし一体一太刀で掃討した
「すごいですねムメイさん。まさかあれほどとは思ってもいませんでした」
「あの剣はどこぞの逸品?」
「噂に名高いかの王国戦士長に匹敵する強さであるな」
「当然です」
カイトのことを言っているのにドヤ顔するナーベラル
「ホント上には上がいると納得しましたよ」
「ありがとうございます。しかし鍛錬を積めばみなさんでもこれぐらいできるようになりますよ」
『あはは...』
モンスターの残骸の一部を取るのを忘れずに一行は出発した。その夜には漆黒の剣のチーム名の由来を聞いたりンフィーリアに好きな子がいるという話などで盛り上がった。カイトとナーベラルは一向に聞いているようで聞いてない専門だったが
そして夜が明けて目的地のカルネ村が近づいてきた
「あれ、変だな」
「どうしました?」
「あんな頑丈そうな柵前はなかったんですけど」
村には村を囲むように柵が設置されていた
「ありゃゴブリンじゃねぇか?」
「あんたら何者だ」
入り口付近に近づくと中から武装したゴブリン数匹が現れ周りの草はらからもゴブリンが現れ完全に囲まれた
「武装を解除してもらいましょうかね」
「これって...」
「あのぅ兄さん方。戦闘はできるだけ避けたいんですよ。特にそっちの仮面の人、あんたからはちぃとまずい雰囲気ってのをバリバリ感じるぜ」
「なんだコイツらは!」
「ゴブリンさん、どうしたの?」
「姐さん!」
「エンリ!」
「えっ、ンフィーリア!」
「あ、あの子!」
「であるな」
(やっぱりあのときアインズさんが渡した角笛で召喚されたゴブリン達か。しかし...あのとき言ってた知り合いの医師っていうのが彼のことだったとは)
カルネ村が襲われた際にアインズが守った子供が来たことによって無事に入ることができた。ンフィーリアはエンリと呼ばれた少女と一緒に家に入って行った。それを見届けてからカイトとナーベラルは丘の上に登り村を見渡した
村ではゴブリン達が村人に弓を教えているようであった
「すごいですね」
「左様ですか」
「確かに驚くべき技術などはありませんが10日ほど前までは弓なんて使ったことないただの村人だった人達です。そんな人達が連れや子供、親を殺されて二度とあのようなことが起きないようにと努力している光景は十分に賞賛に値しますよ」
「申し訳ありません。そこまで考えがいたらず」
「いいんですよ。ただ人間は過去を糧に成長できる。それを知ってほしかった。ただそれだけです」
「そのようなものをご教授いただき光栄です」
「ムメイさん!」
「ん?」
そこへンフィーリアが走ってやってきた
「そろそろ森へ採取に向かおうと思っているのですが」
「わかりました。行きましょう」
カルネ村からそれほど遠くない距離森にやってきた。カイトとしては薬草採取よりも森の賢王なるものの方に興味が湧いていた
「それでは森に入っていきますので警護をお願いします」
「まぁムメイさんがいれば大丈夫だとは思いますが!」
「あのムメイさん。森の賢王が出てきたら殺さずに追い払ってくださいませんか?」
「えっ」
「理由を聞いても?」
「これまでカルネ村がモンスターに襲われなかったら森の賢王がこのあたりを縄張りにしていたからです。それを倒してしまわれますと...」
「いくら何でもそいつはムリだろう」
「了解しました」
『えっ!』
「相手は何百年も生きてる伝説の魔獣だぞ!」
「強者のみに許された態度であるな」
「それで1つ提案があるのですが」
「どうぞムメイさん」
「ナーベがアラームに似た魔法が使えるようなので2人で周囲を一回りしてきてもよろしいでしょうか?」
「構いませんよ。でもあまり長く離れないでくださいね」
「もちろんです」
カイトはナーベラルを連れて先に森へ入った
「この辺でいいでしょう。さて、出てきていただいて大丈夫ですよ」
「はーい!」
「んっ!」
「っていうことでアタシが来ました」
「アウラ様!驚かさないでください!」
「ごめんね〜」
頭上の枝の上に現れたのはアウラであった。ナーベラルは危うくアウラに魔法を放つところだった
「一体いつから」
「自分らが森に入ってからですよ」
「全く気付きませんでした...」
「さすがはカイト様です。カイト様相手に気配を絶つなんてできませんねこりゃ」
「ありがとうございます。アインズさんから連絡は受けてます。アウラさんが森の賢王を自分にけしかけてくれるってことであってますか?」
「はい!アインズ様からそうするように仰せつかってます!」
「ではお願いします」
「かしこまりました!」
アウラは軽い身のこなしで森の奥に消えていった
「何をなさるおつもりですか?」
「自分が森の賢王と戦うらしいです」
「昨日のオーガ達との戦闘で十分では」
「オーガ複数体よりも森の賢王を撃退したという方が価値はずっと高い、とのことです」
「なるほど」
「心配していただきありがとうございます」
「カ、カイト様!?」
「はっ!すいません!」
カイトは無意識にナーベラルの頭を撫でていた
「すいません!シズさんやエントマさんのときみたくつい...」
「っ!あの2人はカイト様からこのようなご褒美を...?」
「ご褒美?まぁたまに感謝の気持ちとしてこうするとすごく喜んでくれるので」
「ぐぬぬ...」
ナーベラルは手を握りしめ2人の妹に激しく嫉妬する。そんなナーベラルをなだめ2人はンフィーリア達と合流した。そして少しすると森が騒めき始めた
「はっ!」
「まずいなこりゃ...デカイものがこっちに向かってきてる」
「森の賢王でしょうか」
森の賢王という言葉を聞いて怯える一同
「皆さんは下がっててください」
「お願いします!」
「頼みましたぞ!」
漆黒の剣のメンバーはンフィーリアと共に森の外に走っていった
「って確認する人がいないと森の賢王ってわからないじゃないですか...足の一本でも切り飛ばしますか。来い”玄武”」
2人はそれぞれ刀と剣を構える
「お客様のご登場です」
森の奥から砂埃をあげながら駆けてくる何か。そしてそれから硬い尻尾のようなもので攻撃されるがカイトはそれをいとも容易く防ぐ
『某の初撃を完全に見切るとは見事でござる』
「ござる?」
『さて、某の縄張りへの侵入者よ。今逃走するのであれば先の見事な防御に免じ某は追わないでおくがどうするでござるか?』
「愚問ですね。それよりも姿を見せないのは自身がないのですか?それともただの恥ずかしがり屋ですか?」
『言うでござらぬか。では某の異様に瞠目し畏怖するがよい』
(難しい言葉よく知ってるな〜)
そしてそれは姿を現した
「なんという...」
『ふふふふ...その仮面の下から驚愕と恐れが伝わってくるでござるよ』
「1つ聞いてもいいですか?あなたの種族名は...”ジャンガリアンハムスター”とか言わないですかね...?」
「なんと!もしやそなた某の種族を知っているでござるか?」
「えっと...まぁはい...」
「なんと!もし同族がいるのであれば教えてほしいでござる!子孫を作らねば生物として失格でござるが故に」
「いやそれはサイズ的にムリですね...」
「そうでござるか...それは残念でござる...」
「すまんな...」
「いいでござる。それよりもそろそろ無駄な話はよして命の奪い合いを始めるでござる」
「そ、そうですね...」
(ちょっとは期待したのに...期待外れにもほどがある...)
「シッ!」
「ひょわ〜」
「お見事です」
カイトは居合で巨大ハムスターのヒゲを数mm切った
「まだ続けますか?」
「ま、待つでござる!降伏!降伏でござる!某の負けでござるよ!」
「はぁ...」
「殺しちゃうんですか?」
「ん?」
頭上にはアウラが枝に座っていた
「でしたら皮を剥ぎたいなって思うんです。いい皮取れそうですし」
「そんな〜」
「連れの人達に見せた後アインズさんの許可が出ればお好きになさってください」
「かしこまりました」
カイトはひっくり返っているハムスターを持ち上げ森を出た
『これが森の賢王!』
「ご安心を。既に私の支配下に入っておりますので危害を加えることはありません」
「すごい...なんて立派な魔獣なんだ!」
(えっ...)
「強大な力と叡智を感じるのである!」
「これだけの偉業を成し遂げるたぁ確かにナーベちゃんを連れまわすだけの力はあるわ〜」
「私達では皆殺しにされてましてね...さすがはムメイさん!お見事です!」
「ナーベさんはどう思いますか?」
「強さは別として力を感じさせる瞳をしていますね」
(マジで〜)
カイトには横にいる巨大ハムスターのどこにそんな魅力があるのか終始わからなかった