もし雪ノ下雪乃に弟がいたら   作:黒い柱

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 今回は難産でした。


二つ目の依頼の顛末〜姉に好きな人がバレそうになる弟の図〜

 二つ目の依頼を受けた夜、材木座先輩から彼の書いた小説を受け取って読む。

 

「星斗、部員でもないのに無理して読むこともないのよ?」

 

「確かに部員ではないけど、一応あの場にいたからね。とりあえず全部読むよ」

 

 俺は雪姉の言葉に軽く笑って頷く。しかし……

 

 姉の手前ああは言ったものの、本音はめちゃくちゃ読みたくない。つまらないというか読みにくいというか何というか……。言いたいことは伝わらなくもないけど、分かりにくい。読解力が自分が少ないというのもあるが、それ以上の読みにくさを感じる。成績優秀な雪姉や国語3位だという比企谷先輩ならもう少しは読めるのだろうか。

 

 俺は気分転換に雪姉に声をかける。

 

「ところでさ……。雪姉ってぶっちゃけ比企谷先輩のことどう思ってるの?」

 

「……それはどういう意味で聞いてるの?」

 

「そんなに深く考えなくてもいいよ。大したことでもないし」

 

「ただの部員としか思ってないけれど。それより、あなたにも聞きたいことがあるのだけれど……」

 

 雪姉は俺の核心に踏み込んできた。

 

「あなた、由比ヶ浜さんのこと、どう思ってるのかしら?」

 

「んなっ!?」

 

 あまりの衝撃に椅子から飛び上がりそうになった。しどろもどろになりながら聞き返す。

 

「どうって、どういう意味で?」

 

「初めてあなたが彼女と会ったときも思ったのだけれど、何か様子がおかしいような気がしたのよ。星斗って女子には慣れてるはずなのに妙に緊張してる気がしたわ」

 

 俺はしばらく考える。この際、自分が由比ヶ浜先輩のことを好きだってことを伝えてしまうか。いや、それを選ぶとこの奉仕部の人間関係を変えてしまう危険性がある。何より、そのことが由比ヶ浜先輩に知られて、もしフラれてしまったりなどしたら、ショックで数年間は立ち直れない。

 

「……黙秘権を行使する」

 

「そう。なら、推測だけで聞くけど、もしかして、あなた、由比ヶ浜さんのことが好きなのかしら?」

 

 雪姉よ。それは推測ではなく答えというんだ。

 

「……そうだって言ったらどうする?」

 

「別に。どうもしないわ。強いて言うなら、弟が好きな人を見つけてよかったって思う程度かしらね」

 

 今のところはその言葉を信じることにするか。こういうときに備えて自分が追い詰められたときに姉を誤魔化す言葉も考えてはいる。

 

「そうか。でも、今のところは俺は姉たち一筋だよ? 陽姉もいるから二筋になるんだけども」

だよ? 陽姉もいるから二筋になるんだけども」

 

 これはシスコンを演じて姉に突け込もうとするというよりも、半分以上は本音である。それを見つめられながら言われた雪姉は可愛らしく顔を朱に染める。

 

「ありがとう、星斗。私は幸せ者ね」

 

 あーこれ、自分が由比ヶ浜先輩好きになってなかったら、姉ルートまっしぐらのやつっすわ。可愛すぎるその姿を見てそう思わずにはおれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日。材木座先輩の小説の品評会が行われることとなった。昨晩、いろいろ文句を言ってはいたが、とりあえず全部読んだ。読んだには読んだが、正直かなりキツかった。なんならそこらの問題集解けって言われるよりかキツかった。

 

 そんなことを思いながら、俺は部室の鍵を持つ雪姉とともに奉仕部に向かった。

 

 部室に入り、椅子に腰掛けると雪姉が、

 

「星斗、昨日の疲れが残ってるから、しばらく寝てもいいかしら? 誰か来たら起こしてもらえると助かるわ」

 

 と言ってきた。そら、ほとんど一夜漬けだったもんな。それに俺としては姉の疲れが少しでも減ればそれでいい。

 

「分かった。しばらくおやすみ」

 

 その俺の声とともに姉は可愛らしい寝息をたて始めた。ちょっと待った、俺昨日から可愛いばっかり言ってないか。これも全部雪姉が可愛い過ぎるのが悪い。

 

 しばらく経ち、自分もウトウトしつつなりそうだったそのとき、ドアがガラリと開いた。

 

「あ、比企谷先輩。こんにちは」

 

「よう。雪ノ下は……」

 

「見ての通り寝てます。まあ、理由は分かるでしょう?」

 

 と言いつつ俺は雪姉の肩を軽く揺する。すると、雪姉は眠たそうに眼を開け呟いた。

 

「……驚いた、あなたの顔を見ると一瞬で目が覚めるのね」

 

 あなたとは比企谷先輩のことだろう。雪姉は猫のような欠伸をする。

 

「その様子じゃ相当苦戦したみたいだな」

 

「ええ、徹夜なんて久しぶりにしたわ。私もこの手のものを全然読んだことはないし。……あまり好きになれそうにないわ」

 

 雪姉の声に反応したのは、俺の愛しの由比ヶ浜先輩である。

 

「あー。わたしも絶対無理」

 

「お前は読んでねーだろ。今から読め今から」

 

 比企谷先輩の声に俺も思わず呟く。

 

「ごめんなさい、由比ヶ浜先輩。俺もちょっと由比ヶ浜先輩は読んでこないだろうなって思ってました」

 

「むぅ……、ヒッキーもせーくんも失礼だし」

 

 そう言って綺麗な冊子を取り出す。本当に手付かずのようだ。

 

 その直後、ドアがノックされる。

 

「頼もう」

 

 材木座先輩のご登場だ。

 

「さて、では感想を聞かせてもらうとするか」

 

 材木座先輩が椅子に座る。さて、俺は何を言うとしようか。そう考えていると雪姉が口を開いた。

 

「私はこういうのはよく分からないのだけれど……」

 

「構わぬ。凡俗の意見も聞きたいところだったのでな。好きに言ってくれたまへ」

 

 それに雪姉は軽く頷いて、一言、

 

「つまらなかった。読むのが苦痛ですらあったわ。想像を絶するつまらなさ」

 

「げふぅっ!」

 

 と切り捨てた。仮にこれを俺が書いたものだったら同じことを言っただろうか。そんなことを雪姉が材木座先輩の作品をこき下ろす間に考えてみた。さんざんアドバイスという名の酷評をした挙句、そんな残念な文章を書く星斗も好きだと言ってくれるに違いない。

 

 そう思っているうちに、材木座先輩はすでに虫の息になっていた。

 

「なあ、もういいんじゃないか。一辺に言ってもアレだし」

 

「まだまだ言い足りないけれど、まあいいわ。じゃあ、次は由比ヶ浜さんかしら」

 

「え!? あ、あたし!?」

 

 由比ヶ浜先輩は涙を浮かべる材木座先輩を哀れに思ったのかどうにか褒める部分を探して言う。

 

「え、えーっと……。む、難しい言葉をたくさん知ってるね」

 

「ひでぶっ!」

 

「トドメ刺してんじゃねぇよ……」

 

 褒めるつもりが仇となってしまったようだ。材木座先輩はすでに燃え尽きてしまいそうだ。

 

「じゃ、じゃあ、せーくん、お願い!」

 

 と由比ヶ浜先輩が逃げるように席を俺に譲る。

 

「OK。だいたいのアドバイスというか批判は雪姉がやってくれただろうから、俺からは一言。先輩度胸ハンパないっすね」

 

「……度胸?」

 

「はい。自分ならコレでここの部室に持ってこようとか思いませんから、かえって度胸がすごいな、と」

 

 笑顔で俺は言う。

 

「ふぎぃっ!」

 

 再び材木座先輩が倒れる。あれ、俺また何かやっちゃいました?

 

「お前、それ、遠回しに不出来って言ってるようなもんだぞ……。一応、先輩なのに失礼だな……」

 

 と比企谷先輩。言われてみればその通りだ。俺は力の抜けた材木座先輩に謝る。

 

「ごめんなさいです、先輩。てな訳で、最後は比企谷先輩、お願いします」

 

「は、八幡。お前なら理解できるな? 我の書いた世界、ライトノベルの地平がお前になら分かるな? 愚物どもでは理解することができぬ深遠なる物語が」

 

 すがるような目で材木座先輩が言う。比企谷先輩は安心させるように頷く。

 

 そして、一言。

 

「で、あれって何のパクり?」

 

 

「ぶふっ!? ぶ、ぶひ……ぶひひ」

 

 材木座先輩は床をのたうち回る。が、壁に激突すると静かになった。

 

「……あなた容赦ないわね。私よりよほど酷薄じゃない」

 

「……ちょっと」

 

 雪姉はドン引き、由比ヶ浜先輩は比企谷先輩脇腹を軽くつつく。彼はしばらく考えて言う。

 

「まあ、大事なのはイラストだから。中身なんてあんまり気にするなよ」

 

 哀れ材木座先輩はグッタリとその声に項垂れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、材木座先輩は比企谷先輩の声によりどうにか立ち直ることに成功。とりあえず、依頼は解決したということで幕を閉じた。

 

 にしても今日も由比ヶ浜先輩と雪姉、可愛かったなぁ。この言葉にしにくい感情を誰かに伝えたい。そうだ、そんな時にうってつけの相手がいるではないか。そう思いながら、帰り際に携帯のメールを開いて、打ち込む。

 

「今日の夕方から、時間取れますか、陽姉」

 

 と、もう一人の姉に呼びかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、陽姉、登場!
   陽姉、とお話し!
   弟、陽姉のことが大好き!
の3本でお送りします。次もまた見てねぇ〜。
じゃんけん、ポンっ! うふふふふ〜。




ふざけました。すみません。
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