もし雪ノ下雪乃に弟がいたら   作:黒い柱

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お待たせしすぎてすみません。うまくまとめるのが大変だったもので……


新たな依頼は更生プログラム〜一応テスト前〜

 俺が由比ヶ浜先輩の誕生日プレゼントに頭を悩ませている中、再び勉強会に参加することになった。正直、由比ヶ浜先輩と二人きりだと俺がいらんことを言いかねない。そのため、雪姉と戸塚先輩を呼ぶことにした。比企谷先輩も呼ぶつもりだったが、今朝彼は遅刻してしまったらしく、平塚先生に呼び出されており、タイミングが合わなかった。

 

 そんなハーレムで(戸塚先輩は男)カフェに向かう。

 

「やっぱり、混んでるねー」

 

 と由比ヶ浜先輩。

 

「そうっすね。そろそろテストも近いし、勉強熱心なもんですねぇ」

 

「そうね。由比ヶ浜さん、周りに迷惑かけないよう、星斗の言うことをしっかり聞くのよ」

 

 雪姉、あんたは由比ヶ浜先輩の親か。そして俺は由比ヶ浜先輩の兄か。いや待て、その設定も悪くないなぁ……。

 

「それくらい自分でできるし! それより彩ちゃんもごめんね。急に呼び出しちゃって」

 

「ううん、気にしないで。僕も勉強しようと思ってたから」

 

 うーん。これで男子とか神様、決める性別間違ってんじゃないだろうか。

 

 由比ヶ浜先輩と雪姉はカフェのレジに並びながら問題を出し合ってる。

 

「では、国語から出題。次の慣用句の続きを答えよ。『風吹けば』」

 

「……京葉線が止まる?」

 

 俺が苦笑しながら答える。

 

「答えは『桶屋が儲かる』ですよね? なんとも千葉らしい答えっすね」

 

 ちなみに、後ろに『恋』をつけると有名アーティストの曲名になる。

 

「では、次は地理から出題。『千葉の名産を2つ答えよ』」

 

「みそピーと、……ゆでピー?」

 

 由比ヶ浜先輩の千葉愛溢れる答えに後ろから声が聞こえた。

 

「おい、この県には落花生しかねぇのかよ」

 

「うわぁ! ……なんだヒッキーか、いきなり変な人に話しかけられたのかと思った……」

 

 びっくりしてる由比ヶ浜先輩も可愛いなぁ……。というか比企谷先輩、最高のツッコミありがとうございます。

 

「八幡っ! 八幡も呼ばれてたんだね!」

 

 戸塚先輩が笑顔で比企谷先輩の隣に並ぶ。俺と由比ヶ浜は比企谷先輩から目を逸らす。俺は申し訳なさから、由比ヶ浜先輩は気まずさからだろう。

 

「比企谷くんは呼んでないのだけれど、何か用?」

 

「雪ノ下、人を傷つけることだけを目的とした事実確認はやめろ」

 

 雪姉の毒にも案外耐性があるようだ。

 

「や、ヒッキーにも声かけようと思ってたんだけど、呼び出し喰らってたし……」

 

「いや、別に気にしてねぇけど……」

 

「本当に申し訳ないです。ごめんなさい、比企谷先輩」

 

「いや、だから大丈夫だって。こういうのは慣れてるし」

 

 黒歴史を暴発しかけた比企谷先輩に雪姉が声をかける。

 

「比企谷くんも試験勉強しにここへ?」

 

「ああ、まぁな。お前らもか」

 

「もちろん。テスト前だしね」

 

「いや、お前はその前に千葉県について勉強し直せ。今のはサービス問題だろ」

 

「なら、あなたは答えられるのかしら?」

 

「正解は、『千葉の名物、祭りとおどりだ』」

 

「先輩、それは名産じゃないです。ていうか、よくいきなり千葉音頭の歌詞が出てきますね……」

 

「星斗、答えをよろしく」

 

 雪姉と俺がドン引きしつつ答える。この人の千葉愛はもはや強すぎて怖い。

 

「さっき由比ヶ浜先輩が言ってくれた、落花生と銚子の醤油とかが有名でしょうか」

 

「その通りよ、星斗。さすがね」

 

 と雪姉が頭を撫でてくれる。なんとも気持ち良い。

 

 そんなこんなでレジは俺たちの順番となった。

 

「ヒッキー、おごってー」

 

「別にいいけどよ……。何飲む? ガムシロ?」

 

「あたしはカブトムシかっ! 奢りたくないなら素直に言ってよ!」

 

 と由比ヶ浜先輩が叫ぶ。

 

「みっともないからやめなさい」

 

「そうっすよ。でも、由比ヶ浜先輩、俺なら奢ってもいいのでいつでも声かけてくださいね」

 

「いや、後輩にたかるのはちょっと……」

 

 比企谷先輩は良くて俺はダメなのかよ。そんなことを考えてると比企谷先輩のコーヒーが出来上がったらしい。

 

「三九〇円になります」

 

 とここで比企谷先輩が小さく声をかける。

 

「すまん、金足りねぇわ。悪いけど、奢ってくれる?」

 

 由比ヶ浜先輩と雪姉はため息をつく。

 

「そのコーヒー、あたしが注文するから、ヒッキーはガムシロでも飲めば?」

 

「さっきの意趣返しっすか、先輩……」

 

「へ? 意趣返し?」

 

 由比ヶ浜は理解できないらしく、キョトンとしている。結果、戸塚先輩が立て替えたようだ。俺なら別に奢るくらいいいというのに。

 

 そうこうしているうちに、俺もカフェラテを注文して先に席に着いていた比企谷先輩の元に向かった。そこには少し前に見かけた、美少女と男の子がいた。

 

「先輩、その子って……」

 

「やー、どうもー。比企谷小町です。いつも兄がお世話になってます」

 

「比企谷先輩の後輩兼部活仲間兼友達の雪ノ下星斗です。どうぞ、よろしくお願いします」

 

 と頭を下げる。妹ちゃんは俺に答えた後、比企谷先輩の方をまじまじと見て言う。

 

「よろしくお願いします……。ていうか、お兄ちゃん、いつこんなイケメンの友達を? ボッチの肩書きは捨てちゃったの?」

 

「馬鹿言え……。ほら、アレだ、双方の見解の相違ってやつだよ」

 

「えー、酷いなー。俺は先輩のこと、本当に友達になりたいと思ってるのに……」

 

 と棒読みで答えて、悲しげに俯くフリをする。

 

「また、お前ってやつは……。こうやって俺をいじって楽しんでるだけだよ」

 

「なるほど……。なんてお呼びしたらいいですかね?」

 

 どこか納得した様子の小町ちゃんが聞く。

 

「好きに呼んでくれて構わないよ。ただ、雪ノ下呼びだと姉と被るから星斗呼びだと助かるな」

 

「では、兄共々よろしくお願いしますね、星斗先輩!」

 

 先輩かぁ。なんとも良い響きだなぁ。

 

 そんな感慨に浸っているうちに、雪姉と由比ヶ浜先輩と戸塚先輩が来て、自己紹介を互いにすることになった。由比ヶ浜先輩の姿を見たとき、小町ちゃんはどこか見覚えのあるものを見たような表情を浮かべていた。もしかして、去年の交通事故があったときのことを思い出したりしたのだろうか。

 

 俺が複雑な思いでいると、比企谷先輩が小町ちゃんに聞く。

 

「……で、お前はここで何してんの?」

 

「大志君から相談受けてて」

 

 隣にいる男の子が頭を下げる。

 

「あの、川崎大志っす。姉ちゃんが総武高の2年で……。あ、姉ちゃんの名前、川崎沙希っていうんすけど、不良っていうか、悪くなったっていうか……」

 

 なるほど、それで小町ちゃんに相談に乗ってもらってたというわけか。しかし、生憎自分はその名前に聞き覚えはない。

 

「うちのクラスの川崎沙希か」

 

「比企谷先輩、2人以外の女子に知り合いいるんすか?」

 

「お前、ちょくちょく失礼だな。同じクラスなんだし、名前くらいは知ってる。由比ヶ浜は友達じゃねぇの?」

 

 由比ヶ浜先輩が首を横に振る。

 

「まあ、話したことくらいはあるけど……。友達ではないかなぁ……。川崎さんも誰かと仲良くしてるってイメージないしさ」

 

 比企谷先輩もそれに頷く。

 

「お姉さんが不良化したのはいつぐらいからかしら?」

 

「え、えっと……、中学のときとかは真面目だったし、優しかったっす。高一のときも、そんなに変わらなくて、変わったのはここ最近なんすよ」

 

「二年生になってからか」

 

「なら、クラス替えとかがきっかけな気もしますね」

 

「そうね、比企谷くんと同じクラスになったことだし」

 

 比企谷先輩が雪姉を睨む。

 

「なんで、俺が原因であるかのような言い方してんの? 俺は病原菌なの?」

 

「そんなことは言ってないわ。被害妄想が過ぎるんじゃないの、比企谷菌」

 

「言ってるから、菌って超言ってるから」

 

「噛んだだけよ」

 

 雪姉と比企谷先輩の夫婦漫才はなんとも面白い。が、このままだと話が進まない。

 

「でもさ、帰りが遅いって言っても何時くらいなん? あたしも割と遅かったりするし、高校生ならおかしくないんじゃない?」

 

「そうなんすけど、5時とかなんすよ」

 

 朝じゃない、それもはや。というか、そんなんだと寝てなくない?

 

「そんな時間に帰ってきて、ご両親は何も言わないの、かな?」

 

 戸塚先輩が聞く。

 

「うちは両親共働きだし、下に弟も妹もいるので、あまり姉ちゃんにはうるさく言わないんす。時間が時間だから顔も合わせないし……。たまに顔を合わせても喧嘩しちまうし、俺が何か言っても『あんたには関係ない』の一点張りで……」

 

 大志くんはがっくり肩を落とす。

 

「家庭の事情、ね……。どこの家にもあるものね」

 

 雪姉が陰鬱な表情で俯く。俺は肩を軽く叩く。

 

「雪姉、ごめんな……」

 

 そう言ってやることしかできない。雪姉の問題は彼女自身で解決するしかないものだ。俺にはどうすることもできない。もちろん、彼女の支えにはなりたいが……。

 

「気にすることはないわ」

 

 雪姉は普段の表情に戻り、大志くんが話し続ける。

 

「それに、それだけじゃないんす……。なんか変なところから姉ちゃん宛に電話がかかってきたりするんすよ」

 

「変なところ?」

 

「そうっす。エンジェルなんとかっていう、お店からなんすけど……店長って奴から」

 

「それの何が変なの、かな?」

 

 大志くんは机を叩いて叫ぶ。

 

「だって、エンジェルっすよ!? 絶対やばい店っすよ!」

 

「え、全然そんな感じしないけど……」

 

 由比ヶ浜先輩はそう言うが、確かにこの手の店に深夜から朝まで働いているというのは嫌な予感がするのも分からなくはない。

 

「まあ、落ち着け大志、俺にはすべて分かっている」

 

 比企谷先輩と大志くんの2人が下心で絆を結ぼうとしている。そんなことしてると、また雪姉から呆れられるよ。

 

「お、お兄さんっ!」

 

「ははは、お兄さんって呼ぶな? 殺すぞ?」

 

 シスコンまでぶつけるのは流石に引きますわぁ……。

 

「で、どうするのがいいすかね?」

 

「まずは店を特定すべきね、あの阿呆どもが言うような店じゃなくても朝方まで働くのはまずいし、早く突き止めて辞めさせないと」

 

「でも、辞めさせるだけだと、また別のお店で働き始めるかもよ?」

 

「ハブとマングースですね」

 

「小町ちゃん、それを言うならいたちごっこってやつだよ……。んで、雪姉、方針は決まりました?」

 

「ええ、対症療法と根本療法のどちらも同時にやるしかないわね」

 

 なかなかに難儀なことだ。

 

「おい、俺たちが何かするつもりなのか?」

 

 そう言うのは比企谷先輩。

 

「まあ、やってもいいと思うすけど。奉仕部の仕事として、仕事らしいことができるいい機会じゃないすか」

 

「いや、でも部活停止期間だし……」

 

「お兄ちゃん」

 

 小町ちゃんが笑顔で比企谷先輩を見ている。シスコン心に付け込もうというのか。いや、これはそれだけじゃないようだ。

 

「分かったよ……」

 

 どういう訳だか、比企谷先輩が折れ、大志くんが頭を下げた。

 

「はい! すんません、よろしくお願いします!」

 

 せっかくできた後輩のために一肌脱いでやるか。そんなことを俺は考えながら皆んなとともに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでです。次回がいつになるかは未定ですが、どうかよろしくお願いします
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