ダリオ・エンピオ転生記   作:存在しない誰か

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最初に目覚めたとき、僕はとても目の前の人に安心感を抱いたのを覚えている。この人は僕の母親だ、僕を守ってくれる、そう直感したからだ。


次に意識がはっきりした時、僕は絶望した。




零話 ここは未来の世界

 

 

 

......ここ、どこの()()

 

そう思った時には僕は既に14歳。普通に行けば、間違いなく中学二年生のはずだ。なのに僕は学校に通っていなかった。いや、通っていなかった、と言うのは正確ではない。正確には通う必要がない、と言うべきか。なぜなら、一応大学に通っているから、もっと言えば今講義に出ているからである。

 

僕は前世で言うところの『転生者』に該当する人間で、僕に備わっていた基礎的な知識は小学校の教師達に容赦なく牙を向いた。お陰で所謂飛び級というやつに引っかかり、齢14にしてそうそうに大学卒業クラスの知能指数を叩き出してしまった。同級生からは嫉妬され、大人からは天才児と呼ばれ手のひらを返すようにチヤホヤされ続けたせいで軽い人間不信でもある。

 

僕......いや、俺の本当の名前は加山 みのり(かやま みのり)。女の子のような名前をした、れっきとした男だった。それがなぜ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。この『僕』というのも、女に生まれ直させられた俺が自身を『私』と呼ぶ事がはばかられるだろうと思慮しての事である。

 

そもそも俺が今いるこの世界は───

 

 

「ダリオ君。ダリオ君?...........ダリオ・エンピオ君!」

「あ?......あ、あぁ、はい」

 

「ったく......講義に出るのなら、私の話は聞きたまえ!」

「あぁ...........はい、すみません」

 

 

講義が終わるまで待とう......

 

 

 

講義が終わり、帰路を急ぐ俺。女の子の体に傷がついてしまったら大変だから、しょうがないね。

 

......そう。何を隠そう、俺はダリオ・エンピオという名の()()()()()、繰り返す、もう一度言おう。()()()()()転生したのだ。確かにカラオケ行った時とか高い声出してぇなとか思ってはいた。だがその最後が女として転生なんて、情けないにも程がある。俺に女体化願望は無ぇ!

 

そもそも女の子に『ダリオ』なんて名付けるやついるのか?居たとして、そいつは女を男として認識する病でも患っていたのか?生まれて初めて名前を呼ばれた時、心の中でそう突っ込んだ。勿論、その時は都合の良い笑顔で愛想良く微笑み返してやったが。

 

......っと、そうこう言っているうちに我が家へ着いた。エンピオ宅、それは中流階級の民家にしては酷く豪勢な造りをしており、お世辞にも俺には似合いそうにない。前世が会社員だった俺には不釣り合いだった。

だがそれでも、ここは帰る家な訳で。

 

「ただいま」

「帰ったのか?ダリオ」

 

親父だ。正確には二人目の俺の親父になる。前世も今世も、父親には恵まれなかった。どうしてそう言うのかって?昼間に帰ってきたのに家にいる時点で、察しも着くだろう。コイツ、クズすぎて会社を首になったうえに俺の母親からも見捨てられているのだ。つまり稼ぎがない状態であり、今こうしてコイツが酒を飲んでいられるのはコイツの更に親父さんが遺した莫大な遺産があるから、それを切り崩しているからである。

 

「帰ったら返事ぐらいしやがれ!」

「帰ったよ!うるさいなぁ......」

 

おっといかん、生きてきた時間が俺より短いやつに大人気なく怒りそうになってしまった。いや、コレを前にしてブチ切れない方がおかしい。コイツを相手しててキレなかった奴は俺が直々に聖人君子認定したいほどに。

 

玄関に入って靴を脱いだ俺は、足早に自室へと走り込む。昼間っから酒が入っているのが確定的に明らかなのは確実、だる絡みされた時点で股間を蹴り飛ばして逃げたくなるほどウザい。

階段を駆け上り、ドアに付いた鍵を閉めた事でようやく一息つく。部屋に立て掛けられた姿鏡を見遣ると、そこには茶髪ロングの綺麗な女の子がいた。14歳という年相応に可愛い、流石は俺だ。

 

ベッドにどかっと倒れ込むと、今日の分の疲れが一気に吹き出してきた。というか、いつもの事であるが。

 

一応、この閉鎖的な状況を打開する手立ては幾らかはある。実用に耐えるものだ。

 

まず一つ。ありったけの金を持って家出する。学生の家出みたいな軽いものじゃない、ガチの家出だ。俺は家がこんなだから帰宅するのを嫌って、色んな場所を歩き回った。お陰で列車を使った旅を出来そうなまでに土地勘が成長した。......まあ、土地勘が成長するものかはさておき。このプランにはデメリットもある。親父が憤って俺を探してくる可能性だ。後顧の憂いを断つためにもあまりこの方法はとりたくない。

 

二つ目は簡単、とっとと単位取って家出て、どこか適当な企業に就職する手だ。だがこの方法は結構危ない。住んでいる場所から一番近いのはローゼンタールという特に規模の大きい企業の一つなのだが、この世界ではどうやら企業戦士としての人員よりも遥かに()()()()としての人員の需要が大きいらしい。企業へ就職するという事は、すなわち自殺志願のようなものだ。

 

三つ目。最後にして最も危険、しかしリターンが大きい方法だ。親父を殺し、家を乗っ取る。生まれてから今日まで親父の人となりを観察してきたが、あまりのクズっぷりに人は寄り付かず、結果としてぼっちらしい。俺も親父のせいで友人が出来なかったので、これは僥倖とばかりに殺してしまえば、誰にもバレずに家と財産が丸々と手に入る。最高なラストを飾れるという訳だ。

 

「あ〜あ、クレイドルに住みてぇなあ......」

 

考えるのが嫌になって、腕をだらんと伸ばして呟く。

 

クレイドルとは、1機につき一千万から二千万人もの人数を収容できる、巨大な飛行プラットフォームである。

 

もう一度言おう、飛行プラットフォームである。

 

最初に聞いた時、俺もン?と首を傾げたのを覚えている。一千万人も運べる飛行機?そう思った。小学生の頃だった。教員に頼んでクレイドルの資料を見せて貰った時、俺は絶句した。

 

『コレ、宇宙船じゃん!』と叫んだのを覚えている。

 

俺も生きてきて合計38年。途中でリセットされたので、前の世界で生きていた時間はだいたい24年。24歳で俺は可哀想に、事故でこの世を去ったのだった。人間、頭空っぽになれば言葉なんてスイスイっと覚えられるんだなあ、とも思った。この14年間で俺はドイツ語をマスターした。

 

なぜドイツ語?と思うかもしれない。それは俺のいる場所に起因する。転生した俺がいた場所は文字通り欧州。ドイツに生まれ落ちたのだ。ちなみにこの世界の公用語は日本語と英語らしく、英語は無理だが日本語が話せるのでヨシ!だ。ドイツ語はかっこいいから覚えたというのが本音だ。

 

......話が脱線してしまった。とにかく、そのクレイドルに住む人間はみんな上流階級の人間だけらしい。俺の親父は中流階級としては非常に金持ちであるらしいが、人間不信から誰とも関わりを持とうとしない。実の娘である俺でさえ、時には追いやろうとする程だ。

 

クレイドルに住めれば、結果として安定した生活、安全な未来を約束されるし、何より空気が美味いと聞く。日本の中でも特に自然の多い地域で生まれ育った俺にとって、地上の空気は汚れすぎていた。一部の土地ではコジマ粒子とかいう危険な重金属物質が漂っているから近付けないほどに。更にクレイドルは20編隊、1編隊につき5機なので合計100機しか建造されておらず、そのうちの殆どが埋まっていると言う。つまり何が言いたいのかって?

 

こんな環境に生まれた時点で詰みなんだよチクショー!

 

そう思ってすぐ、答えは決まった。

 

「よし、殺そう」

 

思い立ったが吉日、親父を抹殺する。幸い護身用に拳銃を買い与えてもらったことがある。コレにクッションを密着させて撃つとガスが放出されず、消音されると聞いた事がある。コレならやれる!そう確信した。

 

決行日は明日。平日ながら俺は講義がない日、尚且つ街でデカい祭りが予定されているという。俺も親父も参加するつもりは毛頭ない。親父にもし参加する気があったとして、それが達成されることはない。なぜなら俺がこの手で殺すから。

 

今日は久しぶりに気持ちよく寝れそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外が騒がしい。俺はいつの間に寝てしまったのか。はっと起き上がって時計を見れば時刻は11時。まだ祭りが始まったばかりだ。1階からテレビの音が聞こえてくる。まだいる。起き上がって音を立てないようにクローゼットの戸を開き、一番下に収納されている服をどかして手のひら大の箱を開ける。

 

RH-50R。ローゼンタール社製の、女性でも扱いやすいと評判の護身用拳銃だ。弾倉の中に12発ぶんの弾丸が入っているのを確認し、そっと懐にしまう。おっほほ、自分の体ながら色々と柔らかい。

 

そういや、今日は何の祭りだったかなぁ。祭事としか聞いていないから、何が行われているのか全くもってわからないけど、計画に支障はない。クッションを手に階段を下りる。気分はメタ〇ギアソリッドのスネ〇クだ。

 

父親を手にかけるというのに、気分はウキウキだった。勿論俺に殺人の嗜好はない。だがこれで親父とおさらばできると考えると、どうしても笑みが浮かんでしまっていた。

 

階段を降り切り、リビングのドアを少しだけ開ける。親父が昼間っから酒を飲みながら新聞を読みながらテレビを見ている。器用すぎかよ。

 

運良く後ろを向いているから、音を立てない限りこちらには気が付かないはずだ。拳銃を構えてクッションをあてがう。

引き金を引くと、爆音を鳴らしながら弾丸は親父の頭を貫いた。

 

ちょちょちょ、ちょっとォー!?

 

音鳴るのかよ!?映画嘘じゃん!嘘つき!騙したな、信じてたのに!!人を殺した実感よりも先に計画の露呈を恐れた俺は急いで死体を隠すため、親父の所持品であるトランクに死体を詰め込む。大きさ的に入らないかな、とも思ったが折り畳めば案外すんなりと入ってくれた。もの言わぬ親父を処理するために車に乗り込み、カーパルスまで走った。

 

 

 

 

カーパルスは、クレイドルが飛ぶために必要な主要アルテリア施設の一つである。数十ある施設の中でも最も重要な一つであり、それ故にテロリストからの防衛の為、一つの施設に必ず一人のリンクスが当たるという。

 

リンクスって何?最初に聞いたときは俺もそう思った。歴史の授業を受ける時に必ずと言っていいほど出る単語が『リンクス』及び『ネクスト』であり、リンクスはネクストを操縦できる、言わばパイロット。ネクストというのは10メートル位の大きさの、巨大人型兵器だそうだ。俺が7歳の時に国家解体戦争が、12歳の時にリンクス戦争が勃発し、リンクスはその数を大きく減らしたらしい。

なんでも、リンクスが激減した理由の一つに『アナトリアの傭兵』という男が深く関わっているらしく、その男を倒すために四人ものリンクスを投入し、だが敗れ、最後にはネクストよりも強い力を持つ何かをぶつけ、それでも負けたらしい。傭兵はその後相棒と一緒に姿を眩まし、彼らの住んでいたアナトリアは崩壊したそうだ。えっ怖。

 

 

 

 

そんな事を回想していると、目の前に大きな海が、そして巨大な橋が見えてきた。ローゼンタール本社のあるドイツとアルテリア・カーパルスとを繋ぐ巨大な橋だ。俺は死体を捨てた。愛情なんざ湧かなかった。

 

 

ただ、後になって人を殺した虚しさだけが残った。

 

 

 

 

そして、物語は10年後に移行する。この時ダリオ・エンピオは24歳、前の世界からの年齢も加算すると、実に48歳だった。

 

 




こんにちは。こんなんでいいのか、俺。

ダリオ・エンピオのTS転生小説描きたくなったんで投下しました。プロットも何も考えてない、勢いだけの投稿です。続くかわかりませんが、続いたらその時はよろしくお願いします
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