「・・・・・」
ボーっと、天井を見つめる。前にもこんな事あった気がする。
体を起こし、すぐそばに置かれていたリアを起動。時間を確認。
時間は6時ちょいすぎ。あと、2時間も無い。
「お目覚めになりましたか、夢様。」
部屋の入り口から声が聞こえ視線を向けると、いつかあった執事が居た。
この人がいると言う事はここは、風紫町内にある天羽家の別荘だろう。
「君は、もう戦わなくて良いんじゃ無いか?」
起き上がろうとした僕に声をかけてくる人物。天羽 相馬君、天羽家の坊ちゃまで、
僕が仮面ライダーであること知っている人物の一人だ。相馬君は自身の手を僕の手に重ねる。
「君はよく頑張った。こんな細い手で、その白い肌には目立ちすぎる赤い血を流し、
直ぐにでも消えそうなくらい小さな君が、途轍もなく大きく力強い強敵たちと戦ってきた。
そして、いくつもの命を救ってきた。だからもう、戦わないで良い。
この街から一緒に逃げよう。それで専属メイドや仲間と共に家に来い。
そうすれば、毎日の食事・新しい服・ 病院で定期的に診察だって出来るようになる。
だから、俺家に・・・・・天羽家の一員になるだ。」
この子は本当に小学3年生なのだろうか?確かに天羽家の情報網はかなりのものだ。
だから相馬君が本気で、『紫吹 夢』と言う少年について調べると、
『リーム』と言う少女で隠された紫吹家の闇なんてすぐに暴かれるだろう。
家は風祀神社関連で、今の地位まで登った見せかけなのだから、由緒正しき天羽家には敵わない。
それに相馬君の言ってる事は『紫吹 夢』的にも、『リーム』的にも悪くはないけど…………
「ごめん。そして、ありがとう。」
「っ!」
相馬君の息を引くのが耳に入ってくる。仮に相馬君の意見を受け入れたのなら、
『リーム』はもう必要なくなるし、『紫吹 夢』は適切な治療を受けることも可能だろうし、
虐待は受けない・毎日ベットで寝れる・衣食住の整った夢のような環境で過ごせるのだろう。
運命に嫌われているのに、不幸に包まれた現状。それとサヨナラ、ハッピーエンドだ。
けれどそれは、今の僕では喉から手が出る状況であり、選んじゃいけない事だと思う。
今、風紫町を守れるのは、第三の僕『仮面ライダーウィッシュ』だけなのだから。
「行かなきゃ、いけないから。」
包帯に包まれ素肌が見てない両腕を支えに、ベットから降りる。
視界が悪い、多分血が足りてない。物との距離感が分かりづらい、左目の眼帯のせい。
窓からの日の光がキツイ、今日が晴天だからか。壁に体をぶつける、足がもつれただけ。
何かが目にかかる、頭部に巻かれた包帯がズレた。口の中に液体が溜まった、血だった。
「どうして!」
相馬君の叫び声を聞き、後ろに振り返る。俯いていて表情は分からない。
ただ、その体を激しく揺らし、力強く拳を握っていた。
「どうして夢君は、この街を守る!君は、警察のようにこの街に残って戦う義務なんて無い!!」
確かに、義務や使命なんて無い。何なら、紫吹家を出ること自体にも異議はない。
「仮面ライダーだから。」
涙をこらえている相馬君の目を見て話す。
「仮面ライダーだから、戦う。 理由なんて後から勝手に出来るらしいから。」
仮面ライダーに憧れ、命を落とした僕。そんな僕が仮面ライダーとして戦ってる。
守れなかった者や、傷ついた者。間に合わなかったじゃ、すまされない。
だからせめて、彼らの暮らしたこの街を、家族の帰る場所だけは・・・・・
きっとこれから何度も悩みに苦しむのかもしれない。それでも!
「相馬君達は、この街から逃げて。」
「・・・Dr.ケトルの居場所は、君の仲間たちに伝えてある。勝ってこい、親友。」
相馬君の言葉に頷き返し、部屋の外。そして屋敷の外へ出ようとドアノブを掴もうとした瞬間、
後ろから聞きなれた声が聞こえてくる。振り返るとそこには予想どうり、彼女が居た。
「夢君。・・・いいえ。夢お坊ちゃま、これを。」
僕の専属メイドは手渡しで日焼け止めクリームを渡してくる。
・・・正直、素肌は包帯で隠れているので要らない。
日向さんに返そうとして、手で拒んできた。
「今の私にはこれしかできません。ですから、気持ちだけでもお願いします。」
「・・・・ありがとう。」
深々とお辞儀をする彼女。そんなに言われたら、受けるしか選択肢ないじゃん。
クリームをポケットに入れ、今度こそ屋敷を出る。
そこには、神甲虫の上に座る二つの影があった。
『『「・・・・・・・・・・・」』』
ケルスとコロクは、僕に視線を向けるだけ。そして僕も何も言わず、只々見つめる。
覚悟は珍しく届きそうだった幸運・・・いや、普通を蹴り倒した時点で決まっていた。
後悔はするかもしれないし、何ならした後。だから後は、進むだけ。
だから力を貸せ、地獄の番犬に悪魔。
『『・・・・・』』
「ありがとう・・・・・」
僕の意思をくみ取った彼らは、僕の傍へとやって来る。今日は感謝の言葉を口に出してばかりだ…
ケルスはウィッシュドライバーに変形し腰に装着。コロクは、僕の肩に座る。
僕自身は神甲虫の座席にまたがり、モニターに映るヘルメットのボタンをタップ。
すると自動調節された緑色のヘルメットが召喚される。それを被りハンドルを握る。
心臓はバクバクするし、背中はゾクゾクしてる。・・・気がするが無視。
ゴーストタウンとなった風紫町内で、バイクを走らせる。
・・・と言っても、神甲虫のAIによる自動走行。僕らは捕まっているだけ。
走ってる車も無いし、時間も無いので信号も無視。良い子は守ろうね。
「・・・・変身。」
片手だけハンドルから手を離し、イネインスイッチを押す。
〈チェンジ・ウィッシュ!〉
紫の光が僕を包み込むかのように飲み込む。
〈アミナス!〉
身長が成人男性ぐらいへと変わり、全身の皮膚は強化されている。
複眼色は変身する前と同じく、赤く輝いている。
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「無駄無駄ぁ!」
大きなアンテナが付いた建物の前で、ブロークンと警察が戦闘をしていた。
いや、その光景はただの弱い者いじめ。警察側が圧倒的に不利だった。
それでも彼らは譲れない物の為に、攻撃の手を緩めない。
「いい加減ウザいな。消えろ。」
冷たく呟かれた一言。その一言に警官たちは身構える。
ブロークンが動き出そうとした瞬間、バイクの音が周囲に響き渡る。
その場の全員が視線を向けると、昆虫を思わす緑のバイクにまたがるウィッシュの姿が!
「来たか!」
高鳴る感情を隠しもしない、聖騎士のような白の仮面ライダー
「決着、つけようか。」
バイクから降り感情を感じさせず要件を言う、暗黒騎士のような黒の仮面ライダー
「「・・・・・」」
ウィッシュとブロークンの第二ラウンドは、合図も無く始まった。
攻防の最中ウィッシュはブロークンの肩を掴み、建物内へと壁を突き破りながら入って行く。
「頑張ってください、ウィッシュさん。」
その様子を岡川 雄一をはじめとする警官が見守っていた。