【旧版】仮面ライダーウィッシュ   作:火野ミライ

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第6話.見て来なかった事

「・・・」

 

ぼーっと、天井を見つめている。 左腕は器具に固定されており、

現在はふかふかのベットに寝ころんでいる。

 

「・・・・・・」

 

視線を横に向けると、部屋は薄暗く、明かりはカーテンの隙間から差し込む月明りのみ。

しばらく天井を見つめていたためか、目が順応し、物の区別がつく。

ベットの右横には床頭台(しょうとうだい)が置いており、その上に小さなテレビが置かれている。

テレビの近くには、リアックフォンやケルス・コロクがスリープ状態で置いてある。

 

「・・・・・・・・・」

 

左側には動かないように固定された左腕があり、その向こう側にはスライド式のドア。

現在着ているのは、色までは判断付かないけど、普段着る事の無い清潔なパジャマ。

 

「・・・病室?」

 

ここでようやく、自分の状況を思い出す。

 

 

 

 

相馬君(の執事)によって普通車に乗せれた僕。その運転手が相馬君(+僕)を誘拐。

廃工場に連れられて、運転手がソルト結晶にふれソルト怪人に変貌。

色々あって、ソルト怪人の攻撃により左腕を骨折。ウィッシュに変身し、勝利を収める。

その後、気絶した・・・ややこしい。

 

「・・・寝よ。」

 

取り合えず、おやすみ。

 

____________________________________________

 

翌日、僕が起きた事によりかるい診察を受けて、自分の状態を聞いた。

しばらく入院して、リハビリをしないといけないらしい。

 

「・・・」

 

この病院は、最近多発する未確認生命体(ソルト怪人)による事件の被害者が入院している。

バットソルト怪人に吸血され、血が足りてない患者。

スパイダーソルト怪人により、重症を負った志風(しふう)小学校の教員。

カラスソルト怪人の爆発する羽により、顔半分をやけど傷を負っている男子高校生。

老若男女問わず様々な人が、今も普通の暮らしに戻れずに苦しんでいる。

 

「・・・っ!」

 

患者の様子を見ながら廊下を歩いていると、右腕を失った患者と目が合う。

その目が『どうして、助けてくれなかった!』っと、訴えているように見えた。

思わず目を背けると今度は、死体安置所(霊安室)に運ばれていく、死体と目が合う。

その顔には覚えがあり、僕が変身する前に血を吸われていた男性だ。

『お前が早く変身していたら、助かったのに!!』と言われている気がして

 

・・・・・・・・気づいたら走っていた。

 

 

 

 

 

人間じゃ太刀打ちできないソルト怪人。その被害は、医療崩壊寸前にまで陥ってた。

僕があの時、早く変身して戦い始めていたら、寝ていなければ、

変身するを躊躇(ためら)わなければ、もしかしたら助けれていたのかも知れない。

 

看護師の注意の声が聞こえないほど、珍しくパニックになっていた。

けれど、自分で気づくはずもなく、淡々と考えが頭の中をかけめぐる。

 

命を守る。その事の難しさ・大変さを、僕は知った気でいた。

心のどこかで背けてきた事実。それを目の当たりし、途轍もない恐怖を感じていた。

 

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『夢ぇ~ どうしたん?』

 

「・・・!」

 

『泣いているし、寒いって訳じゃないだろ?』

 

気が付いたら、僕に当てられた個室の病室で、掛け布団にくるまって震えていた。

そんな僕の肩に乗り、困惑しながらも声をかけてくるケルス。

ティッシュで僕の涙を拭きながら、質問してくるコロク。

 

普段、感情を感じなれない僕だけど一度感じると、一つの感情に支配される。

 

 

 

 

コンコンコン!

 

『やば!』

 

扉をノックする音が聞こえ、あわてて床頭台の上に移動するコロク達。

 

「入るぞ。」

 

一言、断りをいれ病室に入ってくる。入って来たのは、厳つい顔をした男性だった。

 

「・・・」

 

男性は夢の状態を見ると、夢の肩に手を置く。

 

「っ!」

 

ビックっと体が一瞬震えあがり、ぎこちなく顔を男性に向ける。

 

「・・・」

 

「・・・・お、お父様?」

 

無言で夢を見つめる男性のは、紫吹 平野(へいや)。

夢の父親で、紫吹家の大黒柱だ。

 

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「すぅー、はぁ~・・・」

 

「・・・落ち着いたか。」

 

「・・・はい。」

 

夢が落ち着くまで、見つめていた平野が真顔のまま声をかける。

 

「例の怪人に襲われたそうだな。」

 

「はい。」

 

目元が赤く膨れている夢も、真顔・・・虚無顔で答える。

 

「お前の状態は、さっき医師から聞いた。手術費や入院費は気にするな。」

 

「ありがとうございます。」

 

親子とは思えないほど、他人行儀な会話を進めていく。

 

「俺は仕事に戻る、お前は腕を早く直せ。」

 

「はい。」

 

冷たい目を向ける父親に対して、感情が消えた目を少年は向けていた。

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