材木座義輝の朝は早い、将軍が仮住まいとして確保してくれた宿にて目を覚ますと朝食を取り城へと向かう、向かう先は正面入口ではなく従業員や兵士用の通用門だ。
「お!勇者殿!今日もよろしくお願いします、では今日は城の窓ふきをしていただきましょうか」
将軍が色々手配してくれたおかげで材木座は『まだ覚醒していない勇者』として迎い入れられていた。
城の雑用をしているのは名目上この世界に慣れる為といざという時に城の構造を覚え防衛をしやすいようにということであるが実際はボロが出ないようにという将軍の配慮である。
下手に戦闘訓練等をすると低い数値が露見してしまい面倒ごとになるのでとりあえず慣れるまでこうやって働くことになったのだ。
比企谷達にちゃんと話すべきだったのだが、初めて城内で比企谷達に遭遇したとき
「あ!材木座!お前もきてたのか!」
材木座はちょうど将軍と一緒に城内での雑用について色々教えてもらっているところだった
「うむ!当然だな、既にこの城の将軍殿とはもはや顔見知りの状態だ。もはや全権を掌握してもいいといったところだな」
「まあ、彼はちょっと変わった経緯で召喚されたものだから特別なのじゃ」
と、将軍もアシストしてくれる
「将軍と・・・んで今何やってんの?どうみても掃除にしか見えんが」
「ふ!甘いな八幡よ、我が何故訓練もせずにこのような雑用をしてるか分らないか?」
「まったくわからんな」
「ほむん、これは能力覚醒の為の下準備よ!このような動作一つにしても魔力を併用して行うのだ、そして!この世界に溶け込み情報を集めているのよ!」
と講釈を垂れる、将軍もいるので説得力は抜群、そのためすっかり信じ込む比企谷達
「俺は詳しくないからわからんが、こういう時お前の知識が生きるな、さすが材木座」
「材木座君ってすごいね!僕たちも頑張らなきゃ!ね!八幡!」
と尊敬の眼差しである。
そんな感じでちゃんと話していなかったため、ずるずると今の生活をしている始末である。
窓を拭いていると外では比企谷達が魔法の訓練をしている、まずは基本となる生活魔法の訓練のようだ。
生活魔法とは、小さい炎を出す点火の魔法、臭いを散らす換気の魔法、水を少量獲得できる水の魔法、盛土や石を取り除く土の魔法と少ない魔力で使う魔法なのだが、未熟な者は暴発すると言われ、実際窓の外を見ると比企谷達も上手くいかず暴発させているようだ
「あちちちち!ちょっと!なんで上手くいかないんだし!」
「優美子~ちゃんとおちついてやればできるよ~ほらとべっちなんて点火の魔法上手くできるよ~」
「あれ?俺才能ある系?やっぱ俺って凄い?ねぇ隼人君、俺ってすごい?」
「戸部、集中しないと暴発するぞ、指先の炎の大きさ見て見ろ」
いつの間にか肥大化している炎
「ちょっ!やべーって隼人君これやべーって!」
肥大化した炎ははじけ飛び戸部は皆から非難ごうごうであった。
方や比企谷達の方は
「イグニッション!」
由比ヶ浜が叫ぶとキャンプファイヤーのような火柱が上がる
「イグニッション!」
雪ノ下の場合は小規模な爆発である。
比企谷や葉山も結構危険な規模で暴走していた。
「魔法をきちんと制御しないと今の皆さんのように暴発してあっという間に魔力を消費してしまい枯渇します、きちんと訓練しましょう」
指導している魔導士の人も大変そうであった。
「・・・いいなぁ・・・我も練習したいな・・・でも八幡達に見つかったら無能ってばれるから外でこっそりやろうかな・・・」
雑用を早々に切り上げた材木座は将軍にお願いして第十位(最下層ランク)の魔導書を借り近くの森林へと向かう
生活魔法の暴走は流れ出てくる魔力をうまく制御出来ないから起きるものである、当然ながら魔力の量が多いと大惨事になる。
つまり材木座の場合はけた違いの事が起きるのだ。
「フムフム、まずは点火の魔法からやってみるか・・・集中して・・・」
材木座は両足を広げ構え気味に片手を前に出す。
「百八式闇払い!くらえ!イグニッション!」
別にポーズは不要だがそこは格ゲー好きの材木座、炎と言えばSNKの例のキャラの真似である。
ともあれ魔法は発動した。
手から轟音とともに光り輝く炎が噴出される、赤い炎の形状ではなくジェットエンジンの様な形の物凄い高温の炎が噴出される
あまりの強力さに慌てて魔法を止める
「・・・おや?・・・間違ったかな?」
再度魔導書を読み今度はゆっくりと真面目に魔法を行使
「・・・イグニッション」
再び材木座の指から光り輝く高温の炎、一旦止めて深呼吸すると再度魔法を試してみる
「イグニッション!」
全く変わらず輝く炎に触れた木は一瞬で消し炭と化し地面はえぐれ、石は融解しはじめる
「と、止めねば・・・」
炎を止めると隕石でも落ちたかのような焼け野原である。
「八幡達の訓練の様子よりも酷いではないか・・・暴発ってレベルじゃないぞこれ」
手から炎が出るなんてかっこいいと思っていたのだが、あまりにも強力すぎる勢い、そしてそもそも炎の形状を成してない為さすがの材木座もガッカリである。
「ま、まあ某アイ〇ンマンをちょっと派手にした感じの火は付いたのだから後は制御!とりあえず次試してみようかのう!」
次は水の魔法を溜めそうと試みる
「暴発してもさっき火を使ったから消火にもなる!」
そう言うとまたもポーズを取り
「タイダルウェイブ!・・・ウォーター!」
魔法としては後半のウォーターだけでいいのだが余計な一言を付けたがるのはやはり性というもの、呪文を唱えると目の前には巨大な水の塊が出現する
「・・・あ・・・これやばいやつ・・・」
材木座が逃げるより先に水の塊は崩壊
「ごぶはぁ!流される!」
森の中に巨大な水流が発生し、しばらく流されてしまう。
「はぁ・・・はぁ・・・なんで上手くいかないのだ!」
嘆く材木座
「これだけ暴走したのだから魔力なんて無くなってるのでは」
確認してみるが
「魔力は2.00e+8のままだな・・・」
魔導書を読んでも原因がわからない
「元々へんな表示だしもしかして減っているのに表示だけが変わらないのかも・・・ステータスの表示もちゃんと表示されて無いみたいだし・・・」
変な風に召喚された影響かとも思い
「八幡達に見せる分にいいかもだけど戦闘の時に魔力切れに気が付かなかったとなると話にならぬな・・・それに街の近くだと被害が出るかもしれない・・・」
そこでホワイト将軍に魔法の練習をやりたいと言ったら二つ返事に了承を貰った。
「雑用だけで何もしないというのもどうかと思っていたところじゃ、冒険者ギルドに登録して単独で作戦行動を取っているような体裁を取れば練習もできるじゃろ、南に少し行ったところの山は強力なモンスターを排除してるからあの辺なら比較的安全だな」
と将軍は材木座の変なステータスを見られたらまずいと思い、ギルドに数値確認されないよう登録、Eランク冒険者として材木座は単独で魔法訓練へと行くことになる。
「山に行くなら道具が必要だろう、これを持っていけ、多少ならこれにいれて持ち運べる」
と将軍はアイテムボックスもくれる。
これは魔力に応じてサイズが変わるものであるが、将軍はどうせ直ぐいっぱいになると思い説明しなかった。
故に材木座は膨大な魔力のせいでほぼ無限に入るこのアイテムボックスを大変気に入ったのである。
「凄い!いくらでも入るではないか!グフフ、将軍め、間違って自分用か何かを渡したのであろうか?まあよい、せっかくだから貰ってしまおう、この四次元ポケットを!」
しばらくして、王都から南方の山岳地帯では奇妙な現象が頻発することになった。
ある時は輝く光、またある時は突如山から大量の水が流れ出し、ある時は竜巻が起きたり、地面が急に隆起したりと麓の住人たちは神の怒りか、災厄の予兆ではないかとの噂が立つほどであった。
「おかしい」
材木座は一人山に来てキャンプをしつつ一か月ほど魔法の訓練に励んでいた。
将軍が道具屋や食料品屋に話を付けてくれていたので山岳地帯でもほぼ不自由なく訓練にいそしめていた、むしろゆるキャンだとかで楽しんでいたぐらいである。
しかし肝心の魔法はというと規模が若干収まり制御が出来たと思ったらまた威力が上がったような感じなのである。
「イグニッション」
点火の魔法を岩に向けて放つと岩の表面が溶けて丸い穴が出来た
「こんなに強かったかな・・・なんか岩に簡単に穴が空いてしまうのだが一向に点火できない」
薪に放つと薪は消滅し地面が溶解するので点火どころではないのである
「でも水は取れるようになったからな!流石我!天才だな!」
と材木座は水の魔法を唱えると目の間に直径1M程度の水の塊が出現
地面に落ちる前に急いで桶を取り出し水をすくう。
「思ったのと違うけどまあいいか!無いよりはまし!換気の魔法なんて何故か竜巻が起きたけど一応換気できるしな!土の魔法も地面が急激に盛り上がったりしてるけど・・・一応使えてるし・・・」
換気の魔法は未だに強風が吹き荒れ竜巻が起きるレベルである、土の魔法も地面が隆起し巨大な岩石が飛び出したりするような状態だ
「ある程度制御できるしな!ある程度以下は無理だが大は小を兼ねるというし!こっちの方が派手だから八幡にも自慢できるぞ!」
そしてステータスを確認する材木座
「レベルは15か、魔法の暴発の際に小型の魔物をいろいろ巻き込んだのかも?体力と魔力は3.05e+9・・・おかしいな、二桁になるはずなのに9までいったら一桁に戻ってしまったぞ?しかも加護?の数字が上がってるし・・・よくわからんが修行の成果は出たということでいいか」
しかしスキルが付与されているの気が付いた
「なんぞこの『信仰されしもの』って??」
スキルの詳細を見ると
「フム、魔法スキルが上がって?信仰者が増えるとランクが上がって奇跡が起こせるって?」
「す・・・凄い!我も神のような存在に・・・ってか誰から信仰されておるのだ?」
山ごもりをして凶悪極まる魔法を連発していたため事情を知らない麓の住人は神が山に降り立ったに違いないと山に向かってお祈りをしてたのだ。
そんなことは全く知らない材木座
「まぁ我も巻き込まれたとはいえ召喚されし者の一人だからのう、きっと我にもファンがいるのかもしれんな!」
勝手に納得する材木座は意気揚々と城へと帰るのであった。