【旧版】仮面ライダーウィッシュ   作:火野ミライ

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第5話.事件が起き過ぎた日

冬休み最後の日、それは厄日だ。

別に、冬休みの宿題が残っているからじゃない。 理由は家庭の都合だ。

 

「あら、出来損ないにしては準備が早いじゃない。」

 

派手な晴れ着姿の女性が、僕を嘲笑うかのように言葉をこぼす。

 

「分かっているでしょうね、今日一日は私達の視界に入る事を許すわ。

 でも、あくまでメイドの一人としてよ。良いわね。」

 

「分かっています、美希様。」

 

「ふん!」

 

僕の態度が気に食わなかったのか鼻で笑った後、倉庫けん僕の自室から出ていく。

 

「もう出てきて、良いよ。」

 

僕の言葉を聞いて、物が詰まれている部屋の隅から二つの影が出てくる。

ケルスとコロクだ。

 

『ふぅ~、見ているこっちが、ひやひやするわ。』

 

『なぁ、夢。 あのキャラの濃いおば・・・女性は誰なんだ。』

 

「彼女の名前は、紫吹 美希《しぶき みき》。」

 

『紫吹って、まさか!』

 

「コロクの予想通り、僕の母親さ。」

 

『・・・』

 

何か、思う事が有るのだろう。 コロクはしかめっ面で考え始めた。(メカだけど)

 

「ケルス、そこのメガネを取って。」

 

『あいよ~』

 

器用に机の上に置いてあった、黒縁のメガネを取って来てくれるケルス。

ケルスからメガネを受け取り、メガネをかける。年代物のスタンドミラーで確認する。

そこには、メガネをかけた小さなメイド服を着た僕が立っていた。

 

『ぉお~ 大分印象が変わったなぁ~』

 

ケルスの言う通り、普段の僕を知ってる人でも見違えるほどメガネ女子に見える。

・・・一応言うけど僕、男だよ。

 

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ケルスとコロクが入っているショルダーバッグを肩にかけ、

ブラウンのスマホ【リアックフォン】をスカートのポケットに入れる。

戸締りを確認して、いつもは使用禁止にされている表玄関に向かう。

 

今日は年に一度の親戚が集まっての食事会・・・と言う名の大人のマウントの取り合い。

家の家系は昔からお偉いさんと言うか、お金持ちの集団。

普通に、執事とかメイドを雇うくらいには大きい一族だ。

 

そういう家庭に転生した僕は、一族内では生まれていなかった事になっている。

本来ならその会食に参加券のない僕だが、

神楽の傍に使えるメイドとして父親が僕を参加させている。

 

「お姉ちゃん。行っておくけど、今日は神楽って呼ばないでね!」

 

「分かっています、お嬢様。」

 

前世では接客の仕事をした事の無い、高校生の僕だったけど、

まさかこんな形で仕事する事になるとは、思ってもいなかったな。

あっ!別につらい訳じゃないよ。その手の感情をまず、感じることが出来ないしね。

 

考え事をしている間に、車がやって来た。

一番最後に車に乗って、席に座る。 後は運転手が会場に連れていってくれる。

 

____________________________________________

 

会場に着いたら長い話を聞いて、自由行動。 僕の場合は神楽についていくだけだけどね。

毎年ながら、嫌な空気だ。

 

「リーム。なんか、取って来て。」

 

「畏まりました、お嬢様。」

 

【リーム】って言うのは、この場での僕の呼び名。

他の人達には僕の事は、外国からやって来た少女メイドのリームって事になってるから。

 

お皿にサラダと卵焼きにソーセージと、次々と盛っていく。

 

「あれ、リームちゃんではありませんか。」

 

後ろから声をかけられ、手に持つお皿を落とさないように振り向く。

 

「天羽様、ご無沙汰ぶりです。」

 

そこに居たのは、毎年この会場で会うお坊ちゃま。天羽 相馬《あもう そうま》君。

天羽家の跡継ぎの少年だ。

 

「お久しぶり。それより相変わらず神楽に、こき使われているのか?」

 

「いえ、そんな事はありません。」

 

「・・・君は、表情が変わらないから嘘か本当か、分かりづらいよ。

 それより、俺のところに来ないか?神楽の所よりも好条件で雇ってあげるよ。」

 

「せっかくのお誘いですが、今の環境には不満がございませんので、断らせてもらいます。

 では、私はこれで。」

 

相馬君と別れて神楽の元に向かう。

 

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(リーム)と別れた、相馬はただひたすらに(リーム)の背中を睨みつけていた。

 

(なんでなんでなんで、どうして神楽の方を選ぶんだよ!不満がない?

 どうして、そんなやせ細った体って事は、ちゃんとした食事を取ってない証拠じゃないか!

 ・・・そうか!彼女は神楽に脅されているんだ、そうに違いない。そうと決まれば・・・)

 

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「紫吹家のメイド。リームさんで、間違いありませんね。」

 

「はい。」

 

神楽と居たら、何処かの執事に声をかけられた。

 

「私は、天羽家の執事長です。 お坊ちゃまがお呼びですので、来ていただけないでしょうか?」

 

 

 

 

・・・執事長さんの主に会いに付いていき、会場の外に出てきた。

 

「あの~どこまで行くのでしょうか?」

 

「今は、黙ってついて来てください。」

 

言われるがままについていくと、一台の車の前に辿り着く。

 

「さぁ、お乗りください。」

 

「えっ!ちょっと。」

 

僕が何かを言う前に、車に詰め込まれた。 大人の力って、こんなに強かったんだ・・・

 

「さっきぶりだね、リームちゃん。早くシートベルトを付けてくれ。」

 

「天羽様・・・」

 

もう、何もできないので言われた通り座席に座り、シートベルトを装着する。

 

「出してくれ。」

 

相馬君の言葉を聞いた運転手が車を走らせ、会場から離れる。

 

「さ~て、リームちゃん。家に来なよ。」

 

「・・・そのお話はさっきも、断ったはずですが?」

 

「君が紫吹家の脅されているのは知っている。」

 

脅されている。僕が?

 

 

 

 

あの後も、ひたすら喋りかけてきた相馬君だったが、簡潔に話すと、

僕は脅されていて、彼の家でかくまってあげるから、メイドに来いだと。

うん。勘違いしてるね。けど、どうやって説明しよ?

全部話せれば、楽なんだけど・・・

 

「うん? 家に行くには、さっきの道路を右に曲がるぞ。なんで、左に曲がったんだ?」

 

どうやら今年も、運命は僕の事が嫌いらしい。

 

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拉致られてやって来たのは、廃工場。

 

「ほら、歩け!」

 

「くっ!」

 

「・・・」

 

車を運転していた人に言われるがまま、廃工場の中に入る。

ちなみに手はロープで拘束されている。相馬君は怯えている・・・普通か。

 

「そこに座れ!」

 

大人しく言われた通りに座る。あいつは少し離れたところで、電話している。

内容は聞き取れないけど、身代金関係だろう。

 

「リームちゃんは、怖くないのか?」

 

「まぁ、恐怖を感じないし、最近こう言うのばっかだし。」

 

「えっ?」

 

あっ、素で返しちゃった。・・・もういいや、全部話そう。

 

「ど、どう言う・・・」

 

「僕は、君に謝らないといけない。」

 

「へっ?」

 

「僕は紫吹家のメイドじゃ無い。」

 

「口調が、それにメイドじゃ無い?」

 

相馬君は混乱し始めているけど、あいつが戻って来る前に話を終わらせる。

 

「そう。僕は紫吹 夢。神楽の双子の兄。 病気の関係で、世間一般的には居ないはずの人物さ。

 だからメイドとして、あの会場に居た。この話、内緒にしていて。」

 

「分かった。」

 

流石お坊ちゃま、家庭の都合に察し良くて助かる。

話が終わったタイミングで、あいつが戻ってきた。

 

「よ~し、大人しくしとけよって! 高級そうな宝石見っけ!ラッキ~」

 

男性の視線を追うと群青色の鉱石・・・ソルト結晶!?

 

「うぁぁぁぁァァァァーーーー!!」

 

男性がソルト結晶を手に取ると、ソルト結晶から虹色の光が発生する。

光が男性を包み込み、カマキリの怪人【カマキリソルト怪人】に変化する。

 

「バ、バケモン!?」

 

「相馬君、スカートの右ポケットからスマホを取り出して。」

 

「えっ!」

 

「早く。」

 

「あぁ・・・」

 

相馬君に取り出してもらったスマホを受け取って、電源ボタンの下にある赤いボタンを押す。

するとリアックフォンはガジェットモードから、アニマルモードのコウモリへと変化する。

リアックフォンは僕の手元を離れ、旋回してこっちに突撃してくる。

 

「ちょ、ちょっと!」

 

相馬君が驚くのを無視して、僕と相馬君の間をすり抜ける。

すると僕達を縛っていたロープは、切り裂かれていた。

この子は、神甲虫と同じくAIが組み込まれておりある程度自分で思考し動くことが出来る。

ちなみにケルスとコロクとは違い、神甲虫もリアックフォンも喋る事は出来ない。

 

「今のうちに逃げるy」

 

「リーm・・・夢君!」

 

気がついたら吹き飛ばされたけど・・・何が起きた。

 

「うぁぁぁぁ!!」

 

「っ!」

 

相馬君の叫びを聞き、無理やり視線を動かす。

視線に入って来たのは、カマキリソルトが相馬君に詰め寄っており、

リアックフォンが超音波を放ちそれを防ごうとしている姿だった。

 

何とか起き上がろうとして両手に力を入れようとするも、右腕にしか力が入らない。

左手を見ると、見事に折れていた。よく見ると切り傷もあり、出血している。

痛みを感じ無いのをいいことに、無理やり立ち上がる。

ゴキッ!っと嫌な音が鳴ったが無視して足を進める。

 

「カネダ!金ガ必要ナンダ。 オ袋ノ病気ヲ治スタメニ!!」

 

ソルト結晶の影響で狂ってしまった思いが、耳に入ってくる。

やり方は許された事じゃない。でも、その思いは間違っているって誰が言えるのだろうか?

きっと僕は、既に狂っているのだろうか。それでもいいや、だから・・・

 

「行くよ、ケルス。」

 

『おぅ!』

 

いつの間にか傍にいたケルスが、ウィッシュドライバーに変形し、そのまま腰に装着される。

帯が装着されたことにより、待機音声が流れる。その音に気付いたソルト怪人がこちらを見る。

 

「変身・・・」

 

〈チェンジ・ウィッシュ! アミナス!〉

 

右手でイネインスイッチを押すことで、紫色の光に包まれる事により、

身長が伸び、ケルベロスを彷彿とさせる仮面ライダー(仮面の戦士)に文字通り変身する。

 

「グオォォォォ!!」

 

カマキリソルト怪人が突進してくるのを右腕で防御する。

数メートル後ろに押されるも、受け止めきる事には成功した。

 

「君の歪んだ願いは、此処で止める。」

 

カマキリソルト怪人の腹に膝蹴りを入れ、怯んだ所に顔めがけて回し蹴りを入れる。

カマキリソルト怪人が倒れている間に、右腕にイネインエネルギーをかぎ爪状に纏う

【ケルベロスクロー】を発動し、ソルト怪人に向かってかぎ爪を振るう。

 

「グワァァ!」

 

左腕が使えない今、とにかく反撃させない事に集中する。

 

『今だ決めろ、夢!』

 

いつの間にか、相馬君の傍にいるコロクからの合図が聞こえ、

ベルトの右手側の口型のスイッチを閉じるように操作をする。

 

〈ケルベロス・イネインチャージ!〉

 

音声が聞こえた後、両肩のショルダーフェイスの瞳が発光する。

イネインスイッチを二回押し真ん中のケルベロスの顔を操作する。

 

〈ケルベロスザンパー〉

 

今出せる最高速度で走り、黒色に変色した右腕のケルベロスクローで何度も相手を切り刻む。

最後に切り上げる。地面に着くと同時にソルト怪人は爆散した。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 

意識が朦朧とし、膝から崩れ落ちる。

最後に聞こえたのは、みんなの心配する声と、サイレンの音だった・・・・・・・

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