オーバーロード 仮面の剣士   作:てこの原理こそ最強

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9話

 

セバスさんが街を回っているだけなのに色々あった。複数の男に痛めつけられている少年を助けたり、その場を見ていた腰に剣を携えた青年に稽古をつけたり、その稽古をまた違う男性に目撃されて3人でセバスを追っていた賊5人と戦ったりと。カイトの方も遠くからセバスを監視していた賊の仲間であろう人物を数人片付けていた

 

そしてセバスの”傀儡拳”によって引き出された賊の本拠地に3人は到着した。セバスが正面に残りセバス以外の2人は裏口へ向かったのを見てカイトは屋根の上からセバスの元に飛び降りた

 

「セバスさん。ここは?」

 

「どうやら”八本指”なるこの国の裏社会の組織がこちらのようです」

 

「そうですか」

 

「中には先程館に来ていたサキュロントがいるようで」

 

「それはまた。お手伝いしますか?」

 

「いえ。しかし抜け道がないとも限りません。カイト様にはこのまま外で取り逃がした敵の掃討をお願いしたいのですが」

 

「わかりました。では自分は外で待機します」

 

「よろしくお願いします」

 

カイトは再び屋根に飛び移る。そしてセバスは中への突入を開始した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セバスが突入して十数分、制圧は完了した。やがて兵士が駆けつけ中にいた連中は全員拘束された。解散後セバスはまっすぐ館に戻り玄関を開ける。カイトもセバスに続いて中へ入った。するとそこにはドレスではなくナザリック地下大墳墓のプレアデスとしての格好をしたソリュシャンが真剣な顔で立っていた

 

「おかえりなさいませセバス様、カイト様。セバス様、アインズ様が奥でお待ちです」

 

「なっ...ソリュシャンさん...」

 

「申し訳ございませんカイト様。しかし今回の騒動でアインズ様から仰せられた”目立つ行動は避ける”というご命令に反したと判断いたしました。よってご報告させていただきました」

 

セバスとカイトは暗い表情のままソリュシャンに連れられアインズの待つ部屋に通された。部屋内にはソファに座ったアインズ。そして傍にはヴィクティムを抱えたデミウルゴス。コキュートスも来ている

 

「さてセバス。何故私がここにいるのかの説明は必要か?」

 

「いえ、必要はございません」

 

「どうしたセバス。酷く汗をかいているな。ハンカチなら貸してやるぞ」

 

アインズは取り出したハンカチをセバスの足元に投げ捨てる

 

「連れて参りました」

 

「入りたまえ。セバスの拾ってきたペットたる人間、ツアレ」

 

ソリュシャンがツアレを連れ、部屋に入ったツアレはセバスの横まで進みセバスの袖をキュッと掴んだ

 

「逃げないとは勇気がある」

 

『跪...』

 

「よい。支配の呪文は不要だ。彼女の勇気を讃え目の前での無礼を許そう。まずは名乗るとしよう。私はアインズ・ウール・ゴウン。そこにいるセバスの支配者だ」

 

「は、はい...」

 

「さてセバス。お前には目立たぬように行動しろと言ったはずだ」

 

「はっ!」

 

「にも関わらずくだらない女のために厄介ごとを招いた。違うか?」

 

「私の浅慮がアインズ様のご不快を招いたことに深く反省し、このようなことが二度と起こらないよう十分な注意を」

 

「よい。失態は誰にでもあることだ。セバス、お前のつまらない失態を許そう」

 

「アインズ様...感謝致します」

 

「しかしだ。失態は償わなければならない。”殺せ”」

 

「なっ!」

 

「なんと...おっしゃいましたか...?」

 

「セバス。お前は至高の御...至高の41人に従う犬か?それとも己の意思を正しいと説く者か?」

 

「それは...」

 

「答える必要はない!結果でそれを私に見せよ」

 

「アインズさんそれは!」

 

「カイト殿。これは私達の問題。手は出さないでいただきたい」

 

「くっ!」

 

セバスはツアレの手を振りほどく。ツアレは察したのか微笑み目を瞑って全てを受け入れるようと立つ。そのツアレに対してセバスは構えた

 

「セバスさん!」

 

カイトは”玄武”を出し止めようとするが間にソリュシャンが割って入った

 

「っ!ソリュシャンさん...」

 

「...」

 

「カイト殿。止めるのは勝手だがそれはソリュシャンを斬って捨ててでもすることなのか?」

 

「なんてことを...」

 

当然そんなことできるわけもなく、セバスの正拳突きはツアレに向かって繰り出された。しかしそれはツアレの背後に回っていたコキュートスによって止められた

 

「何を!」

 

「セバス下がれ!」

 

「はっ!」

 

「コキュートス。さっきのは確実にその女を死に至らしめるものだったか?」

 

「間違イゴザイマセン」

 

「ならばこれを持ってセバスの忠誠に偽りなしと判断する。ご苦労だったなセバス」

 

「はっ!」

 

「カイト殿も。何も説明しなかったことに謝罪しよう。すまなかった」

 

「いえ...しかし今後、ソリュシャンさん達を盾にするのはやめていただきたい...」

 

「あぁ約束しよう」

 

「お願いします」

 

「それでは次の話をしよう。セバス達の働きによって十分な情報は集まったと判断した。屋敷は引き払い、ナザリックに撤退することとする。女の処分は少し待て。殺害はないと思われるが絶対ではないと知れ」

 

アインズはセバスとソリュシャンの長きにわたる情報収集の役目を終了と宣言し、"グレイター・テレポーテーション"を使ってヴィクティムと共に一度ナザリックに転移した

 

「...」

 

「...彼女は酷く疲労している様子。少しだけ部屋で休ませようと思います。私が連れていきますがもはや問題は何もない。そうですよね?デミウルゴス様」

 

「そうだね、セバスの言う通りだ」

 

突然の出来事と目の前で起きるさまざまなことに驚きで疲労した様子のツアレを連れてセバスが部屋を出た。それを見届けてすぐにソリュシャンはカイトに近づいた

 

「カイト様...」

 

「謝罪はいりませんよ。全部アインズさんの指示だったのでしょうから」

 

「しかし...」

 

「まったくアインズさんは人が悪すぎる。しかも何も伝えられていなかったし」

 

「申し訳ございません。そちらに関しましてもアインズ様のご命令によりお話できませんでした」

 

「わかってますよ」

 

「ただいま戻りました」

 

そこまで時間がかからないうちにセバスが戻ってきた

 

「どうしたのかな?顔が赤いようだが」

 

「なんでもありません、デミウルゴス様」

 

「その敬称は必要ないよ」

 

「私モ構ワナイ」

 

「はっ」

 

「なら自分にもいらないんですけどね」

 

「恐れながらそれには応じることができません。カイト様はアインズ様同様敬意を向けるにふさわしいお方でございます故」

 

「それはありがたいんですが、自分としてはもっと砕けて話してほしいんですがね」

 

「申シ訳ゴザイマセンカイト様。ドウカ我ラノ忠誠ヲオ受ケ取リクダサイ」

 

「ソリュシャンさんも同じ考えですか?」

 

「もちろんでございます」

 

「好きな人にはもっとフランクに接してほしいのですがね」

 

「そ、それは...」

 

カイトの言葉にソリュシャンは困った表情を出すものの頬は赤くなっている

 

「あはは、冗談です。だからそんな心打つような顔はよしてください」

 

「カイト様...」

 

カイトはソリュシャンの赤くなっている頬に手を伸ばす。その手に自分の手を重ねてうっとりとした目をするソリュシャン

 

「戻った。出迎えご苦労」

 

転移で戻ってきたアインズにすかさず跪くデミウルゴス達。ソリュシャンもうっとりした顔からハッとして真剣な顔に戻り同じように跪いた

 

「立て」

 

アインズの命令で全員が立ち上がった

 

「さてさてデミウルゴス、お前が心配性だということがこれで立証されたな。私はセバスが裏切るなんてこれっぽっちも思っていなかったぞ」

 

「申し訳ございませんでした。それとアインズ様に異を唱えた私のつまらない意見を聞いていただきありがとうございました」

 

「構わない。私にも見落としはある。それであの人間の女の処分についてだったなセバス」

 

「はっ」

 

「あの女性を解放した場合ナザリックの情報が洩れるだったか。ならば記憶をいじった後金を渡して適当な場所に放り出すがよい」

 

「アインズ様。殺してしまう方が確実かと思います」

 

「よせ。何の利益もない殺害行為を行うのはあまり好きではない」

 

「かしこまりました。では私が支配している飼育場で働かせますか」

 

「あー。キマイラを飼っているんだったな」

 

「アインズ様」

 

「ん?どうしたセバス」

 

「もしよろしければツアレをナザリック地下大墳墓内で働かせたいと考えております」

 

この発言にはカイト以外が驚き困惑した

 

「前にコキュートスにも聞いたことがあったがセバスよ、メリットはなんだ?」

 

「はい、ツアレは食事が作れます。ナザリックで料理ができる者は少数。もう少し料理ができる者がいた方がよろしいかと」

 

「確かにそれは私も考慮する点だとは思っていた」

 

「しかし、彼女はナザリックにふさわしい料理が作れるのでしょうか」

 

「ツアレが作れるのは家庭料理のようです。ナザリックにふさわしいかと言われると...」

 

「じゃがいもを蒸しただけのような食事をナザリックで出すことはないと思いますが?」

 

「デミウルゴス様の考えは早計だと言わざるを得ません。家庭料理ができるということは他の料理もマスターできるということ。将来を見ておくべきでしょう」

 

「それなら私の牧場で料理するのに協力してほしいものだね。アベリオンシープのミンチを作るのも大変なんだよ」

 

「はいストップ。二人とも、意見をぶつけ合うのはいいと思いますけどけんか腰になるのはよろしくないと思いますよ?」

 

「カイト様ノ言ウ通リダ。ソレニアインズ様ノ御前デアルゾ」

 

「はっ!アインズ様の前で。失礼しました!」

 

「アインズ様の御前で愚かな姿をお見せしました」

 

「はははは!構わないとも!許す!許すぞ!そうだ!ケンカしないとな!はははは!...」

 

デミウルゴスとセバスのやり取りから彼らの創造主も同じように口喧嘩していたことを思い出し気分が高まったアインズ。しかしそれはすぐに抑制されてしまった

 

「そのツアレという女を見てみたい」

 

「はっ!かしこまりました!」

 

アインズの指示によりセバスはツアレを連れてきた。案の定ツアレは緊張からか、それとも恐怖からか固まってしまっている

 

ふむ、やはり似ているな...よく来たなツアレ。お前に質問する。偽りを言えばそこで話は終わりだ。私が望んだ答えでなくても終わりだ。ではお前にフルネームを聞こう」

 

「ツアレ... ツアレニーニャ・ベイロンです...」

 

出された単語に心当たりがあったのかカイトと目を合わせたアインズ。カイトも確信を得たように黙って頷いた

 

「ではツアレ、お前の願いはナザリック地下大墳墓に行きそこで働くということでいいのか?私の持つ莫大な財を持って逃亡し静かなところで暮らすという手もあるのだぞ?」

 

「セバス様と一緒に...!」

 

「よかろう。聞け!我が僕よ!」

 

『はっ!』

 

「アインズ・ウール・ゴウンの名においてツアレニーニャは保護される。客人待遇として迎えてもよいが、お前の希望は?」

 

「ありがとうございます!でもセバス様と一緒に働かせてください」

 

「それがお前の望みであるか。ならお前をセバス直轄の仮メイドにする。同時にプレアデスにセバスのチームリーダーを外しオールロードオメガを加えてプレアデスへと移行。ユリ・アルファにリーダーを代行させる。それとナザリック地下大墳墓の全ての物にツアレニーニャはアインズ・ウール・ゴウンの名の下に保護したことを伝えよ。それと同時にお前達と共に働く者だ。デミウルゴス、私の決定に異論はあるか?」

 

「何一つとしてございません」

 

「では確認する。この館に設置した兵は全てナザリックへ各自帰還。セバス、ソリュシャンは撤収の準備を進めよ」

 

「「はっ!」」

 

「アインズ様」

 

「なんだデミウルゴス?」

 

「アベリオンシープは雑食性でございましてこの機会に小麦を少々調達したいのですが」

 

「なるほど。セバス、撤収する前に小麦を大量に買い込みデミウルゴスに渡してやってくれ」

 

「かしこまりました」

 

ツアレの処分が決まりセバスがツアレを連れて部屋を退出した。ソリュシャンも撤収の準備のため出て行った

 

「アインズ様、それからカイト様も。あの娘をご存知だったのですか?」

 

「自分が冒険者として活動したての頃に一緒に仕事をした方の中に似ている方がいらっしゃいまして。その方には貴族に奪われた姉がいると聞きました。名前を聞いて確信しました」

 

「そして私がその者が持っていたこの日記からこの世界のことを少しながら学んだのだ」

 

アインズは一冊の日記を取り出す

 

「そして私は恩には恩を、仇には仇を返す主義でな。これによって私が受けた恩は姉に返そう」

 

「アインズ様。一つだけ、お願いしたいことがあるのですが。セバスから送られてきた資料を読んで一箇所行ってみたいところがあります。どうぞお時間をいただけないかと」

 

「構わんぞ。ナザリックの利益のために動くのであろう?行くがよい、デミウルゴス」

 

「ありがとうございます!」

 

「自分とシズさんはどうしますか?最後まで護衛を続けますか?」

 

「いえ、カイト殿には連日仕事を頼みすぎている。なので先に戻り少しであるが休息を。シズ・デルタも同様に」

 

「はっ!」

 

「わかりました。なら先に戻りすね。行きましょうかシズさん」

 

「はい、カイト様」

 

カイトとシズはアインズの作り出したゲートによって一足早くナザリックへ帰還した。そして自室に戻るとそこにはソリュシャン以外のプレアデス達が待っていた

 

「おかえりなさいませ、カイト様」

 

「ただいま戻りました」

 

「シズちゃんもおかえりっす!」

 

「ただいま」

 

「カイト様、ご報告したいことが」

 

「了解ですナーベラルさん。ん?エントマさん?」

 

「カイト様、あいたかったですぅ」

 

カイトがローブを脱ぐと同時にエントマがカイトと手を繋いだ

 

「最近ホントに甘えん坊さんになりましたね」

 

「カイト様にだけですぅ」

 

「それは嬉しいですね」

 

「何あれ」

 

「エントマはカイト様の懐に入るのが上手いのね」

 

「エンちゃんやるっすねー」

 

「ふ、ふふふ...私は冒険者として何日もカイト様とご一緒できているのです。あれくらい...」

 

「その割にはチラチラ見てるけど?」

 

カイトは久しぶりのそのほんわかした空間を楽しむと同時にソリュシャンの一刻も早い帰還を思ったのだった

 

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