俺と君はコロシアイの下に出会う ―君死にたまふことなかれ― 作:音佳霰里
前回はすっごく投稿時間を間違えた…!
それはそうと、最後の方にアンケートがあるので、投票していって頂けると助かります。主に作者のアイデアが。
それでは本編、どうぞ!
―――??月??日、??時??分。
―――俺が目を覚まして、辺りを見回してみると、そこは豪華な部屋の中であった。
そんなどこぞの雪国を題材とした小説の出だしのような現実逃避を出来る位には、俺も余裕があったみたいだ。
俺が目を覚ました部屋には、かなりの広さがあり、等間隔に白いテーブルクロスの掛けられた丸テーブルが配置されている。
しかし、何よりも俺の目を引くのは、部屋の中央にある、垂れ幕の下がったステージだろう。
そこだけ何かを隠すようになっていて、誰も近づけまいという念すら感じることができる。
次第に他の人たちも目覚めてきて、俺も混乱から回復する。
集合場所のあの寂れた漁港にいた、俺以外の十五人のパーティーへの参加者と思しき人達が全員立ち上がり、さてどう動こうか、という話をしようとした時、唐突に部屋の電気が消え、俺たちは暗闇の中に放り出される。
突然のことに驚いていると、次に、あのステージに覆いかぶさっているように垂れ下がっている垂れ幕へと、スポットライトが当たる。
指名を受けたその幕は、まるで、心得たと言わんばかりに、ステージからゆったりとした動作で引いていく。
そして、そんな隠されていたステージの上にあったのは、一脚の豪華な椅子、そして一人の茶髪の女性の姿だった。
女性は、待ち望んでいたかのように俺達の事を確認し終えると、口を開き始める。
???
「ようこそ皆さん、この私の主催するパーティーへ」
『私の主催する』
その言葉から俺は、彼女こそが俺達をこのパーティーに招待した『木宮きらら』本人なのだと推測する。
キララ
「本日は私の主催するパーティーにご出席いただき、誠にありがとうございます。もうお分かりになられた方もいらっしゃるかもしれませんが、一応自己紹介を。私の名前は
優雅に洗練された動作で一礼をしながら、彼女は言う。
……張本人って言っちゃったよこの人。
キララ
「さて、私自身あまり長い話を好まないので、さっそく本題に入らせていただきます。ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、私はよく、今回の様にイベントを開いては、様々な方の人生経験や、野望等を見て、聞いて、体験してきました。私は、そういった人間の内側に隠された、本性が好きなのです。ですので、皆さんには私の出す『課題』をクリアするために、競い合い、蹴落としあって頂きたいと思っております。……何かご質問等はございますか?」
彼女は、うっとりとした様子だったり、何かを思いだすような様子を見せている。その変わりようは激しく、何も知らない人に同一人物であることを伝えたら、否定され、姉妹説を疑われるだろう。
……一応警戒しておくに越したことはないな。
そして、一人の男性が、イラついた雰囲気をにじませながら、質問を投げつける。
???
「おいお前! 財閥の令嬢だなんだとかは知らんが、俺たちの中には仕事や学校があるやつもいるんだぞ! それに俺は締め切りが明後日にまで迫ってきているんだ! もし間に合わなかったらどうしてくれる!?」
眼鏡をかけていて、先程までは知的な雰囲気を醸し出していた男性が、今は発狂寸前のような声を出している。
その落差に俺たちはドン引きする。
しかし木宮は、そんな(精神的な)悲鳴に近い怒声を聞いても、顔色一つ変えることなく、淡々と質問の答えを返す。
キララ
「……そうですね、あなたの言うことももっともだと思います。ですが、世の中の学生たちはまだ春休み中、サラリーマンでも、忙し……いですね。でもご心配なく。このクルーズは最短二、三日で終わります。長くても、そうですね……一週間もかからないでしょう。ですので、心置きなく本イベントを楽しんでいってください。……他に何かご質問は?」
彼女がそういうと、痛い位の沈黙が場を支配する。
先の彼女の質問への返答を見る限り、この時点でこれ以上引き出せるような情報はないだろう。
それを皆理解しているのか、誰も何も言うことはない。
木宮はそれをしっかりと理解したのかしていないのか、説明の続きを始める。
キララ
「……何もないようですね。そうしましたら、これからイベントの説明に入りますので、皆さんはいったん荷物を部屋に置いてきてください。皆さんのお部屋までは、黒服の者が誘導しますので、決してはぐれないようにしてくださいね」
そういった彼女が手を軽く二回ほど叩くと、いつの間にやってきていたのか、俺たちのそばには一人につき一人の黒服が現れていた。
……というか俺たちはいったい何歳児だと思われているのだろうか。
黒服は俺達の先を歩き、自室であるとされる場所まで誘導してくれる。
この時間に、二、三個ぐらいなら質問ができそうだ。何を質問しようか……。
『過去の参加者について』
フジウチ
「あの……過去にこのパーティーに参加した人について教えていただけますか?」
俺は部屋へと向かう道すがら、そんなことを質問してみる。
黒服はまさかそんなことを聞かれると思っていなかったのか、サングラス越しでもわかるくらいに目を大きく開け、オウム返しで聞き返してくる。
クロフク
「は……?過去の参加者について、ですか……。それまた何故?」
フジウチ
「いえ、昔木宮きららが死亡したって説が流れてたじゃないですか」
クロフク
「あぁ……。木宮お嬢様にお仕えする身としては否定したいものですが、そんな噂も一時期はやっていましたね……それで?」
フジウチ
「その噂の発端って、過去にこの『パーティー』に参加した人が流したらしいんですよ。それで、この後参加者たちは何をするのかな、と思いまして」
俺は話しながら、黒服の動向を探る。
嘘をついたりしている人の特徴としては、急にそわそわしだす、呼吸が変わるなど、不自然な動きをしたり、どこかぎこちない言動を取ったりする、等が挙げられる。
嘘を嘘と見抜ける人でないと、この先生きていくには難しいのである。
クロフク
「……このことはオフレコで頼みたいのですが」
フジウチ
「……わかりました」
よし、食いついた。
ただ言動に違和感が無いのが不思議だな……。忠誠心からか? でもそれならこんな風に情報を出してはくれないはずだが……。
クロフク
「実はですね、このパーティーを担当する黒服は、四、五人を除いて毎回違う黒服が担当しているんですよ」
フジウチ
「なっ……!?」
クロフク
「ですので、私共はそういった件に関しては、お力添えをすることができません。……申し訳ありません」
思いもよらない返し方に、少し動揺してしまうが、俺は落ち着いて黒服の観察を続ける。
呼吸や歩き方、仕草なんかに異常は見られない……? まさかこれは本当の事なのか?
俺に怪訝な目で見られているのに気付いたのか、黒服は、「ですが」と続けてくる。
クロフク
「ですが、固定メンバーの四、五人の内の一人に、コンタクトを取ることならできます。そこから先はご自分でやっていただけると……」
フジウチ
「……本当ですか!? ありがとうございます!」
クロフク
「ですが、会うときは指定した時間に、一人だけで来てください。もし我々が情報を流している事がバレたら、お嬢様に何を言われるかわかりませんので……」
フジウチ
「分かりました……。でもどうして俺に情報を渡してくれるんですか?」
クロフク
「さぁ、自分でも良く分かりません。ですが、あなたのような目をした方を、私は見たことがある。その方は、お嬢様の凶行を止める直前まで至られた。だから、あなたがお嬢様を止められることを願っております……」
フジウチ
「……」
俺は黒服の真剣な表情に、言おうとしていた言葉がすべて抜けていくような感覚を感じていた。
この人は、俺のことを本気で信じてくれている、と。
忠誠を誓う主のためなら、どんな手段だって使ってやる、と、そういう黒服の強い感情が、俺の心の中を駆け回って、揺さぶった。
クロフク
「……さ、着きました。こちらが藤内様のお部屋となっております。中には、ベットやシャワールームのほか、スタッフルームや他の方のお部屋に繋がる内線もございます。また、テーブルの上には、今回のイベントで使うアイテムがご用意されておりますので、荷物を置かれましたら、そちらをご確認ください」
フジウチ
「……なんか、ありがとうございます。色々と」
クロフク
「……いえ、貴方のような存在は、我々にとっての希望ですから。これくらいは大目に見たってかまわないでしょう。……それと、貴方が会う予定の黒服の名前を教えておきます。名前を『
フジウチ
「もう、ほんと、ありがとうございます……。何から何まで……。俺、皆さんの期待に沿えるよう、頑張りますから」
クロフク
「えぇ。……それでは失礼します。そろそろ戻らないと、怪しまれてしまうでしょうし」
フジウチ
「ありがとうございました。そちらも、お気をつけて」
クロフク
「えぇ……お互いに、ですね」
そういって黒服―――天川さんは去っていく。
俺は、天川さんが見えなくなるまでずっと頭を下げ続けていた。
天川さんが信じてくれたから、俺はこれからのイベントを乗り切っていこうという気持ちになれたんだと思う。
そんな風に自分のことを振り返りながら、俺は割り当てられた自室へと入っていく。
部屋の中には先程天川さんが言っていた通り、ベットにシャワールーム、それに小さめだが冷蔵庫とクローゼットがあり、なんだかビジネスホテルの一室に来た時の感じを思いださせる部屋の作りになっている。
ベットの横には小さいサイドテーブルがあり、その上にはティッシュボックスやスタンドライトの他に、固定電話が備え付けられている。
なるほど、これが言っていた内線電話か、と俺は思う。
電話の本体には十二個のボタンが付いており、受話器と本体をつなぐケーブルの根元には、一枚のプラカードが付けられていて、そこには各部屋にかけることの出来る電話番号が書かれているようだった。
一通り部屋の構造の把握が終わった俺は、荷物を置こうと、ようやく机の上に目を向ける。
机の上には、一通の手紙と、一枚の裏返しで置いてあるカードがあった。
俺は先に、カードよりも手紙を見ることを選んだ。
手紙には、こう書いてあった。
藤内弘貴様
この手紙の隣に置いてあるカードは、次のイベントで必要となるものですので、常に肌身離さず、言われない限りはご自身のカードの柄を見せないようにしてください。
もしも貴方がカードに描かれている絵の意味を知っているなら、私が行うイベントは、『アレ』であることが分かるでしょう。
ですが、ネタバレはあまり面白くないので、もしも再び広間に戻る途中で誰かに会ったとしても、私が行うイベントの名前をばらさないであげてくださいね。
木宮きららより
……なんだこれ。
手紙に書かれている文面を短くまとめると、『カードを見ろ。そして自分の絵柄と私が何を行うのかをバラすな』という、今北産業……どころではなく、たったの一行で済む文面だった。
このパーティーの主催者のアレっぷりに軽くうんざりとしていると、いまだ机の上で放置されているカードが目に入った。
じっくりと、手を触れずにカードを観察してみると、裏面の一部に俺の名前が彫り込まれていて、尚且つ表面がキラキラとしている。何か特殊な加工等をしているのだろうか?
俺は、カードの絵柄を見てみよう、と思う。カードを持ってみると、先程見つけたラメの影響か、見た目よりもずっしりとくるカードであることが分かる。
そして俺は、カードを裏返して、そこに描かれている絵柄を見る。
その絵柄を見て俺の脳裏には、ある一つのゲームが思い浮かぶ。
あぁ、あのゲームか。確かに複数人でプレイするのにはいいよな、なんて俺は思う。
そこに、描かれていた、絵柄とは―――。
―――??月??日、??時??分。
俺はカードの絵柄を確認した後、机を調べた。
机の一番上の引き出しには、おそらく予備の物であろう、カード類一式が入っていた。
ラッキー、なんて思いながらそれをカバンに全て入れ、今俺は、目が覚めた時にいたあの大広間に、再びやってきていた。
ステージ上には既に木宮が居て、こちらを見てニコニコと微笑んでいた。
どうやら俺が一番最後だったらしく、既に大広間に入っていた十五人の目が、一斉にこちらへ向けられる。
そのことになんだか気恥ずかしさを感じながらも、俺はさりげなーく広間の隅っこを陣取る。
そして全員が落ち着いたタイミングで、木宮が話し出す。
キララ
「皆さん、お集りになりましたね。それでは、ただいまから行う『イベント』の内容についてお話します。もうお気づきの方もいらっしゃることかと思いますが、これより始まりますは、『人狼ゲーム』になっております。人狼ゲームはご存じでしょうか?」
木宮がそういうと、俺達の内の何人かは、頭から『?』マークを出す。
その事に気付いた木宮は、いったん話を打ち切って、人狼ゲームの説明を始める。
もう知っているよ、という方もいらっしゃると思うので、ここでは簡単にまとめたものを以下に書いておこう。
・人狼ゲームとは、味方になりすましたウソつきを会話で見つけ出す10名前後から楽しめるパーティーゲームである。
・プレイヤーは、全員とある村の住人として振る舞うが、その中の何名かは人狼役で、村人に化けて村を滅ぼそうとしている。
・村人たちは毎日、発言や仕草を頼りに見分けのつかない人狼を探し、多数決でもっとも疑わしい 1名を人狼とみなして処刑する。一方、人狼たちは人知れず毎晩誰か1名を選び餌食にしていく。
・こうして昼と夜が繰り返されて犠牲者が増える中、人狼をすべて処刑できたら人間の勝利。それよりも早く人間を減らし、生存者の半数を人狼で占めたら人狼の勝利。
・人狼や人間の他にも、夜に人狼を見つけることができる予言者や、昼間に処刑した相手が人狼だったか分かる霊媒師など数多くの役割があり、これらはプレイ開始前に配られたカードによって決まっている。そのため、同じメンバーで遊んでも毎回異なる展開を楽しむことができる。
・人狼は巧みなウソで、人間は的確な推理で、会話を通じて仲間を説得し相手を追い詰めていくのが「人狼」ゲームの醍醐味である。
……というのが、一般的な人狼ゲームの説明となっている。
が、木宮は「ですが」と言葉を続ける。
キララ
「ですが、今回皆さんにプレイしていただく人狼ゲームは一味違います。そう、その名も……!」
キララ
「―――コロシアイ人狼ゲームです」
―――殺し合い……? いきなりそんな単語が出てくるとは思っていなかった皆の間に、緊張感が走る。
しかし木宮は、何故か嬉しそうに言葉を続ける。
キララ
「最近ニュースとかで騒がれている、いまだ逃走中の凶悪な連続殺人犯いますよね? 私は財力を使って、その犯人を突き止めることに成功しました。で。今回のこの人狼ゲームに、人狼役としてご招待しています」
木宮の言葉を聞いたみんなの中から、困惑の声が上がる。
それはそうだ。クルーズ中の客船という閉鎖空間の中に、十五人の人を殺している殺人犯が紛れ込んでいるのだから、怖くなって当たり前だろう。
実際に、俺は今も恐怖で軽く体が震えている。
が、木宮はそんな俺達にかまわず、ルール説明を続ける。
キララ
「今回の人狼ゲームに参加している人狼は、その凶悪殺人犯の一人だけです。それで、人間側の勝利条件は一つだけ」
キララ
「―――その人狼である凶悪殺人犯を、裁判で吊るし上げることです」
キララ
「ただし、今回の人狼ゲームは、本来の物とは一味違います。頭に『コロシアイ』と付いていますからね。今回の人狼ゲームで犠牲者が出る方法は、大きく分けて二つあります。まずこちらは、皆さんが知っているように、人狼によって殺害されること。そして、もう一つの方法は―――」
キララ
「―――人が人を、殺すことです」
殺す……? 人が人を……?
それはいったい誰がつぶやいたものだったか。
そんな突拍子もない、人狼ゲームというゲーム内ではあり得ない事に、皆の頭はもうパンク寸前だ。
しかし『人が人を殺すのか?』という呟きだけを拾った木宮は、嬉しそうに、赤くなった顔を両手で覆いながら、まるで運命の人との出会いの時を語るかのように、息継ぎもせず話し始める。
キララ
「えぇ! もちろんそうです! 殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺惨殺呪殺……殺し方は問いません。
『人狼を殺し、生き残った人だけがここから出られる……』
ま、それだけのルールです。簡単でしょう? では、最悪の手段で最良の結果を導けるよう、せいぜい努力してください」
それだけ言うと木宮は、いまだ固まっている俺達を尻目に、去って行ってしまう。
―――本当に、始まるのか……? この殺し合いが……?
こうして、俺達の人生を左右することになるコロシアイ人狼ゲームが、始まってしまった。
―――拭っても拭い切れない、恐怖と不信感だけを置き去りにして―――
《キャラ紹介のコーナー》
・藤内弘貴(ふじうちひろき)
本作のコロシアイクルーズ編の主人公。
男性、大学2年生。一人称は俺。20歳になったばかりだったりする。
いかがでしたでしょうか?
アンケートの方をよろしくお願いいたします!
以上ほんへでした!
主人公(フジウチ)とシミヤと一緒に探索を行う人
-
尼さんと和服美少女の母娘
-
小学生の女の子
-
カメラを持った大阪弁の女性
-
インテリっぽい男性
-
ギャル