オーバーロード 仮面の剣士   作:てこの原理こそ最強

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8話

コキュートスの観戦のために移動してアインズ達とは別にカイトは一度ナザリックへ戻りシズを連れてセバスとソリュシャンのいる街に来ていた。アインズが用意した”ゲート”を出るとすぐにカイトは”円”を発動してセバス達の感知を行い居場所を特定した

 

「シズさん、どうやら向こうのようです」

 

「かしこまりました」

 

「なんか嬉しいことでもありましたか?」

 

「カイト様とご一緒できて嬉しくないわけがございません」

 

「あ、そうでしたか...」

 

「カイト様は、私と一緒では嬉しくなかったでしょうか...」

 

「そんなことありませんよ。でなければお供をお願いしたりしません」

 

シズは広角が上がるのを必死に抑える。そんな頑張って笑顔を抑えようとしているのをカイトは微笑ましい顔で眺めているのであった

 

カイトとシズは他愛もないやりとりをしながらセバスとソリュシャンの屋敷へ到着した。カイトはシズと手を繋ぎお互いの気配を空気のように偽り玄関を静かに開け、静かに入り、静かに閉めた。そして2人がいる部屋に忍び入るも全く気づかれなかった。そこでちょっとイタズラを思いついたカイトはシズと手を離し机に向かっているセバスの横に立っているソリュシャンの目を両手で覆った。そして気配を戻した

 

「「っ!」」

 

ソリュシャンはその手を跳ね除け立ちがって臨戦態勢を取ったセバスを守るようにして自身も構えた

 

「あ、貴方様は!」

 

「カイト様!」

 

「お久しぶりです」

 

「シズまで」

 

「...」

 

驚いている2人に仮面を取って挨拶するカイトとソリュシャンに手を振るシズ

 

「カイト様、驚かさないでくださいませ!」

 

「すいません。全然気づかれないのでつい...」

 

「本当に驚きました。それこそ例の敵かと」

 

「気配を絶つのと隠密行動には自信があったんですけどまさかここまでとは思っておらず」

 

「私はカイト様と手を繋げて嬉しかったです」

 

「シズ!貴女はまたなんて羨ましいことを...!」

 

「しかしカイト様。なぜこちらに?」

 

「今回はセバスさんとソリュシャンさんの護衛としてきました。アインズさんにも了承済みです」

 

「そうでしたか。しかしカイト様の御手を煩わせるわけには...」

 

「そう言わないでくださいセバスさん。セバスさんを信じてなかったわけではないんですが、やっぱりソリュシャンさんが心配だったので」

 

「カイト様...」

 

照れ臭そうに頰をかきながら話すカイトの言葉に頰を赤くして口元を手で覆うソリュシャン。そしてその2人を見ていつもの真顔に戻ったシズ

 

「かしこまりました。アインズ様がご了承されたのならば私も何も言えません。ですので護衛のほどよろしくお願い致しますカイト様」

 

「はい。来訪だったりの場合は自分らはさっきのように気配を絶って潜伏してます」

 

「かしこまりました。そのときはソリュシャンを優先していただけますか?」

 

「そんな!セバス様!」

 

「それはもちろん。ですがだからといってセバスさんを諦めるというわけではないので。必ず2人共護り切ってみせます」

 

「カイト様...」

 

「ありがとうございます」

 

カイトにとってセバスもソリュシャンもアインズの大事な家族。どちらかを救ってどちらかを見捨てるなんて選択肢は既に持っていなかった

 

「では私は魔術師組合に行ってきます」

 

「わかりました。自分は屋根の上からでも警戒しておきます」

 

「かしこまりました。よろしくお願いします」

 

「じゃあ行ってきますねソリュシャンさん、シズさん」

 

「「行ってらっしゃいませ」」

 

カイトは気配を消して屋根の上に跳躍した。そしてセバスの姿が確認できる一定の距離を保ちつつ”円”で警戒を行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

買い物を終えたセバスは直接屋敷には戻らず街を散策するようだ。その最中とある店から汚らしい麻袋が投げ捨てられた。セバスが通り過ぎようとすると中から手が出てきてセバスのズボンの裾を掴んだ。その腕は弱々しくしかも痛々しいほどの痣と切り傷がついていた。袋の中はその腕よりももっと残酷な姿の少女だった

 

屋根の上から見ていたカイトはセバスと店から出てきた人相の悪いおっさんとのやりとりを見ていた。そしてセバスがその少女を抱き上げ、それを引き止めるおっさんめがけて飛び降りそのおっさんに手刀を入れ気絶させた

 

「セバスさん、ありがとう」

 

「カイト様から感謝のお言葉をいただけるようなことは何も」

 

「その子を見放さないでくれたからです」

 

「...」

 

「大丈夫です。貴方の取った行動は絶対に間違っていない」

 

「ありがとうございます」

 

「とりあえず戻りましょう」

 

「はい」

 

セバスとカイトは一旦別れ屋敷に戻った

 

「お帰りなさいませセバス様...それは一体...」

 

「拾いました」

 

「そうですか。私へのお土産とも思いませんが...それをどうなさるおつもりですか?」

 

「そうですね。まずは彼女の傷を癒していただけますか」

 

「傷、ですか。ならば神殿に置いてくればよかったではないですか」

 

「でしたね」

 

「ソリュシャンさん」

 

「カイト様!」

 

ソリュシャンカイトの声がする方を向くとカイトが頭を下げていた

 

「ソリュシャンさんお願いします!彼女はおそらく酷い暴行を受けていた。しかも長い時間。セバスさんはそれを助けてくれたんです。同じ人間として、人として見過ごせません!だから、お願いです!」

 

「頭をお上げください!」

 

カイトはゆっくりと頭を上げる

 

「理解はしました。私の愛しいお方であるカイト様の御ためならば」

 

「ありがとうございます」

 

セバスは女性を部屋に連れて行きソリュシャンとシズが一緒に部屋に入り少ししてセバスが出てきた

 

「愚かな行為です。”誰かが困っていたら助けるのは当たり前”。私を生み出された至高の御方たっちみー様はいつもそう言っておられた。だからこそ私もそうしてしまうのでしょうか。これは呪いなのでしょうかね」

 

「それの何が悪いのでしょう」

 

「カイト様...」

 

「盗み聞きしてすいません。それができる人はそうそういないと思います」

 

「それは...」

 

「確かに時と場合と人にもよりますけどね。罪人を助ける必要はないとは思いますが、少なくとも今回の件でセバスさんを否定することはできないと思います」

 

「しかし...」

 

「彼女のこれからについてはどうなるかわかりませんが助けたこと自体は間違っていないと思います。セバスさんをそうさせた意思は紛れもない至高の御方から受け継いだ誇りなんですから」

 

カイトは伝えることだけ伝え窓から屋根に上がった

 

その後拾われた少女の容態がわかりそれは酷いものだとソリュシャンから報告を受けた。セバスは治癒系のスクロールを使用することを促すがソリュシャンは人間”ごとき”に至高の御方からいただいたものを使うことを反対。しかしカイトの交渉により渋々それを使用。彼女の体は完全に回復した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ソリュシャンさん、夜伽はいらないと前にお伝えしたはずですが...」

 

「そのようなつもりはございません。しかしシャルティア様との戦闘のときも、その後カイト様が目を覚まさなかったときも私はカイト様のお側にお仕えできなかった...ですので今からでもカイト様を身近に感じたいのです!」

 

「...」

 

ベッドに座るカイトの目の前に立つソリュシャンの手をそっと握るカイト

 

「ど、どうですかね...?」

 

「はい...とても、暖かいです...」

 

「それはよかったです...」

 

「カイト様...よくぞご無事でお戻りくださいました...」

 

「ご心配をおかけしました」

 

ソリュシャンは涙を流しカイトの膝元に蹲った。カイトはそのソリュシャンの頭をあやすように優しく撫でる

 

「さっきもムリなお願いを聞いてくれてありがとうございました」

 

「先程の人間のことでしょうか...」

 

「はい。こっちに来る前にこの街の施設の情報を頭に入れとくべきでした」

 

「私ではあのような者を助ける意味はわかりかねますがカイト様のおっしゃられたことに異論などございません」

 

「ありがとうございます。あとセバスさんを責めないであげてください。彼は正義感の強い方だ。利益云々とは関係なしの行動だと思うので」

 

「仰せのままに。しかしこの件についてアインズ様にお伝えしなくてもよろしいのですか?」

 

「そこら辺は彼女を助けたセバスさんに任せます」

 

「かしこまりました」

 

カイトは撫でるのを止めるとソリュシャンは物足りない顔でカイトを見上げる。カイトはそんなソリュシャンを隣に座るよう促す

 

「ソリュシャンさん。人間に生きる価値などないと思いますか?」

 

「それは...」

 

「正直に言ってもらって結構です」

 

「...恐れながらカイト様のような偉大なお方を除いては”ない”と思われます。人間はみな低脳で脆弱な生き物です」

 

「そうですか。でも自分はそうは思わないんです。人間の命がみな平等とまでは言わないですがね」

 

「さ、作用でございますか...」

 

「意外、ですかね?」

 

「恐れながら...」

 

「この世に平等なんてないんです。どこにでも格差があり不平等だ。でもだからこそ人間の中でも報われてもいい人がいてもいいと思うんです。セバスさんが助けた彼女のように...」

 

「...」

 

「彼女の損傷状態を直で見てくれたソリュシャンさんならこれまで彼女がどれほどの仕打ちを受けたか想像はできるでしょう」

 

「はい」

 

「なんかすいません。やっぱり自分は人間で、同情という感情を捨てれないみたいで」

 

「いえ素晴らしいお考えだと思います。しかしカイト様は今後あのような人間を全て助けるおつもりでしょうか?」

 

「いえ。自分の力不足で全員を助けることはできないでしょう。ですがだからこそ目の前で助けを求めたならできうる限りそうしたいと思ってます」

 

「...」

 

「ですが...」

 

「?」

 

「その行為の結果、ソリュシャンさん達に危害が及ぶなら見捨てる覚悟もできています」

 

「っ!」

 

ソリュシャンににっこりと笑顔を向けるカイト。その言葉に感動と歓喜と愛しさと色々と混じった想いが込み上がったソリュシャンさんは無意識のうちにカイトに抱きつき押し倒していた

 

「ソリュシャンさん!?」

 

「そのようなお言葉、ときめいてしまいます...」

 

「す、すみません」

 

「謝らないでください。しかしこの体の火照り、どう鎮めればよろしいでしょうか...」

 

「自分に聞かれても...」

 

「では、カイト様に鎮めていただきたいです」

 

「なっ!」

 

ソリュシャンはカイトの手を自分の胸元に近づける。カイト達はこのまま一線越えてしまうのかと思いきや部屋のドアがバタンッ!と勢いよく開いた

 

「シズさん!?」

 

「...カイト様、ただいまお助けいたします」

 

「あらシズ。今は私とカイト様が愛を育もうとしているの。遠慮してくれないかしら?」

 

「ユリ姉さん達に報告する」

 

「あら別にいいわよ?どんな拷問を受けようとカイト様との初めてがこの私という事実は変わらないもの」

 

「初めて!?」

 

「...」

 

黙るシズに対してドヤ顔を見せるソリュシャン。しかしそのせいか拘束が緩みカイトは上体を上げよろめいたソリュシャンをお姫様抱っこで抱える

 

「カイト様!?」

 

「お痛はそこまでです。それとそういう行為に関しては自分が心を決めたときに自分からお誘いします。ですのでそれまではお預けです」

 

「むぅ〜」

 

(ソリュシャンさんのこんな反応初めてだけど可愛いな!)

 

「シズさん、こちらに」

 

「はい」

 

ソリュシャンを隣に寝かせるように降ろした後シズを傍らに招く

 

「助けていただいてありがとうございます」

 

「いえ。これも私の務めですので」

 

「そうですか。ちょっと不安にさせましたかね?よっ」

 

「っ!カイト様!?」

 

ベッドに側に立っているシズをさっきと同様お姫様抱っこからのベッドに寝かせるカイト

 

「お詫びに今日は3人で一緒に寝ましょうか」

 

「「っ!よろしいんですか!?」」

 

「ぜひとも。でも粗相はなしです。した瞬間退出してもらいます。いいですか?」

 

「「はい!」」

 

「よろしい」

 

3人川の字で横になり就寝した

 

(...)

 

(...)

 

(...)

 

(ふふふ...)

 

(カイト様...)

 

(ぐへへ...)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セバスさんが助けた少女、”ツアレ”は治療後すぐに目を覚ましセバスの介抱の元屋敷のメイドとして働くようになった。まだ後遺症で会話に難があるようだが問題なく生活できている

 

そしてある日、セバスが買い出しから戻ってきたときのことである

 

「お嬢様、ただいま戻りました」

 

「ご苦労様、セバス」

 

一緒にいたツアレは一礼して去りセバスだけが部屋に入った

 

「アインズ様に報告しなくてもよろしいんですか?セバス様は毎日定時連絡をしておられるはずです。そのときにいくつか言うだけで済むと思いますが」

 

「私は彼女の料理に関する能力を高く買っています。それに、この大きな館に住んでいるのが2人では少々奇異な目で見られるのではないですか?」

 

「偽装工作の一環だと?」

 

「その通りです。偽装の一環までアインズ様に許可を求めてはそれぐらい自分で考えろと怒られてしまいますよ」

 

(セバスさん、ソリュシャンさん、お話中失礼します。訪問者です)

 

話途中でカイトからのメッセージが届くと同時に玄関のドアノッカーが鳴った。訪問してきたのは豚のように太った男であると何やら柄の悪いフードを被った男だった

 

「私は王都の治安を守る巡回使の”スタッファン・ヘーウィッシュ”である」

 

「それで、一体何か?」

 

「ある店で、まぁ彼の店なんだが」

 

「”サキュロント”です。お初にお目にかかります」

 

「彼の店から報告があってね。魔術師組合の印が入ったスクロールを持った人物が店従業員を連れ去ったと。これは誘拐ということにならないかね?」

 

豚の目線は胸元の空いたドレスを着ているソリュシャンのその胸に向けられ、それを気配を絶って窓の外から見ていたカイトはすぐにでも飛び出してその首を跳ねようといった心地で刀に手をやっていた

 

「そうですか」

 

「は?」

 

「そのようなことは執事のセバスに任せています。セバス、後をよろしく。では御機嫌よう」

 

「それではお嬢様に変わり私がお話を伺おうと思います」

 

「まぁ状況証拠的には君が罪を犯したことは確定なんだが、店の方は寛大な処置で済ませても構わないと言ってるんだよ。もちろん、慰謝料や手数料の発生はあるがね」

 

「なるほど。その金額とは?」

 

「金貨で500枚ですかね」

 

「それは法外な。しかし彼女は酷い状態でした。今連れ出せば彼女は死んでしまうかもしれません」

 

「なるほどなるほど。では彼女の治療が終わるまでの間、お宅のお嬢さんを貸していただくというのではどうでしょうかね?」

 

「おぉ確かに穴埋めは必要だ!」

 

その発言があった瞬間、テーブルに置かれた来客者用のティーカップが割れた

 

「なっ!なんだ!」

 

「おやおや申し訳ない。ヒビでも入っていたんですかね」

 

「な、なんだその態度は!」

 

「まぁまぁへーウィッシュ様。では明後日に結果を聞きに来ようと思います。よろしいですねセバスさん?」

 

「かしこまりました」

 

豚とフード野郎は去っていった

 

「いかがされるのですか?セバス様」

 

「もし何でしたら自分が処理しますが...あのクズがソリュシャンさんになんて視線を...」

 

「...少し散歩しながら考えたいと思います」

 

セバスは悩みながら館を出て行った

 

「自分も行ってきます」

 

「行ってらっしゃいませ」

 

セバスに続いてカイトもセバスの護衛のため館を出た

 

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