もし雪ノ下雪乃に弟がいたら   作:黒い柱

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なんかめちゃくちゃ長くなりました(6000文字超えただけですけど)


2人の姉たちの邂逅〜なぜか休日よく会う比企谷先輩〜

 俺と由比ヶ浜先輩、お互いに本音をぶつけ合ってから、俺らはよく一緒にいるようになった。もちろん、雪姉や比企谷先輩にはそのことをしっかり伝えてある。というか、伝えないと2人も勝手に部活を休むことになり、奉仕部が廃部に追い込まれかねない。

 

 そんな中、土曜日に由比ヶ浜先輩と「東京わんにゃんしょー」とかいうペットの展示即売会に行くことになった。由比ヶ浜先輩の飼ってるサブレの手入れが必要らしい。

 

 その際の手入れ中に俺は由比ヶ浜先輩とイチャイチャすることにした。

 

「俺でよかったんですか? 雪姉や比企谷先輩じゃなくて」

 

「うん。今はちょっと会いにくいし……。それにせーくんなら気軽に遊びに行けるから」

 

「……本当に可愛いですね。ますます好きになっちゃいそうだ」

 

 俺が言うと、由比ヶ浜先輩は少し照れながら答える。

 

「せーくん、心の声隠さなくなったよね……。いろいろ恥ずかしいし……」

 

 言われてみれば、隠す必要がなくなってから、結構好意を剥き出しにしてる気がする。これじゃ、雪姉や周りにバレるのも時間の問題か。

 

「一番恥ずかしかった瞬間を乗り越えたら、そうそう恥ずかしくはないですよ。少しは俺に靡いてほしいもんなんですけどねぇ。由比ヶ浜先輩は比企谷先輩が好きなんでしょう?」

 

「だから、そういうのやめてって……。揺らぎそうになるから」

 

「あらあら……。ってサブレちゃんは?」

 

「あ」

 

 気がつくと手入れがちょうど終わったサブレがいなくなっていた。お互い話に夢中になっていたため、全く気づかなかった。幸い後ろ姿がちょうど見えたので、由比ヶ浜先輩が慌てて声をかけたが、あっさり無視されてしまった。

 

 そんな彼が向かったその先には、なぜだか雪姉と比企谷先輩がいた。ていうか、これヤバい。雪姉、犬苦手なんじゃ……。

 

「ひ、比企谷くん。犬が……」

 

 おろおろしている雪姉に追いつかなかったため、代わりに比企谷先輩がサブレを捕まえてくれた。そんな比企谷先輩はサブレに手を舐められまくっている。そうしてようやく俺たちも追いついた。

 

「サ、サブレ! ごめんなさい! サブレがご迷惑を」

 

「あら、由比ヶ浜さん、星斗」

 

「雪姉がいるのは知ってたけど、比企谷先輩も来てたんですね」

 

「うす」

 

「あ。う、うん……」

 

 うわぁ……。この2人、めちゃくちゃ気まずそう。由比ヶ浜先輩なんて、比企谷先輩に対する気まずさから俺の後ろに隠れそうになってしまっている。

 

「こんなところで奇遇ね」

 

「そ、そだね。ゆきのんとヒッキーはなんで一緒なの? 休みの日に2人で出かけるってもしかして……」

 

「いや、お前の方こそだろ……」

 

 この状況、俺と由比ヶ浜先輩、比企谷先輩と雪姉が付き合ってると思われてるのだろうか。俺としてはこの展開も非常にありがたいが、由比ヶ浜先輩はそうもいかないらしい。

 

「じゃ、じゃあ、あたしたちもう行くから……。ほら、せーくん」

 

 それを雪姉が呼び止める。

 

「由比ヶ浜さん、私たちのことで話があるから、月曜日、部室に来てくれるかしら?」

 

「……あー、あはは。あんまり、聞きたくない、かも。その今更聞いてもどうしようもないっていうか手も足も出ないっていうか……」

 

 由比ヶ浜先輩が珍しい明確な拒絶で答えた。それに雪姉が目を伏せて、俯く。

 

「雪姉、頑張れ」

 

 俺が後押しするように声をかけた。

 

「私、こういう性格だから、うまく伝えられなかったのだけれど。あなたにはきちんと話しておきたいと思っているわ」

 

「……ん」

 

 由比ヶ浜先輩は微妙な反応である。やっぱり一筋縄にはいかないか。

 

「それと星斗」

 

 由比ヶ浜先輩に続こうとする俺を呼び止める。

 

「え?」

 

「ありがとうね」

 

「弟として、当然だよ」

 

 そう言い残してその場を去った。さて、これから由比ヶ浜先輩の説得に入るとしますか。

 

 雪姉と比企谷先輩の後ろ姿が見えなくなったところで俺は聞く。

 

「で、単刀直入に聞きますけど、来週の月曜日部活には行きますか?」

 

「……分からない。まだ考えきれないかな」

 

 由比ヶ浜先輩は俯いて言う。

 

「そうですか。でも、俺が好きな由比ヶ浜先輩なら絶対に行くと思います。それはそうと先輩が好きなものってなんですか? 比企谷先輩以外でお願いします。人間はさすがに用意できないですから」

 

「用意って……。もしかして誕生日のこと?」

 

「はい。サプライズにするって考えもあったんですけど、ここは素直に聞いてみようかと思いまして」

 

 俺の声に由比ヶ浜先輩は困ったような顔で笑う。

 

「……うーん、すぐにはやっぱり思い浮かばないけど、せーくんからもらえるものならなんでも嬉しいって思うな」

 

 ですよねー。そう言われると思いました。ていうか、それに近しいこと俺や比企谷先輩が教えたんでしたっけ。そう考えていると、急に脳内で閃きが走った。

 

「……そうか、俺の今までに答えはあった、って訳か」

 

「どうしたの? せーくん?」

 

 由比ヶ浜先輩が不思議そうに見る。

 

「なんでもないですよ。先輩、誕生日期待しといてくださいね」

 

 そうして俺は由比ヶ浜先輩に微笑み返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺は由比ヶ浜先輩への誕生日プレゼントの準備のためにららぽに向かうことにした。

何を渡すのかというと由比ヶ浜先輩との出会いのきっかけにもなった手作りお菓子である。料理がそれなりにできる自分ならお菓子を作るのも難しいことではないとは思うが、そもそも何を作ればいいのか、何が由比ヶ浜先輩の、女子の好みなのかが思い浮かばない。

 

 というわけで今回は強力?な助っ人を用意することにした。

 

「そんなわけで私が呼ばれたってわけね?」

 

「悪く思わないでくれよ、陽姉。んで、俺の由比ヶ浜先輩へのプレゼントの評価はどう?」

 

「どうって言われてもね。でも、女の子へのプレゼントなら悪くはないんじゃない? 変に重くもないし、かといって心がこもってないって思われなくもない」

 

 俺がサポートを頼んだのは陽姉である。いかにも女子の心を女子よりも理解してそうな彼女こそこういうことにふさわしいだろう。なんならこの姉は男心くすぐるのも超絶上手いからな。さすが、大学で男子を手球に取ってるだけはある。

 

「ちょっと星斗さぁ、なんかめちゃくちゃ失礼なこと考えてない?」

 

「テレパシーみたいな能力をこんな場面で使うのはもったいなくね? 確かに少し失礼なこと思ったのは事実だけど」

 

「ホント、星斗って、恐れ知らずだよね。まあ、そういうところも好きなんだけどさ」

 

「唐突なデレ、ありがとうございます。てな訳で、俺はぶっちゃけ3つで悩んでるんだよね、ケーキかクッキーかチョコレートかで」

 

 お菓子売り場を歩きながら俺は言う。

 

「凄い強引な軌道修正だね。チョコレートはバレンタインと被るから微妙じゃない?」

 

「やっぱりそうだよね、それにクッキーでもケーキでもそれなりに種類あるからなぁ」

 

「ケーキなら誕生日ケーキという形であるとも思うんだけど、どう思う?」

 

「てなるとやっぱりクッキーにするか。さてと材料選びに入るとしますかね」

 

 俺は小麦粉や砂糖、牛乳などの材料を買い物カゴに詰め込んでいく。こうやって準備していると、やっぱり自分は由比ヶ浜先輩が好きなんだと再認識させられる。

 

「うーん、由比ヶ浜さん?だっけ? 星斗にこんなに愛されてるって考えると羨ましいなぁ」

 

「だよね、少しは振り向いてもらいたいんだけどなぁ。これで全部だっけ?」

 

 カゴいっぱいの材料を俺はレジに運びつつ聞く。

 

「うん、そうだよ。んで、このあとどうする? お姉ちゃんとデートする?」

 

「それもいいね。陽姉と買い物するのも久しぶりだし」

 

 そうして会計が終わり、俺は店から出た。クッキー作りはまた夜からすればいいし、昼間は久々の陽姉とのデートを楽しむことにしよう。

 

 それにしても陽姉は雪姉とは違った意味で美人だ。周囲の視線をめちゃくちゃ集める。かくいう俺もあの2人の弟なだけあってそれなりのイケメンである。自分で言うのもどうかとも思うし、旭や葉山先輩に勝てる自信はあんまりないけど。

 

「ねぇ、星斗。雪乃ちゃんは元気?」

 

「ええ、いつも可愛いよ。陽姉も会いに来ればいいのに。雪姉もあれで陽姉のこと大好きなのに」

 

「うーん、素直になれないのは乙女、いや姉心ってやつなのかな。私も優しくすべきってことは分かってるんだけどね」

 

 そうやって歩いていると、見覚えのある姿が見えた。

 

「……もしかして、噂をすればってやつなのかな」

 

 そこにいたのは可愛らしくパンさんのぬいぐるみに顔を埋める雪姉と、それを優しい目で見る比企谷先輩である。

 

「あれー? 雪乃ちゃん? あ、やっぱり雪乃ちゃんだ!」

 

 唐突に陽姉が叫んだ。この姉、さては雪姉の可愛らしさに耐えられなくて叫んだな。そうして陽姉は俺を置いて駆け寄る。

 

「姉さん……」

 

 雪姉は一気に表情を曇らせる。比企谷先輩は理解の追いつかない風に雪姉と陽姉を見比べる。

 

「こんなところでどうしたの? あ! デートか! デートだなっ! このこのっ!」

 

 そう言って陽姉は雪姉をからかう。雪姉は鬱陶しそうにしている。

 

 そんな中、俺も追いついて言う。

 

「陽姉、落ち着いて。雪姉困ってるしさ」

 

「よう、星斗。お前とはよく会うな」

 

「そうですね、比企谷先輩。こんにちは」

 

 俺たち男が挨拶している中、なおも陽姉は雪姉をからかっていた。

 

「ねぇねぇ、あれ雪乃ちゃんの彼氏?」

 

「……違うわ。同級生よ」

 

「まったまたぁ! 照れなくてもいいのにっ!」

 

 そう言われて雪姉はさらに姉を睨みつける。照れ隠しなのか、マジで嫌いなのか俺には見極められなくなる。

 

「雪乃ちゃんと星斗の姉の陽乃です。2人と仲良くしてあげてね」

 

 比企谷先輩の方を見て言う。そういえば初対面だったか。

 

「はぁ。比企谷です」

 

「比企谷……。へぇ……」

 

 陽姉が比企谷先輩を見る。いや、睨むと言った方が正しいか。もしかして、新しいおもちゃを見つけたとでも思ってるんではなかろうか。

 

「比企谷くんね。うん、よろしくね。あ、それ、パンダのパンさんじゃない? 私、これ好きなんだよねー! いいなぁ雪乃ちゃん羨まし」

 

 陽姉は雪姉の抱くぬいぐるみに手を伸ばす。こうやって見ると仲睦まじく見えるんだけど、実際のところは殺伐としてるんだよな、この2人。

 

「触らないで」

 

 雪姉は冷たく言い放つ。

 

「まあまあ、雪姉。陽姉も反省してるみたいだしさ」

 

 笑顔を凍りつかせる陽姉を庇うように俺は言う。めちゃくちゃショック受けてるな、この姉……。

 

「う、うん。ごめんね、雪乃ちゃん。そっか彼氏さんからのプレゼントだったのかな、お姉ちゃんちょっと無神経だった」

 

「いや、彼氏じゃないすけど」

 

「君もムキになっちゃってぇ。雪乃ちゃんを泣かせたりしたらお姉ちゃん許さないぞっ」

 

 そう言って今度は比企谷先輩をからかう。先輩、冗談言ってるように見えますけど、この人ガチのシスコンですからね、雪姉泣かしたらワンチャン殺されますよ。と俺は心の中で呟いた。

 

「姉さん。もういいかしら。特に用がないなら、私たちはもう行くけれど」

 

 その声を無視して比企谷先輩を弄り続ける。

 

「陽姉、ほら、ここまでにしときなよ。雪姉、相当ムカついてる」

 

 俺はそう言って陽姉を比企谷先輩から引き離す。

 

「星斗。ありがとう。でも、姉さんを連れてるなら暴れ出さないようにしっかり手綱を握っててほしいものだわ」

 

「ねぇ、雪乃ちゃんは私のこと野生動物か何かかと思ってるのかな」

 

「まさか。でも、星斗や比企谷くんに迷惑かけて、姉としては恥ずかしいなって思ってるわ」

 

「あ?」

 

「え?」

 

 お2人さん。俺を挟んで火花を散らさないでください。姉と分かってても怖いです。あと、陽姉。素がバレかけてます。

 

「2人とも頼むから落ち着いてくれ……」

 

 なんで俺こんな人間緩衝材みたいな葉山先輩みたいなことやってんだろう。それでも俺の言葉はどうにか届いたらしい。

 

「それはそうと、比企谷くん、雪乃ちゃん繊細な子だから、ちゃんと気をつけてあげてね」

 

 比企谷先輩に耳打ちする。なぜか先輩は興奮して仰け反っていた。もしかして性癖、耳とかなのだろうか。なら、今度女装すればワンチャン……。じゃない、俺がヒロインレースに参加してどうすんじゃい。

 

 俺の1人ツッコミをよそに話は続いていく。

 

「あ、そうだ。比企谷くん。よかったらお茶していかない? お姉ちゃんとしては雪乃ちゃんの彼氏としてふさわしいかどうか、気になるし」

 

「陽姉、彼氏云々はともかく弟の目で見てもそんなに悪い人じゃないと思うよ」

 

「でも、雪乃ちゃんが誰かとおでかけなんて初めて見たし、それなら彼氏だって思うじゃない? それが嬉しくて。でも、2人ともハメ外しちゃダメだぞ?」

 

 そして、雪姉に近づいて言う。

 

「一人暮らしのことだって、お母さん、まだ怒ってるんだから」

 

「……陽姉。このタイミングで言うのはちょっとどうかと思うな」

 

 俺の声に俯きながら雪姉が答える。

 

「……別に姉さんには関係ないことよ」

 

「そっか、そうだね。お姉ちゃんには関係ないし、雪乃ちゃんがちゃんと考えてるならそれでいいんだ。ごめんね」

 

 誤魔化すように比企谷先輩に向き直る。

 

「比企谷くん、雪乃ちゃんの彼氏になったら改めてお茶、行こうね。じゃ、またね!」

 

 そう言って俺を連れて行こうとする。

 

「ちょっと待って陽姉。雪姉に言うことあるから先行ってて。すぐ追いつくから」

 

 陽姉は頷いてその場を後にした。俺はベンチに腰掛けて言う。

 

「ごめんなさい、雪姉、比企谷先輩」

 

「星斗は悪くないわ。姉さんがあんななのは今に始まった話じゃないし」

 

「それでもごめん。あと、今日俺、実家で過ごすから」

 

 俺にはクッキー作りという由比ヶ浜先輩への重大ミッションがある。

 

「そう」

 

 雪姉は少し残念そうに俯く。

 

「気にしないで明日以降はいつも通り、一緒に過ごすから。あと比企谷先輩もすみません」

 

「別に気にしてねぇよ。それにしてもお前の姉ちゃん凄ぇな」

 

「どちらの姉でしょうか」

 

「確かにどっちも凄ぇけど、今日に限れば上の方だよ。何? あの、強化外骨格みたいな外面」

 

 その声に俺は驚かされる。

 

「よく気づきましたね。なんなんです、そのアホみたいな観察眼」

 

「そうね、腐った目だからこそ見抜けることがあるのね……」

 

「雪ノ下、お前、それ褒めてるの?」

 

「俺は少なくとも褒めてますよ」

 

「ええ。絶賛したわ」

 

 確かにあれのほとんどが陽姉の外面だ。雪姉と火花を散らしていたときに比企谷先輩は察したのかもしれないが、陽姉は基本俺以外には素を見せない。なんなら、俺にすら見せない場合もある。もちろん俺はそれに気づいているし、あの外面を付けろと言われれば不可能ではない。ただ、面倒だし、慣れてないから疲れるので付けてはいないが。

 

「まあな。親父にやけに距離近い初対面の相手には警戒するよう言われてんだよ」

 

 比企谷先輩の父さんはなんて教育してるのか。

 

「それにさ、お前と顔が似てるのに、笑った顔が全然違うだろ」

 

 姉を落とそうとしてます? 比企谷先輩。恥ずかしそうに雪姉は立ち上がる

 

「……っ、馬鹿な理由ね。帰りましょうか。星斗、また明日ね」

 

 そうして俺は2人と別れた。さて、陽姉も比企谷先輩が外面に気づいたことに気がついたに違いない。俺に勝るとも劣らないシスコンである陽姉がどんな風に奉仕部をかき乱していくのか気になるところではあるが、とりあえずは陽姉と合流して、明日の準備をしていくこととしよう。

 




今回はここまでです。今年最後の投稿になると思います。今年もいろいろありがとうございました。来年以降もどうかよろしくお願いします
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