汚い子供を拾ったので虐待する事にした(鬼滅の刃) 作:つヴぁるnet
やぁ、やぁ、諸君。
今日も元気に虐待に励んでるかな?
自分も尊敬する兄弟子に見習って虐待の斬れ味を高めているところだ。
さて、まず一つ朗報だ。 あれから半年以上が経ったが子娘の無表情な仮面はとうとう割れてしまった。 やはり残虐非道な虐待に耐えれず苦しみの声を上げるようになり、いつしかその顔は怒りによって赤く染めたり、また歪ませたりと感情の処理が追いつかないでいた。 年相応と言うべきだろう。
ふん、ここに来る前に心を壊したつもりでいたのかな? いはやは、馬鹿なやつだ。 壊れた心さえもこちらの虐待で悲鳴を上げてしまうというのに、無表情を突き通そうと無駄なことに力を入れていたな。
しかしこちらも藪蛇と言うやつか、少女は次に言葉を交えてこちらの素性を暴こうと動き出し始めた。 見るだけでは無く、喋ることにも力を入れ始めた。 まぁ、こちらを暴く事については別に構わない。 何故なら暴いたところで残虐非道な虐待好きとしか答えは出ないだろ。 それを知らないでまた無駄なことに労力を費やすとは随分と可哀想な限りだ。 別に止めやしない。 好きなだけその口を開いて見るといいさ。
しかし子娘は割れた仮面を付けたままでも言葉を交わし、こちらの弱点を暴こうとする姿勢は今も尚続く。 どうやら割れてしまったのならと開き直ったのだろう。 しかし馬鹿なやつだ。 無表情の仮面を割ってしまった衝撃と動揺は大きく、こちらと会話するときはまだ情状不安だ。 そんなの口撃にもならないがせめて彼女なりの抵抗だろう。 だが紛いにも無くそれはこちらに対する虐待の反撃のつもりなのだろう。
ならそれに答えてやるのが礼儀。 その抵抗すら押しつぶしてやろう。 あちらも主導権を渡すまいと頑張って無表情を取り繕うとしているが、割れた仮面は元に戻ることもなく、全くもって立て直しが効かない。 ひどく焦りが見えている。 まだまだ甘々ちゃんだな。
まず虐待する時は冷静に感情を保ち、そして手札や隙を晒さない事が基本だ。 内心は動揺もして表情に出さない事だ。 鬼狩りも同じ
無論、虐待の反撃する時もそれは同じだ。 だがこの子娘はそれが出来ていない。
「〜〜ッ!」
そして当然のように上手く行かず感情の処理が追いつかない故か、いつものように顔を赤くして怒っている。 まだまだ甘い子娘だ。 やはり言葉を交わし合う虐待は苦手らしい。
さて、そうやって上手くいかない度に子娘は最後の手段として大胆な虐待返しを行う。
まずこちらに駆け寄り、足元を攻撃するように羽交い締めにしてくる。 身長差ゆえに絞め殺そうとする部分は腰だが鬼殺隊として鍛えてるこの体にその程度痛みなど感じない。 まぁ恐らく小娘も無駄な攻撃だと分かっているだろうが、無抵抗には終わらないと行動で示しているだろう。
その心意気は良し。 しかし安易に近づくならば覚悟してもらおう。 こちらは反撃として子娘の頭に手を置き、そしてガシガシとその頭を弄ぶ。 しかしただ頭を掻き乱すだけではなく押さえつけるようにだ。 背伸びして同じ土俵に立ち、位置関係を届かせようとする安易な考えは見通しているぞと知らせるようにだ。 どうやらその思惑がバレたことに驚き、少しビクッと体が動くが、小娘は悟らせないように怒りに顔を赤く染めて、さらに力強く腰を絞め殺そうとする。
やれやれ、物理的な虐待返しをしても無駄な事がわからないらしい。 まだまだ甘ちゃんな小娘だ。
なら高い授業料だ。 生意気な小娘を無理やりわからせてやろうと思い、小娘の両肩を押さえながらそのまま後ろに倒れこむ。 小娘は突然の動きに驚き、対応できず一緒に倒れこむ。 そして腹の上に倒れてしまった事に対して目を見開いて呆然としていた。 くくっ、そのまま呆けて良いのか? 無防備に腹の上に倒れてしまうなんて、獲物として最高で最悪な位置だぞ?
「!、!!」
どうやら今になって最悪な状況に気づいたようだ。 しかし遅すぎる。 小娘が絞め殺そうとするなら、こちらは仕返しとばかりにこうしてやろう。 腹の上で動けず苦しみ悶えてしまうがいい。
「ぁ、ぁ…」
小柄な体はグッと腕で締め返してやった。 このまま力強く小娘を折ることも出来るが、そんな面白くない事するわけがない。 鬼と同じような三流以下の虐待なんざ誰が真似をすると言うのだ。 一流の虐待とは長く長く苦しめて絶望の底に落とし込める。 だからグッと腕に力を込めて、絶対に解放しない意思を見せつける。 この虐待から逃さないことも教える。 そして重なり合う高い体温だが、恐怖を刻む事に躊躇いのない冷徹な心の温度にも苦しみ、そして後悔しろ。 小娘が虐待返しを行おうとしたのはこんなにも惨虐非道な虐待好きの人間だと言えことを。
「………」ぎゅ
なるほど、あくまで抵抗を続けるか。
小娘に逃げるなど解答になく、どこまでも反撃の手を緩めない。 今は手では無く腕だが、こちらを絞め殺そうとする腕を緩めない姿勢、くくっ、やはり面白い奴だ。
ああ、そうとも。 そうでなくては面白くない。 無表情の仮面を割られたからと言って簡単に心も割れてしまってはその程度の生き物だ。 それに小娘は一度こちらの虐待を押し返したのだ。 ならば無表情の仮面が割れた程度で終わる訳がないだろう。
ならば虐待返しには、新たなる虐待で応えてやる。
「!?」
足腰に力を入れてグッと小娘を拘束したまま体を起こし、胡座をかいて姿勢を整える。 驚いて身がすくんだ小娘の脇に手を入れて持ち上げ、背を向けさせるとそのまま胡座の中に落として拘束した。
驚いてる暇なんて無いぞ?
こちらはこれで虐待だ。 翡翠色のした気味の悪い小さなかぎ爪…なんてモノでは無い。 ただの櫛だ。 殺傷力は皆無な道具だがこれで頭を引っ掻いてやろう。 物理的な虐待は三流以下と言うが、それは味だけも色も無い鬼がやるからだ。 物理的な虐待と言えども、上手くやり方を考えればとても効能なとなる。
まずその一つとして櫛だ。 頭上から下に撫で下ろし、小娘の髪を整える。 ボサボサになったら汚いからな。 綺麗に念入りに整えてやらう。
しかしまたぐちゃぐちゃにしてやるがな。
綺麗にして、崩して、また綺麗にして、また崩して、またまた綺麗にして、またまた崩す! 好き勝手に弄ばれ、それを何度も繰り返されるとそりゃもう精神的に苦痛しかない。 しかも胡座の中に落とされ、身動き取れなのだから耐えるしか無いだろう。 だが残念! こちとら徹底的にやる事を心掛けてるからな。 時間をかけてじっっっくりと、髪を手入れさせて貰おう。 そして惨たらしい虐待の手によってまたその髪の毛はめちゃくちゃになるだろう。 女性の命である髪の毛が虐待好きな人間に管理されている現状に絶望すると良い。
「……」
しかし、まだ耐えるか。 なるほど。
本来なら無表情の仮面が割れたその表情は絶対に染まった色に歪む筈だが、なかなかの精神力だ。 ならばその精神力すら食い破ってしまう虐待の日々に耐えれるのか見ものだな。
だが……
本当は分かっていないだろうな。
まず子娘は知らないだろうが、小娘の体を腹の上で羽交い締めにしたり、後ろ髪を手入れしたりとするこの手だが、実は沢山の鬼の頸を落としてきた手である事を。 もうすぐ50体にはなるだろうこの手と腕は三流以下の虐待しか出来ない憐れな鬼を沢山葬って来た。 中には虐待に向かない怪しい血鬼術を使う鬼すらもこの手で簡単に斬り落としてやった。 だからそのような手や、指一つ一つに、何度も触れられている事を、小娘は知らない。
いやはや、知らぬとは恐ろしいものだな。
くくっ、本当は容易なんだぞ? 子娘を簡単に絶望に落とすのは。 だが一流の虐待とは逃げ場を無くし、救いを奪い、希望を絶やしてしまう。 それを着々と時間を掛けてやるからこそ絶望の量は大きい。
直ぐに命を取る虐待しか出来ない憐れな鬼なんかよりも、それはたしかに恐怖だ。 何度もこの手に触れられている意味すら、今も分からない未熟な子娘に笑いが止まらない限りだ。 しかしあまり表にその笑いを出すな。 ちゃんとその時が来る。
そうとも。 笑う時はその事実を知ったその時だ。 この子娘の無表情の仮面すらも取り繕れないほどに表情を歪ませた時だ、盛大に笑って貶めてやろう。
その時が訪れると思うと…
楽しみで仕方ない。
♢
喋る。
笑う。
語る。
それが出来ない私の心。
ほんの少しだけしか秘められてない私の心。
しかし彼はお日様の下に照らしてくれた。
地面深くに落ちた心の種を掘り起こし、心の種は暖かな日の元に埋め直して、心の種に肥料と水を注ぎ、心の種が元気になるような恵みを与えてくれた。 そして半年掛けて芽が出て、口が開き、そして稔る。 彩り始めた私はあの頃よりも豊かになった。
だから何も言われずとも、自分がやりたい事に意思を持てるようになった。
こんなにも、簡単に心と体は動けるんだ。
でも、まだ喋るのは苦手。
でも、行動に示すことは出来るようになった。
だから…
「カナヲ? どうした、突然?」
「……このまま」
私と身長差がある彼を抱きしめる。
急に恋しくなったから腰のあたりをギュッと腕で捕まえて、そんな彼に「甘えたがりだな」と笑われる。 嬉しいのか、恥ずかしいのかわからない私は顔を赤くする。 でもその腕を解放することなくしばらくそのまま。 すると彼は私を抱きしめたまま後ろに倒れて、畳の上に寝そべる。
彼のお腹の上に転がる私を見て…
「カナヲはやはり可愛いな」
「ぁ…」
先ほどよりもギュっと強く抱きしめると彼は畳の上で軽く右や左に転がり、私を可愛がるように揺さぶる。 お陰で左右に部屋が回るように見えるが、私を抱きしめて楽しそうに喜ぶ彼の顔だけはよく見えるからそれにつられて笑みがこぼれる。
しばらく戯れているとボサボサになった髪の毛に気づいた彼は私を抱きしめたまま上半身を起こし、座布団を引き寄せその上に乗ると胡座をかく。 そして私の脇のあたりに手を滑り込ませた彼はヒョイっと軽く持ち上げた。 少しくすぐったくて身を捩り、その様子に笑う彼の胡座の上に私を座らせ、体格差故にすっぽりと収まる。
「カナヲはまだ小さいな」
「…うん」
別に小さくても良い。
だってここは私のお気に入りの位置。
彼の真ん中に座る事で一番の安心感を得る。
体が大きいとそれはできないから、まだ小さくていい。
「このまま手入れするよ、カナヲ」
「!……うんっ」
それは自然と、嬉しそうに声を出していた私に彼はくつくつと笑いながら、櫛を取り出して髪の毛を手入れする。 櫛は綺麗な翡翠色をしていて、私がこの家に来る前はこんな綺麗な櫛を持っていなかった。 しかし以前に『胡蝶』って名前の綺麗な女の人がこの家に来て、私を見てこの櫛を恵んでくれた。
しかしこの女性は私を文字通り無茶苦茶に可愛がったりと彼以上に距離感がとても近く、いつまでも「カナヲは可愛いから!」とはしゃぎながら何度も抱きしめられていたのは記憶に強い。 途中鬱陶しく思った彼にそのはデコピンされて、額を摩りながら彼に文句言っては噛み付いたりと騒がしい人だった。 けれど私にとって豊かに感情を振る舞えるその女性に憧れを抱いた。
しかしそれ以上に私が得たものがある。
それは彼とその女性の二人から挟まれるように抱きしめられていた時、とても心が暖かくなる事だ。 しかしそれとは別で私を抱きしめた女性は彼からまとめて抱きしめた時、その女性は私よりも嬉しそうに笑みを綻ばせていた。 子供のように心の内を抑えきれなくて仕方ない喜び方で、抱擁されると幸せそうに彼の腕の中へみずから埋めようとするくらいに。
でもこの幸せはただ抱きしめるだけのひと時のみではない。
食卓を一緒にする時も私を真ん中にして左右には二人が座り、三人で楽しそうに食事を取る日常。 また暖かな陽気の中でお昼寝をする時も私を真ん中にして左右に二人が寝転び、川の字で幸せを挟み合う日常。 また町中で買い物を楽しむ時も私を真ん中にして、右手と左手それぞれを掴んでくれる日常。
二人の男女が幼い私を守ってくれる。
だからこんな言葉が浮かんだ。
それは愛情。
「…」
だから世間知らずな私でも少し分かることがあった。
もしあるとしたら…
これが本当の【親】なのだろうか?
失敗したら冷や水に打ち込まれる仕打ち。
失敗したら殴られて蹴り飛ばされる痛み。
失敗してら鈍器で叩かれ叩かれる理不尽。
これが普通なんだと強引に理解して、心を壊して生きて行くことを親に強要させられた地獄の生活。
「…」
ガラリと変わった生活の中で私はそれを何度も考えた。 定期的に刀を持っていなくなる彼が帰ってくるまで一人で過ごしながらも考えた。 たまにその女性と一緒に彼の帰りを待って、そして彼が帰ってくると「おかえり」と一緒に迎えながらも考えた。 彼の事を好いて仕方ない女性の就任祝いの中でも考えた。
私って、彼のなんだろうか?
そして私がこの家に来て一年。
だから一つ、こんな事が気になり始めた。
「あの……聞いていい?」
「どうした、
私の髪の毛を梳かしていた彼は手を止めて耳を傾ける。
「あの、私はあなたの……何ですか?」
「んん? …と、言うと?」
「ええと…血は繋がってないから……その、私とあなたは…」
「ああ、そう言う事」
縁側に座って本を読んでいた彼はそれを閉じながら立ち上がり、畳の部屋で洗濯物を畳んでいた私の前に座る。
「うーん、そうだな。 自分はカナヲの保護者と言う立ち位置のつもりであるから、同居人と言う線では多分無いよね。 だから世間的には見て…と、言ってもそこには個人的な見解はあるよな。 だから敢えて言うなら自分はカナヲの"父親"かな?」
「…お父さん?」
「そう。 血の繋がりは無いけどでもカナヲに対する愛情は有る」
「それは、そう…決めたの?」
「いや自分じゃ無いね。 カナヲも知ってるけどあの人が言ったんだよ。 頭に蝶々の簪付けている頭の中蝶々でどこ風蝶々を纏う小煩い蝶々の小娘」
「う、うん…」
胡蝶さん、散々な評価だ。
仲は悪くないのはわかるけど…
「そしたらアイツが『親娘みたいだわ!』ってはしゃいでたろ? 少し煩かったけど、でもそうなのかなって思った」
「…」
「でも茶化したつもりは無く、本当にそう思っていたからこそ出たその言葉を聞いて、スッと入った気がした。 自分はカナヲの父親代わりなのだろうか?…と、そう自分で確認して君と過ごした。 それでわかった。 半分ほどたけど無意識にそうして来たんだって」
「……」
「なぁ、カナヲ」
そういうと彼は私を抱きしめる。
いつもは私から縋るように抱きつくのに、今日は逆のように感じた。
大事にしたいと言う気持ちの抱擁だった。
彼は私の頭を優しく撫でながら言葉を続ける。
「君はとんでもない悪環境で育って来た。 それは別に珍しい事じゃ無い。 でも愛情を知らないで生きていくのはダメだ。 自分は…孤児だったけど、鱗滝先生は親代わりに、みんなの兄弟子はみんなの兄代わりとして、血の繋がりなくても家族のような愛情を貰って、それで強くて優しい剣士になれた。 カナヲもそうなってほしい。 だから自分はカナヲの"親代わり"として愛情を注ぐ」
「…はい」
「だから、今日から自分の事は"父さん"って呼んで欲しい」
お父さん。
それは『親』と言うこと
その言葉に恐怖心しかなかった。
私の面倒を見てきた親は心も体も凍てつくような痛みしか伴わない世話を…いや虐待ばかりをしてきた。
渡されたモノをその日に売れないと頭から冷水に溺れさせられ、髪を掴んで壁に投げられる。 それが私の親だった。
だから『親』って言葉に対してあの時の記憶が恐怖を掘り起こす。
けれど、この人との半年は凍てついていた私を溶かして、解して、それで、それで…
「それとも、こんな父親は嫌かな?」
「!」
彼は少し残念そうに笑う。
その顔が嫌だった。
「……いです」
「?」
「嫌じゃ…ないです。 私は……あなたが、父さんで、いて欲しい…」
「!」
意思を持って願う。
言葉を発して言う。
そのやり方も、力も無くなっていた私に、それをもう一度教えてくれた彼に向かってしっかりと伝える。
「けど………す…」
「?」
「…す、少し……くすぐったい…と、言う…か…」
「!? ぷっ、あははは!! ふふ…そうだね。 でも愛情はそんなもんだよカナヲ。 そのくすぐったさに耐えれないで笑みんでしまうんだ。 それは間違いではない。 自分もそうだったから。 それに……」
「?」
「カナヲは可愛いけど、笑うともっっっと可愛いからさ、くすぐったい時は笑ってね」
もう一度抱きしめる私の大事な人。
今日こうして父親となってくれた人。
これまでにないほどと言える初めての暖かさを感じて、分かってしまう。
ほん当の、本とうの、愛じょうが
あらためて、はじまったんだと
おも、えるから、それが
うれ、しから、いてついた
わたし、こおりは、めから、しずくとなって
こぼれおちて、それは、とまらなくて
とまらなく、て、とめれなくて
とめたく、なくて…
とめるのは、もう、できなくて…
「こんな父親だけど、カナヲを大事にするよ」
「うん…うんっ、うんッ…! うん…ッ!」
そこに躊躇いも、恥ずかしさも無い。
嬉しさと恋しさ全てを隠すことも忘れて…
わたしは彼を『お父さん』と呼んだ。
あと翌年に『お母さん』が出来たのも余談。
彼の言う通り、落ち着きのない蝶々の女性。
もちろん血のつながりはない。
けれど、暖かい私だけのお母さんも一緒。
…
…
___ピーーン
___パシッ
「……裏」
「どうしたんだい?」
使うはずもなかった銅貨を思い出して、弾いてみる。
「ううん、今日の皆んなのおやつを決めたの。 表がお饅頭。 裏が八つ橋」
「そうなの? 本当は裏が出るまで投げようとしたんじゃないの?」
「え?」
「カナヲが八つ橋好きなの知ってたけど、それ以上になにかと譲れないようなそんな香りがするよ」
「…私のお父さんとよく食べたからね」
隣に座る彼の耳飾りが揺れる。
それに触れてると隣に座った彼は少しくすぐったそうにする。
「くすぐったいよ、カナヲ」
「ふふ、ごめんね」
あの頃の虐待よりも虐待的な愛情。
それは私に深く刻まれていた。
いま自然と笑えることが何よりも証拠。
本当の愛情をこうして知った。
「ありがとう、わたしのお父さん…」
あの人が付けていた、狐のお面を手に持つ。
今の私と同じ表情で睨めっこ。
だって、狐のお面も私と同じ。
笑っていたから。
おわり
炭カナって事かな?
つまり尊さに苦しませる虐待という事で。
ではまた