カイト達は無事に警護と薬草採取の任務を終えエ・ランテルに戻ってきた。しかしなんでも魔獣などを従えるためには組合で登録な必要なようで、そのため森でそのままナザリックに渡すはずだったこのハムスターを一度エ・ランテルまで連れてこないといけない羽目になってしまったのだ
「それではムメイさん、私達は一足先にンフィーリアさんのお宅で荷下ろしを済ませておきます」
「わかりました。自分も組合で魔獣の登録が済み次第向かいます」
「ムメイさんのおかげで大収穫でした。追加報酬を用意して待ってます」
「収穫は某が協力したおかげであるが...」
「それでは!」
「ナーベちゃん、暫しの別れだけど寂しがらないでくれよ〜?後でパーッと打ち上げしようぜ!」
「ミジンコが踏み潰しますよ」
「さっさと行くである」
「ではまた」
門を通ってすぐの広場で一旦別れた一行。カイトはナーベラルとハムスターを連れて組合へ向かう。その道中こんなデカいモンスターを従えてるから当然目立つ。行き交う人、家から身を乗り出して見る人。組合に着くまでの全員の注目を集めていた
(そういえばこいつに名前つけなきゃなんだっけ。これはオレが決めちゃっていいのかな?)
(別にいいですよ?)
「うぉっ!」
「っ!いかがかされましたかカ、ムメイさーーーん...」
「い、いや大丈夫です!」
(アインズさん!急に驚かさないでください!)
(あーすいません。メッセージ送ったタイミングが悪かったもので)
(はぁ、まぁいいです。それで何か?)
(はい。何やら街の外、墓地の辺りにスケルトンが大量発生してるみたいなので一応報告を)
(そうですか。ありがとうございます)
(これまでの街の様子でこんなスケルトンの大量発生なんて起きましたか?)
(カルネ村に行ったのも含めてこっちに来てまだ一週間くらいですからね。わかりかねます)
(そうですか。一応警戒はしておいてください)
(わかりました。この後の用事を済ませたらそれとなく情報収集してみます)
(お願いします)
そこでメッセージを切った
「ナーベ、先程はすみませんでした」
「いえ。何事もなく何よりです」
「はい。ところでこいつの名前何がいいと思います?」
「名前ですか...恐れながら私には名付けの心得がなくご期待にはお応えできないかと」
「そうですか。それはムリを言ってすいません」
「いえ!申し訳ございません!」
(名前か〜。ハム太郎?ハム次郎?ハム三郎?ハム之助?ハム助?別にハムってつけなくてもいいか。ん〜。肉まん?いや、ないな...)
カイトが名前を考えている間に組合に到着した。登録を済ませるのに少し時間がかかった
「お待たせしました」
「とんでもございません」
「登録終わりました。最終的に”ハム助”になったんでよろしく」
「かたじけないでござる」
「喋った!」
「わー!」
「すごーい!」
「飼い主がカッパーのプレートってホントかよ!」
「あんな立派な魔獣を手懐けてるんだ。実は立派な冒険者ないのか?」
組合前はこの立派(なのかな?)の魔獣の見物人で溢れ、会話の中にはその魔獣を使役しているカイトの話も出てきている
「のぅお主。もしやワシの孫と一緒に薬草採取に行った者じゃないか?」
「ん?」
「”リイジー・バレアレ”だがンフィーリアの祖母じゃよ」
「そうでしたか。自分はカルネ村まで警護として同行したムメイと言います。こちらはナーベ。それから...」
「某は森の賢王、今はハム助という名でござるよ」
「この精強な魔獣こそがかの伝説の森の賢王だと言うのかい!」
「えぇまぁ...」
「ふふん」
(ドヤ顔すんな。ハムスターのくせして)
「あなたのお孫さんの依頼で向かった先で遭遇しまして。ねじ伏せたまでのこと」
「なんと...!それで孫は今どこに?」
「薬草を持って先にご帰宅されているはずですが。我々もこれから報酬を受け取りにお宅に向かうところでした」
「ほぅなるほど。なら一緒に行かんかね?」
「えぇ喜んで」
ンフィーリアの家に着くと電気はついておらず真っ暗であった
「ンフィーリアやーい。ムメイさんが来たよー。どうしたのかねぇ?」
「ナーベ...」
「はい」
「来い”青龍”」
「なんだい?」
カイトは青を基調とした刀を出し奥へ進んでいく
「リイジーさん、この奥は?」
「薬草の保管庫じゃが」
カイトがその保管庫のドアを開けると中には4体の死体が転がっていた
「ひー!なんてことだい...」
リイジーが怯えていると死体の中の3体が動き出した
「ゾンビ!」
「シッ!」
その死体はゾンビど化し襲ってこようとするがその前にカイトが葬った。そのとき剣を抜いてから鞘に収めるまで音は全くたっていない
「ンフィーリアは!?」
「ここにはいないみたいですね」
「ンフィーリア!」
「何かあるかもしれないです。守ってあげてください」
「かしこまりました」
その場に孫の姿がなかったため探しに駆け出すリイジー。カイトはナーベラルにそれを追わせる。そして自身は死体を調査する。葬ったときに確認した。4体の死体は漆黒の剣のメンバーだと
「ニニャさん...」
唯一ゾンビ化していなかったニニャの体はまるで拷問を受けた後のように悲惨な状態だった。目をくり抜かれ皮膚は剥がされ指もない
「そうでしたか...」
そしてニニャの胸にはサラシがまかれていた。つまりニニャは性別をも隠して冒険者としてやっていたのである
「クソが...」
アンデッドで感情の起伏が激しくないアインズとは違ってカイトは人間である。少しの期間でも共にいた人が別れて早々このような目に遭わされて憤怒しないわけがない。しかしカイトは冷静だ。いや頭に血は上ってはいるが確実に実行犯を葬るために動いている
「刺突武器か」
「ワシの孫が、ンフィーリアがおらん!」
「持ち物が荒らされた形跡がないことからお孫さんを攫うのが目的だったようですね」
「ではこの者達は一体...」
「自分と一緒にお孫さんの依頼を受けた冒険者です」
「お主の仲間か」
「仲間、ではないです。今回偶然一緒になっただけです」
「ん...」
「それよりもどう考えますか?」
「何がじゃ」
「これはおそらく”クリエイト・アンデッド”。最低でも第3位階の魔法を使える者がいたとしたら死体を隠したり連れ帰ったりする方が時間稼ぎができます。しかしこんなことのために使うということは誘拐がバレても問題ないと考えているのか、証拠を残しても逃げ切れる自信があるのか。いずれにせよ早急に対処が必要です。リイジーさん」
「何じゃ」
「これは冒険者に依頼する案件です。そして幸運なことに貴女の目の前にお孫さんを連れて帰れる冒険者がいます。依頼するということでしたら引き受けなくもないですよ」
「確かにお主ならば...雇おうとも!汝らを雇おう!」
「そうですか。しかしお孫さんの捜索に救出。そして相手は第3位階魔法を使う相手。それ以外の敵の戦力、数は不明。報酬は高くつきますがよろしいですか?」
「いかほどなら満足してくれる...」
「今回はこちらも命がけとなります。それ相応の代価となりますがそれでも?」
「構わん!言うてみよ!」
「それでは...貴女の全てを差し出してもらいましょうか」
「なに!?」
「金銭、所有物、所有地。知力、財力、名声。それに人権。貴女の持つ全ての者を報酬としてこの依頼を受けましょう」
「お主...悪魔は人の魂を代価にどんな願いも叶えると言う...まさかとは思うが...お主らは悪魔では!」
「この際悪魔だろうが何だろうが問題がありますか?貴女はお孫さんを見捨てれますか?リイジー・バレアレさん」
「ぐっ...雇おう!私の持つ全てを差し出そう!孫を救ってくれ!」
「承りました」
依頼が成立しカイトは作戦を練るためリイジーをある部屋を借りた。そしてリイジーから借りた周辺の地図をテーブルに広げる。念のためリイジーは外に出てもらっている
「ではこれからンフィーリアさんの居場所を探ります」
「どうされるのですか?」
「自分の円ではこの都市外に逃げられた場合詮索は難しいでしょう。ですが1つ気になることが」
「それは一体」
「先程アインズさんから近くにスケルトンが大量発生したという報告がありました。スケルトンとクリエイト・アンデッド...気になりませんか?」
「確かに」
「ですのでアインズさんにその周辺にンフィーリアさんらしき人物がいないか見てもらいます。もし外れても次の手は用意してありますので」
「さすがはカイト様。既に何手も先のことをお考えとは、感服致します」
「とりあえず急ぎましょう。”メッセージ”」
(アインズさん)
(はい。どうかしましたか?)
(さっき言っていたスケルトンの大量発生地。その周辺に少年が監禁などされていないか見てほしいんです)
(監禁。何かあったのですね)
(はい。事情は後ほど報告します。お願いします)
(わかりました)
そして2分もしないうちに返事が帰ってきた
(カイトさん。その付近の地下に少年とアンデッドの群れがいました)
(そうですか。助かりました。つきましては今回の敵は最低でも第3位階魔法が使えます。万が一もありますのでナーベラルさんに本気を出してもいいという許可をいただけませんか?)
(そうですか。わかりました。出させるか出させないかはカイトさんにお任せします)
(ありがとうございます。ですがナーベラルさん自身にもその許可についてお伝えを。彼女の長は自分ではなくアインズさんですから)
(わかりました。すぐに伝えます)
(お願いします。では事が終わり次第連絡します)
(ご武運を)
カイトの想像通りスケルトンが大量発生した場所がビンゴだった
「当たりましたね。早速行くとしましょう」
「どうなさいますか?転移で一気に攻撃を仕掛けますか?それとも”フライ”の魔法で強襲を?」
「それもいいでしょう。しかしこれはチャンスでもあります」
「チャンス?」
「えぇ。これだけのアンデッドの群れを自分とナーベラルさんの2人で掃討したら名声は一気に上がると思います」
「なるほど」
「それに、こんな時に不謹慎ですが自分とナーベラルさんの2人だけの共同作業でもあります」
「っ!」
「この前のモンスター狩りはすぐに終わってしましましたし連携なんて皆無でした。ですので今回こそ2人で行きましょう」
「はい!カイト様のご期待に添えられるようこのナーベラル・ガンマ、尽力致します!」
「自分もナーベラルさんに見限られないよう頑張ります。それじゃあ行きましょう」
カイトは仮面を装備しドアを開ける
「終わりました」
「何かわかったのかい!?」
「敵の潜伏地は墓地だと判明しました」
「孫もそこに!」
「はい。しかしアンデッドの群れが一緒です」
「な”っ!」
「アンデッドの群れが墓地の外へ、最悪ここへ押し寄せるかもしれません。リイジーさんはこの話を組合や街の人々に伝えていただきたい。自分とナーベは早速墓地へ向かいます」
「お主、アンデッドの群れを相手にする手段を持っておるのか!」
「もちろん。なければむやみに突っ込みませんよ」
エ・ランテルの墓地側の門はいつも通り兵士が数人見張りを行なっていた
「今日も静かな夜だな」
「最近は帝国との戦いもないしアンデッドの数も減ったんじゃないのか?ん?何の音だ?」
「おい、俺をビビらせようと...」
「静かに!何か聞こえた」
「気のせいだろ」
「おい!あれを見ろ!」
「こいつは...」
兵士達はすぐさま門の上から外を見下ろす。するとそこにはアンデッドの大群が押し寄せていた
「アンデッドの大群!?」
「しかも100とか200とかじゃすまされないぞ!」
「1000はいるのか...衛兵駐屯地に知らせろ!救援が来るまで何としてでも持ちこたえるんだ!」
アンデッドの上にアンデッドが上がってを繰り返して門を越えようとする軍勢。兵士達も食い止めようとするもその数に圧倒され余儀なく撤退を敢行する。するとそこへ門の方へ向かってくる2つの影があった。月明かりに照らされその姿が露わになる
「冒険者。しかしカッパーのプレートでは役に立たん!あんたらすぐにここを離れ...」
「皆さん後ろを」
兵士達が振り向くと門をも上回る巨大なアンデッドが押し寄せていた
「”飛斬 一閃”」
カイトは白虎を手にし居合で空を切った。そしてそれは飛ぶ斬撃となり巨大アンデッドの首元を切断した
「あ、あんた何者だ...」
「ただの冒険者です。門を開けてください」
「バカを言うな!門の向こうにはアンデッドの大群がいるんだぞ!」
「知っています。自分はそれを掃討するために来ました」
「なんだと!たった2人でか!」
「はい。まぁ別に開けないなら開けないで結構です」
カイトは跳躍し門を軽々飛び越えた。続いてナーベラルも魔法で飛び越える。そしてすぐ外の音はやんだ
「おい、聞こえるか...」
「えっ」
「何が?」
「アンデッドのあげる音が、だ...」
音はしない。兵士達は門の上に上がり外の状況を確認した
「ウソだろ...あれだけのアンデッドを敵に回して、ありえないだろ...」
「何なんだよ.あの人達は..」
「あの2人、噂に聞く驚異の新人か...」
「あれでカッパーのプレートとかありえねぇ...」
「あれこそアダマンタイトプレートの持ち主じゃないのか...」
「俺達は伝説を目にしたのかもな...仮面の剣士、いや仮面の英雄だ」
カイトとナーベラルは何の問題もなくアンデッドを狩って行った
「さすがに数が多いですね」
「ちっ!下級のアンデッドごときが愛しきカイト様のお手を煩わせて...」
「なら一掃しますか。ナーベラルさん。一旦空中にいてください」
「かしこまりました。”フライ”」
ナーベラルが空へと移動するとカイトは刀に手をかけ構える
「”飛斬 円舞曲《ワルツ》”」
カイトは自分を中心に円を描くように空を切り、そしてまたそれは飛ぶ斬撃と変わり周りにはびこるアンデッドを一掃した
「お見事ですカイト様!」
「あ、ありがとうございますナーベラルさん...」
その光景を見たナーベラルが興奮気味に降りてきてそれにカイトは若干押されてしまう
「さて、あれが本拠地ですかね」
「そのようです」
「カジット様、来ました」
(聞こえてますよ)
「お初にお目にかかります。カジットとやら。今宵はいい夜ですね」
「けっ!」
「つまらない儀式をするには些かもったいなくはないですか?」
「ふん、儀式に適した夜か否かはワシが決めるのよ。それよりお主は一体何者だ」
「依頼を受けた冒険者です。ある少年を探しています。名前は言わずともわかるでしょう。それと貴方達の仲間に持った人がいるはずなんですが伏せておくつもりですか?それともただの臆病者ですか?」
「ふふ〜ん、あの死体を調べたんだ。やるね〜」
「お主!」
「いや〜バレバレみたいだしさ〜隠れててもしょうがないじゃん。それで〜?そちらさんの名前を聞いてもいいかな?あ、私は”クレマンティーヌ”。よろしくね」
「聞いてもしょうがない気はしますが、ムメイと申します」
「あっ確かにね。しかしどうやってここがわかったのさ」
「別にそれを貴女に教える義理はありませんよ」
「あらそう。ざ〜んねん」
「ナーベ、カジットと他の連中は任せました。自分はあの女を相手にします」
「かしこまりました」
「上と下に注意を。それとナーベラルさんの意思で力を示して構いません。確認は不要です」
「はっ」
「クレマンティーヌさんとやら、自分らはあちらで殺り合いませんか?」
「オッケー」
普通にカイトの申し出を受けるクレマンティーヌ。よほど自分に自信があるのか、ただのマヌケか
「そういやあの店で私が殺ったのってお仲間〜?もしかし仲間殺されて怒っちゃった〜?んふふふふ、大爆笑だったよあのマジックキャスター。最後まで助けが来るって信じてたみたいよ〜?ごめんね殺しちゃって」
「別にどうとも思っていません」
「そうなのちょっと残念だな〜。よくも仲間を!って激昂してくれる人をねじ伏せるのが最高に笑えるのに〜。な〜んで怒んないの〜?つまんな〜いじゃん。実は仲間じゃなかった?」
「別に怒ってないわけじゃないですよ。一時でも一緒にいた人達を殺されたんです。怒りも出ます。激昂までは行きませんがね。まぁでも一応復讐はしとこうかなって程度なんで」
「あっそ。あっそうだ。ちなみにあの美人さんもマジックキャスターでしょ?それじゃあカジッちゃんには勝てないよ。私に勝つのもムリだけどね」
「貴女程度ならナーベでも容易いでしょう。勝負にすらなりません」
「ばっかだな〜。マジックキャスターごときスッと行ってドスッ!これで終わりだよ〜いつもね」
「なるほど」
「この国で私と互角に戦えるのは”青の薔薇”と”朱の雫”に1人ずつ。他には”ガゼル・ストロノーフ”に”ブレイン・アングラウス”ぐらいかな」
「そうですか。おかげで今出た人物も大したことないとわかりました。ありがとうございます。どうします?ハンデはいりますか?」
「はぁ?テメェの仮面の下にどんなクソったれな顔があるか知らねぇがこの人外、英雄の領域に足を踏み込んだクレマンティーヌ様が負けるはずがねぇんだよ〜!」
「御託はいいです。たかだか足を踏み込んだだけの方の言葉など何も響きません」
カイトは玄武を出し円を発動する。しかし刀には手をかけず体の力を抜きただ立っているだけの状態になった
「どうぞ」
「はぁ?テメェ何のつもりだ〜?」
「別に。貴女程度動く必要もありませんから」
「それでどうやって私を倒すってんだアァ”?」
「だからどうぞって言ってるんです。止まっててあげるのでさっさとかかってきてください」
「んふふっ、じゃあ私も動かなかったらどうすんですか〜?」
「それならそれで別に。貴女に自分より下に見ていた者に一歩も動けずに敗れたというレッテルが貼られるだけですので」
「...」
一度沈黙したクレマンティーヌは剣を抜き攻撃を仕掛けようと構える
『グォォォォォォ!!!!』
「ん?」
「んふっ」
「”スケリトル・ドラゴン”ですか」
「せいか〜い。よく知ってるね。魔法が通じないからマジックキャスターには最悪の敵」
「なるほど。あれがナーベが勝てない理由ですか」
「そういうこと」
「浅はかな。まぁこっちはこっちで始めましょう。貴女にこの間合いを詰める手段があればの話ですが」
「さ〜ね」
クレマンティーヌはローブを外した。その下にはビキニアーマーのような鎧をしており、よく見ると鎧には様々な種類のプレートが魚の鱗のように打ち込まれていた
「ふふふっ!」
クレマンティーヌは剣を持つ手とは反対の手を地面につけまるで獲物を狩りに飛び出そうとしている獣のような体制から地面を蹴り一気にカイトに近づいた。そしてカイトの肩目掛けて剣を突き刺そうと伸ばす。しかしカイトはそれを剣を抜かずに防ぐ。クレマンティーヌは一旦距離を取る
「へぇ〜」
「この程度ですか」
「舐めて口きいてられんのも今のうちだかんな〜」
先程と同じ体制、同じ速度で突っ込むクレマンティーヌ。今度も初撃を防ぐカイト
「流水加速」
クレマンティーヌは何かを唱え二撃、をフェイントにして三撃めをカイトの首元に入れようとした。しかしこれさえも防がれてしまう。クレマンティーヌは舌打ちをして再度距離を取った
「はぁ〜。興醒めですね。さすがにこの程度とは。では飽きてきたので決着を付けましょうか」
「あぁ”ん”?テメェムカつくにもほどがあんぞ〜」
「弱者がどれだけほざこうが変わりありません」
「ちっ!まぁ決着をつけるのには賛成。疾風走破。超回避。能力向上。能力超向上!」
また何かを唱えたクレマンティーヌは先程よりも速いスピードでカイトに襲いかかった
(何もしない!?)
「死ねっ!」
威勢を放つクレマンティーヌだったが、世界が反転し一回転。二回転する
「終わりですね。あ、もう聞こえませんでしたね」
クレマンティーヌの首は跳ねられていた。そして死体をそのままにカイトはナーベラルの元に戻った
「カイト様、見事な太刀筋でございました」
「見られてましたか...」
「もちろんです!カイト様の素晴らしい戦いぶりを見逃せるはずがどこにあるでしょうか!」
「あぁ、はい...ナーベラルさんもお疲れ様でした。他の冒険者や衛兵達がやって来る前に死体から持ち物を回収しましょう」
「はっ!死体は実験用にナザリックに持ち帰りますか?」
「自分も実験とエントマさんへのお土産にとも思ったんですが、今回の首謀者として突き出す必要がありますから装備品を剥ぎ取るだけにしましょう」
「かしこまりました」
カイトは神殿に入り地下へ降りていく。そこには魔法陣が描かれておりその中心にンフィーリアの姿があった
「...」
(アインズさん)
(はい。終わりましたか?)
(一応は。でもまだ1つ残ってまして。一度自分のとこまで来ていただけますか?)
(はぁ...わかりました)
するとすぐにカイトの元にゲートが開かれアインズが姿を現した
「どうかしましたか?ここは」
「とある神殿の地下です。そしてこの少年が前に報告した少年です」
「あぁ。どんな魔法具も使えるタレント持ちの」
「えぇ。自分では今彼がどのような状況なのか判断できないのでアインズさんを呼びました」
「そういうことでしたか。これは、精神支配を受けてますね」
「となると原因はこれですかね」
「そうだと思います。”オール・アプレイザル・マジックアイテム”。”叡者の額冠”、それがこのアイテムの名前みたいです。それにユグドラシルでは再現不可能なアイテムですね」
「それじゃあこのままナザリックへ...?」
「そうしたいのはやまやまですがそれだとカイトさんが受けた依頼の達成にはならないでしょう」
「そうですが」
「ですので大丈夫です。”グレーター・ブレイク・アイテム”」
アインズの魔法で叡者の額冠は砕け散りンフィーリアは解放された。倒れる彼をカイトが受け止めアインズが出してくれた毛布で体を覆い背負う
「アインズさん。ありがとうございます」
「いえ。せっかくの実験台がなくなったのは痛いですが彼はカルネ村とも繋がりがある。生かしておいて損はないでしょう」
「それなんですが、一応今回の依頼の報酬としてンフィーリアさんの祖母リイジー・バレアレさんの持つ全てをいただくことになってます」
「それはまた。カイトさんにしては珍しいですね。あなたはそういうのが嫌いではありませんでしたか?」
「そうなんですがね。別に奴隷にしたり人身売買に使うつもりなんてなかったですから。ただ彼のタレントはきっとナザリックの利益となるはず。そう考えたので」
「そうですか。ナザリックのことを考えてくれていたなんて感謝しなければなりませんね」
「感謝するのはこちらの方ですよ。なのでこれは恩返しの一旦だと思ってください。あ、でも人体実験とかはやめてほしいです」
「カイトさんの恩返しでいただいた手前そんなことしませんよ」
「それはよかった。では自分はナーベラルさんのところに戻ります」
「俺もナザリックに戻ります」
アインズは来たときと同じようにゲートを使ってナザリックに帰って行った。そしてカイトも地上に上がり神殿を出た
「カイト様、準備は整っております」
「ご苦労様です。それでは凱旋しますか」
「はい!」
街に戻ったカイト達は組合に呼ばれ2人のランクがカッパーからミスリルに大出世した
「ミスリルとは無礼極まります」
「いいんです。このランクでも得られる情報は多くなりますから」
「それであの2人はどうなさるのですか?」
「とりあえずは2人ともカルネ村に行ってもらいます。その後の細かいことはアインズさんが決めるはずです」
(カイトさん!)
(どうかされましたかアインズさん。何やら慌てた様子で)
(すぐナザリックに戻ってください!シャルティアが何者かに精神支配を受けたようです!)
(えっ...すぐ戻ります!)
(ゲートを繋げます!)
「ナーベラルさん!緊急事態につき一旦ナザリックに戻ります。何かあったらメッセージを」
「かしこまりました」
カイトはナーベラルを残してゲートを潜ろうとするが突然誰かが駆け足で階段を上がってきてこの部屋のドアをノックした
(アインズさん!ゲートを閉じてください!誰か来ました!)
ゲートはすぐに閉じカイトは仮面をつけて平然を装いドアを開けた
「ムメイ様とナーベ様でおられますか!?」
「そうですが」
「私は冒険者組合組合長アインザックの遣いのものです!至急組合までお越しくださいませ!」
「要件はなんですか。自分も暇ではないのですが」
「それは...エ・ランテル近郊に出没したヴァンパイアについてです!」
「っ!」
カイトはすぐにそれがアインズの言っていたシャルティアのことであると認識した
「わかりました。行きましょう」
組合に集められたのはカイトを含めたミスリルのプレートを持つ冒険者4人だった
「まずは多忙であるミスリルの君達が急な招集に応じてくれたことに感謝する。早速本題に入ろう。昨晩エ・ランテル近郊の森でアイアンクラスの7人がヴァンパイアと思しき人物と遭遇し5人が殺害された。生き残りの話では外見は銀髪で大口という印象が強く残っていたそうだ」
(狂乱状態のシャルティアさんだろうか)
「ヴァンパイアは吸血することで絶対服従の配下にできる。やつがこのエ・ランテルに侵入したら厄介だ」
「まさか共同墓地の事件と何か関係が」
「あぁ。昨晩ムメイさんが解決したっていう」
「あの程度でミスリルとは羨ましい限りだ」
「恐縮です。恐縮ついでにそのヴァンパイア、自分に任せてもらってもよろしいでしょうか?」
「なっ!」
「もちろん偵察から本陣まで全て自分の持つ部隊で行います」
「自信があるのか?」
「切り札ならあります」
「...報酬は?」
「それは後で構いません。しかし最低でもオリハルコンは約束していただきたいです」
「オリハルコン?」
「一々力を示すのも面倒ですので」
「なるほど」
「俺のチームも行く!」
「足手まといは必要ありません」
「なっ!お前のような新参者信用できるか!大体そのヴァンパイアだって強いかわからないじゃないか!」
「まぁついてくるならそれでも構いません。しかし、死ぬ覚悟はしておいてくださいね」
その口うるさい男以外の2人は早々に手を引いた。組合長もカイトに任せる方針で会議は終了した